1. 概要
ヘスス・ラファエル・ティノコ(Jesús Rafael Tinocoスペイン語)は、1995年4月30日にベネズエラのモナガス州マトゥリンで生まれたプロ野球選手(投手)である。右投右打。現在はMLBのマイアミ・マーリンズに所属している。
ティノコはトロント・ブルージェイズとアマチュアFA契約を結び、2012年にプロとしてのキャリアをスタートさせた。その後、コロラド・ロッキーズ、マイアミ・マーリンズ、テキサス・レンジャーズ、シカゴ・カブスといったMLB球団に所属し、NPBでは埼玉西武ライオンズでもプレーした。特にロッキーズ時代にはMLBデビューを果たし、レンジャーズ時代にはアーロン・ジャッジのア・リーグ新記録となる62号本塁打を献上したことでも知られる。日本でのプレー経験もあり、救援投手として活躍した。
2. 幼少期
ヘスス・ラファエル・ティノコは1995年4月30日にベネズエラのモナガス州マトゥリンで生まれた。彼の国籍はベネネズエラである。
3. 経歴
ティノコは2011年9月にアマチュアFAとしてトロント・ブルージェイズと契約を結び、プロとしてのキャリアを開始した。
3.1. トロント・ブルージェイズ傘下時代
ティノコは2012年にドミニカン・サマーリーグ・ブルージェイズでプロデビューを果たした。この年、12試合に登板(うち7試合で先発)し、0勝4敗、防御率4.14の成績を残した。シーズン終盤にはガルフ・コーストリーグ・ブルージェイズでも2試合に登板した。
2013年もガルフ・コーストリーグ・ブルージェイズでプレーし、12試合(9先発)で0勝5敗、防御率5.09を記録した。
2014年にはブルーフィールド・ブルージェイズでプレーし、13試合(12先発)で1勝9敗、防御率4.95という成績だった。
2015年シーズンはA級のランシング・ラグナッツで開幕を迎えた。
3.2. コロラド・ロッキーズ時代 (第1期)
2015年7月28日、ティノコはホセ・レイエス、ジェフ・ホフマン、ミゲル・カストロと共に、トロイ・トゥロウィツキーとラトロイ・ホーキンスとのトレードでコロラド・ロッキーズに移籍した。移籍後はアッシュビル・ツーリスツに配属され、シーズンを終えた。この年、2チームの合計で22試合に先発登板し、7勝6敗、防御率2.97を記録した。
2016年はアッシュビル・ツーリスツとモデスト・ナッツでプレーし、20試合の先発で合計3勝11敗、防御率6.86の成績を残した。
2017年はランカスター・ジェットホークスでプレーし、24試合の先発で11勝4敗、防御率4.67を記録した。シーズン終了後にはロッキーズの40人枠に追加された。
2018年はAA級のハートフォード・ヤードゴーツでプレーし、26試合の先発で9勝12敗、防御率4.79の成績だった。
2019年シーズンはAAA級のアルバカーキ・アイソトープスで開幕を迎えた。同年5月31日に初めてメジャーリーグに昇格し、その日のトロント・ブルージェイズ戦でMLBデビュー。リリーフとして1イニングを無失点に抑え、勝利に貢献した。

3.3. マイアミ・マーリンズ時代 (第1期)
2020年8月13日、ロッキーズはティノコをチャド・スミスとのトレードでマイアミ・マーリンズに放出した。しかし、8月30日にマーリンズからDFA(事実上の戦力外通告)となった。
3.4. コロラド・ロッキーズ時代 (第2期)
2020年9月3日、ティノコはウェイバー公示を経て、古巣のコロラド・ロッキーズに復帰した。しかし、同年11月20日に再びDFAとなり、ウェイバー公示を経て傘下のマイナーリーグチームに配属された。
2021年はマイナーリーグで開幕を迎えたが、7月28日に再びロッキーズとメジャー契約を結び、メジャーに昇格した。
3.5. テキサス・レンジャーズ時代 (第1期)
2021年12月3日、ティノコはテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結んだ。
2022年6月10日、COVID-19関連の故障者リスト入りした選手の代替として、レンジャーズのメジャー契約を結び昇格した。しかし、6月20日にはマイナーリーグに降格。その後、AAA級のラウンドロック・エクスプレスでプレーし、9月1日に再度メジャーリーグに昇格した。以降、中継ぎとして9試合連続無失点を記録するなど好投を続けたが、10月4日のニューヨーク・ヤンキース戦ではアーロン・ジャッジにア・リーグ新記録となるシーズン62号本塁打を献上した。同年11月10日には40人枠から外れ、FAを選択した。
3.6. 埼玉西武ライオンズ時代
2022年12月16日、ティノコは日本プロ野球の埼玉西武ライオンズと契約を結んだ。推定年俸は1.00 億 JPYの1年契約だった。
2023年3月31日のオリックスとの開幕戦(ベルーナドーム)で、10回から3番手として登板したが、最初の対戦打者である宗佑磨にいきなり決勝本塁打を打たれて敗戦投手となった。これはNPB史上82人目の「初登板で対戦した第1打者に被本塁打」であり、その中でも初球を被弾したのは10人目、さらにリリーフで敗戦投手となったのは史上初の記録である。
同年5月には月間防御率1.93と復調を見せたものの、8月には二軍降格も経験した。最終的に38試合に登板し、0勝3敗8ホールド、防御率2.83の成績を残した。しかし、シーズン終了後の契約延長はなく、10月31日に自由契約選手として公示された。
3.7. テキサス・レンジャーズ時代 (第2期)
2023年12月11日、ティノコは日本球界入りする前に所属していたテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結び、2024年のスプリングトレーニングに招待選手として参加することになった。
2024年5月23日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入り。AAA級のラウンドロック・エクスプレスで15試合に登板し、21回1/3イニングで防御率3.80、27奪三振を記録していた。しかし、レンジャーズでの9試合では10イニングを投げ、防御率8.10と振るわなかった。6月16日にDFAとなり、同月20日にはウェイバー公示を経てAAA級ラウンドロックへの降格を拒否し、FAとなった。
3.8. カンザスシティ・ロイヤルズ時代
2024年6月25日、ティノコはカンザスシティ・ロイヤルズとマイナー契約を結んだ。AAA級のオマハ・ストームチェイサーズで6試合に登板し、6回2/3イニングで防御率4.05、10奪三振を記録した。
3.9. シカゴ・カブス時代
2024年7月16日、ティノコは金銭トレードでシカゴ・カブスへ移籍した。同月19日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入り。カブスでは2試合に登板し、いずれも無失点に抑える好投を見せたが、7月27日にネイト・ピアーソンの加入に伴い再びDFAとなった。
3.10. マイアミ・マーリンズ時代 (第2期)
