1. 概要
本記事のテーマである伊藤将司は、日本のプロ野球界で活躍する阪神タイガース所属の左腕投手である。彼は、地元の少年野球チームから社会人野球を経てプロ入りし、2023年にはチームをリーグ優勝と日本一に導くなど、その着実な成長と貢献が注目されている。彼のキャリアは、努力とチームへの献身が結実するプロセスを示しており、プロ野球選手としての彼の歩みは、多くの若手選手にとっての模範となっている。本稿では、彼の幼少期からの経歴、プロでの実績、投球スタイル、人物像、そして記録と表彰について詳細に記述する。
2. 経歴
伊藤将司の野球キャリアは、幼少期の少年野球チームでの活動から始まり、学生野球、社会人野球を経て、プロ野球選手として阪神タイガースで活躍するまでの道のりを辿る。
2.1. プロ入り前
プロ野球選手となる以前の、学生時代から社会人野球チームでの野球経歴を網羅する。
2.1.1. 学生時代
伊藤は千葉県山武郡横芝光町で生まれ育ち、地元の横芝光町立横芝小学校に入学すると同時に少年野球チーム「横芝フェニックス」に入団し野球を始めた。小学2年からは本格的に投手を務めるようになる。
横芝光町立横芝中学校時代は同校の軟式野球部に所属し、3年生の春には選抜チームの「オール山武」で県大会優勝を経験したほか、千葉県選抜にも選出された。彼が軟式野球部に所属していた当時、2学年下には後にプロ入りする早川隆久がいた。
高校は隣県の神奈川県にある横浜高等学校に進学。1年秋からベンチ入りし、2年春にはチームのエースとなる。2年夏の第95回全国高等学校野球選手権大会に出場し、丸亀高等学校との初戦(2回戦)に先発登板し、14奪三振を奪い1失点に抑える完投勝利を収めた。しかし、この試合での登板過多により肩に負担がかかり、3回戦では後にプロ入りする髙橋光成を擁する前橋育英高等学校を相手に先発したが、6回5失点で敗退した。3年春もエースとして第86回選抜高等学校野球大会に出場したものの、八戸学院光星高等学校との1回戦では、3度の登板で合計7失点を喫し初戦敗退となった。同年夏は神奈川県大会準決勝で東海大学付属相模高等学校に敗れ、3季連続の甲子園出場を逃した。横浜高等学校の同学年には淺間大基、髙濱祐仁、渡邊佳明がおり、2学年下には藤平尚真、石川達也、2学年上には柳裕也がいた。
高校卒業後は千葉に戻り、国際武道大学に進学。1年春から救援投手としてベンチ入りした。肩や肘への負担を考慮し、1年時は1試合1イニング限定での起用にとどめられた。2年からは先発に定着し、以降はチームのエースとして活躍した。2年春には3完封を含む6勝を挙げ、夏の第40回日米大学野球選手権に出場する日本代表に選出された。3年春にはリーグMVP、最多勝など4冠を獲得し、大学選手権準優勝にも貢献した。また、夏の第29回ユニバーシアードに出場する日本代表にも2年連続で選出され、日本チームの優勝に貢献した。大学リーグ戦では通算50試合に登板し、24勝5敗、防御率1.92、92奪三振の成績を残した。しかし、4年春に左肘を故障した影響もあり、その年のドラフト会議では指名漏れとなった。国際武道大学での野球部では、3学年先輩に鈴木康平、1学年後輩に勝俣翔貴と豊田寛がおり、豊田とはプロで再びチームメイトとなった。
2.1.2. 社会人野球時代
大学卒業後、プロからの指名がなかった伊藤は、JR東日本に入社し、社会人野球でプレーすることになった。1年目から主に先発として公式戦に出場し、第90回都市対抗野球大会に出場。NTT西日本との3回戦では救援で大会初登板し、3回を無失点に抑えたが、チームは敗れた。この経験の後、彼は本格的にウエイトトレーニングに取り組むことで球速を最速146 km/hに伸ばすなど飛躍的な成長を遂げた。2020年10月5日に行われた第91回都市対抗野球大会の東京都第一代表決定戦では、NTT東日本を相手に9回途中まで無安打に抑える好投を見せ、最終的に1安打完封勝利で本戦出場を決めた。JR東日本勤務時には、施設部工事課に所属していた。
2020年のドラフト会議にて阪神タイガースから2巡目指名を受けた。ドラフト指名後に出場した都市対抗本戦では、同じく阪神から6巡目指名を受けた中野拓夢を擁する三菱自動車岡崎との1回戦に先発し、9回2失点と完投してチームのサヨナラ勝利に貢献した。続くHonda熊本との2回戦では、3点ビハインドの7回一死から4番手として救援登板し1回2/3を無失点に抑えるも、チームはそのまま敗退した。
