1. 生い立ち
エマ・コリンの生い立ちと学歴は、彼女のキャリア形成において重要な背景となっている。
1.1. 早期の生い立ち
エマ・ルイーズ・コリン(Emma-Louise Corrin英語)は、1995年12月13日にイングランドのケントにあるロイヤル・タンブリッジ・ウェルズ(Royal Tunbridge Wells英語)で生まれた。コリンにはリチャード(Richard英語)とジョンティ(Jonty英語)という2人の弟がいる。父親のクリス・コリン(Chris Corrin英語)はビジネスマンであり、母親のジュリエット・コリン(Juliette Corrin英語)は南アフリカ共和国出身の言語聴覚士である。一家はケント州のセブンオークス近郊のシール(Seal英語)を拠点としている。
1.2. 学歴
コリンはサリーにあるカトリック系の女子寄宿学校ウォルディンガム・スクール(Woldingham School英語)に通い、そこで演技と歌唱への興味を育んだ。高校卒業後、ギャップイヤーを取り、その間にロンドン音楽演劇アカデミー(London Academy of Music and Dramatic Art英語)でシェイクスピアのコースを受講し、南アフリカのクニスナにある学校で教師としてボランティア活動を行った。その後、ブリストル大学で演劇を学んだが、途中で退学し、2015年から2018年までケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ(St John's College, Cambridge英語)で教育学、英文学、演劇、芸術を学んだ。
2. 主な活動と業績
エマ・コリンは、初期のテレビ出演から国際的な注目を集めた『ザ・クラウン』での演技、そしてその後の映画や舞台、その他の多岐にわたる活動を通じて、その才能を発揮している。
2.1. 初期の活動とデビュー
コリンは2017年に短編映画『Cesare英語』でミカ(Mica英語)役を演じ、映画デビューを果たした。2018年には短編映画『Alex's Dream英語』でベス(Beth英語)役を演じている。テレビドラマでは、2019年にITVの刑事ドラマ『グランチェスター』(Grantchester英語)の第4シーズン第4話にエスター・カーター(Esther Carter英語)役でゲスト出演し、テレビデビューを果たした。同年にはEpixのDCシリーズ『Pennyworth英語』(『PENNYWORTH/ペニーワース』)の第1シーズンでエスミー・ウィニクス(Esme Winikus英語)役を繰り返し演じた。長編映画デビューは、2020年の『彼女たちの革命前夜』(Misbehaviour英語)で、ジル・ジェサップ(Jillian Jessup英語)役を演じた。2021年には短編映画『The Pet Psychic英語』でエマ(Emma英語)役を演じている。
2.2. 『ザ・クラウン』への出演と注目

コリンは、2020年11月に配信が開始されたNetflixの歴史ドラマシリーズ『ザ・クラウン』の第4シーズンでダイアナ妃役に抜擢された。この役でのコリンの演技は世界中で絶賛され、彼女はゴールデングローブ賞テレビドラマ演技賞(ドラマ部門)主演女優賞とクリティクス・チョイス・テレビジョン・アワードドラマシリーズ主演女優賞を受賞した。さらに、プライムタイム・エミー賞ドラマシリーズ主演女優賞と全米映画俳優組合賞ドラマシリーズ女優賞にもノミネートされた。また、彼女はアンサンブルキャストの一員として、全米映画俳優組合賞ドラマシリーズアンサンブル演技賞も受賞している。
2.3. 映画出演
コリンは数々の映画に出演し、多様な役柄を演じている。
年 | 題名 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
2017 | Cesare英語 | ミカ | |
2018 | Alex's Dream英語 | ベス | 短編映画 |
2020 | 彼女たちの革命前夜 | ジル・ジェサップ | |
2021 | The Pet Psychic英語 | エマ | 短編映画 |
2022 | 僕の巡査 | マリオン・テイラー | |
チャタレイ夫人の恋人 | レディ・チャタレー | ||
2023 | Good Grief英語(ため息に乾杯) | 若いパフォーマンスアーティスト | カメオ出演 |
2024 | デッドプール&ウルヴァリン | カサンドラ・ノヴァ | |
ノスフェラトゥ | アンナ・ハーディング | ||
未定 | 100 Nights of Hero英語 | ヒーロー | ポストプロダクション |
2.4. テレビドラマ出演
コリンは映画だけでなく、テレビドラマでもその存在感を示している。
年 | 題名 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
2019 | グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース | エスター・カーター | エピソード: "4.4" |
Pennyworth英語(PENNYWORTH/ペニーワース) | エスミー・ウィニクス | シーズン1の繰り返し出演 | |
2020 | ザ・クラウン | ダイアナ妃 | 第4シーズン メインキャスト |
