1. 初期生い立ちと背景
ジェイミー・ベルは、1986年3月14日にイングランドのティーズサイドにあるビリングハムで生まれた。彼の両親は彼が生まれる前に離婚しており、彼は母親のアイリーン・マットフィンと姉のキャスリンと共に育った。母親、祖母、叔母、そして姉妹が皆ダンサーであったため、その影響を受けて6歳でバレエを始め、9歳の時には演技の勉強も始めた。
1.1. 幼少期と教育
ベルはダラム州ビリングハムで育ち、ノースフィールド・スクールとステージコーチ・シアター・スクールで学んだ。家族にダンサーが多かった環境が、彼が幼い頃からダンスに興味を持つきっかけとなった。彼は姉のバレエのレッスンに同行するうちに、自身もダンスの世界に足を踏み入れた。
1.2. 俳優になったきっかけ
幼い頃から演技とダンスに深い関心を持っていたベルは、ナショナル・ユース・ミュージック・シアターのメンバーとして活動していた。そして1999年、2,000人以上の少年の中から、映画『リトル・ダンサー』の主人公ビリー・エリオット役に選ばれた。この役が彼の俳優としてのキャリアを本格的にスタートさせる契機となった。
2. 経歴
ジェイミー・ベルの俳優としてのキャリアは、2000年のデビュー作『リトル・ダンサー』での成功を皮切りに、幅広いジャンルの映画やテレビドラマで主要な役を演じ、国際的な評価を確立していった。
2.1. デビューと『リトル・ダンサー』
1999年、ベルは2,000人以上の候補者の中から、スティーブン・ダルドリー監督の映画『リトル・ダンサー』の主人公、バレエを志す11歳の少年ビリー・エリオット役に選ばれた。この役は、労働者階級の家庭で育ちながらもバレエに情熱を傾ける少年の姿を描いており、彼の演技は批評家から広く絶賛された。
14歳でこの作品に出演したベルは、数々の賞を受賞し、一躍その名を世界に知らしめた。主な受賞歴には、英国アカデミー賞 主演男優賞、英国インディペンデント映画賞新人俳優賞、イブニング・スタンダード英国映画賞 最も有望な新人賞、ロンドン映画批評家協会賞英国新人賞などがある。特に英国アカデミー賞主演男優賞は、史上最年少での受賞者の一人として記録された。しかし、アカデミー賞にノミネートされなかったことについては、一部で批判の声も上がった。また、2001年にはジッフォーニ映画祭の名誉審査員長を務めた。
2.2. 映画経歴
ベルは『リトル・ダンサー』での成功後、イギリス映画だけでなく、ハリウッドの大作にも多数出演し、その演技の幅広さを示している。
2.2.1. 2000年代の主な作品
2002年には、映画『デス・フロント』で若い兵士チャーリー・シェイクスピア役を、ディケンズの小説を映画化した『ディケンズのニコラス・ニックルビー』では障害を持つ召使いスマイク役を演じた。その後、2004年には『アンダートウ 決死の逃亡』で逃亡中のティーンエイジャーを、2005年には『ディア・ウェンディ』で銃を携えた平和主義者を、そして『キング・コング』では若いジミー役を演じた。
また、2005年にはグリーン・デイのミュージックビデオ「Wake Me Up When September Ends」にエヴァン・レイチェル・ウッドと共に出演した。2007年には『ハラム・フォ』でタイトルロールを演じ、英国インディペンデント映画賞主演男優賞にノミネートされた。2008年には、SF映画『ジャンパー』でグリフィン・オコナー役を、第二次世界大戦を舞台にしたドラマ『ディファイアンス』ではホロコースト中に1,200人の命を救ったビエルスキ兄弟の三男アザエル・ビエルスキ役を演じた。
2009年には、スティーヴン・スピルバーグ監督によるモーションキャプチャ映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』で、タンタンのタイトルロールを演じることが発表され、この作品は2011年に公開された。
2.2.2. 2010年代の主な作品
2010年代に入ると、ベルはさらに多くの映画に出演した。2011年には『第九軍団のワシ』でエスカ役を、『ジェーン・エア』でセント・ジョン・リバーズ役を演じた。2013年にはジェームズ・マカヴォイと共演した『フィルス』に出演し、ポン・ジュノ監督のSF映画『スノーピアサー』ではエドガー役を演じた。
2015年には、アメコミを原作とする『ファンタスティック・フォー』のリブート版でベン・グリム / ザ・シング役を演じた。しかし、この映画は批評的に失敗し、史上最悪のコミック映画の一つとして悪名高い作品となった。2022年、ベルはこの作品について「もう一度見る価値はないと思う。お金と時間の無駄だ」とコメントしている。
