1. 概要
ダワードルジ・トゥムルフレグは、モンゴルを代表する柔道家およびサンボ選手である。1990年9月29日にウランバートルで生まれ、12歳で柔道を始めた。柔道では、世界ジュニア柔道選手権大会で2度の銀メダルを獲得し、シニアではアジア選手権で2度の優勝、アジア競技大会で金メダルを獲得するなど、国際舞台で数多くの実績を残した。また、世界サンボ選手権大会では金メダリストとなるなど、サンボ競技でも高い能力を示した。彼は2012年のロンドンオリンピックと2016年のリオデジャネイロオリンピックにモンゴル代表として出場し、柔道の国際大会で長年にわたり活躍を続けた。
2. 経歴
ダワードルジ・トゥムルフレグの柔道家としてのキャリアは、ジュニア時代からシニア、そしてサンボ競技へと多岐にわたる。
2.1. 生い立ちと柔道との出会い
ダワードルジ・トゥムルフレグは1990年9月29日にモンゴルのウランバートルで生まれた。彼の身長は172 cmである。12歳の時に柔道と出会い、そのキャリアをスタートさせた。後に柔道で2段の段位を取得した。
2.2. ジュニア時代
トゥムルフレグはジュニア時代からその才能を発揮し、世界の舞台で活躍した。
- 2008年、2008年世界ジュニア柔道選手権大会の60kg級決勝でアルセン・ガルスチャンに敗れたものの、銀メダルを獲得した。
- 2009年、2009年世界ジュニア柔道選手権大会でも再び60kg級で決勝に進出したが、日本の山本浩史に内股で敗れ、2年連続で銀メダルに終わった。
- 2009年にはワールドカップ・ウランバートルで3位、ワールドカップ・スウォンで優勝を飾った。
2.3. シニア時代(-60kg級)
シニア大会デビュー後、トゥムルフレグは当初60kg級で活動した。
- 2010年、グランドスラム・パリ2010で5位、ワールドカップ・ウィーンで優勝、グランプリ・デュッセルドルフで3位、ワールドカップ・ウランバートルで優勝、ワールドカップ・スウォンで2位といった成績を収めた。
- 2011年の2011年アジア柔道選手権大会では個人戦で銀メダル、団体戦で銅メダルを獲得した。
- 同年、グランドスラム・モスクワ2011で銅メダル、ワールドカップ・ウランバートルで3位、グランプリ・アムステルダムで優勝、グランドスラム・東京2011で5位となった。
- 2011年の2011年世界柔道選手権大会では、初戦で山本浩史に隅落で敗れた。
- 2012年のグランプリ・デュッセルドルフでは5位、グランドスラム・モスクワ2012では銀メダルを獲得した。
- 2012年ロンドンオリンピックでは60kg級に出場したが、初戦で後に銅メダルを獲得するフェリペ・キタダイに技ありで敗れ、敗者復活戦に進むことなく大会を終えた。
2.4. シニア時代(-66kg級とオリンピック出場)
ロンドンオリンピック後、トゥムルフレグは階級を66kg級に上げた。
- 2012年のワールドカップ・ウランバートルとグランプリ・青島で優勝し、ワールドカップ・チェジュで2位となった。
- 2013年にはグランドスラム・パリ2013で銀メダル、ヨーロッパオープン・ブダペストで銀メダルを獲得。2013年アジア柔道選手権大会では個人戦で金メダル、団体戦で銅メダルに輝いた。
- さらに、グランドスラム・バクー2013で優勝、ワールドマスターズ2013で5位、グランプリ・ウランバートルで銅メダル、グランプリ・青島で銀メダルを獲得した。しかし、2013年世界柔道選手権大会では初戦でゲオルグリー・ザンタラヤに敗れた。
- 2014年、グランドスラム・パリで7位、グランプリ・デュッセルドルフで銅メダル、グランプリ・ウランバートルで銀メダルとなった。2014年アジア競技大会では決勝で日本の髙上智史を破り、金メダルを獲得した。
- 2015年にはグランプリ・デュッセルドルフで銀メダル、グランプリ・トビリシで優勝、グランプリ・サムスンで銀メダル、2015年アジア柔道選手権大会で銅メダル、ワールドマスターズ2015で銅メダル、グランプリ・ウランバートルで優勝と好調を維持した。
- 2015年世界柔道選手権大会では5位入賞、世界柔道団体選手権大会ではモンゴル代表として銅メダルを獲得した。
- 同年、グランドスラム・パリ2015で優勝、グランプリ・青島で銀メダル、グランドスラム・東京2015で銅メダルを獲得した。
- 2016年、グランドスラム・パリ2016で銀メダル、2016年アジア柔道選手権大会で個人戦銅メダル、団体戦銀メダル、ワールドマスターズ2016で銀メダルを獲得。
- 2016年リオデジャネイロオリンピックでは66kg級に出場。スライマン・ハマド、フド・ズールダニを破った後、準々決勝で後に金メダルを獲得するファビオ・バシレに敗れた。その後、敗者復活戦に回ったが、アントワーヌ・ブシャールに敗れて7位に終わった。
- 2017年にはグランプリ・トビリシで銀メダル、グランプリ・アンタルヤで銅メダル、グランドスラム・東京2017で7位となった。
- 2019年のグランプリ・ザグレブでは銅メダルを獲得している。
2.5. サンボ競技
トゥムルフレグは柔道だけでなく、サンボ選手としても国際的な実績を残している。
- 2014年に日本の成田市で開催された世界サンボ選手権大会では、68kg級で金メダルを獲得し、世界チャンピオンの栄冠を手にした。
2.6. 後期のキャリアとその他の事項
選手キャリアの後半には、彼の去就に関する報道があった。
- 2018年にはアラブ首長国連邦に国籍を変更したと報じられたが、同年11月に約1年ぶりに出場した国際大会であるグランプリ・タシュケントにはモンゴル代表として出場し、7位の成績を収めた。
3. 主な戦績とメダル記録
ダワードルジ・トゥムルフレグの主な柔道およびサンボの戦績とメダル記録を以下に示す。
