1. 人物
イアン・カニングの出生地、生年月日、および公にされている私生活に関する情報について詳述する。
1.1. 出生と経歴
イアン・カニングは1979年7月23日にイングランドのブリストルで生まれた。彼は映画およびテレビのプロデューサーとして活動している。
1.2. 私生活
カニングは同性愛者であることを公表している。
2. 経歴
イアン・カニングのプロデューサーとしてのキャリアは、制作会社の設立から初期の活動、そして数々の主要な作品の製作に至るまで多岐にわたる。
2.1. 制作会社の設立
カニングは2008年にプロデュースパートナーのエミール・シャーマンと共に主要な映画制作会社であるシーソー・フィルムズを設立した。シーソー・フィルムズのオフィスはロンドン(イギリス)とシドニー(オーストラリア)に拠点を置いている。2019年には、カニングとシャーマンはガース・デイヴィスと協力し、新たな制作会社「I AM THAT」を設立し、サマンサ・ラングが開発責任者を務めている。
2.2. 初期キャリア
シーソー・フィルムズ設立以前、カニングは数々の受賞歴を持つ映画の製作総指揮を務めた。その中には、スティーヴ・マックイーンの長編映画デビュー作である『HUNGER/ハンガー』(2008年)が含まれる。この作品は、ボビー・サンズの最後の1週間を描いたもので、第61回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞し、マックイーンは第62回英国アカデミー賞でカール・フォアマン賞(第一回作品賞)を獲得した。
また、アントン・コービン監督の『コントロール』(2007年)の製作総指揮も務めた。この作品はジョイ・ディヴィジョンの歌手イアン・カーティスの物語であり、第60回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(特別表彰)を、第61回英国アカデミー賞でカール・フォアマン賞を獲得している。
2.3. 主要な製作作品
イアン・カニングがプロデューサーとして関わった主要な作品群は、映画、テレビシリーズ、ミュージックビデオにわたる。彼の作品はしばしば高い評価を受け、数々の賞に輝いている。
2.3.1. 映画
カニングがプロデュースした長編映画作品は以下の通りである。
年 | 日本語題 原題 | 監督 | 脚本 | 備考 |
---|---|---|---|---|
2006 | Candy | ニール・アームフィールド | ニール・アームフィールド、ルーク・デイヴィス | |
2007 | Control | アントン・コービン | マット・グリーンハルシュ | |
2008 | HUNGER/ハンガー | スティーヴ・マックイーン | エンダ・ウォルシュ、スティーヴ・マックイーン | |
2009 | メアリー & マックス | アダム・エリオット | アダム・エリオット | |
2010 | オレンジと太陽 | ジム・ローチ | ローナ・マンロー | AACTA賞 作品賞ノミネート AFIメンバーズ・チョイス賞ノミネート FCCA賞 作品賞ノミネート インサイド・フィルム賞 長編映画賞ノミネート |
The Kings of Mykonos | ピーター・アンドリキディス | |||
英国王のスピーチ | トム・フーパー | デヴィッド・サイドラー | アカデミー作品賞受賞 英国アカデミー賞 作品賞受賞 英国アカデミー賞 英国作品賞受賞 全米製作者組合賞 劇場映画賞受賞 APCA賞 作品賞ノミネート デイヴィス賞 作品賞ノミネート 女性映画ジャーナリスト同盟 作品賞ノミネート ヨーロッパ映画賞 作品賞ノミネート オンライン映画テレビ協会賞 作品賞ノミネート | |
2011 | SHAME -シェイム- | スティーヴ・マックイーン | スティーヴ・マックイーン、アビ・モーガン | 英国アカデミー賞 英国作品賞ノミネート ブラック・リール賞 作品賞ノミネート ヨーロッパ映画賞 作品賞ノミネート オンライン映画テレビ協会賞 作品賞ノミネート |
2012 | Anton Corbijn Inside Out | クラールチェ・クイリンス | ||
Dead Europe | トニー・クラウィッツ | ルイーズ・フォックス | AACTA賞 作品賞ノミネート FCCA賞ノミネート | |
