1. 人物
ボルチン・オレッグはカザフスタン出身のプロレスラーであり、幼少期からレスリングに打ち込み、日本での留学経験を通じて日本語を習得するなど、多岐にわたる背景を持つ。
1.1. 生い立ちと幼少期
ボルチン・オレッグは1993年2月10日、カザフスタンのリッダーで誕生した。彼はロシア人の血を引いている。11歳の時にはすでに身長が185 cmに達していたが、体が虚弱だったことを心配した両親の意向により、レスリングを始めた。
1.2. 教育と背景
ボルチン・オレッグは2013年に縁あって山梨学院大学へ留学し、日本での学業活動を始めた。この留学経験を通じて、日本語を流暢に話せるようになった。大学卒業後も日本に留まり、レスリングのキャリアを積んだ。
2. アマチュアレスリング時代
ボルチン・オレッグは、プロレスラー転向以前にアマチュアレスリング選手として国内外で輝かしい実績を収めた。
2.1. 初期トレーニングと大学での実績
ボルチンは2010年代初頭から日本でフリースタイルレスリングのトレーニングを積んでいた。2013年には山梨学院大学へ留学し、同年の全日本大学選手権フリースタイル120kg級で優勝を果たした。その後も2014年から2016年までフリースタイル125kg級で4連覇を達成するなど、圧倒的な強さを見せた。また、全日本大学グレコローマンレスリング選手権大会(2015年グレコローマン130kg級)や全日本学生レスリング選手権大会(2016年フリー125kg級、グレコローマン130kg級)、全日本社会人レスリング選手権大会(2017年フリー125kg級、グレコローマン130kg級)でも優勝するなど、フリースタイルとグレコローマンの両スタイルで実績を重ねた。
2017年には、のちに「TEAM NEW JAPAN」と改称されるブシロードクラブ(当時)に加入した。
2.2. 国内外の大会での活躍
2019年には地元カザフスタンで開催された世界選手権にカザフスタン代表として選出された。2020年にはカザフスタン国内レスリング選手権の125kg級で金メダルを獲得。翌2021年にはアジアレスリング選手権大会の125kg級で金メダルを獲得した。同年の世界レスリング選手権大会では5位入賞という結果を残している。
2.3. プロレスへの転向
ボルチン・オレッグは、2020年の東京オリンピック出場を目標としていたが、代表には選出されなかった。その後、2022年の世界選手権を最後にアマチュアレスリング選手としてのキャリアを終えることとなる。彼はブシロードクラブ加入時から、アマチュアレスリング引退後の進路として新日本プロレスへの入門を明言しており、2022年10月に新日本プロレスと契約を締結し、プロレスラーへの転向を果たした。
3. プロレスラー時代
ボルチン・オレッグは、2022年に新日本プロレスに入団して以来、その類まれな身体能力とレスリング技術を活かし、短期間で目覚ましい活躍を見せている。

3.1. デビューと初期の活動(2022年 - 2023年)
2022年10月10日、両国国技館で開催された「超実力派宣言」大会前に、永田裕志によって将来の新日本プロレス所属選手として紹介され、正式に入団を発表した。ボルチン自身は「可能な限り強く、そして有名になりたい」と抱負を語り、目標とする選手としてザ・ロックとブロック・レスナーの名前を挙げた。
プロレスラーとしての初試合は、2023年1月4日に東京ドームで開催されたWRESTLE KINGDOM 17のプレショーで行われた大岩陵平とのエキシビションマッチで、この試合は3分の時間切れ引き分けに終わった。同年4月2日には後楽園ホール大会「Road to Sakura Genesis」にて本格的なプロレスデビューを飾り、田口隆祐、海野翔太と組んでTMDK(ザック・セイバーJr.、ロビー・イーグルス、藤田晃生)組と対戦したが敗れた。
同年5月28日、「ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア30」の最終戦において、真壁刀義とタッグを組み中島佑斗、オスカー・ロイベ組を破り、プロ初勝利を挙げた。同年8月12日、G1 CLIMAX 33が行われた両国国技館大会の第0試合にて開催された「CSテレ朝チャンネル Presents ヤングライオン THREE CONSECUTIVE BATTLE」に出場。中島佑斗、オスカー・ロイベ、大岩陵平を相手に5分1本勝負の勝ち抜き戦で3連勝を飾り、NJPW WORLD認定TV王座への挑戦権を獲得した。当初は9月24日の後楽園ホール大会でザック・セイバーJr.に挑戦する予定だったが、ボルチンの左手首負傷により試合当日に欠場が発表され、大岩陵平が代役を務めることとなった。その後、10月24日の後楽園ホール大会でザック・セイバーJr.とのタイトルマッチに臨んだが、13分38秒でタップアウト負けを喫し、王座獲得には至らなかった。
