1. 概要
クリス・ブルックスは、2007年にデビューしたイギリス人プロレスラーであり、現在は日本のDDTプロレスリングに所属している。彼はKO-D無差別級王座を2度、DDT UNIVERSAL王座を2度獲得するなど、DDTの中心選手として活躍している。既存の枠にとらわれない「パンクロッカー」のようなレスリングスタイルと、着ぐるみを襲撃するというユニークな行動で知られており、プロレス界における彼の独立した精神と個性が高く評価されている。
2. 幼少期とキャリアの開始
クリス・ブルックスの幼少期のエピソードとして、着ぐるみの襲撃癖が生まれた経緯があり、プロレスデビュー後はイギリスやヨーロッパの様々な団体でキャリアを積み重ねた。
2.1. 出生と幼少期
クリス・ブルックスは1991年8月24日にイギリスで生まれた。彼の血液型はO型である。幼少期のエピソードとして、家族とディズニーランドを訪れた際、ミッキーマウスの着ぐるみが頭を外してタバコを吸っている光景を目撃したことが挙げられる。この出来事は彼にとって「真実」を知る経験となり、以降、着ぐるみを見つけると襲撃せずにはいられないという癖を持つようになった。
2.2. イギリスおよびヨーロッパでの初期キャリア
クリス・ブルックスは2007年にプロレスデビューを果たし、イギリスのファイトクラブ・プロを主要な活動拠点とした。彼は国内の様々な団体やヨーロッパを中心にそのキャリアを積み重ねていった。
特に、Progress Wrestlingでは、キッド・ライコスと共に3度Progressタッグ王座を獲得している。Revolution Pro Wrestling(RevPro)では、トラヴィス・バンクスと組んだタッグチーム「CCK(Commonwealth Catch Kings)」として、旗揚げ戦でチャーリー・スターリングとジョエル・レッドマンからRPWブリティッシュ・タッグ王座を奪取した。CCKはこのタッグ王座をライアン・スマイル&シェイン・ストリックランド、サミ・キャラハン&マーティン・ストーン、そしてロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのBUSHI&高橋ヒロムといった強豪チームを相手に防衛した。その後、マスタッシュ・マウンテン(トレント・セブン&タイラー・ベイト)に王座を奪われた。
2017年の新日本プロレスとの合同興行「Global Wars 2017」では、CCKは初日にCHAOS(ロッキー・ロメロ&YOSHI-HASHI)を破り、2日目にはキッド・ライコスと組んで外道、後藤洋央紀、YOSHI-HASHI組を破るなど、輝かしい実績を残した。その後、鈴木軍(鈴木みのる&ザック・セイバーJr.)からタッグ王座の奪還を試みたが、2018年の「Epic Encounter」で敗れている。
3. 日本でのキャリア
クリス・ブルックスは、2019年以降、日本に活動の拠点を移し、DDTプロレスリングを中心に活躍するようになった。
3.1. DDTプロレスリングでの活動
クリス・ブルックスは2019年6月にDDTプロレスリングに初参戦し、日本での活動を開始した。彼は高梨将弘と出会い、タッグチーム「CDK(Calamari Drunken Kings)」を結成し、タッグ戦線に参入した。同年開催された「Wrestle Peter Pan 2019」では、CDKがムーンライト・エクスプレス(MAO&マイク・ベイリー)に勝利を収めた。また、「SUMMER VACATION」では竹下幸之介に敗れ、KO-D無差別級王座の獲得には至らなかった。
2019年11月29日から12月28日にかけて開催された「D王 GRAND PRIX2020」では、Aブロックで遠藤哲哉と同点1位という好成績を収め、その実力を示したものの、決定戦で敗れた。
2020年1月、クリス・ブルックスはDDTへの全面的なコミットメントを示すため、日本に1年間移住することを発表した。同年2月23日の「Into The Fight 2020」では、竹下幸之介を破り、初代DDT UNIVERSAL王座を獲得した。しかし、3月20日の「Judgement 2020: DDT 23rd Anniversary」で佐々木大輔に敗れ、王座を失った。
2021年3月14日の「Day Dream Believer 2021」では、勝俣瞬馬を有刺鉄線棺桶デスマッチで破り、初のDDT EXTREME級王座を獲得した。
2022年3月20日の「Judgement 2022: DDT 25th Anniversary」では、CDKが高梨将弘と共に、ディザスターボックス(HARASHIMA&吉村直巳)を破り、初のKO-Dタッグ王座を戴冠した。同年4月23日には「King of Street Wrestling」トーナメントでアブドーラ・小林を破り優勝を飾った。
2023年5月21日、4度目の出場となった「KING OF DDTトーナメント」で秋山準を準決勝で、樋口和貞を決勝で破り、念願の初優勝を果たした。この優勝により、KO-D無差別級王座への挑戦権を獲得。同年7月23日の「Wrestle Peter Pan 2023」では火野裕士を破り、第81代KO-D無差別級王座を獲得した。上野勇希に敗れてKO-D無差別級王座を失った直後、彼はDDTの新たなユニット「SCHADENFREUDE International」の結成を発表。メンバーには自身、高梨将弘、アントーニオ本多、正田壮史が含まれる。
そして、2024年11月4日の「Sumida Dramatic Dream」で青木真也を破り、第84代KO-D無差別級王座に返り咲いた。
3.2. Baka Gaijin + Friendsとその他の活動
クリス・ブルックスは、日本への移住を機に、DDTプロレスリングでの活動以外にも多岐にわたる独自の活動を展開している。
2022年12月13日、ブルックスはドリュー・パーカーと共に、自身のプロレスデビュー15周年を祝う自主興行「Baka Gaijin + Friends」を東京都世田谷区にあるカレーレストラン「アリーナ下北沢」で開催した。この興行はリングを使用せず、わずか50人の観客の前で行われた。メインイベントでは、CDK(クリス・ブルックス&高梨将弘)がドリュー・パーカー&MAO組に勝利した。このイベントはその後、月刊の興行ブランドとなり、アリーナ下北沢で定期的に開催されている。これは、彼が大手団体に縛られず、自身の理想とする「エモーショナルなプロレス」を追求する場となっている。
