1. 経歴
ジョー・ガンケルは、主にマイナーリーグでのキャリアを積み、その後日本プロ野球でその才能を開花させた。彼のプロとしての軌跡は、複数の球団を渡り歩きながら、様々な経験を積んだものだった。
1.1. マイナーリーグ時代
ジョー・ガンケルのプロ野球キャリアは、2013年から2019年までの7年間をマイナーリーグで過ごし、この期間に合計15球団を渡り歩いた。マイナーリーグでの給料が薄給であったため、オフシーズンにはニュージャージー州の高校で臨時教員として勤務し生計を立てていた。
1.1.1. ボストン・レッドソックス
2013年のMLBドラフトでボストン・レッドソックスから18巡目(全体533位)で指名され、同年6月19日に契約を結び、プロとしてのキャリアを開始した。まずルーキーリーグのガルフ・コーストリーグ・レッドソックスに配属され、同年7月6日にはA-級のローウェル・スピナーズに昇格した。2014年シーズンはA級のグリーンビル・ドライブで開幕を迎え、その後A+級のセーラム・レッドソックスに配属された。2015年5月にはセーラムからAA級のポートランド・シードッグスに昇格した。
1.1.2. ボルチモア・オリオールズ
2015年6月3日、アレハンドロ・デ・アザとの交換トレードでボルチモア・オリオールズへ移籍した。移籍後はAA級のボウイ・ベイソックスで17試合に先発登板し、8勝4敗、防御率2.59を記録し、104と1/3イニングで69奪三振を記録した。
2016年シーズンはボウイとAAA級のノーフォーク・タイズでプレーし、合計28先発で8勝14敗、防御率4.02、109奪三振、161イニングを記録した。同年11月18日、ルール・ファイブ・ドラフトから保護するため、オリオールズの40人枠に追加された。しかし、2017年4月7日にミゲル・カストロの獲得に伴い、DFAとなった。
1.1.3. ロサンゼルス・ドジャース
2017年4月10日、後日指名選手との交換でロサンゼルス・ドジャースへトレードされた。トレード後はAAA級のオクラホマシティ・ドジャースに配属されたが、わずか3試合の登板(9イニングで5失点、防御率4.00)後、同年4月25日にDFAとなった。
1.1.4. マイアミ・マーリンズ
2017年4月27日、ウェイバー公示を経てマイアミ・マーリンズに獲得され、2日後にはAA級のジャクソンビル・ジャンボシュリンプに配属された。しかし、同年5月10日には2017年で3度目のDFAとなり、ウェイバーで他球団から獲得されなかったため、同年5月12日にジャクソンビルにoutrightされた。その後、残りのシーズンをジャクソンビルとAAA級のニューオーリンズ・ベビーケークスで過ごした。

2018年シーズンはベビーケークスで開幕を迎え、シーズン全体をそこで過ごし、22登板で防御率3.03、63 Hで23失点を記録した。2019年シーズンもニューオーリンズでプレーし、A+級のジュピター・ハンマーヘッズでも2試合で無失点登板を果たした。ベビーケークスでは21試合(15先発)に登板し、8勝2敗、防御率3.20、87と2/3イニングで61奪三振を記録した。同年11月4日、シーズン終了後にフリーエージェントとなった。
1.2. 日本プロ野球(NPB)時代
マイナーリーグでの豊富な経験を積んだ後、ジョー・ガンケルは日本プロ野球へと活躍の場を移し、その才能を日本のファンの前で披露した。
1.2.1. 阪神タイガース
2019年12月15日、NPBの阪神タイガースと1年契約で合意したことが発表された。推定年俸は50.00 万 USD(約5500.00 万 JPY)。背番号は49。
2020年シーズンは開幕ローテーション入りを果たしたが、6月24日の対東京ヤクルトスワローズ戦(明治神宮野球場)でのシーズン初先発で4回3失点に終わり敗戦投手となり、試合後に二軍降格が決定した。二軍降格と同時にリリーフへ転向し、一軍に再昇格後は中継ぎとして11ホールドを記録した。シーズン終盤には再び先発としても起用され、最終的に28試合に登板し、防御率3.18、2勝4敗を記録した。シーズン終了後、球団から1年契約での残留が発表された。推定年俸は75.00 万 USD(約7880.00 万 JPY)。
2021年シーズンも先発として開幕ローテーションに加わり、開幕カード3試合目となる3月28日の対ヤクルト戦(明治神宮野球場)で先発として初の勝利を挙げた。これを皮切りに安定した投球を続け、6月24日の対中日ドラゴンズ戦(バンテリンドーム ナゴヤ)まで無傷の6連勝を達成した。7月14日の対横浜DeNAベイスターズ戦(阪神甲子園球場)で敗戦投手となり連勝は止まったものの、これはジーン・バッキーの9連勝(1964年)、トレイ・ムーアの7連勝(2003年)に次ぐ、球団外国人単独3位の開幕連勝記録となった。9月26日の対読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)では6回を1失点と好投して勝ち投手となり、所属球団を除くセ・リーグ全5球団から勝利を挙げたこととなった。このシーズンは20試合に登板し、9勝3敗、防御率2.95、113イニングで87奪三振を記録した。シーズン終了後、球団から1年契約での残留が発表された。推定年俸は150.00 万 USD(約1.70 億 JPY)。特に中日ドラゴンズに対しては3戦3勝、防御率0.46と無類の強さを誇り、「竜キラー」と呼ばれた。
2022年シーズンは、シーズン初登板となった4月3日の巨人戦で、初回に中田翔に満塁本塁打を打たれ4回4失点で降板した。6月2日の対埼玉西武ライオンズ戦では猛打賞を記録し、6対1で勝利投手となった。しかし、夏場以降は不調に陥り、8月以降は一軍登板なしに終わった。同年10月28日に阪神球団より2023年シーズンの契約を結ばないことが発表され、同年12月2日に自由契約公示された。
1.2.2. 福岡ソフトバンクホークス
2022年12月20日、福岡ソフトバンクホークスへの入団が発表された。背番号は27。
先発ローテーションの一角としての活躍が期待されたが、2023年シーズンは5試合に登板し、0勝1敗、防御率5.82と成績を残すことができなかった。同年12月1日に自由契約となった。