2.2. 阪神タイガース時代
日本プロ野球(NPB)の阪神タイガースに所属してからのプロ選手としてのキャリアを年度別に整理する。
2.2.1. 入団
伊藤将司は、2020年のドラフト会議で阪神タイガースから2巡目指名を受けた。契約金は推定7000.00 万 JPY、推定年俸1300.00 万 JPYで仮契約を結んだ。背番号は27に決定した。
2.2.2. 2021年シーズン
ルーキーながら開幕ローテーション入りを果たした。3月31日の広島東洋カープ戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)でプロ初先発したが、5回2失点という内容で勝敗はつかなかった。しかし、4月7日の読売ジャイアンツ戦(阪神甲子園球場)での登板で7回1失点の好投を見せ、プロ初勝利を挙げた。4月24日の横浜DeNAベイスターズ戦(甲子園)では、9回1失点でプロ初完投勝利を達成した。これは阪神の新人投手による完投勝利としては、秋山拓巳(2010年)以来11年ぶりの快挙であった。10月24日の広島戦(マツダ)で5回2/3を1失点に抑えて勝ち星を挙げたことで、球団の新人では藤浪晋太郎(2013年)以来9人目、球団の新人左腕としては江夏豊(1967年)以来3人目のシーズン10勝目に到達した。また、10月は5試合で3勝無敗1ホールド・防御率0.98と好成績を残し、10月・11月度のセ・リーグ月間MVP投手部門を受賞した。シーズン通じては10勝7敗、規定投球回には僅か2回2/3回足らなかったものの、防御率2.44を記録した。特に横浜DeNAベイスターズ相手には相性が良いとされた。新人王は受賞できなかったが、佐藤輝明、中野拓夢、牧秀悟、奥川恭伸と共に新人特別賞を受賞した。オフには推定年俸3100.00 万 JPY増の4400.00 万 JPYで契約更改した。
2.2.3. 2022年シーズン
2022年シーズンは4月6日の対DeNA戦(甲子園)で5回二死一・二塁の打席で石田健大からプロ初打点となる適時打を放った。投げては9回二死までを無失点に抑えながらも牧秀悟に適時打を許し、プロ初完封を逃した。最終的に9回1失点で1-1の同点の場面で降板し、後にチームは延長12回、1-6で敗れた。5月22日の巨人戦(甲子園)でプロ初となる完封勝利を飾り、7月14日の対巨人戦(甲子園)でも完封勝利を挙げた。これは阪神の左投手で江夏豊(1969年)以来53年ぶりとなる対巨人戦での2試合連続完封勝利という記録であった。最終的には2年連続で規定投球回には及ばなかったものの、先発ローテーション唯一の左腕として20試合に登板し9勝5敗、防御率2.63の成績を残した。また、両リーグ最多となる6完投を記録し、この年の阪神のAクラス入りに貢献した。12月1日には推定年俸3600.00 万 JPY増となる8000.00 万 JPYで契約更改した。
2.2.4. 2023年シーズン
2023年シーズンは春季キャンプを順調に終え、開幕第2戦の登板が決まっていたが、3月10日に左肩痛が発症し、3月22日に先発登板を回避することが発表された。結局、開幕からは1か月近く出遅れることとなったが、一軍でのシーズン初登板となった4月27日の巨人戦(甲子園)で、いきなり9回無四球完封勝利を飾った。その後、前半戦は12試合に先発し、うち11試合でクオリティ・スタートを達成、防御率も2.51と好投を続けた。しかし、打線の援護に恵まれない試合や後続投手が逆転を許す試合が相次ぐなど、なかなか勝ち星に恵まれず、3勝4敗で前半戦を折り返した。
後半戦に入ると、オールスターゲーム明け2戦目の7月23日ヤクルト戦(明治神宮球場)から、シーズン2度目の完封勝利を達成した8月20日の横浜DeNA戦(横浜スタジアム)まで自身5連勝を記録するなど、前半とは対照的に快調なペースで勝ち星を重ねた。9月3日のヤクルト戦(神宮)では、8回までわずか78球で無失点に抑える快投を披露。9回一死から代打の赤羽由紘にソロ本塁打を打たれてマダックス達成は惜しくも逃したが、9回90球1失点で自身通算10度目となる完投勝利で9勝目を挙げた。1週間後の9月10日広島戦(甲子園)で2年ぶりの2桁勝利を達成すると、シーズン最終登板となった9月20日の巨人戦(甲子園)では、自身も目標と語っていた規定投球回をプロ3年目で初めてクリアした。最終的には開幕こそ出遅れたものの、初登板以降は終始安定した投球で先発ローテーションを守り、21登板、10勝5敗、防御率2.39、3完投、2完封の好成績でチーム18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
