1. 生涯と背景
ジャリン・ソロモンは、トリニダード・トバゴの出身ですが、そのキャリアはアメリカ合衆国での教育とも深く結びついており、家族は陸上競技に深い関わりを持っています。
1.1. 生い立ちと家族
ジャリン・ソロモンは1986年1月11日にトリニダード・トバゴで生まれた。彼はアメリカ合衆国ニューメキシコ州アルバカーキを出身地としている。彼の父親であるマイク・ソロモンは、トリニダード・トバゴ代表として活躍した元陸上競技選手で、400mを専門としていた。マイク・ソロモンは400mで45秒55(1980年)の自己ベストを持ち、1976年モントリオールオリンピック男子4×400mリレーで6位、1978年英連邦競技大会男子400mで4位、4×400mリレーで5位、1980年モスクワオリンピック男子400mと4×400mリレーで6位、1983年ヘルシンキ世界選手権男子800mで準決勝進出などの実績を持つ。ジャリンは親子二代にわたるオリンピック出場を果たした。
1.2. 教育
ジャリン・ソロモンはアメリカ合衆国のラ・クエバ高校(La Cueva High School英語)を卒業後、ニューメキシコ大学(University of New Mexico英語)に進学し、学業と競技活動を両立した。
2. 陸上競技でのキャリア
ジャリン・ソロモンは、400mおよび4×400mリレー種目において、長きにわたりトリニダード・トバゴのトップ選手として活躍した。彼は国内記録の樹立にも貢献し、数々の国際大会でメダルを獲得している。
2.1. 初期キャリアと国際大会デビュー
ジャリン・ソロモンの国際大会でのキャリアは、2007年の北中米カリブ選手権から始まった。同年にはパンアメリカン競技大会や世界選手権にも出場し、男子4x400mリレーで経験を積んだ。2010年には世界室内陸上競技選手権大会の400mに出場し、初の室内世界大会デビューを果たした。
2.2. 主要国際大会での主な成績
ジャリン・ソロモンは、キャリアを通じて多くの重要な国際大会でメダルを獲得した。特に4×400mリレーでは、トリニダード・トバゴチームの中心選手として活躍した。
- 2012年イスタンブール世界室内選手権**: 男子4×400mリレーでアンカーを務め、3分06秒85の当時のトリニダード・トバゴ記録を樹立し、自身初となる世界大会の銅メダルを獲得した。チームメンバーは、1走ラロンデ・ゴードン、2走レニー・クオ、3走ジェリーム・リチャーズであった。
- 2012年ロンドンオリンピック**: オリンピック初出場となった男子4×400mリレーで2走を務め、2分59秒40の当時のトリニダード・トバゴ記録樹立に貢献し、銅メダルを獲得した。このメダルは、4×400mリレーにおけるトリニダード・トバゴ勢にとって、1964年の東京オリンピック以来、48年ぶり史上2度目の快挙であった。チームメンバーは、1走ラロンデ・ゴードン、3走エイド・アレイン=フォート、4走ディオン・レンドレであった。
- 2014年グラスゴー英連邦競技大会**: 男子4×400mリレーで銅メダルを獲得した。
- 2014年ナッソー世界リレー**: 男子4×400mリレーで銅メダルを獲得した。
- 2015年トロントパンアメリカン競技大会**: 男子4×400mリレーで金メダルを獲得した。
- 2015年北京世界選手権**: 男子4×400mリレー予選で2走を務め、2分58秒67をマークして決勝進出に貢献した。チームは決勝で2位に入り、予選のみに出場したソロモンも銀メダルを獲得した。予選のメンバーは、1走レニー・クオ、3走ディオン・レンドレ、4走ラロンデ・ゴードンであった。
- 2016年ポートランド世界室内選手権**: 男子4×400mリレー決勝で1走を務め、3分05秒51のトリニダード・トバゴ記録を樹立して銅メダル獲得に貢献した。チームメンバーは、2走ラロンデ・ゴードン、3走エイド・アレイン=フォート、4走ディオン・レンドレであった。
- 2017年ロンドン世界選手権**: 男子4×400mリレー決勝で1走を務め、2分58秒12のトリニダード・トバゴ記録を樹立して金メダル獲得に貢献した。これは、オリンピックを含む4×400mリレーにおいて、トリニダード・トバゴ勢初の金メダル獲得という歴史的快挙であった。チームメンバーは、2走ジェリーム・リチャーズ、3走マシェル・セデニオ、4走ラロンデ・ゴードンであった。
2.3. 自己ベスト
ジャリン・ソロモンが屋外および室内競技で達成した自己最高記録は以下の通りである。
種目 | 記録 | 年月日 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
屋外 | ||||
200m | 20秒90 (+1.3) | 2013年4月6日 | アルバカーキ | |
300m | 33秒20 | 2011年5月22日 | プリーツハウゼン | |
400m | 44秒98 | 2014年7月19日 | ヒュースデン=ゾルダー | |
室内 | ||||
300m | 33秒21 | 2014年2月15日 | ニューヨーク | |
400m | 46秒23 | 2013年2月8日 | アルバカーキ | |
500m | 1分01秒84 | 2014年2月8日 | ボストン | |
