1. 概要
エリファズ(אֱלִיפַז/אֱלִיפָזエリファズヘブライ語、「我がエロヒムは金なり」の意)は、旧約聖書の『創世記』に登場する人物であり、エサウと妻アダの長男である。彼は6人の息子を持ち、その中にはアマレクが含まれる。アマレクの子孫であるアマレク人は、後にイスラエル人の宿敵として知られるようになる。エリファズはエドムの祖先の一人として重要な役割を果たし、その子孫はエドムの地で多くの部族を形成した。
ミドラーシュの伝承によれば、エリファズは父エサウの命を受けて叔父ヤコブを追跡したが、ヤコブの機転により彼を殺すことなく、その財産を受け取ることでヤコブの命を救ったとされる。また、ルイス・ギンズバーグの『ユダヤ人の伝説』では、エリファズが預言者であったという解釈も紹介されている。
2. 系譜と誕生
エリファズは、イサクとリベカの息子であるエサウ(別名エドム)と、ヘト人エロンの娘である妻アダの間に生まれた長男である。彼の誕生は、エサウの家系における重要な出来事として記録されている。
2.1. エサウの長男
エリファズはエサウの長男として、その家系における重要な地位を占めていた。長男としての彼の立場は、エドムの部族形成において中心的な役割を果たす基盤となった。
2.2. 子孫
エリファズには6人の息子がいた。長男はオマルであり、その他にテマン、ゼフォ、ガタム、ケナズがいた。そして、彼のそばめであるティムナとの間にアマレクが生まれた。
アマレクの子孫であるアマレク人は、後にイスラエル人の祖先の敵として聖書に記されている(『出エジプト記』、『申命記』、『サムエル記上』)。
『創世記』および『歴代誌上』によれば、エリファズの子孫からエドムの地における多くの部族長が生まれた。エリファズの子孫である部族長は以下の通りである。
- テマンの部族長
- オマルの部族長
- ゼフォの部族長
- ケナズの部族長
- コラの部族長
- ガタムの部族長
- アマレクの部族長
これらの部族長は、エサウの妻アダの子孫としてエドムの地に定住し、エドム人の主要な氏族を形成した。
3. エドムの祖としての役割
エリファズは、彼の父エサウが「エドム」とも呼ばれたことから、エドム人の祖先の一人として認識されている。彼の子孫、特にテマン、オマル、ゼフォ、ガタム、ケナズ、アマレクの各部族は、エドムの地に広がり、独立した氏族として発展した。これらの氏族は、エドムという国家の形成において中核的な役割を果たした。
4. 聖書および伝承における記述
エリファズに関する記述は、『創世記』や『歴代誌上』といった聖書本文のほか、ミドラーシュやユダヤ人の伝説といったユダヤの伝承にも見られる。
4.1. ヤコブ追跡に関するミドラーシュ
ミドラーシュによれば、ヤコブがエサウから逃れて叔父ラバンのいるハランへ向かった際、エサウはエリファズにヤコブを追跡し、殺すよう命じた。エリファズはヤコブの叔父であり、また彼のラビ(教師)でもあったとされる。
二人が出会った際、ヤコブはエリファズに殺さないよう懇願した。しかしエリファズは、父の命令を果たす義務があると答えた。そこでヤコブは、自分が持っていた全ての財産をエリファズに与え、「貧しい者は死んだものとみなされる」と述べた。エリファズはこの提案を受け入れ、ヤコブを貧しい状態のまま生かして去ったとされる。この出来事は、ラシの注釈にも引用されている。
4.2. 預言者としての解釈
ルイス・ギンズバーグの著書『ユダヤ人の伝説』によれば、エリファズは預言者であったと解釈されている。この解釈は、エリファズが単なる家系の人物としてだけでなく、神の意志を伝える役割を担っていた可能性を示唆している。
5. 同名人物との区別
聖書にはエリファズという名前の他の人物も登場するが、本稿で扱うエサウの息子エリファズとは異なる人物である。最も有名な同名人物は、『ヨブ記』に登場するテマン人エリファズである。彼はヨブの友人であり、ヨブの苦難について議論する際に登場する。
- エサウの息子エリファズ**: 『創世記』に登場。エサウの長男で、エドムの部族の祖先。
- テマン人エリファズ**: 『ヨブ記』に登場。ヨブの友人であり、彼の苦難について神学的な見解を述べる。彼はテマンの出身であり、これはエサウの息子エリファズの子孫であるテマン部族との関連性を示唆している可能性がある。