1. 幼少期と初期活動
マット・トーマス・リーヴォルトは1987年10月7日にイリノイ州シカゴで生まれた。幼い頃から演技に興味を持ち、20歳になるまでには20以上の舞台劇に出演するほどであった。
1.1. 出生と教育
リーヴォルトはライオンズ・タウンシップ高校を卒業後、コロンビア・カレッジ・シカゴで演技(特にステージコンバット)を専攻し、2010年に学士号を取得した。この演劇教育は、後のプロレスラーとしてのキャリアにおいて、彼のキャラクターや表現スタイルに大きな影響を与えることになる。
1.2. 初期演劇活動
プロレスラーとしてデビューする以前のリーヴォルトは、演技の世界で活動していた。彼は舞台演劇を中心に数々のプロダクションに参加し、その経験は彼に卓越した表現力とカリスマ性を与えた。これらの初期の活動は、彼がプロレスラーとしてリング上で「アーティスト」としてのキャラクターを確立する上で重要な基盤となった。
2. プロレスラーとしてのキャリア
マット・トーマス・リーヴォルトは2009年にプロレスラーとしてデビューし、様々な団体で活動した。
2.1. インディーサーキット (2009-2012)
リーヴォルトは大学在学中にプロレスのトレーニングを開始し、2009年7月24日にIWA Mid-Southのイベントでマット・モリスのリングネームでプロレスデビューを果たし、TJパニックを破った。彼はシカゴ・スタイル・レスリング(CSW)などの団体で活動し、バリー・ライトと共に「ザ・ライト・スタッフ」というタッグチームを結成した。この時期には「マット・マーキー」というリングネームも使用していた。
2.2. WWE (2012-2020)
リーヴォルトは2012年初頭にWWEと契約し、育成団体に配属された。
2.2.1. 育成期間 (2012-2014)

リーヴォルトは2012年初頭にWWEと育成契約を締結し、育成組織であるFCWに配属され、エイデン・イングリッシュのリングネームを使い始めた。2012年3月1日、8人制タッグマッチでデビュー。同年3月15日にはFCWテレビの収録でテレビデビューを果たし、4月15日の放送ではオードリー・マリーと組んでリック・ビクターとペイジを相手とする男女混合タッグマッチに出場した。
2012年にWWEがFCWをNXTにブランド変更した後、イングリッシュのテレビデビューは6月27日にフル・セイル大学で収録されたNXTのリブート版エピソードで行われた。この試合でレオ・クルーガーに敗れたイングリッシュは、残りの期間は主にジョバーとして活動し、ブレイ・ワイアット、ライバック、ビッグ・E・ラングストンといったレスラーに敗れ続けた。
2013年9月18日のNXTエピソードで、マイケル・Q・ローリーを破り、初のテレビマッチでの勝利を収めた。その1週間後の9月25日のNXTエピソードでは、リングに向かう際にミュージカル『ペンザンスの海賊』の「少将の歌」をパロディ化した歌を披露した。その後、彼は試合前、試合中、試合後に歌うようになり、ヒールとしての地位を確立した。この年間を通じて、イングリッシュはジェイソン・ジョーダンやカマーチョといった選手に勝利を収めた。
2014年初頭、イングリッシュはコリン・キャサディと抗争を開始。1月1日のNXTエピソードでは歌唱力対決で敗れたが、その後の試合ではキャサディを数回破った。
2.2.2. ザ・ボードビレインズ (2014-2017)

2014年6月、イングリッシュはサイモン・ゴッチとタッグチーム「ザ・ボードビレインズ」を結成した。このコンビはブレイクとマーフィーとの抗争を通じてベビーフェイスへと転向した。抗争はNXT TakeOver: Brooklynで激化し、ザ・ボードビレインズはブレイクとマーフィーを破り、NXTタッグチーム王座を獲得した。
2015年11月11日のNXTエピソードで、ザ・ボードビレインズはダッシュ・アンド・ダウソンにタイトルを奪われ、61日間の王座保持期間を終えた。11月25日のNXTエピソードではダッシュ・アンド・ダウソンとの再戦に敗れ、12月23日のNXTエピソードではブレイクとマーフィー、ハイプ・ブロス、チャド・ゲイブルとジェイソン・ジョーダンを含む4ウェイタッグチームマッチに出場したが、ゲイブルとジョーダンが勝利した。2016年3月16日のNXTエピソードでは、後にアメリカン・アルファとして知られることになるゲイブルとジョーダンにNXTタッグチーム王座挑戦権争奪戦で敗れた。
