1. 概要
トーマシュ・パヴェウ・カロラクは1971年6月21日にラドムで生まれたポーランドの俳優である。舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、その後、映画やテレビドラマでも数々の人気作品に出演し、広くその名を知られるようになった。また、音楽活動も行い、バンドを結成してシングルをリリースしている。2010年にはワルシャワに自身の劇場「Teatr IMKA」を設立し、その創設者および芸術監督を務めるなど、多方面で活躍している。彼のキャリアは、ポーランドの文化芸術への顕著な貢献として評価され、様々な賞を受賞している。
2. 生い立ちと教育
トーマシュ・カロラクは1971年6月21日、ポーランドのラドムで生まれた。彼の両親であるハンナとアンジェイ・カロラクは、ポーランド人民共和国時代にポーランド人民軍の将校(航空連隊およびミサイル飛行隊所属)であった。彼は幼少期をウストロニェ・モルスキェ、ワルシャワ、そしてミンスク・マゾヴィエツキなど各地で過ごし、ミンスク・マゾヴィエツキでは演劇クラブの活動に参加していた。
ワルシャワの演劇学校の入試に一度は失敗したものの、ワルシャワ大学でリハビリテーションの学位を取得した。その後、4度目の挑戦でクラクフの国立演劇学校に入学し、1997年に卒業した。学生時代にはセールスマンや建設作業員、さらにはボディーガードとしても働いていた経験を持つ。
3. 経歴
トーマシュ・カロラクは、演劇、映画、テレビ、音楽といった幅広い分野で活躍し、ポーランドのエンターテイメント界において多大な影響を与えてきた。自身の劇場の設立や、審査員、広報大使としての活動も行っている。
3.1. 演劇活動
カロラクはキャリアを通じて、ポーランド各地の様々な劇場で舞台活動を行ってきた。クラクフではユリウシュ・スウォヴァツキ劇場(1997年 - 1999年)やSTU舞台(1997年 - 1999年)で、ウッチではノヴィ劇場(1999年 - 2003年、2005年)で公演を行った。ワルシャワの劇場では、アセンブリー・プラント(2002年)、国立劇場(2003年 - 2004年)、バラエティ劇場(2005年)、M25アートセンター(2006年)などで舞台に立った。2003年には、オポーレで開催された第28回オポーレ演劇コンフロントで、ウッチのノヴィ劇場での演劇『The Water Hen』における演技で賞を受賞している。
3.2. 映画活動
カロラクの映画デビューは2000年の映画『ビッグ・アニマル』で、歩哨役を演じた。その後、数々の映画に出演し、幅広い役柄を演じている。
主な出演映画は以下の通り:
- 『ビッグ・アニマル』(2000年)
- 『テストステロン』(2007年)
- 『スプリンターズ』(2008年) - エルヴィス・プレスリー役
- 『クカ氏の忠告』(2008年)
- 『私のガールフレンドのための完璧な男』(2009年)
- 『ゲット・ロウ』(2009年)
- 『リスト・トゥ・M』(2011年、2017年版) - 主役メルキオール役
3.3. テレビ活動
彼は数々のテレビシリーズや番組に出演し、特にコメディ作品での人気が高い。2003年にはコメディテレビシリーズ『Bao-Bab, czyli zielono mi』に出演した。2004年から2007年にかけて放送された人気テレビシリーズ『Kryminalni』では、上級兵曹長シュチェパン・ジャウォダ役を演じ、人気を博した。また、テレビシリーズ『39 i pół』にはダレク・ヤンコフスキ役で3シーズンにわたって出演し、2008年から2009年、そして2019年にも同役を再演した。その他の主要なテレビドラマ出演作としては、『Ja to mam szczęście!』(2012年)のタデウシュ・ボニエフスキ役や、『Baron24』(2014年)のガソリンスタンドのオーナー、ミレク・バロン役などがある。
3.4. 音楽活動
カロラクは俳優業の傍ら、音楽活動にも積極的に参加している。「Pączki w Tłuszczu」というバンドを結成し、2013年2月1日にはデビューシングル「Tylko bądź」をリリースした。この曲の歌詞はパヴェウ・クキズが手掛けたもので、テレビシリーズ『Rodzinka.pl』のバレンタインデーエピソードでも使用された。同年の秋にはデビューアルバムのリリースが予定されており、マジック・レコーズから発売されることが発表された。
3.5. IMKA劇場
2010年3月、カロラクは自身の劇場「Teatr IMKA」をワルシャワに開館した。彼はこの劇場の創設者であり芸術監督を務めている。IMKA劇場は、ポーランドの現代演劇における重要な拠点の一つとなっている。
3.6. その他の活動
カロラクは俳優業や劇場運営のほかにも、様々な活動を行っている。2008年9月には、テレビ番組『Jak oni śpiewają』(『ソープスター・スーパースター』のポーランド版)で4人目の審査員を務めた。2010年には「Szymon Majewski Show」で「最も美しい男」の賞を受賞した。
2011年にはハーバライフ・トライアスロンポーランド選手権の長距離トライアスロン部門のアンバサダーを務め、トライアスロンのATチームのメンバーでもあった。2019年には『ビッグ・ブラザー』の番組にゲスト出演した。2020年には「TeleTygodnia」の「Telekamera」賞の「俳優」部門にノミネートされるなど、多岐にわたるメディアで存在感を示している。
4. 受賞歴と栄誉
トーマシュ・カロラクは、その演技力とポーランド文化への貢献が認められ、数々の賞や栄誉を受けている。
- 2009年 - テレカメリー賞(俳優部門)
- 2014年 - 文化功労章グロリア・アルティス(ブロンズメダル)
5. 私生活
トーマシュ・カロラクは、ポーランド人民軍の将校であったハンナとアンジェイ・カロラクの息子として生まれた。彼の私生活についてはあまり公にされていないが、ヴィオラ・コワコフスカとの間に息子がいることが知られている。
6. 評価と反響
トーマシュ・カロラクは、その多岐にわたるキャリアと才能によって、ポーランドの観客や批評家から高い評価を得ている。彼の演技は、コメディからドラマまで幅広いジャンルでその表現力が称賛されており、特にテレビシリーズでの人気は、彼が大衆に広く受け入れられている証拠である。自身の劇場「Teatr IMKA」を設立し、芸術監督を務めていることは、彼が単なる俳優に留まらない、文化的なリーダーとしての役割も果たしていることを示している。受賞歴やノミネートの多さも、彼の芸術的貢献と人気を裏付けている。