1. 柔道選手としてのキャリア
ゲラ・ザアリシビリはジュニア時代からその才能を開花させ、数々の国際大会で実績を重ねてきた。シニア昇格後も一貫して世界のトップレベルで活躍し、主要大会での優勝やメダル獲得を続けている。
1.1. 初期およびジュニア時代
ザアリシビリのキャリアは、2015年のヨーロッパカデ選手権から始まった。この大会で個人戦90 kg超級で3位に入賞するとともに、団体戦では優勝を果たした。同年にはヨーロッパユースオリンピックフェスティバルで3位、さらに世界カデ選手権の個人戦では7位だったものの、団体戦で3位という成績を収めた。2016年にはヨーロッパカデ団体戦で2連覇を達成し、ジュニア世代での強さを示した。
2017年にはヨーロッパジュニア選手権で個人戦3位、団体戦2位となり、U23ヨーロッパ選手権でも3位に入賞した。そして2018年、彼は大きな飛躍を遂げる。まずヨーロッパジュニア選手権で優勝し、その勢いのまま世界ジュニア選手権に出場。2回戦で日本の斉藤立を小外刈で破るなど快進撃を続け、決勝ではオーストリアのシュテファン・ヘギを合技で下し、全ての試合で一本勝ちという圧倒的な内容で優勝を飾った。同大会の混合団体戦では、準決勝の日本戦で再び斉藤から小外刈で勝利を収めたものの、チームは敗退。3位決定戦のロシア戦でも技ありで勝利したが、チームは5位にとどまった。
2019年のヨーロッパジュニア選手権では2連覇を達成するも、世界ジュニア選手権では2回戦で日本の松村颯祐に裏投げで敗れ、2連覇はならなかった。しかし、混合団体戦では準決勝のロシア戦で勝利を収め、チームは3位に入賞した。
1.2. シニア時代
2019年、ザアリシビリはシニア国際大会での活躍を開始する。グランドスラム・バクーでIJFワールド柔道ツアー初優勝を飾り、シニアでの存在感を示した。同年、グランプリ・ブダペストでは準決勝で日本の影浦心に大外刈で敗れて3位、グランプリ・ザグレブでは決勝で日本の原沢久喜と対戦し優勝を飾った。
その後もザアリシビリは主要な国際大会でメダルを獲得し続けた。2020年のグランドスラム・ブダペストでは3位、U23ヨーロッパ選手権では2位となった。2021年にはグランドスラム・テルアビブとグランドスラム・トビリシで優勝を果たす。この年、世界選手権では5位、U23ヨーロッパ選手権の個人戦で3位、団体戦で優勝という実績を残した。2022年には地元開催のグランドスラム・トビリシで再び優勝した。
2023年も好調を維持し、グランドスラム・タシケントで3位、グランドスラム・トビリシで優勝。特にトビリシでは、準決勝で世界チャンピオンであるキューバのアンディ・グランダを破るなど、強豪選手を次々と退けた。同年、世界選手権の混合団体で銅メダル、ヨーロッパ競技大会の混合団体で金メダルを獲得。また、ワールドマスターズでも銅メダルを獲得した。
1.3. 特筆すべき大会と出来事
ザアリシビリのキャリアにおいて特筆すべき出来事の一つは、2019年のグランプリ・ザグレブ決勝での原沢久喜との対戦である。この試合はゴールデンスコア方式の延長戦にもつれ込み、一度はザアリシビリが小内刈の技ありで敗れたかに思われたが、この判定は取り消された。その直後にザアリシビリが両手で後帯を持った帯取返(IJFは引込返とみなした)で一本勝ちを収め、優勝した。
しかし、この試合の裁定は後に議論の対象となる。2020年1月にドーハで開催されたIJFレフェリング・セミナーにおいて、この帯取返の技は片手または相手の肩越しに背中や後帯を掴むクロスグリップによるものであり、ザアリシビリに指導が与えられるべきミスジャッジであったとされた。この見解がもし試合中に適用されていれば、ザアリシビリは指導3による反則負けとなり、原沢が優勝していたことになる。この出来事は、柔道における審判の判定の正確性と公平性の確保、そしてルールの解釈と適用における一貫性の重要性を浮き彫りにした。
2. 主要な戦績
ゲラ・ザアリシビリが国内外の主要な柔道大会で獲得したメダルや実績を以下に示す。
年 | 大会名 | 階級 | 成績 |
---|---|---|---|
2015 | ヨーロッパカデ選手権 | 90 kg超級 | 個人戦 3位 |
2015 | ヨーロッパカデ選手権 | 団体戦 | 優勝 |
2015 | ヨーロッパユースオリンピックフェスティバル | 90 kg超級 | 3位 |
2015 | 世界カデ選手権 | 90 kg超級 | 個人戦 7位 |
2015 | 世界カデ選手権 | 団体戦 | 3位 |
2016 | ヨーロッパカデ選手権 | 団体戦 | 優勝 |
2017 | ヨーロッパジュニア選手権 | 100 kg超級 | 個人戦 3位 |
2017 | ヨーロッパジュニア選手権 | 男子団体戦 | 2位 |
2017 | U23ヨーロッパ選手権 | 100 kg超級 | 3位 |
2018 | ヨーロッパジュニア選手権 | 100 kg超級 | 優勝 |
2018 | 世界ジュニア選手権 | 100 kg超級 | 優勝 |
2018 | 世界ジュニア混合団体戦 | 混合団体 | 5位 |
2019 | グランドスラム・バクー | 100 kg超級 | 優勝 |
2019 | グランプリ・ブダペスト | 100 kg超級 | 3位 |
2019 | グランプリ・ザグレブ | 100 kg超級 | 優勝 |
2019 | ヨーロッパジュニア選手権 | 100 kg超級 | 優勝 |
2019 | 世界ジュニア混合団体戦 | 混合団体 | 3位 |
2020 | グランドスラム・ブダペスト | 100 kg超級 | 3位 |
2020 | U23ヨーロッパ選手権 | 100 kg超級 | 2位 |
2021 | グランドスラム・テルアビブ | 100 kg超級 | 優勝 |
2021 | グランドスラム・トビリシ | 100 kg超級 | 優勝 |
2021 | 世界選手権 | 100 kg超級 | 5位 |
2021 | ヨーロッパ混合団体選手権 | 混合団体 | 優勝 |
2021 | U23ヨーロッパ選手権 | 100 kg超級 | 個人戦 3位 |
2022 | グランドスラム・トビリシ | 100 kg超級 | 優勝 |
2022 | グランプリ・ザグレブ | 100 kg超級 | 5位 |
2023 | グランドスラム・タシケント | 100 kg超級 | 3位 |
2023 | グランドスラム・トビリシ | 100 kg超級 | 優勝 |
2023 | 世界選手権 | 混合団体 | 3位 |
2023 | ヨーロッパ競技大会 | 混合団体 | 優勝 |
2023 | ワールドマスターズ | 100 kg超級 | 3位 |
3. IJF世界ランキング
国際柔道連盟(IJF)による世界ランキングにおいて、ゲラ・ザアリシビリは2099ポイントを獲得しており、2024年3月18日時点で14位に位置している。彼のキャリアを通じて、世界ランキングは彼の国際大会での成績と連動して変動してきた。彼は常にトップ層に位置し、世界中の強豪選手たちと競い合っている。