1. 概要
ヘクター・ノエシは、ドミニカ共和国出身の右腕投手で、MLBとKBOリーグ、CPBLでプレーした。ニューヨーク・ヤンキースとの契約からキャリアをスタートさせ、トミー・ジョン手術を乗り越えてメジャーデビューを果たした。その後、シアトル・マリナーズ、テキサス・レンジャーズ、シカゴ・ホワイトソックス、マイアミ・マーリンズ、ピッツバーグ・パイレーツ傘下でプレー。特にKBOリーグの起亜タイガース時代には20勝を挙げるなど、キャリアのハイライトを築いた。
2. 生涯と背景
2.1. 出生地と幼少期
ヘクター・ノエシは1987年1月26日にドミニカ共和国のバルベルデ州エスペランサ (ドミニカ共和国)で生まれた。
2.2. 初期キャリアと成長
2004年12月3日にニューヨーク・ヤンキースと国際フリーエージェントとして契約を結んだ。
2006年にルーキー級ガルフ・コーストリーグ・ヤンキースでプロデビューし、5試合に登板して防御率1.29を記録した。
2007年にはA級チャールストン・リバードッグスに昇格したが、肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けた。
2008年後半に復帰し、2009年にはA級チャールストンとA+級タンパ・ヤンキースで好投を見せた。同年5月18日の週にはサウス・アトランティックリーグの週間最優秀投手に選ばれ、ミッドシーズン・オールスターにも選出された。2009年オフには、ルール・ファイブ・ドラフトから保護するため、ヤンキースの40人枠ロースターに追加された。
2010年はA+級タンパでシーズンをスタートし、4月19日の週に週間最優秀投手に選ばれ、ミッドシーズン・オールスターにも選出された。その後、AA級トレントン・サンダーに昇格し、6月7日の週にはイースタンリーグの週間最優秀投手に選ばれた。最終的にAAA級スクラントン・ウィルクスバリ・レイルライダースまで昇格し、この年全体で14勝7敗、防御率3.20の成績を残した。同年7月にはオールスター・フューチャーズゲームの世界選抜チームにも選出された。
3. プロキャリア
3.1. アメリカメジャーリーグベースボール (MLB)
3.1.1. ニューヨーク・ヤンキース
2011年4月13日、故障者リスト入りしたルイス・アヤラに代わってキャリア初のメジャーリーグ昇格を果たしたが、登板機会がないまま4月22日にAAA級に降格した。約1ヶ月後に再昇格し、5月18日のボルチモア・オリオールズ戦でメジャーデビュー。この試合では救援投手として4イニングを無失点に抑え、延長戦での勝利に貢献した。
2011年9月21日には、背中の痛みで急遽登板を回避したフィル・ヒューズの代役として、メジャーで初の先発登板を果たした。
3.1.2. シアトル・マリナーズ
2012年1月13日、ヘスス・モンテロと共にシアトル・マリナーズへマイケル・ピネダとホセ・カンポスとのトレードで移籍した。
同年3月25日、東京ドームで行われた阪神タイガースとのプレシーズンゲームでは先発を務めたが、金本知憲に2点本塁打を許すなど5回3失点で敗戦投手となった。
2012年シーズンでは、岩隈久志やケビン・ミルウッドらと先発ローテーションの座を争い、岩隈が開幕ローテーションを外れた結果、先発ローテーション入りを果たした。しかし、シーズン前半戦で2勝11敗、防御率5.77と大きく負け越し、7月4日にAAA級タコマ・レイニアーズに降格した。これに代わり岩隈が先発ローテーションに加わった。
9月のセプテンバーコールアップで再びメジャー昇格し、中継ぎとして登板していたが、9月18日には再び先発。しかし1回と1/3で8安打7失点を喫する結果となり、彼の代わりにローテーション入りして好成績を残した岩隈の活躍も相まって、ノエシの評価は大きく低下した。
2013年シーズンは、シアトルとタコマを行き来する期間が多かった。
2014年2月27日にマリナーズと1年契約に合意し、開幕ロースター入りを果たした。4月2日のロサンゼルス・エンゼルス戦でシーズン初登板したが、1安打2失点と結果を残せず。翌日のオークランド・アスレチックス戦では同点の延長12回裏から登板し、先頭打者のココ・クリスプにサヨナラ本塁打を打たれ、敗戦投手となった。4月4日にDFA(指定選手枠から外れる)となった。

3.1.3. テキサス・レンジャーズ
2014年4月12日、トレードでテキサス・レンジャーズへ移籍。2日後にはマリナーズ戦でレンジャーズデビューを果たした。3試合に登板したが、4月22日にDFAとなった。
3.1.4. シカゴ・ホワイトソックス
2014年4月25日、ウェイバー公示を経てシカゴ・ホワイトソックスへ移籍した。移籍後は28試合(先発27試合)に登板し、8勝11敗、防御率4.39、166イニングで117奪三振を記録した。
