1. 生涯と学歴
プロゴルファー金時宇の個人的な背景と学業の経歴は、彼のキャリアを理解する上で重要な要素である。
1.1. 出生と幼少期
金時宇は1995年6月28日、大韓民国のソウル特別市で生まれた。彼の幼少期の詳細については多く語られていないが、ゴルフとの出会いが早期であったことは、その後のアマチュアおよびプロキャリアの急速な発展に繋がったと考えられている。
1.2. 学歴
金時宇は以下の教育機関で学んだ。
- 陸民官中学校
- 新聖高等学校
- 延世大学校体育教育学科
2. アマチュアキャリア
金時宇はプロ転向前にアマチュアゴルファーとして目覚ましい活躍を見せた。特に2011年には大韓民国の男子ゴルフ国家代表に選出され、その才能を国内外に知らしめた。また、2012年には主要な国際アマチュアゴルフ大会であるアイゼンハワートロフィーにも韓国代表として出場している。
3. プロキャリア
金時宇のプロゴルファーとしてのキャリアは、若くしてPGAツアーに参戦し、いくつかの著名な大会で優勝を飾るなど、輝かしい実績に満ちている。
3.1. 初期プロ活動
金時宇は2012年にプロ転向した。同年にはPGAツアー予選会(Qスクール)で20位タイに入り、PGAツアーの出場権を獲得した。この時、彼は17歳5ヶ月6日であり、PGAツアー予選会を通過した選手としては史上最年少であった。しかし、PGAツアーの規定により、18歳になるまでPGAツアーの正式メンバーとはなれず、2013年シーズン途中からメンバーシップが認められた。
2013年シーズンにはPGAツアーで8試合に出場したが、7試合で予選落ちし、1試合で棄権した。同年はWeb.comツアーにも7試合出場し、4試合で予選を通過した。
2014年にはWeb.comツアーに本格的に参戦し、19試合中15試合で予選を通過した。特にクリーブランドオープンでは3位に入るなど、安定した成績を残した。
2015年7月にはストーンブレイクラシックでWeb.comツアー初優勝を飾った。この優勝は、Web.comツアー史上2番目に若い優勝記録であり、ジェイソン・デイに次ぐものであった。彼は2015年シーズンのWeb.comツアー賞金ランキングで10位に入り、2016年シーズンのPGAツアー出場権を獲得した。
3.2. PGAツアー活動と主な優勝
PGAツアー参戦後、金時宇は着実に成績を上げ、主要な大会で優勝を重ねた。
- 2016年のウィンダム選手権でPGAツアー初優勝を飾った。この時、彼は21歳で、そのシーズンのPGAツアーにおける最年少優勝者となった。
- 2017年5月14日、ザ・プレーヤーズ選手権で2度目のPGAツアー優勝を果たした。最終ラウンドをノーボギーの69で回り、イアン・ポールターとルイ・ウーストハイゼンに3打差をつけて勝利した。これにより、彼は2011年の崔京周に次ぐ2人目の韓国人優勝者となり、21歳での優勝は大会史上最年少記録であった。この優勝により、金時宇は世界ランキングを73位から28位に上げた。
- 2018年4月のRBCヘリテージでは、最終ラウンドの大部分で単独首位を維持したが、バックナインで3オーバーを記録し、プレーオフに突入した。プレーオフ3ホール目で小平智がバーディパットを決め、惜敗した。2016年のバーバソル選手権でも、プレーオフ4ホール目でアーロン・バッドリーに敗れている。
- 2021年1月24日、ザ・アメリカン・エキスプレスで3度目のPGAツアー優勝を達成した。最終ラウンドを8アンダー64で回り、パトリック・カントレーに1打差で勝利した。
- 2021年8月のウィンダム選手権では、72ホール終了時点で他の5選手と並び首位タイとなったが、プレーオフでケビン・キズナーに敗れた。
- 2023年1月15日、ソニーオープン・イン・ハワイで4度目のPGAツアー優勝を遂げた。最終2ホールで連続バーディを奪い、ヘイデン・バックリーに1打差で勝利した。
3.3. メジャー選手権出場記録
金時宇のメジャー選手権における出場記録は以下の通りである。
大会 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マスターズ・トーナメント | DNP | CUT | T24 | T21 | T34 | T12 | T39 | T29 | T30 |
全米プロゴルフ選手権 | CUT | WD | CUT | CUT | T13 | CUT | T60 | CUT | CUT |
全米オープン | DNP | T13 | CUT | CUT | CUT | T40 | CUT | T39 | T32 |
全英オープン | DNP | CUT | T67 | CUT | NT | DNP | T15 | CUT | T43 |
- DNP = 不出場
- CUT = 予選落ち
- WD = 途中棄権
- "T" はタイ(同順位)を示す
- NT = 開催なし(COVID-19パンデミックのため)
大会 | 優勝 | 2位 | 3位 | トップ5 | トップ10 | トップ25 | 出場数 | 予選通過 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マスターズ・トーナメント | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 8 | 7 |
全米プロゴルフ選手権 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 9 | 2 |
全米オープン | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 8 | 4 |
全英オープン | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 6 | 3 |
合計 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 31 | 16 |
- 連続予選通過最長記録 - 3回(2度)
- 連続トップ10入り最長記録 - 0回
3.4. ザ・プレーヤーズ選手権出場記録
金時宇のザ・プレーヤーズ選手権での記録は以下の通りである。
年 | 選手権 | 54ホール終了時点 | 優勝スコア | 差 | 2位 |
---|---|---|---|---|---|
2017年 | ザ・プレーヤーズ選手権 | 2打差のビハインド | -10 (69-72-68-69=278) | 3打差 | Louis Oosthuizenルイ・ウーストハイゼン英語, Ian Poulterイアン・ポールター英語 |
