1. 概要

マリオ・マット(Mario Mattドイツ語、1979年4月9日 - )は、オーストリアの元アルペンスキー選手である。彼は、特にスラローム種目において、2014年ソチオリンピックでオリンピック金メダルを獲得し、最も高齢でオリンピックのスラロームチャンピオンとなった選手の一人として、その並外れたキャリアの長さと成功で知られる。また、FISアルペンスキー世界選手権で2001年と2007年にスラロームで2度の世界チャンピオンに輝き、FISアルペンスキーワールドカップでは合計15勝を挙げた。彼のキャリアは、初優勝から最後のワールドカップ優勝までの期間が非常に長いことでも特筆され、アルペンスキー界における彼の持続的な影響力と貢献は高く評価されている。
2. 幼少期と背景
マリオ・マットは1979年4月9日にオーストリアチロル州のツァムスで生まれた。彼の身長は190 cmである。スキー選手としての所属クラブは、チロルにあるSC アールベルクであった。
3. アルペンスキー競技経歴
マリオ・マットのアルペンスキー選手としてのキャリアは、1999年12月にワールドカップでデビューして以来、長期にわたりトップレベルで活躍した。彼は主にスラローム、ジャイアントスラローム、アルペンスキー複合の種目で競技を行った。2015年3月12日にプロスキー選手としてのキャリアから引退するまで、数多くのワールドカップ勝利、世界選手権でのメダル、そしてオリンピックでの栄光を積み重ねた。
3.1. ワールドカップでの実績
マリオ・マットはFISアルペンスキーワールドカップにおいて、そのキャリアを通じて輝かしい実績を残した。彼はワールドカップで合計15回の優勝を果たし、そのうち14回はスラローム、1回はスーパー複合での勝利である。また、表彰台には合計42回上っており、内訳はスラロームで40回、大回転で1回、スーパー複合で1回である。
3.1.1. シーズン順位
各ワールドカップシーズンにおけるマリオ・マットの総合および種目別順位は以下の通りである。
シーズン | 年齢 | 総合 | 回転 | 大回転 | スーパー大回転 | 滑降 | 複合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2000 | 20 | 23 | 4 | - | - | - | - |
2001 | 21 | 17 | 3 | - | - | - | - |
2002 | 22 | 29 | 8 | 37 | - | - | - |
2003 | 23 | 91 | 35 | - | - | - | - |
2004 | 24 | 23 | 6 | - | - | - | - |
2005 | 25 | 29 | 6 | - | - | - | - |
2006 | 26 | 36 | 16 | 23 | - | - | 32 |
2007 | 27 | 5 | 2 | 25 | - | - | 11 |
2008 | 28 | 10 | 4 | 15 | - | - | 29 |
2009 | 29 | 29 | 7 | 40 | - | - | - |
2010 | 30 | 85 | 31 | - | - | - | - |
2011 | 31 | 20 | 4 | - | - | - | - |
2012 | 32 | 28 | 7 | - | - | - | - |
2013 | 33 | 21 | 6 | - | - | - | - |
2014 | 34 | 27 | 6 | - | - | - | - |
2015 | 35 | 96 | 29 | - | - | - | - |
3.1.2. レース優勝記録
マリオ・マットがワールドカップで達成した個々のレース優勝記録は以下の通りである。
シーズン | 日付 | 開催地 | 種目 |
---|---|---|---|
2000 | 2000年1月23日 | キッツビュール、オーストリア | スラローム |
2000年3月9日 | シュラートミング、オーストリア | スラローム | |
2001 | 2000年12月19日 | マドンナ・ディ・カンピーリオ、イタリア | スラローム |
2002 | 2001年11月26日 | アスペン、アメリカ合衆国 | スラローム |
2005 | 2005年3月13日 | レンツァーハイデ、スイス | スラローム |
2007 | 2007年1月14日 | ヴェンゲン、スイス | スーパー複合 |
2007年2月25日 | ガルミッシュ、ドイツ | スラローム | |
2007年3月4日 | クランスカ・ゴラ、スロベニア | スラローム | |
2008 | 2008年1月6日 | アデルボーデン、スイス | スラローム |
2008年1月22日 | シュラートミング、オーストリア | スラローム | |
2008年2月17日 | ザグレブ、クロアチア | スラローム | |
2009 | 2009年3月14日 | オーレ、スウェーデン | スラローム |
2011 | 2011年2月27日 | バンシュコ、ブルガリア | スラローム |
2011年3月6日 | クランスカ・ゴラ、スロベニア | スラローム | |
2014 | 2013年12月15日 | ヴァル=ディゼール、フランス | スラローム |
3.2. 世界選手権での実績
マリオ・マットはFISアルペンスキー世界選手権大会で合計5個のメダルを獲得している。内訳は金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル1個である。
年 | 年齢 | 回転 | 大回転 | スーパー大回転 | 滑降 | 複合 |
---|---|---|---|---|---|---|
2001 | 21 | 1 | - | - | - | 2 |
2003 | 23 | DNF1 | - | - | - | - |
2005 | 25 | DNF1 | - | - | - | 11 |
2007 | 27 | 1 | - | - | - | 11 |
2009 | 29 | DNF1 | - | - | - | - |
2011 | 31 | 4 | - | - | - | - |
2013 | 33 | 3 | - | - | - | - |
2015 | 35 | DNF1 | - | - | - | - |
注記: 2007年の世界選手権では、スラロームの他にチームイベントでも金メダルを獲得している。
3.3. オリンピックでの実績
マリオ・マットは冬季オリンピックに複数回出場し、メダルを獲得している。
年 | 年齢 | 回転 | 大回転 | スーパー大回転 | 滑降 | 複合 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2002 | 22 | 怪我のため不参加 | |||||
2006 | 26 | DNF1 | - | - | - | 34 | |
2010 | 30 | - | - | - | - | - | |
2014 | 34 | 1 | - | - | - | - |
3.4. 引退
マリオ・マットは2015年3月12日にプロスキー選手としてのキャリアからの引退を発表した。引退時の年齢は35歳であった。
4. 引退後の活動
スキー選手としてのキャリアを引退した後も、マリオ・マットは多岐にわたる活動を行っている。2009年には、オーストリアのサンクト・アントンにあるアルルベルク・リゾートのバー「Krazy Kanguruh」を購入し、経営している。また、彼はアラブ馬を飼育する馬小屋も運営している。
5. 私生活
マリオ・マットは、同じくスキー競技で活躍する家族を持つ。兄にはスキークロスの選手でオリンピック銀メダリストのアンドレアス・マット、弟にはアルペンスキー選手のミヒャエル・マットがいる。
6. 評価と影響
マリオ・マットは、スラローム競技における類稀な長寿キャリアと数々の記録によって、アルペンスキー界に多大な影響を与えた選手として評価されている。彼は、2014年ソチオリンピックでオリンピックのスラローム金メダルを獲得した際、当時の史上2番目に高齢のチャンピオンとなった(2018年にアンドレ・ミレーに更新)。また、ワールドカップのスラロームレースでも、デイブ・ライディングに次ぐ史上2番目の高齢優勝記録を持つ。さらに、彼のワールドカップにおける初勝利から最後の勝利までの期間は13年10ヶ月22日と、インゲマル・ステンマルクとディディエ・キュシュに次ぐ史上3番目の長さであり、これは彼のキャリアの持続性と競技への献身を如実に示している。これらの記録は、マリオ・マットが長年にわたり世界のトップレベルで戦い続けた、その卓越した能力と精神力を物語るものであり、後進の選手たちにとって大きな目標となっている。