2013 | 奇跡の2000マイル | ジョン・カラン | マリオン・ネルソン | AACTA賞 作品賞ノミネート オーストラリア映画批評家協会賞 作品賞ノミネート FCCA賞ノミネート |
2015 | ディーン、君がいた瞬間 | アントン・コービン | ルーク・デイヴィス | |
マクベス | ジャスティン・カーゼル | ジェイコブ・コスコフ、マイケル・レスリー、トッド・ルイソ | ||
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 | ビル・コンドン | ジェフリー・ハッチャー | ||
スロウ・ウエスト | ジョン・マクリーン | ジョン・マクリーン | ||
2016 | LION/ライオン ~25年目のただいま~ | ガース・デイヴィス | ルーク・デイヴィス | AACTA賞 作品賞受賞 アカデミー作品賞ノミネート AACTA国際賞 作品賞ノミネート クリティクス・チョイス・アワード 作品賞ノミネート ゴールデングローブ賞 映画作品賞 (ドラマ部門)ノミネート オンライン映画テレビ協会賞 作品賞ノミネート 全米製作者組合賞 劇場映画製作者賞ノミネート サテライト賞 作品賞ノミネート |
2017 | パーティで女の子に話しかけるには | ジョン・キャメロン・ミッチェル | フィリッパ・ゴスレット、ジョン・キャメロン・ミッチェル | |
2018 | マグダラのマリア | ガース・デイヴィス | ヘレン・エドモンドソン、フィリッパ・ゴスレット | |
妻たちの落とし前 | スティーヴ・マックイーン | ギリアン・フリン、スティーヴ・マックイーン | ||
2019 | The Day Shall Come | クリス・モリス | クリス・モリス、ジェシー・アームストロング | |
2020 | アンモナイトの目覚め | フランシス・リー | フランシス・リー | |
2021 | パワー・オブ・ザ・ドッグ | ジェーン・カンピオン | ジェーン・カンピオン | 英国アカデミー賞 作品賞受賞 クリティクス・チョイス・アワード 作品賞受賞 AACTA国際賞 作品賞受賞 ゴールデングローブ賞 映画作品賞 (ドラマ部門)受賞 アカデミー作品賞ノミネート 全米製作者組合賞 劇場映画製作者賞ノミネート |
2022 | オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体- | ジョン・マッデン | ミシェル・アッシュフォード | |
The Stranger | トーマス・M・ライト | トーマス・M・ライト | 第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映 | |
The Son/息子 | フローリアン・ゼレール | フローリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン | ||
2023 | ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命 |
2.3.2. テレビシリーズ
カニングがプロデュースしたテレビシリーズ作品は以下の通りである。
年 | 日本語題 原題 | 脚本 | 監督 | 備考 |
---|---|---|---|---|
2013 | トップ・オブ・ザ・レイク | ジェーン・カンピオン、ジェラード・リー | ジェーン・カンピオン、ガース・デイヴィス | AACTA賞 テレビ映画またはミニシリーズ賞受賞 ニュージーランド映画テレビ賞 テレビ特集またはドラマ賞受賞 エミー賞 ミニシリーズまたはテレビ映画賞ノミネート 全米製作者組合賞 長編テレビ製作者賞ノミネート |
2015 | Banished | ジミー・マクガヴァン、ショーン・ダガン | ダニエル・パーシヴァル、ジェフリー・ウォーカー | AACTA賞 テレビ映画またはミニシリーズ賞ノミネート |
2016 | Codes of Conduct | マシュー・マイケル・カーナハン | スティーヴ・マックイーン | |
Love, Nina | ニック・ホーンビー、ニーナ・スティッブ | S・J・クラークソン | ||
2017 | トップ・オブ・ザ・レイク: チャイナガール | ジェーン・カンピオン、ジェラード・リー | ジェーン・カンピオン、アリエル・クレイマン | ゴールデングローブ賞 テレビリミテッドシリーズ・テレビ映画部門 作品賞ノミネート |