2015年1月15日、ホワイトソックスと195.00 万 USDの1年契約に合意。開幕後は10試合に登板(先発5試合)したが、32.2イニングで0勝4敗、防御率6.89、22奪三振と振るわず、6月18日にDFAとなり、6月26日にマイナーリーグ契約でAAA級シャーロット・ナイツへ降格した。シャーロットでは11試合(先発10試合)に登板し、4勝4敗、防御率3.32、56奪三振を記録した。オフの10月5日にフリーエージェントとなった。
3.1.5. マイアミ・マーリンズ
2019年1月17日、マイアミ・マーリンズとマイナー契約を結んだ。シーズンは傘下のAAA級ニューオーリンズ・ベビーケークスで迎え、8月6日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りした。この年メジャーでは12試合(先発4試合)に登板し、0勝3敗、防御率8.46、24奪三振を記録した。レギュラーシーズン終了後の10月16日にマイナー契約でAAA級ニューオーリンズへ配属され、翌17日にフリーエージェントとなった。
3.1.6. ピッツバーグ・パイレーツ
2019年12月17日、ピッツバーグ・パイレーツとマイナー契約を結び、2020年のスプリングトレーニングに招待選手として参加することになった。
2020年7月8日、COVID-19パンデミックの影響で2020年シーズンをオプトアウト(出場辞退)することを発表した。同年11月2日にフリーエージェントとなった。
3.2. 韓国プロ野球 (KBOリーグ)
3.2.1. 起亜タイガース
2015年12月2日、韓国プロ野球の起亜タイガースと契約し、起亜での登録名は「ヘクター」となった。彼はKBOで2番目に高額な選手となった。
2016年シーズンは200イニングを超える投球回を記録し、二桁勝利を挙げた。同年12月1日には170.00 万 USDで再契約を締結し、2017年シーズンも起亜でプレーすることになった。
2017年シーズンは20勝5敗、防御率3.48を記録し、同僚の梁玹種と共に最多勝の個人タイトルを獲得した。また、勝率も.800を記録し、勝率王のタイトルも受賞した。2017年の韓国シリーズ第1戦に先発登板した。同年12月1日には、1年契約で200.00 万 USDでタイガースと再契約した。
2018年シーズンは11勝10敗を記録した。同年12月4日、外国人選手に対する税率引き上げを理由に、タイガースはノエシとの再契約を行わないことを発表し、退団した。
3.3. 台湾プロ野球 (CPBL)
3.3.1. 富邦ガーディアンズ
2020年12月24日、台湾プロ野球の富邦ガーディアンズと2021年シーズンに向けて50.00 万 USDの契約を結んだ。しかし、来台前の自主練習中に負傷したため、シーズン開幕前の2021年2月21日に契約解除となった。
4. 選手分析と評価
4.1. 投球スタイルと球種
ノエシは5種類の球種を投げる。主な球種はフォーシームで、平均球速は150 km/h (93 mph)程度で投球の約半分を占める。その他に、中盤の129 km/h (80 mph)台のスライダーとチェンジアップ、後半の113 km/h (70 mph)台のカーブボール、そしてツーシームも投げる。
5. 個人史とニックネーム
5.1. ニックネーム
金周燦に似た容姿から「黒柱賛(フクジュチャン、흑주찬韓国語)」というニックネームで呼ばれる。
過去にドーピング疑惑があったことから、「薬ター(ヤクター、약터韓国語)」とも呼ばれる。
6. 記録と受賞
- MiLB**
- オールスター・フューチャーズゲーム選出:1回(2010年)
- KBO**
- 最多勝:1回(2017年)
- 勝率王:1回(2017年)
- 背番号**
- 45(2011年 - 同年途中、2012年 - 2014年途中)
- 64(2011年途中 - 同年終了)
- 19(2014年途中 - 同年途中)
- 48(2014年途中 - 2015年、2019年、2021年)
- 43(2016年 - 2018年)
7. 批判と論争
「薬ター」というニックネームは、彼のキャリアにおけるドーピング疑惑に関連している。
8. 詳細情報
8.1. 年度別投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 故 意 四 球 | 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2011年 | NYY | 30 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 4 | .500 | 247 | 56.1 | 63 | 6 | 22 | 4 | 2 | 45 | 4 | 0 | 29 | 28 | 4.47 | 1.51 |
2012年 | SEA | 22 | 18 | 0 | 0 | 0 | 2 | 12 | 0 | 0 | .143 | 453 | 106.2 | 107 | 21 | 39 | 1 | 2 | 68 | 1 | 2 | 71 | 69 | 5.82 | 1.37 |