600m | 1分16秒19 | 2013年2月16日 | ニューヨーク |
2.4. 主要大会成績一覧
ジャリン・ソロモンの主要大会における成績は以下の通りである。備考欄の記録は当時のものである。
年 | 大会 | 場所 | 種目 | 結果 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
2007 | 北中米カリブ選手権 | サンサルバドル | 400m | 6位 | 47秒09 | |
パンアメリカン競技大会 | リオデジャネイロ | 4x400mR | 4位 | 3分03秒60 (3走) | ||
世界選手権 | 大阪 | 4x400mR | 予選 | 3分02秒92 (3走) | ||
2009 | 中米カリブ選手権 | ハバナ | 400m | 予選 | 46秒89 | |
4x400mR | 6位 | 3分05秒17 (1走) | ||||
2010 | 世界室内選手権 | ドーハ | 400m | 予選 | 48秒37 | |
中米カリブ競技大会 | マヤグエス | 4x400mR | 3位 | 3分04秒07 (4走) | ||
2011 | 中米カリブ選手権 | マヤグエス | 4x400mR | 2位 | 3分01秒65 (2走) | |
世界選手権 | 大邱 | 4x400mR | 予選 | 3分02秒47 (2走) | ||
2012 | 世界室内選手権 | イスタンブール | 400m | 予選 | 47秒82 | |
4x400mR | 3位 | 3分06秒85 (4走) | トリニダード・トバゴ記録 | |||
オリンピック | ロンドン | 4x400mR | 3位 | 2分59秒40 (2走) | トリニダード・トバゴ記録 | |
2013 | 中米カリブ選手権 | モレリア | 400m | 優勝 | 45秒54 | |
4x400mR | 優勝 | 3分02秒19 (4走) | ||||
世界選手権 | モスクワ | 400m | 準決勝 | 45秒43 | ||
4x400mR | 6位 | 3分01秒74 (4走) | ||||
2014 | 世界室内選手権 | ソポト | 400m | 予選 | 46秒86 | |
世界リレー | ナッソー | 4x400mR | 3位 | 2分58秒43 (4走) | トリニダード・トバゴ記録 | |
英連邦競技大会 | グラスゴー | 400m | 6位 | 45秒82 | ||
4x400mR | 3位 | 3分01秒51 (2走) | ||||
2015 | 世界リレー | ナッソー | 4x400mR | 7位 | 3分03秒10 (2走) | |
パンアメリカン競技大会 | トロント | 400m | 5位 | 45秒20 | ||
4x400mR | 優勝 | 2分59秒60 (2走) | ||||
世界選手権 | 北京 | 4x400mR | 予選 | 2分58秒67 (2走) | 決勝進出。予選のみ出場(決勝のトリニダード・トバゴは2分58秒20で2位)。 | |
2016 | 世界室内選手権 | ポートランド | 4x400mR | 3位 | 3分05秒51 (1走) | トリニダード・トバゴ記録 |
オリンピック | リオデジャネイロ | 4x400mR | 予選 | 失格 (1走) | レーン侵害 | |
2017 | 世界リレー | ナッソー | 4x400mR | 4位 | 3分03秒17 (3走) | |
4x400mR | 7位 | 3分25秒49 (1走) | 男女混合 | |||
世界選手権 | ロンドン | 4x400mR | 優勝 | 2分58秒12 (1走) | トリニダード・トバゴ記録 | |
3. その他の活動
ジャリン・ソロモンは陸上競技以外にも活動を行っていた。2018年の夏には、アメリカンフットボールの元プロ選手が多数参加するフラッグフットボールチーム「ゴッドスピード」(Godspeed英語)で「フレックス」選手としてプレーした。このチームはアメリカン・フラッグフットボールリーグ(American Flag Football LeagueAFFL英語)に参加し、プロチーム部門のチャンピオンに輝いたが、最終試合ではアマチュアチャンピオンチームに敗れた。
4. 評価と貢献
ジャリン・ソロモンの陸上競技におけるキャリアは、トリニダード・トバゴのスポーツ界に多大な影響を与え、その発展に大きく貢献した。
4.1. スポーツへの貢献
ソロモンが獲得した数々の国際大会でのメダル、特にオリンピックや世界選手権でのリレーメダルは、トリニダード・トバゴの陸上競技の国際的な地位向上に貢献した。2012年ロンドンオリンピックでの4×400mリレー銅メダルは、48年ぶりのオリンピックリレーメダルという歴史的な成果であり、国内の陸上競技界に大きな活気をもたらした。さらに、2017年ロンドン世界選手権での4×400mリレー金メダルは、トリニダード・トバゴにとってオリンピック・世界選手権を通じて初の金メダルという快挙であり、国民のスポーツへの関心を高め、次世代の選手たちに大きな刺激を与えた。彼は、自身の記録更新だけでなく、チームメイトとの連携を通じて、トリニダード・トバゴの陸上競技が世界レベルで競い合えることを示し、国家スポーツの発展に寄与した。