1.3. ミネソタ・ツインズ傘下時代
2024年1月31日、ミネソタ・ツインズとマイナー契約を結んだ。AAA級のセントポール・セインツで9試合(7先発)に登板したが、0勝5敗、防御率10.54、27と1/3イニングで11奪三振と振るわず、同年5月27日にツインズを解雇された。
2. 選手としての特徴
ジョー・ガンケルは身長196 cmの長身から繰り出すサイドスローが特徴の投手である。最速151 km/hのツーシームを主体に、スライダー、スプリット、シンカーなどを投げ分ける。ゴロを打たせる投球スタイルが持ち味のグラウンドボールピッチャーであり、マイナーリーグ通算では与四球率1.5という抜群の制球力を誇る。来日1年目には対右打者の被打率が.219であったのに対し、対左打者では.290と左打者を苦手とする傾向が見られたが、2年目には大きく改善し、左右打者で同程度の被打率を記録した。
彼の投球の際に体の芯がブレないフォームは、元プロ野球選手である中田良弘から「理想的」と評されている。
3. 人物
ジョー・ガンケルの愛称は「ガンク」だが、特に日本では「ガンケル先生」として親しまれた。この愛称は、彼が臨時教員としての勤務経験があることに加え、チームメイトに対して献身的なアドバイスを惜しまない人柄に由来する。マイナーリーグ時代の年俸はわずか1.50 万 USD(当時約162.00 万 JPY)と非常に薄給であったため、給料が発生しないオフの期間は、数学教師である妻の伝手で臨時教員として働き、生計を立てていた。
2022年6月16日には第一子となる娘が誕生したことを発表している。
4. 詳細情報
ここでは、ジョー・ガンケルのプロ野球キャリアにおける詳細な統計データと具体的な記録を提供する。
4.1. 年度別投手成績
年度 | 球団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | ホ | ル ド | H P | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ | ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020 | 阪神 | 28 | 6 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | 11 | .333 | 232 | 56と2/3イニング | 54 | 6 | 13 | 1 | 3 | 39 | 0 | 0 | 21 | 20 | 3.18 | 1.18 |
2021 | 20 | 20 | 0 | 0 | 0 | 9 | 3 | 0 | 0 | .750 | 465 | 113イニング | 99 | 10 | 24 | 1 | 3 | 87 | 0 | 0 | 39 | 37 | 2.95 | 1.09 | |
2022 | 16 | 16 | 1 | 0 | 1 | 5 | 5 | 0 | 0 | .500 | 372 | 92と1/3イニング | 80 | 6 | 16 | 1 | 3 | 52 | 1 | 0 | 32 | 28 | 2.73 | 1.04 | |
2023 | ソフトバンク | 5 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 80 | 17イニング | 21 | 3 | 5 | 0 | 2 | 11 | 0 | 0 | 14 | 11 | 5.82 | 1.53 |
通算:4年 | 69 | 45 | 1 | 0 | 1 | 16 | 13 | 0 | 11 | .552 | 1149 | 279イニング | 254 | 25 | 58 | 3 | 11 | 189 | 1 | 0 | 106 | 96 | 3.10 | 1.12 |
- 2023年度シーズン終了時
4.2. 年度別守備成績
年度 | 球団 | 投手 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2020 | 阪神 | 28 | 5 | 11 | 0 | 3 | 1.000 |
2021 | 20 | 7 | 19 | 1 | 1 | .963 | |
2022 | 16 | 4 | 22 | 6 | 3 | .813 | |
2023 | ソフトバンク | 5 | 0 | 4 | 0 | 0 | 1.000 |
通算 | 69 | 16 | 56 | 7 | 7 | .911 |
- 2023年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最多
4.3. 記録
; 初記録
;; 投手記録
- 初登板・初先発登板:2020年6月24日、対東京ヤクルトスワローズ2回戦(明治神宮野球場)、4回3失点で敗戦投手
- 初奪三振:同上、2回裏に嶋基宏から見逃し三振
- 初ホールド:2020年7月31日、対横浜DeNAベイスターズ7回戦(阪神甲子園球場)、8回表に3番手で救援登板、1回無失点
- 初勝利:2020年9月10日、対横浜DeNAベイスターズ15回戦(横浜スタジアム)、6回裏に4番手で救援登板、1回3失点
- 初先発勝利:2021年3月28日、対東京ヤクルトスワローズ3回戦(明治神宮野球場)、6回無失点
- 初完投勝利:2022年6月12日、対オリックス・バファローズ3回戦(京セラドーム大阪)、9回1失点
;; 打撃記録
- 初打席:2020年6月24日、対東京ヤクルトスワローズ2回戦(明治神宮野球場)、2回表にアルバート・スアレスから空振り三振
- 初安打:2020年10月3日、対読売ジャイアンツ18回戦(阪神甲子園球場)、3回表に畠世周から左中間二塁打
- 初打点:2022年6月2日、対埼玉西武ライオンズ3回戦(阪神甲子園球場)、4回裏に隅田知一郎から中越え適時二塁打
4.4. 背番号
- 49(2020年 - 2022年)
- 27(2023年)
4.5. 登場曲
- 「Nobody's Home」ONE OK ROCK(2020年 - )