大会 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ザ・プレーヤーズ選手権 | T23 | 1 | T63 | T56 | C | T9 | WD | T27 | T6 |
- 1 = 優勝
- "T" はタイ(同順位)を示す
- WD = 途中棄権
- C = COVID-19パンデミックのため初日後に中止
3.5. 世界ゴルフ選手権出場記録
金時宇の世界ゴルフ選手権(WGC)シリーズ大会における出場記録と成績は以下の通りである。
大会 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手権 | DNP | T72 | DNP | DNP | DNP | DNP | ||
マッチプレー | DNP | T30 | R16 | T61 | NT1 | T56 | T18 | T17 |
招待選手権 | DNP | T50 | T10 | DNP | DNP | 65 | ||
チャンピオンズ | T63 | T69 | DNP | DNP | NT1 | NT1 | NT1 |
1 COVID-19パンデミックのため中止
- DNP = 不出場
- QF, R16, R32, R64 = マッチプレーで敗退したラウンド
- "T" はタイ(同順位)を示す
- NT = 開催なし
- 選手権と招待選手権は2022年から、チャンピオンズは2023年から廃止された。
3.6. 団体戦参加
金時宇は韓国代表として、以下の主要な団体戦にも参加している。
- プレジデンツカップ(インターナショナルチーム代表):2017年、2022年、2024年
- 2022年の大会では、出場した4試合中3勝1敗の成績を収めた。
- ワールドカップ(韓国代表):2018年
- 2022年アジア競技大会:男子団体戦で金メダルを獲得。
- 2021年開催の第32回東京オリンピック:男子ゴルフ韓国代表
4. プロ優勝記録
金時宇が達成したプロ大会での優勝記録は以下の通りである。
4.1. PGAツアー優勝
金時宇はPGAツアーで4勝を挙げている。
No. | 日付 | 大会 | 優勝スコア | 対パー | 優勝マージン | 2位 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2016年8月21日 | ウィンダム選手権 | 68-60-64-67=259 | -21 | 5ストローク | Luke Donaldルーク・ドナルド英語 |
2 | 2017年5月14日 | ザ・プレーヤーズ選手権 | 69-72-68-69=278 | -10 | 3ストローク | Louis Oosthuizenルイ・ウーストハイゼン英語, Ian Poulterイアン・ポールター英語 |
3 | 2021年1月24日 | ザ・アメリカン・エキスプレス | 66-68-67-64=265 | -23 | 1ストローク | Patrick Cantlayパトリック・カントレー英語 |
4 | 2023年1月15日 | ソニーオープン・イン・ハワイ | 67-67-64-64=262 | -18 | 1ストローク | Hayden Buckleyヘイデン・バックリー英語 |
PGAツアー プレーオフ記録 (0勝3敗)
No. | 年 | 大会 | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|---|---|
1 | 2016年 | バーバソル選手権 | Aaron Baddeleyアーロン・バッドリー英語 | 4番目の追加ホールでバーディを奪われ敗退 |
2 | 2018年 | RBCヘリテージ | Satoshi Kodaira小平智英語 | 3番目の追加ホールでバーディを奪われ敗退 |
3 | 2021年 | ウィンダム選手権 | Branden Graceブランデン・グレース英語, Kevin Kisnerケビン・キズナー英語, Kevin Naケビン・ナ英語, Adam Scottアダム・スコット英語, Roger Sloanロジャー・スローン英語 | 2番目の追加ホールでキズナーがバーディを奪い勝利 |
4.2. ウェブドットコムツアー優勝
金時宇はWeb.comツアーで1勝を挙げている。
No. | 日付 | 大会 | 優勝スコア | 対パー | 優勝マージン | 2位 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2015年7月19日 | ストーンブレイクラシック | 66-65-69-68=268 | -12 | プレーオフ | Jamie Lovemarkジェイミー・ラブマーク英語, Wes Roachウェス・ローチ英語 |
Web.comツアー プレーオフ記録 (1勝0敗)
No. | 年 | 大会 | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|---|---|
1 | 2015年 | ストーンブレイクラシック | Jamie Lovemarkジェイミー・ラブマーク英語, Wes Roachウェス・ローチ英語 | 最初の追加ホールでバーディを奪い勝利 |
5. スポンサーシップと提携
金時宇はプロゴルファーとしての活動を通じて、複数の企業や団体とスポンサー契約および提携関係を結んでいる。彼はかつてCJ O ShoppingやCJ大韓通運といった韓国の大手企業と提携していた。
6. 個人生活
金時宇の私生活に関する公開情報は限られているが、2022年にプロゴルファーの呉智鉉(오지현オ・ジヒョン韓国語)と結婚している。
7. 評価と影響
金時宇は、その若くしての成功と卓越した技術により、ゴルフ界において高い評価を受けている。
7.1. 主な業績と肯定的評価
金時宇は、PGAツアーにおける複数回の優勝、特にザ・プレーヤーズ選手権での最年少優勝という歴史的快挙によって、その才能と実力を証明した。彼のゴルフ技術は安定しており、特にプレッシャーのかかる場面でのプレーは高く評価されている。また、韓国代表としてアジア競技大会で金メダルを獲得するなど、国際舞台での貢献も大きい。これらの実績は、彼が単なる個人のスター選手に留まらず、韓国ゴルフ界、ひいてはアジアゴルフ界を代表する存在としての地位を確立していることを示している。
7.2. 批判と論争
金時宇のキャリアや行動に関して、特筆すべき批判や論争は広く報道されていない。彼は比較的穏健なイメージを保ち、そのゴルフパフォーマンスに焦点が当てられている。