2017年には『6日間』と『リヴァプール、最後の恋』で主演を務め、『リヴァプール、最後の恋』での演技は彼に二度目の英国アカデミー賞 主演男優賞ノミネートをもたらした。2019年には、エルトン・ジョンの半生を描いた伝記ミュージカル映画『ロケットマン』でバーニー・トーピンの助演を務めた。
2.2.3. 2020年代以降の作品
2020年代に入ってからも、ベルは精力的に活動を続けている。2020年にはアニメ映画『クランストン・アカデミー: モンスター・ゾーン』でダニーの声優を務めた。2021年には『ウィズアウト・リモース』でロバート・リッター役を演じた。
2023年には、トム・ハーディ主演の西部劇『サラウンデッド』でトミー・ウォルシュ役を演じ、また批評家から高い評価を受けた映画『異人たち』では主人公アダムの父親役を演じた。この『異人たち』は、山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作としている。現在、『ローズブッシュ・プルーニング』の撮影が進められている。
2.3. テレビ経歴
ベルは映画だけでなく、テレビシリーズにも出演している。2000年にはITVの法廷ドラマ『クローズ・アンド・トゥルー』でマーク・シーディー役を演じた。
2014年から2017年にかけては、アメリカ合衆国独立戦争を舞台にしたAMCの歴史ドラマシリーズ『TURN: ワシントンのスパイ』で、主人公のエイブラハム・ウッドハル役を40話にわたり務め、主要な役どころを演じた。2022年にはテレビシリーズ『シャイニング・ガールズ』でハーパー・カーティス役を演じ、全8話に出演した。また、2026年にはBBCのテレビシリーズ『トゥー・メン』でナイアル役として主要キャストに加わることが発表されている。
2.4. その他の活動
映画やテレビドラマ以外にも、ベルはミュージックビデオやビデオゲームの声優としても活動している。
- ミュージックビデオ**:
- グリーン・デイ「Wake Me Up When September Ends」(2005年)
- ビデオゲーム**:
- 『キング・コング』(2005年) - ジミー役
- 『ジャンパー: グリフィンの物語』(2008年) - グリフィン・オコナー役
- プロデュース**:
- 『ティーン・スピリット』(2018年) - 製作総指揮
3. 私生活
ジェイミー・ベルは、過去に共演者との交際や結婚を経験しており、現在はニューヨークに居住している。熱心なサッカーファンであり、アーセナルFCの熱狂的なサポーターでもある。また、自身は無神論者であることを公言している。
3.1. 交際と結婚
2005年、ベルはサンダンス映画祭で出会ったアメリカ人女優エヴァン・レイチェル・ウッドと約1年間交際した。彼らがグリーン・デイのミュージックビデオ「Wake Me Up When September Ends」での共演がきっかけで出会ったという誤った情報が広まったが、ウッドは「その頃にはすでに交際していて、深く愛し合っていた」と述べている。一度破局したものの、2011年半ばに復縁が報じられ、2012年10月30日にカリフォルニア州で小規模な式を挙げて結婚した。しかし、2014年5月28日に二人は別居を発表し、その後離婚した。
2015年後半には、映画『ファンタスティック・フォー』で共演したケイト・マーラと交際を始め、2017年1月に婚約が報じられた。そして2017年7月17日、二人は結婚を発表した。
3.2. 子供
エヴァン・レイチェル・ウッドとの間には、2013年7月に男児が誕生した。2020年からは、この息子に関する親権争いが始まった。ウッドは、元婚約者のマリリン・マンソンから子供を守るためとしてロサンゼルスからナッシュビルへ転居したと主張したが、ベルはウッドの主張は信用できないとし、「彼女自身の都合で息子を私から引き離している」と反論した。2023年5月、ウッドは息子がロサンゼルスでベルと共に暮らす条件を受け入れ、自身は月に一度の長期週末と祝日に息子と会うことになった。
ケイト・マーラとの間には、2019年5月に女児が誕生した。さらに、2022年11月17日には、その前週に男児が誕生したことをマーラが自身のインスタグラムアカウントで発表した。
4. 受賞・ノミネート歴
