1. 幼少期
アレハンドロ・カークは1998年11月6日にメキシコのティフアナで生まれた。彼は3歳の頃から野球を始め、幼少期にはアルバート・プホルスとセントルイス・カージナルスのファンであった。
彼のリトルリーグチームは、地元ティフアナでアマチュア選手として知られていた父のフアン・マヌエルがコーチを務めていた。アレハンドロには弟のアンドレスと、兄のフアン・マヌエル・ジュニアがいる。兄のフアン・マヌエル・ジュニアもまたペリコス・デ・プエブラに所属するプロの捕手である。
アレハンドロが捕手を始めたのは12歳か13歳の頃で、当時彼のチームに捕手が必要となり、父親がそのポジションを試すよう勧めたことがきっかけだった。彼はこの転向を喜んで受け入れ、兄のフアン・マヌエル・ジュニアを崇拝しており、彼の足跡をたどりたいと考えていた。捕手というポジションが試合の中心にいることを知り、最終的にこのポジションに魅了されていった。
2. プロ経歴
アレハンドロ・カークのプロとしてのキャリアは、マイナーリーグでの活動を経て、メジャーリーグでの目覚ましい活躍へと繋がっている。
2.1. マイナーリーグ時代
カークはメキシカンリーグのティフアナ・トーロスが開催したショーケースでトロント・ブルージェイズのスカウトであるディーン・デシリスによって見出された。彼は2016年9月24日にブルージェイズと契約し、契約金として7500 USDを受け取った。この際、ティフアナ・トーロスにはカークを放出する見返りとして2.25 万 USDが支払われた。
プロデビューは2017年、傘下のルーキー級ガルフ・コーストリーグ・ブルージェイズで1試合に出場し、3打数無安打の成績だった。2018年はルーキー級ブルーフィールド・ブルージェイズでシーズンを過ごし、58試合に出場して打率.354、10本塁打、57打点を記録した。このシーズンでは、33四球に対し21三振と、三振よりも四球が多い好成績を残した。
2019年にはA級のランシング・ラグナッツで開幕を迎え、その後A+級のダニーデン・ブルージェイズに昇格し、シーズンを終えた。両チーム合計で92試合に出場し、打率.290、7本塁打、44打点、56四球に対し39三振を記録した。2020年2月7日、ブルージェイズはカークをスプリングトレーニングに招待した。
2020年は、当初AA級のニューハンプシャー・フィッシャーキャッツで開幕を迎える予定だったが、COVID-19パンデミックによりマイナーリーグのシーズンが遅延し、最終的には中止された。同年9月1日にはチームのタクシー分隊に加わった。
2.2. メジャーリーグデビューと初期シーズン
2020年9月11日、アレハンドロ・カークはトロント・ブルージェイズからメジャー昇格を果たし、翌9月12日のニューヨーク・メッツ戦に「8番・捕手」で先発出場し、メジャーデビューを飾った。この試合で3打数1安打、1四球を記録し、メジャー初安打をマークした。
さらに9月21日のニューヨーク・ヤンキース戦では、メジャー初本塁打を含む1試合4安打を記録した。この活躍は、21歳以下の捕手としては2004年のジョー・マウアー(当時ミネソタ・ツインズ所属)以来の快挙であった。このシーズン、彼はメジャーで9試合に出場し、打率.375、1本塁打、3打点を記録した。
2021年はメジャーリーグで開幕を迎え、4月30日のアトランタ・ブレーブス戦で自身キャリア初となる1試合2本塁打を記録した。しかし、5月8日には左股関節屈筋の負傷により60日間の故障者リスト入りとなった。約2ヶ月間の離脱を経て、7月20日に故障者リストから復帰した。2021年シーズン全体では、60試合に出場し、打率.242、8本塁打、24打点を記録した。
2.3. 2022年シーズン:オールスター選出とシルバースラッガー賞受賞
2022年7月8日、アレハンドロ・カークはチームメイトのブラディミール・ゲレーロ・ジュニアと共に、自身にとって初めてのオールスターゲームに選出された。このシーズンは、打率.285、14本塁打、63打点という成績を残し、キャリアハイの活躍を見せた。
同年11月10日、彼はアメリカンリーグの捕手部門でシルバースラッガー賞を受賞した。これは彼にとって初めてのシルバースラッガー賞受賞となった。
2.4. 2023年シーズン以降
2023年シーズン開幕前の2月9日、アレハンドロ・カークは第5回ワールド・ベースボール・クラシックのメキシコ代表に初めて選出された。しかし、2月22日にパートナーの出産に立ち会うためスプリングトレーニングを離脱。その後、2月26日にはワールド・ベースボール・クラシックへの参加を辞退した。
2023年シーズンは123試合に出場し、打率.250、8本塁打、43打点、2024年シーズンは103試合に出場し、打率.253、5本塁打、54打点を記録した。