2016年4月7日、ザ・ボードビレインズはSmackDownでヒールとしてメインロースターデビューを果たし、ルチャ・ドラゴンズを破った。4月11日のRawエピソードで、ザ・ボードビレインズはWWEタッグチーム王座の挑戦者決定トーナメントに参加することが発表され、その週のSmackDownでゴールダストとファンダンゴを1回戦で、4月18日のRawエピソードではウーソズを準決勝で破った。ペイバックでは、トーナメント決勝でエンツォ・アモーレとコリン・キャサディと対戦したが、アモーレが脳震盪を起こしたため試合はノーコンテストとなり、ザ・ボードビレインズが第1挑戦者となった。エクストリーム・ルールズでは、ニュー・デイを相手にタイトル戦に挑んだが敗れた。マネー・イン・ザ・バンクでは、エンツォ・アモーレとコリン・キャサディ、ルーク・ギャローズとカール・アンダーソンも参加したフェイタル4ウェイタッグチームマッチでタイトルに挑んだが、ここでも敗れた。
2016年7月19日の2016 WWEドラフトで、ザ・ボードビレインズは10巡目でSmackDownにドラフトされた。8月には、新設されたWWE・スマックダウン・タッグチーム王座のトーナメントがSmackDownのGMであるダニエル・ブライアンとコミッショナーであるシェイン・マクマホンによって設定され、トーナメントの勝者が初代王者となることになった。8月30日のSmackDownエピソードで、ザ・ボードビレインズはトーナメントの1回戦でハイプ・ブロスに敗れた。11月8日のSmackDownエピソードでは、サバイバー・シリーズのチームSmackDown出場権をかけた予選でブリーザンゴ(タイラー・ブリーズとファンダンゴ)に敗れた。2017年1月31日のSmackDownエピソードでは、ザ・ボードビレインズは他の5チームと共にアメリカン・アルファのオープンチャレンジに応じ、6チームによる乱闘がレフェリーと関係者によって制止される事態となった。エリミネーション・チェンバーでは、WWEスマックダウン・タッグチーム王座を賭けたタッグチーム・ターモイル・マッチに出場したが、ヒース・スレイターとライノに敗れ、敗退した。レッスルマニア33では、イングリッシュはアンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤルに出場したが、これはモジョ・ローリーが優勝した。2017年4月5日、イングリッシュのパートナーであるサイモン・ゴッチがWWEから解雇されたため、ザ・ボードビレインズは解散となった。
2.2.3. ルセフ・デイ (2017-2018)

タッグチームの解散後、イングリッシュは試合前に歌を歌うギミックに戻った。2017年5月、彼はタイ・デリンジャーと抗争に入り、バックラッシュで彼に敗れた。2017年7月23日のバトルグラウンドでは、再びデリンジャーと対戦し、今度は勝利を収めた。
9月、イングリッシュはランディ・オートンとの抗争中にルセフと同盟を結んだ。サマースラムでオートンに敗れたルセフは、イングリッシュとの試合後にオートンに再戦を挑んだ。イングリッシュはオートンの注意をそらし、ルセフが9秒で勝利を収めることに成功した。これはサマースラムでオートンがルセフを破ったのと同じタイムであった。翌週、ルセフは「ブルガリアの誇りセレブレーション」を開催し、故郷の市長から称賛された。イングリッシュはその記念に歌を披露した。歌の途中でオートンが登場し、イングリッシュとルセフの両者にRKOを放った。それ以降、観客はルセフの試合中に「ルセフ・デイ」とチャントするようになり、彼とイングリッシュはヴィランとしての立場にもかかわらず、会社で最も人気のあるアクトの一つとなった。
その年の残りの期間、ルセフとイングリッシュはタッグチームとして試合を行い、クラッシュ・オブ・チャンピオンズでニュー・デイ、チャド・ゲイブルとシェルトン・ベンジャミン、そして王者であるウーソズも参加したスマックダウン・タッグチーム王座を賭けたフェイタル4ウェイタッグチームマッチに出場したが、タイトル獲得には失敗した。2018年1月28日、イングリッシュは2018年のロイヤルランブルに出場したが、フィン・ベイラーによって排除された。レッスルマニア34では、アンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤルに出場したが、最初に排除された。この試合はマット・ハーディーが最終的に勝利した。イングリッシュはその後、頭を剃り上げてルセフのマネージャーとして再び登場し、ランディ・オートン、ジンダー・マハル、ボビー・ルードとのフェイタル4ウェイマッチでルセフをサポートしたが、ルセフはマハルにピンフォールを奪われタイトル獲得に失敗した。その後、夏にかけて、イングリッシュとルセフはファンに愛される存在として地位を確立した。
