1. 生い立ちと経歴
1.1. 出生と国籍
ラウル・アルカンタラは1992年12月4日にドミニカ共和国のバラオーナ州サンタ・クルス・デ・バラオナで生まれた。彼はドミニカ共和国国籍を持つ。
2. プロ経歴
ラウル・アルカンタラは、アメリカ合衆国のマイナーリーグからキャリアをスタートさせ、MLB、KBOリーグ、NPB、そしてメキシカンリーグと、複数の国のプロ野球リーグでプレーしてきた。
2.1. マイナーリーグ
メジャーリーグデビュー前、アルカンタラはボストン・レッドソックス傘下とオークランド・アスレチックス傘下のマイナーリーグで経験を積んだ。
2.1.1. ボストン・レッドソックス傘下
アルカンタラは2009年にボストン・レッドソックスと契約し、プロ入りを果たした。2010年にルーキー級ドミニカン・サマーリーグ・レッドソックスでプロデビュー。2011年にはルーキー級ガルフ・コーストリーグ・レッドソックスとクラスAショートシーズン級ローウェル・スピナーズでプレーした。
2.1.2. オークランド・アスレチックス傘下
2011年12月28日、アルカンタラはジョシュ・レディック、マイルズ・ヘッドと共に、アンドリュー・ベイリーとライアン・スウィーニーとのトレードでオークランド・アスレチックスへ移籍した。2012年シーズンはクラスAのバーリントン・ビーズでプレーした。2013年にはクラスAのベロイト・スナッパーズでプレーした後、シーズン途中にクラスAアドバンストのストックトン・ポーツへ昇格した。同年11月20日にはアスレチックスの40人枠に登録された。
2014年はダブルAのミッドランド・ロックハウンズで開幕を迎えたが、わずか3試合の登板でシーズンを終えるトミー・ジョン手術を受けることになった。2015年に復帰し、クラスAアドバンストのストックトンで15試合に先発登板し、防御率3.88を記録したが、勝ち星はなかった。オフシーズンにはドミニカ共和国のウィンターリーグであるエストレージャス・オリエンタレスでプレーした。2016年はダブルAでシーズンを開始し、7月20日にトリプルAのナッシュビル・サウンズへ昇格した。この年、2球団合計で25試合に先発登板し、9勝6敗、防御率3.58、105奪三振の成績を残した。
2.2. メジャーリーグベースボール (MLB)
アルカンタラは2016年9月5日にアスレチックスでメジャー初昇格を果たした。同日のロサンゼルス・エンゼルス戦で先発しメジャーデビューしたが、3回5失点で敗戦投手となった。メジャーでは5試合に先発登板したが、22.1イニングで9本の本塁打を打たれ、1勝3敗、防御率7.25、WHIP1.57と結果を残せなかった。
2017年はメジャーの開幕ロースター入りを果たしたが、3試合に登板して防御率16.71と振るわず、4月25日に戦力外通告(DFA)を受け、29日に40人枠を外れる形でAAA級ナッシュビルへ配属された。その後、9月5日にメジャー契約を結んで再びアクティブ・ロースター入りした。2018年はAAA級ナッシュビルで登板し、メジャーリーグへの昇格はなかった。同年10月5日にFAとなった。
2.3. KBOリーグ
アルカンタラはKBOリーグで2つのチームに所属し、特に斗山ベアーズで大きな成功を収めた。
2.3.1. KTウィズ
2018年11月18日、アルカンタラはKBOリーグのKTウィズと契約した。登録名は알칸타라アルカンタラ韓国語。2019年シーズンは11勝11敗を記録したが、シーズン後にKTウィズとの再契約には至らなかった。
2.3.2. 斗山ベアーズ(第1期)
2019年12月23日、アルカンタラはKBOリーグの斗山ベアーズと1年70.00 万 USDで契約した。2020年シーズンは5月5日に開幕投手を務めた。9月1日のハンファ・イーグルス戦では先発投手として7回無失点の好投を見せ、中継ぎの朴治国、李映河が無失点に抑えたことで、韓国プロ野球における同年初の全球団勝利を達成した。同年は20勝2敗、防御率2.54を記録し、リーグ最多勝投手となった。また、勝率.909を記録し、これは歴代の二桁先発勝利投手の中で最高勝率の記録であった(この記録は2023年にウィリアム・クエバスが12勝0敗で更新した)。シーズン後には崔東原賞(KBO版サイ・ヤング賞に相当)を受賞し、投手部門のKBOゴールデングラブ賞も受賞した。シーズン後にFAとなった。

2.3.3. 斗山ベアーズ(第2期)
2022年12月11日、アルカンタラは古巣の斗山ベアーズと契約し、3年ぶりにKBOリーグに復帰した。推定年俸総額は122.40 万 USD(年俸80.00 万 USD、出来高10.00 万 USD)と報じられた。彼は「幸せに野球をしていた斗山ベアーズに戻れて嬉しい」とコメントした。