3. 選手としての特徴
アレハンドロ・カークは、その体格からは想像しにくい水準以上のパワーを持ち、打撃において優れた選球眼を兼ね備えていることで知られている。彼が打席に立つと、ボールをしっかりと見極め、甘い球には長打を放つ能力を発揮する。守備面では、捕手として試合の中心に立ち、投手をリードする能力も持ち合わせている。
4. 私生活
アレハンドロ・カークは、パートナーのソフィアとの間に2023年2月に第一子となる娘を授かった。
5. 表彰と記録
アレハンドロ・カークのプロキャリアにおける主な受賞歴と記録は以下の通りである。
- シルバースラッガー賞(捕手部門):1回(2022年)
- オールスターゲーム選出:1回(2022年)
また、キャリアを通じて着用した背番号は以下の通りである。
- 85 (2020年)
- 30 (2021年 - )
6. 年度別成績
6.1. 打撃成績
| 年 度 | 球 団 | 試 合 | 打 席 | 打 数 | 得 点 | 安 打 | 二 塁 打 | 三 塁 打 | 本 塁 打 | 塁 打 | 打 点 | 盗 塁 | 盗 塁 死 | 犠 打 | 犠 飛 | 四 球 | 敬 遠 | 死 球 | 三 振 | 併 殺 打 | 打 率 | 出 塁 率 | 長 打 率 | OPS | 
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020 | TOR | 9 | 25 | 24 | 4 | 9 | 2 | 0 | 1 | 14 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | .375 | .400 | .583 | .983 | 
| 2021 | 60 | 189 | 165 | 19 | 40 | 8 | 0 | 8 | 72 | 24 | 0 | 0 | 0 | 2 | 19 | 0 | 3 | 22 | 7 | .242 | .328 | .436 | .764 | |
| 2022 | 139 | 541 | 470 | 59 | 134 | 19 | 0 | 14 | 195 | 63 | 0 | 0 | 0 | 4 | 63 | 2 | 4 | 58 | 11 | .285 | .372 | .415 | .786 | |
| 2023 | 123 | 422 | 372 | 34 | 93 | 16 | 0 | 8 | 133 | 43 | 0 | 0 | 0 | 2 | 42 | 1 | 6 | 45 | 21 | .250 | .334 | .358 | .692 | |
| 2024 | 103 | 386 | 340 | 23 | 86 | 19 | 1 | 5 | 122 | 54 | 0 | 0 | 0 | 9 | 35 | 1 | 2 | 51 | 11 | .253 | .319 | .359 | .678 | |
| MLB:5年 | 434 | 1563 | 1371 | 139 | 362 | 64 | 1 | 36 | 536 | 187 | 0 | 0 | 0 | 17 | 160 | 4 | 15 | 180 | 50 | .264 | .344 | .391 | .735 | |
- 2024年度シーズン終了時
6.2. 守備成績
| 年 度 | 球 団 | 捕手(C) | ||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | 捕 逸 | 企 図 数 | 許 盗 塁 | 盗 塁 刺 | 阻 止 率 | ||
| 2020 | TOR | 7 | 48 | 1 | 0 | 0 | 1.000 | 0 | 4 | 4 | 0 | .000 | 
| 2021 | 44 | 353 | 17 | 2 | 1 | .995 | 2 | 32 | 26 | 6 | .188 | |
| 2022 | 78 | 655 | 31 | 3 | 7 | .996 | 1 | 47 | 35 | 12 | .255 | |
| 2023 | 99 | 829 | 36 | 6 | 3 | .993 | 1 | 83 | 68 | 15 | .181 | |
| 2024 | 93 | 706 | 46 | 7 | 6 | .991 | 7 | 87 | 60 | 27 | .310 | |
| MLB | 321 | 2591 | 131 | 18 | 17 | .993 | 11 | 253 | 193 | 60 | .237 | |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高