2018年7月、イングリッシュはルセフとの抗争を開始した。7月24日のSmackDown Liveのエピソードで、イングリッシュは誤ってラナをノックアウトしてしまった。その後の数週間、イングリッシュはアンドラーデ・シエン・アルマスとゼリーナ・ベガ、そしてルセフとラナの試合に干渉し、ヒールへと逆戻りした。この抗争は9月18日のSmackDown Liveのエピソードで激化し、イングリッシュはマイクでルセフを攻撃し、ラナとの不倫を示唆した。このストーリーラインは10月9日に、イングリッシュがラナに恋愛感情を抱いていたことを示すビデオが公開され、ラナがそれを拒否したことで終結した。10月23日のSmackDown Liveのエピソードで、ルセフがイングリッシュを破り、彼らの抗争は幕を閉じた。
2.2.4. 解説者活動とWWE退団 (2019-2020)
2019年1月、イングリッシュが205 Liveの解説チームに加わることが発表され、2019年1月22日からパーシー・ワトソンの後任として活動を開始した。同時期にはSmackDownにも引き続き出演していた。4月4日、レッスルマニア・アクセルでカシアス・オーノに敗れた。この試合は4月14日のWWE Worlds Collideで放送され、これがWWEでの彼の最後の試合となった。2019年11月1日には、マイケル・コールとコーリー・グレイブスの代役として、特別解説チームの一員としてSmackDownにゲスト解説者として登場した。2020年4月15日、COVID-19パンデミックによる予算削減のため、イングリッシュはWWEとの契約を解除された。
2.3. WWE退団後の活動 (2020-現在)
WWE退団後、リーヴォルトは他のプロレス団体やインディーサーキットで活動を再開した。
2.3.1. インディーサーキット (2020)
WWEを退団した後、彼は本名でインディーサーキットで活動を開始した。2020年9月17日、リーヴォルトはゼロ・レスリングでのインディーサーキットでの初試合を行い、ニック・ブルーベイカーを破った。
2.3.2. インパクト・レスリング / TNA (2021-現在)
2021年7月17日、Slammiversaryで、リーヴォルトのインパクト・レスリングへの登場を宣伝するVignetteが放送された。ホームカミングでは、リーヴォルトはホームカミング・トーナメントの一環としてデビューし、デオナ・パラッツォと組んで1回戦でヘルナンデスとアリシャ・エドワーズを、準決勝でマット・カルドナとチェルシー・グリーンを、そして決勝でディケイ(クレイジー・スティーブとローズマリー)を破り、ホームカミング・キング&クイーンとなった。
2022年初頭、リーヴォルトはディーロ・ブラウンの後任として解説チームにレギュラーで加わることになった。その後、彼は選手活動から引退し、解説者としての仕事に専念することを発表した。
2.3.3. 新日本プロレス (2021-2022)
NJPW Resurgenceで、リーヴォルトは新日本プロレス(NJPW)の英語解説チームの一員としてデビューした。また、2021年8月20日に放送されたNJPW STRONGでは「マット・モリス」のリングネームでアレックス・コグリンを相手に選手としてデビューした。
2.3.4. 選手引退
2022年8月、マット・トーマス・リーヴォルトはプロレスラーとしての公式な引退を発表し、以降は主に解説者としての役割に集中している。この引退により、彼はリング上での物理的な負担から解放され、より多くの時間を実況・解説の仕事に充てることが可能になった。
3. プロレススタイルとキャラクター
エイデン・イングリッシュは、その演技のバックグラウンドを活かし、「アーティスト」としてのキャラクターを確立した。試合中に歌を歌ったり、オペラ調の入場を披露したりすることで、観客の注目を集めた。彼のキャラクターは時にヒールとして、またルセフ・デイのようにベビーフェイスとしても人気を博した。
3.1. 主な得意技とフィニッシュ技
エイデン・イングリッシュは、以下の技を主に得意技およびフィニッシュ技として使用した。
- ザッツ・ア・ラップ
- ダイビングセントーンボム。主にフィニッシュ技として使用された。
- ディレクターズカット
- シットアウトコブラクラッチからのサイドスラム、またはリバース・フルネルソンからのSTOとして使用された。
- ワーリング・ダーヴィッシュ