2022 | Ten Percent英語 | 本人 | ゲスト出演 |
2023 | マーダー・イン・ザ・ワールド・エンド | ダービー・ハート | メインキャスト |
2.5. 舞台・音声作品
コリンは映像作品以外にも、舞台や音声作品で活躍している。
2021年にはウエスト・エンドのハロルド・ピンター劇場(Harold Pinter Theatre英語)で上演された『Anna X英語』でアンナ(Anna英語)役を演じ、ローレンス・オリヴィエ賞最優秀女優賞にノミネートされた。
2022年にはウエスト・エンドのガリック劇場(Garrick Theatre英語)で上演された『Orlando英語』(『オーランド』)でタイトルロールのオーランド役を演じ、その演技は高い評価を受けた。
音声作品では、2021年の『The Sandman: Act II英語』と2022年の『The Sandman: Act III英語』でテサリー(Thessaly英語)役の声を担当している。
2.6. その他の活動
コリンは演技活動以外にも、多方面で注目を集めている。
2021年にはリトル・シムズ(Little Simz英語)のアルバム『Sometimes I Might Be Introvert英語』に6曲で参加した。
2022年には、ファッション雑誌『ヴォーグ』(Vogue英語)の表紙を飾った初のノンバイナリー(非二元)の人物となった。
2023年にはパリ・ファッション・ウィークでミュウミュウ(Miu Miu英語)のランウェイに初登場した。
3. 受賞歴
エマ・コリンは、その優れた演技力により数々の賞を受賞し、また多くの賞にノミネートされている。
年 | 賞 | カテゴリー | 作品 | 結果 |
---|---|---|---|---|
2021 | クリティクス・チョイス・テレビジョン・アワード | ドラマシリーズ主演女優賞 | 『ザ・クラウン』 | 受賞 |
2021 | ゴールデングローブ賞 | テレビドラマ演技賞(ドラマ部門)主演女優賞 | 受賞 | |
2021 | ブロードキャスティング・プレス・ギルド | ブレイクスルー賞 | 受賞 | |
2021 | ハリウッド批評家協会テレビジョン・アワード | ストリーミングドラマシリーズ最優秀女優賞 | 受賞 | |
2021 | オンライン映画&テレビジョン協会 | ドラマシリーズ最優秀女優賞 | 受賞 | |
2021 | TVタイムズ・アワード | フェイバリット新人賞 | 受賞 | |
2021 | MTVムービー・アンド・TVアワード | ショー部門最優秀演技賞 | ノミネート | |
2021 | サテライト賞 | シリーズ・ミニシリーズ・テレビ映画助演女優賞 | ノミネート | |
2021 | 全米映画俳優組合賞 | ドラマシリーズ女優賞 | ノミネート | |
ドラマシリーズアンサンブル演技賞 | 受賞 | |||
2021 | プライムタイム・エミー賞 | ドラマシリーズ主演女優賞 | ノミネート | |
2022 | ローレンス・オリヴィエ賞 | 最優秀女優賞 | 『Anna X英語』 | ノミネート |
2022 | ディーヴァ・アワード | 年間最優秀俳優賞 | ノミネート | |
2022 | ザ・クィアティーズ | クローゼット・ドア・バストダウン | 受賞 | |
2022 | トロント国際映画祭 | パフォーマンス部門トリビュート賞 | 『僕の巡査』 | 受賞 |
2024 | インディペンデント・スピリット賞 | 新脚本シリーズ主演演技賞 | 『マーダー・イン・ザ・ワールド・エンド』 | ノミネート |
2025 | サターン賞 | 助演女優賞 | 『デッドプール&ウルヴァリン』 | ノミネート |
4. 私生活
コリンは、自身のアイデンティティを公にすることで、多様な性自認を持つ人々への理解促進に貢献している。
2021年7月、コリンは自身がクィアであることを公表し、2022年7月には自身のInstagramアカウントに「they/them」の代名詞を追加した。その後、コリンは『ニューヨーク・タイムズ』とのインタビューで、自身がノンバイナリー(非二元)であると認識していることについて語った。2024年現在、コリンは俳優のラミ・マレック(Rami Malek英語)と交際している。
5. 評価と社会的影響
エマ・コリンは、その演技力だけでなく、自身の個人的なアイデンティティの開示を通じて、社会に大きな影響を与えている。
『ザ・クラウン』におけるダイアナ妃役の演技は、批評家から普遍的な称賛を受け、その繊細かつ力強い表現力が高く評価された。この役によって、コリンは国際的な知名度を確立し、若手俳優としての地位を確固たるものにした。
さらに、コリンが自身をクィアでありノンバイナリーであると公表し、「they/them」の代名詞を使用していることは、LGBTQ+コミュニティ、特にノンバイナリーの個人にとって、メディアにおける重要な可視化と表現の多様性をもたらした。2022年に『ヴォーグ』(Vogue英語)誌の表紙を飾った初のノンバイナリーの人物となったことは、ファッション業界や主流メディアにおける包括性の進展を示す象徴的な出来事として注目された。コリンの公的な姿勢は、多様な性自認を持つ人々が社会でより受け入れられ、認識されるための重要な一歩として、肯定的に評価されている。