開催年 | 大会名 | 階級 | 成績 | 備考 |
---|---|---|---|---|
ジュニア | ||||
2008 | 世界ジュニア | 60 kg | 銀 | 決勝でアルセン・ガルスチャンに敗戦 |
2009 | 世界ジュニア | 60 kg | 銀 | 決勝で山本浩史に敗戦 |
シニア(60 kg級) | ||||
2009 | ワールドカップ・ウランバートル | 60 kg | 銅 | |
2009 | ワールドカップ・スウォン | 60 kg | 金 | |
2010 | グランドスラム・パリ | 60 kg | 5位 | |
2010 | ワールドカップ・ウィーン | 60 kg | 金 | |
2010 | グランプリ・デュッセルドルフ | 60 kg | 銅 | |
2010 | ワールドカップ・ウランバートル | 60 kg | 金 | |
2010 | ワールドカップ・スウォン | 60 kg | 銀 | |
2011 | アジア選手権 | 60 kg | 銀 | 個人戦 |
2011 | アジア選手権 | 団体 | 銅 | 団体戦 |
2011 | グランドスラム・モスクワ | 60 kg | 銅 | |
2011 | ワールドカップ・ウランバートル | 60 kg | 銅 | |
2011 | グランプリ・アムステルダム | 60 kg | 金 | |
2011 | グランドスラム・東京 | 60 kg | 5位 | |
2012 | グランプリ・デュッセルドルフ | 60 kg | 5位 | |
2012 | グランドスラム・モスクワ | 60 kg | 銀 | |
2012 | ロンドンオリンピック | 60 kg | 2回戦敗退 | |
シニア(66 kg級) | ||||
2012 | ワールドカップ・ウランバートル | 66 kg | 金 | |
2012 | グランプリ・青島 | 66 kg | 金 | |
2012 | ワールドカップ・チェジュ | 66 kg | 銀 | |
2013 | グランドスラム・パリ | 66 kg | 銀 | |
2013 | ヨーロッパオープン・ブダペスト | 66 kg | 銀 | |
2013 | アジア選手権 | 66 kg | 金 | 個人戦 |
2013 | アジア選手権 | 団体 | 銅 | 団体戦 |
2013 | グランドスラム・バクー | 66 kg | 金 | |
2013 | ワールドマスターズ | 66 kg | 5位 | |
2013 | グランプリ・ウランバートル | 66 kg | 銅 | |
2013 | グランプリ・青島 | 66 kg | 銀 | |
2014 | グランドスラム・パリ | 66 kg | 7位 | |
2014 | グランプリ・デュッセルドルフ | 66 kg | 銅 | |
2014 | グランプリ・ウランバートル | 66 kg | 銀 | |
2014 | アジア大会 | 66 kg | 金 | 個人戦 |
2014 | アジア大会 | 団体 | 5位 | 団体戦 |
2015 | グランプリ・デュッセルドルフ | 66 kg | 銀 | |
2015 | グランプリ・トビリシ | 66 kg | 金 | |
2015 | グランプリ・サムスン | 66 kg | 銀 | |
2015 | アジア選手権 | 66 kg | 銅 | |
2015 | ワールドマスターズ | 66 kg | 銅 | |
2015 | グランプリ・ウランバートル | 66 kg | 金 | |
2015 | 世界選手権 | 66 kg | 5位 | |
2015 | 世界団体 | 団体 | 銅 | チーム戦 |
2015 | グランドスラム・パリ | 66 kg | 金 | |
2015 | グランプリ・青島 | 66 kg | 銀 | |
2015 | グランドスラム・東京 | 66 kg | 銅 | |
2016 | グランドスラム・パリ | 66 kg | 銀 | |
2016 | アジア選手権 | 66 kg | 銅 | 個人戦 |
2016 | アジア選手権 | 団体 | 銀 | 団体戦 |
2016 | ワールドマスターズ | 66 kg | 銀 | |
2016 | リオデジャネイロオリンピック | 66 kg | 7位 | |
2017 | グランプリ・トビリシ | 66 kg | 銀 | |
2017 | グランプリ・アンタルヤ | 66 kg | 銅 | |
2017 | グランドスラム・東京 | 66 kg | 7位 | |
2018 | グランプリ・タシュケント | 66 kg | 7位 | |
2019 | グランプリ・ザグレブ | 66 kg | 銅 | |
サンボ | ||||
2014 | 世界選手権 | 68 kg | 金 |
4. 評価と影響
ダワードルジ・トゥムルフレグは、モンゴル柔道界において国際的な知名度を高めた主要な選手の一人である。世界ジュニアでの2度の銀メダルを皮切りに、アジア選手権やアジア競技大会での優勝、グランドスラムやグランプリでの多数のメダル獲得は、彼の技術と持久力が国際レベルで通用したことを示している。特に、柔道での高い実績に加え、サンボの世界選手権でも金メダルを獲得したことは、彼の格闘家としての汎用性と才能の広さを証明するものであり、モンゴルの格闘技界に大きな影響を与えた。2度にわたるオリンピック出場も、彼がモンゴルの柔道界を牽引する存在であったことの証左であり、後進の選手たちに大きなインスピレーションを与えたと考えられる。
5. 関連項目
- 柔道家一覧
- 柔道
- サンボ (格闘技)
- オリンピックの柔道競技
- 世界柔道選手権大会
- アジア柔道選手権大会
- アジア競技大会柔道競技
- モンゴル国