2013年 | 12 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 134 | 27.1 | 42 | 3 | 12 | 4 | 1 | 21 | 2 | 0 | 21 | 20 | 6.59 | 1.98 | |
2014年 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 6 | 1.0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 3 | 3 | 27.00 | 2.00 | |
TEX | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 28 | 5.1 | 11 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 7 | 7 | 11.81 | 2.43 | |
CWS | 28 | 27 | 1 | 0 | 0 | 8 | 11 | 0 | 0 | .421 | 699 | 166.0 | 167 | 27 | 54 | 1 | 2 | 117 | 8 | 1 | 88 | 81 | 4.39 | 1.33 | |
'14計 | 33 | 27 | 1 | 0 | 0 | 8 | 12 | 0 | 0 | .400 | 733 | 172.1 | 180 | 28 | 56 | 1 | 2 | 123 | 9 | 1 | 98 | 91 | 4.75 | 1.36 | |
2015年 | 10 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | .000 | 154 | 32.2 | 41 | 7 | 17 | 1 | 1 | 22 | 3 | 1 | 26 | 25 | 6.89 | 1.78 | |
2016年 | 起亜 | 31 | 31 | 3 | 1 | -- | 15 | 5 | 0 | 0 | .750 | 868 | 206.2 | 211 | 7 | 51 | 0 | 6 | 139 | 7 | 0 | 88 | 78 | 3.40 | 1.27 |
2017年 | 30 | 30 | 1 | 0 | 0 | 20 | 5 | 0 | 0 | .800 | 854 | 201.2 | 221 | 21 | 45 | 1 | 5 | 149 | 7 | 0 | 83 | 78 | 3.48 | 1.32 | |
2018年 | 29 | 29 | 1 | 0 | 0 | 11 | 10 | 0 | 0 | .524 | 753 | 174 | 209 | 25 | 36 | 2 | 4 | 137 | 4 | 1 | 102 | 89 | 4.60 | 1.41 | |
2019年 | MIA | 12 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | .000 | 124 | 27.2 | 30 | 7 | 14 | 0 | 1 | 24 | 2 | 0 | 26 | 26 | 8.46 | 1.59 |
MLB:6年 | 119 | 57 | 1 | 0 | 0 | 12 | 34 | 0 | 4 | .261 | 1845 | 423.0 | 463 | 72 | 160 | 11 | 9 | 303 | 21 | 4 | 271 | 259 | 5.51 | 1.47 | |
KBO:3年 | 90 | 90 | 5 | 1 | -- | 46 | 20 | 0 | 0 | .697 | 2475 | 641 | 582.1 | 53 | 132 | 3 | 15 | 425 | 18 | 1 | 273 | 245 | 3.79 | 1.33 |
- 2019年シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
8.2. 年度別守備成績
年 度 | 球 団 | 投手(P) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2011年 | NYY | 30 | 1 | 7 | 0 | 1 | 1.000 |
2012年 | SEA | 22 | 9 | 5 | 1 | 0 | .933 |
2013年 | 12 | 0 | 3 | 1 | 0 | .750 | |
2014年 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
TEX | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
CWS | 28 | 5 | 21 | 1 | 4 | .963 | |
'14計 | 33 | 5 | 21 | 1 | 4 | .963 | |
2015年 | 10 | 0 | 4 | 0 | 1 | 1.000 | |
MLB | 107 | 15 | 40 | 3 | 6 | .948 |
- 2018年度シーズン終了時