ウェンディ・ターンブル

2.1. 幼少期と教育

ウェンディ・ターンブルは1952年11月26日にオーストラリアのブリスベンで生まれた。彼女は15歳で学業を終えた後、プロテニス選手となる前に4年間銀行に勤務するという異色の経歴を持つ。この期間の経験は、後の彼女のプロとしてのキャリアにおける粘り強さと disciplined な姿勢に影響を与えたと考えられている。

2.2. プロテニスへの転向

銀行での勤務を経て、ターンブルは1975年にプロテニス選手としてのキャリアをスタートさせた。彼女のプロ転向は、テニス界での自身の才能を追求するという強い決意の表れであった。

3.1. シングルスキャリア

ターンブルのシングルスでの最高ランキングはキャリアハイの3位であった。彼女は1977年から1986年までの10年間連続で年末世界ランキング20位以内を維持し、1977年から1984年までの8年間連続でトップ10入りを果たすなど、そのキャリアを通じて一貫して高いレベルのパフォーマンスを示した。しかし、グランドスラムのシングルス決勝では惜しくも優勝を逃し、3度の準優勝記録を残している。

• 1977年の全米オープンでは、準々決勝でその年のウィンブルドン選手権優勝者であるバージニア・ウェード(イギリス)を、準決勝では当時第2シードのマルチナ・ナブラチロワを破り、初のグランドスラム決勝に進出した。しかし、決勝では第1シードのクリス・エバート(アメリカ合衆国)に6-7^(3-7), 2-6で敗れ、準優勝となった。
• 1978年の全米オープンでも準決勝に進出したが、再びエバートに敗れた。
• 2度目のグランドスラム決勝進出となった1979年の全仏オープンでは、再びエバートと対戦し、2-6, 0-6で敗れて2度目の準優勝となった。
• 1980年には、全仏オープンとウィンブルドンでともにベスト8に進出した後、年末に開催された全豪オープンで3度目のグランドスラム決勝に進出した。(当時の全豪オープンは開催時期が変動しており、1978年から1985年までは12月の年末開催であった。)この大会では、準決勝で第1シードのナブラチロワを破る快挙を成し遂げたものの、決勝では当時18歳の新鋭ハナ・マンドリコワ(チェコスロバキア)に0-6, 5-7で敗れ、またも優勝のチャンスを逃した。
• その後も、1981年と1984年の全豪オープン、1984年の全米オープンで準決勝に進出している。シングルスでの最後の試合は、1989年のウィンブルドンでの2回戦敗退であった。

キャリアを通じて、ターンブルはWTAツアーでシングルス11勝を挙げた。

3.2. ダブルスキャリア

ターンブルはダブルスの名手として知られ、女子テニスツアーで通算55勝という輝かしい記録を樹立した。グランドスラムの女子ダブルスでは4勝、混合ダブルスでは5勝を挙げ、合計9つのグランドスラムタイトルを獲得した。これは、シングルスで主要タイトルに手が届かなかったものの、ダブルスでいかに卓越した才能を持っていたかを物語っている。

女子ダブルスでは、グランドスラムで11回、混合ダブルスでは1回準優勝している。特に、彼女の女子ダブルスでの準優勝のうち9回は、マルチナ・ナブラチロワをパートナーとするチームに敗れたものであり、ナブラチロワ時代の女子テニスにおける彼女の存在感を示すものであった。

主なダブルスでの勝利は以下の通りである。

• 1978年のウィンブルドンでは、同じオーストラリアのケリー・リードとペアを組み、ミマ・ヤウソベッツ(ユーゴスラビア)とバージニア・ルジッチ(ルーマニア)のペアを4-6, 9-8^(12-10), 6-3で破り、初のグランドスラムダブルスタイトルを獲得した。
• 1979年には、ベティ・ストーブ(オランダ)とペアを組み、全仏オープンと全米オープンで年間2冠を達成した。
• 1982年の全米オープンでは、ベテランのロージー・カザルス(アメリカ合衆国)と組んで3年ぶり2度目の優勝を果たした。

混合ダブルスでは、ジョン・ロイド(クリス・エバートの元夫)と相性が良く、1982年から1984年まで3年連続でウィンブルドンの混合ダブルス決勝に進出した。このうち、1983年と1984年にはタイトルを獲得している。また、1979年の全仏オープンではボブ・ヒューイット(オーストラリア)と、1980年の全米オープンではマーティ・リーセン(アメリカ合衆国)と、1982年の全仏オープンではジョン・ロイドと組んで優勝している。