ポストシーズンでは、広島とのCSクライマックスシリーズ・ファイナルステージ(甲子園)で第2戦に先発登板し、7回1失点と好投した。オリックス・バファローズとの日本シリーズでは2試合に登板。第3戦(甲子園)では5回4失点で敗戦投手となったが、第7戦(京セラドーム大阪)では6回裏から3番手で救援登板し、3回無失点で勝利投手となり、チームの38年ぶりの日本一を達成した。オフの12月10日には推定年俸8000.00 万 JPY増となる1.60 億 JPYで契約更改した。
2.2.5. 2024年シーズン
2024年シーズンは、オープン戦で4試合に登板して0勝3敗、防御率5.00と不調で、3月23日の巨人とのオープン戦では初回に一挙7失点を喫するなど、調子が上がらない中で開幕を迎えた。しかし、シーズン初登板となる4月3日のDeNA戦では7回4安打2失点で勝利を挙げ、通算30勝目を達成した。これは阪神の平成にドラフト入団した選手としては最速の記録であった。
その後も先発ローテーションを回っていたものの、5月11日のDeNA戦では5回途中8安打7失点と崩れ、チームが最大7点差あったリードを守り切れずに敗れる展開となり、翌日の5月12日に登録を抹消された。6月7日に再昇格し、同日の西武戦に先発すると、打球を左膝に受けるアクシデントがありながらも7回1失点の好投で勝利を挙げた。その後は8回2失点と試合を作りながらも敗戦投手となる試合もあり3連敗を喫したが、7月6日のDeNA戦では7回1失点で4勝目を挙げた。しかし7月13日の中日戦では3回6安打5失点と振るわず、翌日の7月14日に再び登録を抹消された。8月9日に再昇格すると以降はリリーフとして起用が続いたが、8月27日のDeNA戦ではジェレミー・ビーズリーの代替選手として緊急先発した。しかし3回5安打4失点と結果を残せず、翌日8月28日に3度目の登録抹消となった。以降は一軍昇格を果たせず、最終的な成績は18試合の登板で4勝5敗、防御率4.62に終わった。12月5日には推定年俸2000.00 万 JPY減の1.40 億 JPYで契約更改した。
3. 選手としての特徴・人物
伊藤将司は、その投球スタイルと個人的な側面において、プロ野球選手として特筆すべき特徴を持つ。
3.1. 投球スタイル
身長約178 cmの左腕投手であり、球の出どころが見えづらいスリークォーター投球フォームから、最速147 km/hのストレートを軸に、ツーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークなどの多彩な変化球を投げる。特に低めへの制球力に優れており、試合を構築する能力、すなわちゲームメイク能力に長けていることが特徴である。
以下の表は、2023年シーズンにおける彼の主な球種とその平均球速、配分率を示している。
球種 | 配分 % | 平均球速 NaN 京 km/h |
---|---|---|
ストレート | 41.8 | 142.3 km/h |
カットボール | 22.5 | 134.3 km/h |
ツーシーム | 17.6 | 135.9 km/h |
チェンジアップ | 12.0 | 125.5 km/h |
カーブ | 6.0 | 114.7 km/h |
スライダー | 0.1 | 116.5 km/h |
3.2. 人物
伊藤将司は、試合中に感情をあまり表に出さないポーカーフェイスが特徴の一つである。これについて本人は、「相手に隙を与える感じもしますし、嫌な顔をするとチームが見ている。投手が動揺すると流れも悪くなる」と語っている。
プロゴルファーを目指していた父親の影響で、幼少期からゴルフにも触れており、ベストスコアは80という腕前を持つ。彼の名前「将司」は、「ジャンボ尾崎」の愛称で知られるプロゴルファーの尾崎将司から名付けられた。また、弟の名前「大雅(たいが)」は、著名なプロゴルファーのタイガー・ウッズから取られている。
選手としては、元阪神タイガースの左腕投手である能見篤史を尊敬する選手として挙げている。また、祖母からは「マシ」という愛称で呼ばれている。
4. 主な表彰・記録