- スウィンギング・ネックブリーカー。サイモン・ゴッチとのタッグチーム「ザ・ボードビレインズ」の合体技としては、ゴッチがヨーロピアン・アッパーカットで相手を怯ませた後、イングリッシュがこの技を決める連携で使用された。
- ダイビング・フロッグ・スプラッシュ
- ジャンピング・バックキック
- ランニング・ドロップキック
- シングルアンダーフック・フロント・フェースロック・ドロップ
- シットアウト・ファイヤーマンズ・キャリー・スパインバスター
- レッグドロップ
- スウィンギング・ネックブリーカー
3.2. リングネームとニックネーム
プロレスラーとしてのキャリアにおいて、マット・トーマス・リーヴォルトは以下のリングネームとニックネームを使用していた。
- リングネーム
- エイデン・イングリッシュ(Aiden English)
- マット・モリス(Matt Morris)
- マット・マーキー(Matt Marquee)
- ニックネーム
- "ジ・アーティスト" (The Artiste)
- "ザ・ドラマ・キング" (The Drama King)
- "ザ・マン・オブ・ソフィスティケーション" (The Man of Sophistication)
- "ザ・シェイクスピア・オブ・ソング" (The Shakespeare of Song)
3.3. 入場曲
エイデン・イングリッシュは、キャリアを通じて様々な入場曲を使用し、彼のキャラクターを際立たせた。
- Toreador Song「闘牛士の歌」フランス語 by ジョルジュ・ビゼー (インディーサーキット)
- Blast Out英語 by Quantum Tracks (NXT)
- A Quicker Accomplishment英語 by Art Test Music (NXT; サイモン・ゴッチとのチームで使用)
- Voix De Villeフランス語 by CFO$ (NXT/WWE; サイモン・ゴッチとのチームで使用)
- Vau De Vireフランス語 by CFO$ (NXT/WWE; サイモン・ゴッチとのチームで使用)
- Bel Cantoイタリア語 by CFO$ (WWE; 現在使用中)
- Рев на лъвът「獅子の咆哮」ブルガリア語 by CFO$ (WWE; ルセフとのチームで使用)
4. その他の活動
リーヴォルトはプロレス活動以外にも、様々なメディア関連の活動を行っている。彼はエイデン・イングリッシュとして、以下のビデオゲームに登場している。
- WWE SuperCard
- WWE 2K16
- WWE 2K17
- WWE 2K18
- WWE 2K19
彼はザビア・ウッズのYouTubeチャンネル「UpUpDownDown」に頻繁に出演し、他のプロレスラーたちと一緒にビデオゲームをプレイしていた。
プロレスラーとしてのキャリア以外にも、イングリッシュはソーシャルメディアで「Rough Cuts」というキャンペーンを立ち上げた。これは、人々が未完成のアート作品をTwitterやInstagramで共有するというものである。また、2018年には「Wrestling With Whiskey」プロジェクトを開始し、自身のYouTubeチャンネルでウィスキーのテイスティングやQ&Aなどの動画を投稿している。彼は「DramaKingMatt」というユーザー名でTwitchでの配信も行っている。
5. 私生活
2014年12月、リーヴォルトは同じくプロレスラーのシャウル・ゲレロと婚約した。シャウル・ゲレロはエディ・ゲレロとヴィッキー・ゲレロの娘であり、この結婚によりリーヴォルトはゲレロ・ファミリーの一員となった。二人は2016年1月3日にフロリダ州で結婚式を挙げた。
リーヴォルトはザ・ベスト・ショー・ウィズ・トム・シャープリングのファンであり、2011年4月と5月には同番組がWFMUで放送されていた頃に電話で番組に参加したことがある。
6. 獲得タイトルと功績
マット・トーマス・リーヴォルトは、プロレスラーとしてのキャリアを通じて以下のタイトルと功績を獲得した。
- インパクト・レスリング
- 2021 ホームカミング・キング&クイーン・トーナメント - デオナ・パラッツォと獲得
- プロレスリング・イラストレイテッド
- 2016年 PWI 500においてシングルレスラー部門で171位にランクイン
- WWE
- NXTタッグチーム王座 : 1回 - サイモン・ゴッチと獲得
- WWE Tag Team Championship #1 Contender's Tournament (2016) - サイモン・ゴッチと獲得