3.2. 王座獲得とG1 CLIMAX出場(2024年)
2024年3月からは棚橋弘至、矢野通とのトリオで活動を開始。4月14日、台湾で開催された「Wrestling World 2024 in Taiwan」にてNEVER無差別級6人タッグ王座新王者決定トーナメントに出場し、決勝でHOUSE OF TORTURE(EVIL、SHO、金丸義信)組を破り、第27代王者組として自身初のタイトル戴冠を果たした。しかし、6月9日のDOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALLで辻陽太、BUSHI、高橋ヒロム組に敗れ、一度王座から陥落。だが、その1週間後の6月15日に北海きたえーるで行われた「NEW JAPAN SOUL 2024」にて直接リマッチを行い、勝利して第29代王者組として王座に返り咲いた。
同年の「G1 CLIMAX 34」には、本戦出場者決定トーナメントを勝ち上がって出場。1回戦で矢野通、2回戦で棚橋弘至、そして決勝戦でタイチを撃破し、Bブロックの出場枠を勝ち取った。本戦ではコスチュームと入場曲を新調し、KONOSUKE TAKESHITAなどから勝利を収めるなど健闘したが、最終的には4勝5敗でブロック敗退となった。
2024年末には、王座戦やG1 CLIMAXでの活躍が高く評価され、同年の東京スポーツプロレス大賞において新人賞を受賞した。また、プロレスリング・イラストレイテッドが発表する「PWI 500」の2024年度ランキングでは、世界中のシングルレスラーの中で357位にランクインした。
4. レスリングスタイルと得意技
ボルチン・オレッグは、そのアマチュアレスリングの経験に裏打ちされたパワフルなレスリングスタイルと、特徴的なフィニッシュムーブを持つ。
4.1. 主要フィニッシュムーブ
- カミカゼ
相手をファイヤーマンズキャリーの体勢で持ち上げ、そのまま前転しながらマットに投げ落とす技。試合を決める際の主要なフィニッシュムーブとして用いられる。
- バーディクト
相手を肩に抱え上げ、遠心力を使って相手を旋回させながら叩きつけるF5に類似する技。ボルチン・オレッグの場合は、カミカゼへの繋ぎ技として使用することが多い。
4.2. その他のシグネチャームーブ
- サイド・スープレックス
ボルチン・オレッグのサイド・スープレックスは、相手をクラッチした際に左右に振り回す独特の動作が特徴で、「ボルチンシェイク」と呼ばれる。その後、相手を後方へ投げ落とす技は「ボルチンズリフト」と称される。
5. 獲得タイトルと受賞歴
ボルチン・オレッグはアマチュアレスリングとプロレスの両分野で数々のタイトルと賞を獲得している。
5.1. アマチュアレスリングでの実績
| 大会名 | 年 | 階級 | 成績 |
|---|---|---|---|
| アジアレスリング選手権大会 | 2021 | 125kg級 | 金メダル |
| カザフスタン国内レスリング選手権 | 2020 | 125kg級 | 金メダル |
| 全日本大学レスリング選手権大会 | 2013 | フリー120kg級 | 金メダル |
| 2014 | フリー125kg級 | 金メダル | |
| 2015 | フリー125kg級 | 金メダル | |
| 2016 | フリー125kg級 | 金メダル | |
| 全日本大学グレコローマンレスリング選手権大会 | 2015 | グレコローマン130kg級 | 金メダル |
| 全日本学生レスリング選手権大会 | 2016 | フリー125kg級 | 金メダル |
| 2016 | グレコローマン130kg級 | 金メダル | |
| 全日本社会人レスリング選手権大会 | 2017 | フリー125kg級 | 金メダル |
| 2017 | グレコローマン130kg級 | 金メダル |
5.2. プロレスラーとしての実績
- 新日本プロレス
- NEVER無差別級6人タッグ王座 : 2回(第27代、第29代)(パートナーは棚橋弘至 & 矢野通)
- 東京スポーツプロレス大賞
- 新人賞(2024年)
- プロレスリング・イラストレイテッド(PWI)
- PWI 500 357位(2024年)
6. 入場テーマ曲
- 「BARS」
- 2024年のG1 CLIMAX 34より使用されているテーマ曲。
7. 名前表記について
ボルチン・オレッグの氏名については、公式に「ボルチン・オレッグ」と「オレッグ・ボルチン」という2つの形式が使用されることによる混同が見られることがある。彼の本名はОлег Игоревич Болтинオレッグ・イゴレヴィチ・ボルチンカザフ語であるが、新日本プロレスでは日本の命名慣習に従い、姓を先に、名を後に置く「ボルチン・オレッグ」をリングネームとして使用している。