2018 | The New Legends of Monkey | ジャクリン・パースキー | ジェラード・ジョンストン | AACTA賞 子供向けテレビシリーズ賞ノミネート |
2019 | State of the Union | ニック・ホーンビー | スティーヴン・フリアーズ | 国際エミー賞 短編シリーズ賞受賞 |
2020 | The End | サマンサ・シュトラウス | ジェシカ・M・トンプソン、ジョナサン・ブロー | AACTA賞 ミニシリーズまたはテレビ映画賞ノミネート |
2021 | The North Water | アンドリュー・ヘイ | アンドリュー・ヘイ | |
Firebite | ウォーウィック・ソーントン、ブレンダン・フレッチャー | ウォーウィック・ソーントン、ブレンダン・フレッチャー、トニー・クラウィッツ | ||
2022 | 窓際のスパイ | ウィル・スミス、モーウェナ・バンクス、マーク・デントン、ジョニー・ストックウッド | ジェームズ・ホーズ | |
2022 | ハートストッパー | アリス・オズマン | ユーロス・リン | |
2022 | The Essex Serpent | アンナ・サイモン | クリオ・バーナード |
2.3.3. ミュージックビデオ
カニングがプロデュースしたミュージックビデオ作品は以下の通りである。
年 | ミュージックビデオ | 監督 | 備考 |
---|---|---|---|
2009 | Linear | アントン・コービン | |
2013 | アーケイド・ファイア: Reflektor | アントン・コービン | |
2016 | All Day/I Feel Like That | スティーヴ・マックイーン |
3. 受賞歴と評価
イアン・カニングは、そのプロデュース作品を通じて数々の主要な賞を受賞・ノミネートされており、業界内で高い評価を得ている。
3.1. 主要な受賞歴
カニングはこれまでに、アカデミー賞に3回ノミネートされ1回受賞、英国アカデミー賞に5回ノミネートされ3回受賞、エミー賞に2回ノミネートされ1回受賞している。
- アカデミー賞
- 2011年:『英国王のスピーチ』 - 作品賞受賞
- 2017年:『LION/ライオン ~25年目のただいま~』 - 作品賞ノミネート
- 2022年:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 - 作品賞ノミネート
- 英国アカデミー賞
- 2011年:『英国王のスピーチ』 - 作品賞受賞、英国作品賞受賞
- 2012年:『SHAME -シェイム-』 - 英国作品賞ノミネート
- 2017年:『LION/ライオン ~25年目のただいま~』 - 作品賞ノミネート
- 2022年:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 - 作品賞受賞
- エミー賞
- 2014年:『トップ・オブ・ザ・レイク』 - ミニシリーズまたはテレビ映画賞ノミネート
- 2020年:『State of the Union』 - 短編シリーズ賞受賞
- ゴールデングローブ賞
- 2017年:『LION/ライオン ~25年目のただいま~』 - 映画作品賞 (ドラマ部門) ノミネート
- 2018年:『トップ・オブ・ザ・レイク: チャイナガール』 - テレビリミテッドシリーズ・テレビ映画部門 作品賞ノミネート
- 2022年:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 - 映画作品賞 (ドラマ部門) 受賞
- 全米製作者組合賞
- 2011年:『英国王のスピーチ』 - 劇場映画賞受賞
- 2014年:『トップ・オブ・ザ・レイク』 - 長編テレビ製作者賞ノミネート
- 2017年:『LION/ライオン ~25年目のただいま~』 - 劇場映画製作者賞ノミネート
- 2022年:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 - 劇場映画製作者賞ノミネート
- その他
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は第78回ヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映され、監督のジェーン・カンピオンは銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した。