2023年は斗山で31試合に先発登板し、13勝9敗、防御率2.67、192イニングで162奪三振を記録した。同年12月21日、アルカンタラは1年130.00 万 USDの契約で斗山ベアーズと再契約した。2024年シーズン序盤も斗山のエースとして活躍したが、負傷による1か月の実戦離脱後、7試合で33と1/3イニングしか投げられず、先発投手としての役割を十分に果たせなかったため、同年7月4日に成績不振を理由に放出された。彼の代替選手としてジョーダン・バラゾビックが斗山ベアーズに加入した。
2.4. 日本プロ野球 (NPB)
アルカンタラは日本プロ野球の阪神タイガースでもプレーした。
2.4.1. 阪神タイガース
2020年12月23日、アルカンタラは阪神タイガースと2年契約で合意したことが発表された。背番号は44。推定年俸は2.10 億 JPY。
2021年5月16日の読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)でNPB初登板初先発を果たし、6回5失点ながらも勝利投手となり、来日初勝利を挙げた。2020年東京オリンピック明けの後半戦からは中継ぎに配置転換され、主に7回のマウンドを任されるようになった。最終的に24試合に登板し、3勝3敗6ホールド、防御率3.49を記録した。
2022年2月にはキャンプ中に左足関節を捻挫した。3月31日には中継ぎとして一軍に復帰した。また、岩崎優の代役として、6月17日の横浜DeNAベイスターズ戦(阪神甲子園球場)で来日初セーブを記録した。しかし、夏場以降は不調に陥り、9月以降は二軍で過ごした。オフの12月2日に自由契約公示された。
2.5. メキシコリーグ
2.5.1. レオネス・デ・ユカタン
2025年2月15日、アルカンタラはメキシカンリーグのレオネス・デ・ユカタンと契約した。
3. 投球スタイルと統計
アルカンタラの投球スタイル、使用する球種、そして年度ごとの詳細な成績について記述する。
3.1. 投球スタイルと球種
アルカンタラは最速158km/h、平均150km/h台前半の速球(主にフォーシーム)を軸に投球を組み立てる。
2020年シーズンの投球データ(31先発・198.2回)によると、主な球種の配分と平均球速は以下の通りである。
球種 | 配分 (%) | 平均球速 (km/h) |
---|---|---|
フォーシーム | 51 | 152 km/h |
スライダー | 22 | 139 km/h |
スプリット | 14 | 137 km/h |
シンカー | 9 | 151 km/h |
カーブ | 2 | 128 km/h |
チェンジアップ | 1 | 138 km/h |
3.2. 年度別成績
年 度 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 | OAK | 5 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | .250 | 103 | 22.1 | 31 | 9 | 4 | 0 | 4 | 14 | 1 | 1 | 18 | 18 | 7.25 | 1.57 |
2017 | 8 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | .333 | 108 | 24.0 | 22 | 5 | 12 | 1 | 3 | 12 | 0 | 1 | 21 | 19 | 7.13 | 1.42 | |
2019 | KT | 27 | 27 | 0 | 0 | 0 | 11 | 11 | 0 | 0 | .500 | 724 | 172.2 | 189 | 15 | 27 | 0 | 8 | 100 | 2 | 0 | 80 | 77 | 4.01 | 1.25 |
2020 | 斗山 | 31 | 31 | 0 | 0 | 0 | 20 | 2 | 0 | 0 | .909 | 795 | 198.2 | 174 | 12 | 30 | 0 | 9 | 182 | 3 | 0 | 58 | 56 | 2.54 | 1.03 |
2021 | 阪神 | 24 | 7 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 0 | 6 | .500 | 243 | 59.1 | 55 | 6 | 14 | 1 | 0 | 48 | 3 | 0 | 25 | 23 | 3.49 | 1.16 |