2024年7月30日、ティノコはウェイバー公示を経て、以前所属していたマイアミ・マーリンズへ移籍し、現在に至る。
4. 投球スタイル
ティノコの投球スタイルは、最速157km/hの速球に加え、平均154km/hの高速ツーシームが投球の約44パーセントを占めることが特徴である。その他にも、スライダーやカーブを操るなど、多彩な変化球も投げる。
5. 詳細情報
ここでは、ヘスス・ティノコのプロ野球における詳細な成績や記録、背番号の変遷について記述する。
5.1. 年度別投手成績
ティノコがMLBおよびNPBで記録した年度ごとの投球成績は以下の通りである。
年 度 | 球 団 | 試 合 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WH IP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | COL | 24 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | .000 | 161 | 36.0 | 36 | 12 | 22 | 1 | 1 | 28 | 1 | 0 | 23 | 19 | 4.75 | 1.61 |
2020 | MIA | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 15 | 5.0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 | 0.60 |
COL | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 17 | 3.2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 3 | 2 | 0 | 1 | 1 | 2.45 | 1.91 | |
'20計 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 32 | 8.2 | 3 | 0 | 7 | 0 | 0 | 6 | 2 | 0 | 1 | 1 | 1.04 | 1.15 | |
2021 | COL | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 10 | 1.1 | 5 | 3 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 | 5 | 33.75 | 4.50 |
2022 | TEX | 17 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | ---- | 84 | 20.2 | 12 | 2 | 10 | 0 | 1 | 10 | 0 | 0 | 5 | 5 | 2.18 | 1.06 |
2023 | 西武 | 38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 8 | .000 | 160 | 35.0 | 33 | 1 | 20 | 2 | 3 | 29 | 0 | 0 | 13 | 11 | 2.83 | 1.51 |
MLB:4年 | 48 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 6 | .000 | 287 | 66.2 | 56 | 17 | 40 | 1 | 3 | 52 | 3 | 0 | 34 | 30 | 4.05 | 1.44 | |
NPB:1年 | 38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 8 | .000 | 160 | 35.0 | 33 | 1 | 20 | 2 | 3 | 29 | 0 | 0 | 13 | 11 | 2.83 | 1.51 |
- 2023年度シーズン終了時点
5.2. 年度別守備成績
ティノコがMLBおよびNPBで記録した年度ごとの守備成績は以下の通りである。
年 度 | 球 団 | 投手(P) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2019 | COL | 24 | 3 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
2020 | MIA | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
COL | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
'20計 | 6 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 | |
2021 | COL | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- |
2022 | TEX | 17 | 1 | 2 | 0 | 1 | 1.000 |
2023 | 西武 | 38 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1.000 |
MLB | 48 | 4 | 6 | 0 | 1 | 1.000 | |
NPB | 38 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1.000 |
- 2023年度シーズン終了時点
5.3. 記録
ティノコがプロキャリアで達成した主な記録のうち、特にNPBにおける特筆すべき記録は以下の通りである。
5.3.1. NPB
; 初記録
- 初登板:2023年3月31日、対オリックス・バファローズ1回戦(ベルーナドーム)、10回表に3番手で救援登板、1回1失点で敗戦投手
- 初ホールド:2023年4月4日、対東北楽天ゴールデンイーグルス1回戦(楽天モバイルパーク宮城)、8回裏に2番手で救援登板、1回無失点
; その他の記録
- 初登板で対戦した第1打者に本塁打を被弾:2023年3月31日、対オリックス・バファローズ1回戦(ベルーナドーム)、10回表に宗佑磨に右越えソロ。
- これはNPB史上82人目の記録であり、そのうち初球を被弾したのは10人目である。
- また、リリーフ投手として初登板で敗戦投手となり、かつ対戦した第1打者に被本塁打を記録したのは史上初の事例であった。
5.4. 背番号
ティノコがプロキャリアで使用した背番号とその期間は以下の通りである。
- 32(2019年 - 2020年8月、2020年9月 - 2021年)
- 41(2020年8月 - 9月)
- 63(2022年)
- 54(2023年)
- 59(2024年 - 同年6月15日)
- 0(2024年7月19日 - 同年7月26日)
- 92(2024年7月31日 - )