3.2. 批評的評価
イアン・カニングがプロデュースした作品群は、批評家から一貫して高い評価を受けている。特に『英国王のスピーチ』や『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、その芸術性と完成度の高さから世界中で絶賛され、数々の映画賞の主要部門を席巻した。2011年には、カニングとエミール・シャーマンは「MediaGuardian 100」に名を連ね、「業界のビッグリーグ入りをした」と評されるなど、そのプロデュース手腕は業界内で高く評価されている。彼の作品は、社会的なメッセージ性や人間ドラマの深さを追求する傾向があり、観客や批評家から幅広い支持を得ている。
4. 影響
イアン・カニングのプロデュース活動は、映画・テレビ産業、文化、そして社会に多大な影響を与えている。彼は、商業的な成功と批評的な評価を両立させた作品を数多く生み出すことで、インディペンデント映画の可能性を広げた。特に、歴史的な出来事(『英国王のスピーチ』)や社会的なタブー(『SHAME -シェイム-』)、あるいは人間性の深淵(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)を探求する作品を通じて、観客に深い洞察と感動を提供している。
また、シーソー・フィルムズの共同設立者として、彼は新しい才能の発掘と育成にも貢献している。ジェーン・カンピオンやスティーヴ・マックイーンといった才能ある監督たちとの継続的なコラボレーションは、質の高い作品を生み出す基盤となっている。彼の作品は、多様な視点や物語を世界に発信し、映画・テレビというメディアが持つ文化的な影響力を高めている。
5. 主要な協力者と関連団体
イアン・カニングのキャリアにおいて重要な役割を果たした共同制作者、監督、俳優、および所属・関連する制作会社は以下の通りである。
- 共同制作者
- エミール・シャーマン: シーソー・フィルムズの共同設立者であり、長年のプロデュースパートナー。
- 主要な監督
- ジェーン・カンピオン
- スティーヴ・マックイーン
- トム・フーパー
- アントン・コービン
- ガース・デイヴィス
- ジャスティン・カーゼル
- ビル・コンドン
- ジョン・マクリーン
- ジョン・キャメロン・ミッチェル
- クリス・モリス
- フランシス・リー
- ジョン・マッデン
- トーマス・M・ライト
- フローリアン・ゼレール
- ジム・ローチ
- ピーター・アンドリキディス
- トニー・クラウィッツ
- ジョン・カラン
- ダニエル・パーシヴァル
- ジェフリー・ウォーカー
- S・J・クラークソン
- ジェラード・ジョンストン
- ジェシカ・M・トンプソン
- ジョナサン・ブロー
- アンドリュー・ヘイ
- ウォーウィック・ソーントン
- ブレンダン・フレッチャー
- ユーロス・リン
- クリオ・バーナード
- ジェームズ・ホーズ
- 主要な俳優
- コリン・ファース
- ニコール・キッドマン
- デヴ・パテル
- ルーニー・マーラ
- ベネディクト・カンバーバッチ
- コディ・スミット=マクフィー
- キルスティン・ダンスト
- ジェシー・プレモンス
- エリザベス・モス
- グウェンドリン・クリスティー
- ロザムンド・パイク
- クリス・オダウド
- ブレンダン・グリーソン
- パトリシア・クラークソン
- ジャック・オコンネル
- コリン・ファレル
- マイケル・ファスベンダー
- マシュー・マクファディン
- ケリー・マクドナルド
- ペネロープ・ウィルトン
- ジョニー・フリン
- ショーン・ハリス
- ジョエル・エドガートン
- ヒュー・ジャックマン
- ローラ・ダーン
- ヴァネッサ・カービー
- ゼン・マクグラス
- 関連団体
- シーソー・フィルムズ
- I AM THAT
6. 外部リンク
- [https://www.allcinema.net/person/805204 allcinema]
- [https://www.imdb.com/name/nm2096617/ IMDb]
- [https://www.see-saw-films.com/ See-Saw Films website]