1. 概要
オレステス・キンデラン・オリバレス(Orestes Kindelán Olivaresオレステス・キンデラン・オリバレススペイン語、1964年11月1日 - )は、キューバの元プロ野球選手であり、現在は指導者として活躍している。現役時代は主に一塁手と左翼手を務め、キューバ国内リーグであるキューバ・ナショナル・シリーズのサンティアゴ・デ・クーバ・アビスパスで21年間のキャリアを全うした。
キンデランは「エル・カニョン・デ・ドス・リオス」(El Cañon de Dos Riosドス・リオスの大砲スペイン語)の愛称で知られ、キューバ革命以降のキューバ野球史において最も本塁打を量産した打者として高く評価されている。また、キューバ国家代表チームの主砲として、数々の野球ワールドカップやオリンピックで金メダルを獲得し、その攻撃力はチームの成功に不可欠であった。彼の功績は、キューバのスポーツ史において国民的な英雄としての地位を確立させ、野球が社会に与える影響の大きさを象徴している。2014年にはキューバ野球殿堂入りを果たし、その偉大なキャリアが公式に認められた。
2. 個人としての背景
キンデランの生年月日、幼少期の環境、そして彼の家族関係について述べる。
2.1. 生年月日と幼少期
オレステス・キンデラン・オリバレスは1964年11月1日にキューバのオリエンテ州、パルマ・ソリアーノで生まれた。彼の幼少期の環境に関する詳細な情報は少ないが、後にキューバ野球界を代表する選手へと成長する基盤がこの地で培われた。
2.2. 家族関係
キンデランには、キューバのアマチュアボクシング選手であり、オリンピックで金メダルを獲得したマリオ・キンデランといういとこがいる。彼らはそれぞれ異なるスポーツ分野でキューバのスポーツ界に多大な貢献を果たした。
3. 選手としての経歴
キンデランの選手としてのキャリアは、キューバ国内リーグと国際舞台での活躍に分けられる。
3.1. キューバ・ナショナル・シリーズ
キンデランは、キューバの国内プロ野球リーグであるキューバ・ナショナル・シリーズにおいて、デビューから引退まで21年間をサンティアゴ・デ・クーバ・アビスパス(旧名アビスパス・デ・オリエンテ)一筋でプレーした。彼のデビューは1982年8月6日で、引退は2002年12月18日であった。彼はこのリーグで数々の記録を樹立し、その攻撃力でチームを牽引した。
3.2. キューバ代表チーム
キンデランは長年にわたりキューバ国家代表チームの主砲として活躍し、数多くの国際大会でメダル獲得に貢献した。彼の在籍期間中、キューバ代表は国際野球界において圧倒的な強さを誇った。
3.3. 日本のアマチュア野球リーグ
キンデランは2002年から2004年にかけて、日本の社会人野球チームであるシダックスでプレーした経験がある。これは、キューバのトップ選手が海外のリーグでプレーする数少ない事例の一つであった。彼は都市対抗野球大会などの日本の主要なアマチュア野球大会にも出場し、その強力な打撃を披露した。
4. 主な功績と受賞歴
キンデランは選手として数々の輝かしい記録と受賞歴を残している。
4.1. キューバ・ナショナル・シリーズの記録
キンデランはキューバ・ナショナル・シリーズにおいて、以下のような主要な個人記録を樹立した。
- 通算安打数:3,893安打
- 通算本塁打数:487本(アルミバット使用シリーズで17本を含む)
- 通算打点:1,511打点
- 通算塁打数:3,893塁打
これらの記録は、彼がキューバ野球史上最も優れた打者の一人であることを明確に示している。
4.2. オリンピックメダル
キンデランはオリンピック野球競技において、キューバ代表として以下のメダルを獲得した。
- 1992年バルセロナオリンピック:野球競技 金メダル
- 1996年アトランタオリンピック:野球競技 金メダル
- 2000年シドニーオリンピック:野球競技 銀メダル
4.3. その他の国際大会メダル
オリンピック以外にも、キンデランは数多くの国際大会でメダルを獲得している。
- パンアメリカン競技大会
- 1991年パンアメリカン競技大会(ハバナ):野球競技 金メダル
- 1995年パンアメリカン競技大会(マル・デル・プラタ):野球競技 金メダル
- 1999年パンアメリカン競技大会(ウィニペグ):野球競技 金メダル
- 野球ワールドカップ
- 1990年野球ワールドカップ(エドモントン):金メダル
- 1994年野球ワールドカップ(ニカラグア):金メダル
- 1998年野球ワールドカップ(イタリア):金メダル
- 2001年野球ワールドカップ(台北):金メダル
- IBAFインターコンチネンタルカップ
- 1997年インターコンチネンタルカップ(バルセロナ):銀メダル
- グッドウィルゲームズ
- 1990年グッドウィルゲームズ(シアトル):野球競技 金メダル
4.4. 殿堂入り
キンデランは2014年にキューバ野球殿堂入りを果たした。これは彼の長年にわたる貢献と、キューバ野球史におけるその偉大な功績が正式に認められた証である。
5. 選手としての特徴と評価
キンデランは「エル・カニョン・デ・ドス・リオス」の愛称が示す通り、その強力なパワーヒッティングで知られていた。彼はキューバ革命以降のキューバ野球において、最も多くの本塁打を放った打者とされており、その打撃は常に相手チームの脅威であった。
特に、1996年アトランタオリンピックでは、アトランタ・フルトン・カウンティ・スタジアムで史上最長となる3階席への本塁打を放ったとされている。これは彼の並外れたパワーを示す象徴的なエピソードである。彼は単なる長距離打者にとどまらず、キューバ国家代表チームの攻撃の要として、国際舞台でもその打棒を発揮し続けた。
6. 指導者としてのキャリア
選手引退後、キンデランは野球の指導者として活動している。彼はキューバ国家代表チームのコーチを務めており、2017年と2023年のワールド・ベースボール・クラシックでは打撃コーチとしてチームを支えた。彼の豊富な経験と知識は、次世代のキューバ野球選手たちの育成に貢献している。
7. 影響と遺産
オレステス・キンデランは、キューバ野球の歴史において最も影響力のある選手の一人としてその名を刻んでいる。彼の記録的な本塁打数と国際大会での輝かしい実績は、多くのキューバの若き野球選手たちにとって目標であり続けている。彼は単なるスポーツ選手としてだけでなく、キューバ国民の誇りや希望を体現する存在として、社会に多大な影響を与えた。彼の遺産は、キューバ野球の伝統と未来に深く根ざしている。
8. 関連人物
キンデランのキャリアにおいて、共にプレーし、あるいは関連のある著名な野球選手には以下のような人物がいる。
- オマール・リナレス
- アントニオ・パチェコ・マッソ