1988年のソウルオリンピックでは、テニスが正式競技に復帰し、ターンブルはオーストラリア代表として女子ダブルスに出場した。エリザベス・スマイリー(オーストラリア)とペアを組み、準決勝でパム・シュライバーとジナ・ギャリソンのペアに敗れたが、1988年大会では3位決定戦が行われなかったため、準決勝敗退の2組がともに銅メダルを獲得し、ターンブルはオリンピックメダリストとなった。

3.3. チーム大会

ターンブルは1977年から1988年まで、オーストラリアのビリー・ジーン・キング・カップ(旧フェドカップ)チームのメンバーとして活躍した。この間、彼女は通算46勝16敗(シングルス17勝8敗、ダブルス29勝8敗)という優れた成績を残した。また、1985年から1993年まではチームのキャプテンまたはコーチを務め、後進の指導にも尽力した。

3.4. プレースタイルと特徴

ターンブルは、コートを縦横無尽に駆け巡るその素早いフットワークから、仲間たちから"Rabbit_ラビット^英語"というニックネームで親しまれた。彼女はコートでの俊敏性を武器に、様々なショットを巧みに使いこなす堅実なプレースタイルが特徴であった。

また、彼女は女子テニス界のレジェンドであるシュテフィ・グラフ(ドイツ)に対して、数少ない勝ち越し記録(対戦成績2勝1敗)を持つ選手の一人としても知られている。キャリアを通じて、当時のトッププレイヤーであったクリス・エバートとは1勝21敗、マルチナ・ナブラチロワとは5勝29敗という対戦成績を残している。これらの数字は、エバートとナブラチロワという二人の強豪が同時代に君臨していた中で、ターンブルがいかに高いレベルで戦い続けたか、そして彼女の3度のグランドスラムシングルス準優勝がいかに惜しまれるものであったかを物語っている。

4.1. グランドスラム決勝

4.2. オリンピック決勝

4.3. WTAキャリア決勝

4.4. その他主要大会決勝

5.1. 受賞と評価

ウェンディ・ターンブルは、その優れたテニスキャリアとスポーツへの貢献が認められ、1984年には大英帝国勲章メンバー(MBE)に叙された。

彼女はまた、テニス界の運営にも積極的に関わった。1991年には、選手としては唯一、国際テニス連盟(ITF)オリンピック委員会に任命された。さらに、ITFのビリー・ジーン・キング・カップ委員会にも委員として名を連ねている。1979年には、女性アスリートを特集した「Supersisters_{スーパーシスターズ}^英語」トレーディングカードセットに、ターンブルの氏名と写真がフィーチャーされた。

5.2. 殿堂入りと記念

2009年には、オーストラリアのテニス界における彼女の功績を称え、オーストラリアテニス殿堂に殿堂入りを果たした。また、1993年12月には、彼女の出身地であるブリスベン市が、彼女の栄誉を称えて公共公園を「ウェンディ・ターンブル・パーク」と命名した。

6.1. テニス史における位置づけ

ウェンディ・ターンブルは、女子テニス界がクリス・エバートとマルチナ・ナブラチロワという2人のスーパースターによって支配されていた時代に、一貫してそのトップレベルで戦い続けた選手として記憶されている。彼女はグランドスラムシングルスでの優勝こそなかったものの、その高いフットワークと堅実なプレースタイルで多くのファンを魅了し、グランドスラムダブルスで9つのタイトルを獲得した。

特に、ナブラチロワのペアにグランドスラム決勝で何度も敗れた事実は、当時の女子ダブルスがいかに熾烈な競争の場であったかを物語っている。しかし、ターンブルは、その困難な環境の中でも諦めることなく、自身が強みとするダブルスで数々の栄光を掴み取った。彼女の粘り強いプレイスタイルと、スポーツへの献身は、後進の選手たちにとっても大きな模範となった。国際テニス連盟の委員会での役割や、地元の公園に名を冠する栄誉は、単なる選手としての成績を超えた、テニス界全体への彼女の貢献を物語るものである。

7.1. シングルス

7.2. ダブルス

7.3. 混合ダブルス