2022 | 39 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 17 | .250 | 156 | 38.1 | 38 | 5 | 8 | 0 | 1 | 29 | 0 | 0 | 21 | 20 | 4.70 | 1.20 | |
MLB:2年 | 13 | 9 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 0 | 0 | .286 | 211 | 46.1 | 53 | 14 | 16 | 1 | 7 | 26 | 1 | 2 | 39 | 37 | 7.19 | 1.49 | |
KBO:2年 | 58 | 58 | 0 | 0 | 0 | 31 | 13 | 0 | 0 | .649 | 1519 | 371.1 | 363 | 27 | 57 | 0 | 17 | 282 | 5 | 0 | 138 | 133 | 3.22 | 1.13 | |
NPB:2年 | 63 | 7 | 0 | 0 | 0 | 4 | 6 | 1 | 23 | .400 | 399 | 97.2 | 93 | 11 | 22 | 1 | 1 | 77 | 3 | 0 | 46 | 43 | 3.96 | 1.18 |
- 2022年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
年 度 | 球 団 | 投手(P) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2016 | OAK | 5 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
2017 | 8 | 0 | 1 | 1 | 0 | .500 | |
2019 | KT | 27 | 8 | 24 | 2 | 0 | .941 |
2020 | 斗山 | 31 | 1 | 23 | 0 | 0 | 1.000 |
2021 | 阪神 | 24 | 2 | 10 | 0 | 1 | 1.000 |
2022 | 39 | 1 | 5 | 0 | 0 | 1.000 | |
MLB | 13 | 0 | 3 | 1 | 0 | .750 | |
KBO | 58 | 9 | 47 | 2 | 0 | .966 | |
NPB | 63 | 3 | 15 | 0 | 1 | 1.000 |
- 2022年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
4. 受賞歴と栄誉
アルカンタラはKBOリーグで複数のタイトルと表彰を受けている。
4.1. KBOでの受賞歴
- 最多勝利:1回(2020年)
- 最高勝率:1回(2020年)
- ゴールデングラブ賞(投手部門):1回(2020年)
- 崔東原賞:1回(2020年)
5. 私生活
アルカンタラの私生活に関する公開情報は限られている。彼の背番号は、アスレチックス時代に50(2016年 - 2017年)、KTウィズ時代に45(2019年)、斗山ベアーズ時代に43(2020年、2023年 - 2024年)、阪神タイガース時代に44(2021年 - 2022年)と変遷している。
阪神タイガースでの登場曲は、Chucky73の「Mi Ciudad」を使用していた(2021年 - )。
6. 記録
6.1. NPB
; 初記録
;; 投手記録
- 初登板・初先発登板・初勝利・初先発勝利:2021年5月16日、対読売ジャイアンツ9回戦(東京ドーム)、6回5失点で勝利投手
- 初奪三振:同上、1回表にゼラス・ウィーラーから見逃し三振
- 初ホールド:2021年8月15日、対広島東洋カープ13回戦(京セラドーム大阪)、8回表に4番手で救援登板、1回無失点
- 初セーブ:2022年6月17日、対横浜DeNAベイスターズ8回戦(阪神甲子園球場)、9回表に5番手で救援登板・完了、1回無失点
;; 打撃記録
- 初打席:2021年5月16日、対読売ジャイアンツ9回戦(東京ドーム)、3回表に今村信貴から一前犠打
- 初安打・初打点:2021年5月27日、対千葉ロッテマリーンズ3回戦(阪神甲子園球場)、2回裏に佐々木朗希から右前適時打
7. 外部リンク
- [https://npb.jp/bis/players/03505153.html NPB.jp 日本野球機構 選手情報]
- [https://www.milb.com/player/raul-alcantara-593417 Raul Alcantara stats] MiLB.com