| 年 | ノミネート作品 | 賞 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2000 | 『リトル・ダンサー』 | 英国アカデミー賞 主演男優賞 | 獲得 |
| 英国インディペンデント映画賞 新人俳優賞 | 獲得 | ||
| 放送映画批評家協会賞 若手俳優賞 | 獲得 | ||
| エンパイア賞 最優秀新人賞 | 獲得 | ||
| イブニング・スタンダード英国映画賞 最も有望な新人賞 | 獲得 | ||
| ロンドン映画批評家協会賞 英国新人賞 | 獲得 | ||
| ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 優秀若手俳優賞 | 獲得 | ||
| ヤング・アーティスト・アワード 国際映画最優秀若手男優賞 | 獲得 | ||
| シカゴ映画批評家協会賞 最も有望な俳優賞 | ノミネート | ||
| ヨーロッパ映画賞 最優秀男優賞 | ノミネート | ||
| オンライン映画批評家協会賞 最優秀ブレイクスルー演技賞 | ノミネート | ||
| サテライト賞 映画部門 主演男優賞 (ドラマ) | ノミネート | ||
| 全米映画俳優組合賞 映画部門 主演男優賞 | ノミネート | ||
| 全米映画俳優組合賞 映画部門 キャスト賞 | ノミネート | ||
| ティーン・チョイス・アワード 映画ブレイクアウト演技賞 | ノミネート | ||
| 2001 | 『リトル・ダンサー』 | MTVムービー・アワード 最優秀ダンス・シークエンス賞(ジュリー・ウォルターズと共同受賞) | 獲得 |
| 2002 | 『ディケンズのニコラス・ニックルビー』 | ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 最優秀キャスト賞 | 獲得 |
| ヤング・アーティスト・アワード 長編映画最優秀主演若手男優賞 | ノミネート | ||
| 2004 | 『アンダートウ 決死の逃亡』 | ヤング・アーティスト・アワード 長編映画最優秀主演若手男優賞 | 獲得 |
| 2005 | 『キング・コング』 | スパイク・ビデオ・ゲーム・アワード 最優秀キャスト賞 | 獲得 |
| 2007 | 『ハラム・フォ』 | BAFTAスコットランド賞 最優秀男優賞 | ノミネート |
| 英国インディペンデント映画賞 最優秀男優賞 | ノミネート | ||
| 2008 | 『ジャンパー』 | MTVムービー・アワード 最優秀ファイト賞(ヘイデン・クリステンセンと共同受賞) | ノミネート |
| 2013 | 『ニンフォマニアック』 | ボディル賞 最優秀助演男優賞 | ノミネート |
| 2016 | 『ファンタスティック・フォー』 | ゴールデンラズベリー賞 最低スクリーンコンボ賞(ケイト・マーラ、マイケル・B・ジョーダン、マイルズ・テラーと共同受賞) | ノミネート |
| 2018 | 『リヴァプール、最後の恋』 | 英国アカデミー賞 主演男優賞 | ノミネート |
5. 評価と批評
ジェイミー・ベルの演技は、キャリア初期から高い評価を受けてきた。特にデビュー作である『リトル・ダンサー』での演技は、批評家から広く絶賛され、彼に英国アカデミー賞 主演男優賞をもたらした。しかし、同作品での演技がアカデミー賞にノミネートされなかったことについては、一部の批評家から批判の声が上がった。
その後も、『ディファイアンス』での歴史上の人物の描写や、『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』でのモーションキャプチャ演技など、様々な役柄でその才能を発揮した。
しかし、2015年の映画『ファンタスティック・フォー』では、ベン・グリム / ザ・シング役を演じたものの、この作品自体が批評的に大失敗し、史上最悪のコミック映画の一つとして悪名高いものとなった。ベル自身も2022年にこの作品について「もう一度見る価値はないと思う。お金と時間の無駄だ」と率直なコメントを残している。
一方で、2017年の『リヴァプール、最後の恋』での演技は再び高い評価を受け、二度目の英国アカデミー賞 主演男優賞ノミネートを獲得した。また、2023年の映画『異人たち』も批評家から高い評価を受けている。総じて、彼の演技力は高く評価されており、作品の質に左右されずにその存在感を示し続けている。