4. レスリングスタイルと哲学
クリス・ブルックスのレスリングスタイルは、ルールや慣習に縛られない「パンクロッカー」のような自由奔放さが特徴である。彼は自身の理想とするレスラー像について、既存のプロレスの枠組みにとらわれず、感情を重視した試合を繰り広げることを挙げている。
2018年にはWWEのWWE UK部門からスカウトの打診があったが、ブルックスはこれを断っている。その理由として「第2のザック・セイバーJr.にはなりたくない」「エモーショナルなプロレスがしたい」と語っており、大手団体の型にはまることを拒否し、自身の信念を貫く姿勢が示されている。
また、彼のトレードマークの一つに「着ぐるみ襲撃癖」がある。幼少期のディズニーランドでの出来事以来、着ぐるみを見ると襲わずにはいられない衝動に駆られるという。DDTの興行ではマスコットキャラクターの「ポコたん」を真っ先に襲撃したり、記者会見の場でちぃたん☆を襲撃して大乱闘に発展させたりと、その奇行は度々話題となる。2024年のアコスイべント広場大会では、地元のゆるキャラ「アコスちゃん」に因縁をつけて襲撃を試みた。これらの行動は、彼のレスラーとしての破天荒で個性的な哲学を体現している。
5. 得意技
クリス・ブルックスが主に用いるフィニッシュホールドやその他の主要な技は以下の通り。
- プレイングマンティスボム
- ダブルアーム・パイルドライバーの一種。相手の上半身をリバース・フルネルソンの体勢で捕らえて垂直に持ち上げながら尻餅をつき、相手の頭部をマットに打ちつける。
- オクトパスストレッチ
- 卍固めをベースにした関節技。
- 伊藤スペシャル
- 通常のテキサスクローバーホールドとは異なり、両手を祈るような形でクラッチする特徴的なホールド。
- ケンカ・キック
- ケンカキックの形で放たれるキック。
- デス・バイ・ロール・アップ
- スクールボーイで押さえ込んだ状態から自ら仰向けになり、相手の足を捕らえて押さえ込む丸め込み技。
- バッカス
- フロント・ネックロックから仕掛ける変形の雁之助クラッチ。これはDDTでのタッグパートナーである高梨将弘が得意とする技である。
6. 獲得タイトルと主な功績
クリス・ブルックスがこれまでに獲得した主要なタイトルおよび大会での功績は以下の通り。
- Attack! Pro Wrestling
- Attack! 24:7 Championship:1回
- Attack! Tag Team Championship:5回(パートナーはキッド・ライコス(4回)、キッド・ライコスII(1回))
- Baka Gaijin And Friends
- BKG Openweight Championship:1回(初代、現保持者)
- Combat Zone Wrestling
- CZW世界タッグ王座:1回(パートナーはキッド・ライコス)
- DDTプロレスリング
- DDT EXTREME級王座:1回(第51代)
- DDT UNIVERSAL王座:2回(初代、第3代)
- アイアンマンヘビーメタル級王座:5回(第1507、1509、1568、1640代)
- KO-D10人タッグ王座:1回(パートナーは高梨将弘、アントーニオ本多、正田壮史、メカマミー、植木崇行)
- KO-D無差別級王座:2回(第81代、第84代、現保持者)
- KO-Dタッグ王座:2回(パートナーは高梨将弘(1回)、正田壮史(1回))
- KING OF DDTトーナメント:優勝(2023年)
- King of Street Wrestling:優勝(2022年)
- Fight Club: Pro
- FCP Championship:1回
- FCP Tag Team Championship:2回(パートナーはキッド・ライコス(1回)、カイル・フレッチャー(1回))
- Dream Tag Team Invitational:優勝(2017年、パートナーはキッド・ライコス)
- Infinity Trophy:優勝(2014年)
- プロレスリング我闘雲舞
- アジアドリームタッグ王座:1回(パートナーは高梨将弘)
- Good Wrestling
- Good Wrestling Grand Prize Championship:1回
- Plex Wrestling
- Plex Wrestling British Championship:1回
- Plex Wrestling British Title Tournament:優勝(2015年)
- Progress Wrestling
- Progressタッグ王座:3回(パートナーはキッド・ライコス)
- プロレスリング・イラストレーテッド
- PWI 500:2023年版でシングルレスラー部門89位にランクイン
- Revolution Pro Wrestling
- RPWブリティッシュ・タッグ王座:1回(パートナーはトラヴィス・バンクス)
- Shropshire Wrestling Alliance
- SWA British Lions Championship:1回(最終王者)
- British Lions Tournament:優勝(2015年)
- Setup Thailand Pro Wrestling
- IWA Japan Setup World Tag Team Championship:1回(パートナーは高梨将弘)
- Singapore Pro Wrestling
- SPW Southeast Asian Tag Team Championship:1回(パートナーは高梨将弘)
- Southside Wrestling Entertainment
- SWE Tag Team Championship:1回(パートナーはキッド・ライコス)
- Westside Xtreme Wrestling
- wXwショットガン王座:1回
7. 入場曲
クリス・ブルックスの入場曲は「SCHADENFREUDE Theme」である。