選手経歴を通じて獲得した主要な個人賞、タイトル、および達成した記録をまとめる。
4.1. 表彰
- セ・リーグ 連盟特別表彰:1回(新人特別賞:2021年)
- 月間MVP:1回(投手部門:2021年10・11月)
- 月間最優秀バッテリー賞:1回(2022年6・7月、捕手:梅野隆太郎)
4.2. 記録
プロデビュー以来達成した主要な記録について詳述する。
4.2.1. 初記録
プロ野球における初登板、初勝利、初安打など、各カテゴリで最初に達成した記録を具体的に記述する。
4.2.2. その他の記録
- オールスターゲーム出場:1回(2022年)
5. 年度別成績
各シーズンにおける投手成績および守備成績を、表形式で提示する。
5.1. 年度別投手成績
年 度 | 所 属 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 4 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ イ ブ | ホ ル ド | 勝 率 | 打 者 | イ ニ ン グ | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 四 球 | 故 意 四 球 | 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ ー ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 阪神 | 23 | 22 | 1 | 0 | 0 | 10 | 7 | 0 | 1 | .588 | 557 | 140.1 | 119 | 15 | 34 | 3 | 3 | 79 | 1 | 0 | 42 | 38 | 2.44 | 1.09 |
2022 | 20 | 20 | 6 | 2 | 2 | 9 | 5 | 0 | 0 | .643 | 539 | 136.2 | 119 | 10 | 22 | 3 | 2 | 92 | 1 | 0 | 45 | 40 | 2.63 | 1.03 | |
2023 | 21 | 21 | 3 | 2 | 2 | 10 | 5 | 0 | 0 | .667 | 572 | 146.2 | 120 | 8 | 21 | 2 | 4 | 91 | 3 | 0 | 40 | 39 | 2.39 | 0.96 | |
2024 | 18 | 13 | 1 | 0 | 1 | 4 | 5 | 0 | 0 | .444 | 323 | 74.0 | 90 | 5 | 16 | 0 | 2 | 33 | 1 | 0 | 46 | 38 | 4.62 | 1.43 | |
通算:4年 | 82 | 79 | 11 | 4 | 5 | 33 | 22 | 0 | 1 | .600 | 1991 | 497.2 | 448 | 38 | 93 | 8 | 11 | 295 | 6 | 0 | 173 | 155 | 2.80 | 1.09 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
5.2. 年度別守備成績
年 度 | 球 団 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 阪神 | 23 | 10 | 25 | 1 | 0 | .972 |
2022 | 20 | 7 | 28 | 1 | 0 | .972 | |
2023 | 21 | 8 | 23 | 0 | 2 | 1.000 | |
2024 | 18 | 4 | 14 | 0 | 0 | 1.000 | |
通算 | 82 | 29 | 90 | 2 | 2 | .983 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
6. その他
選手に関連する追加情報として、背番号、登場曲、代表歴などをまとめる。
6.1. 背番号
- 27(2021年 - )
6.2. 登場曲
- 「My Resort」¥ellow bucks(2021年)
- 「GIOTF feat. JP THE WAVY」¥ellow Bucks(2022年)
- 「BEANIE」Skaai(2023年 - )
- 「まさし」ゴールデンボンバー(2023年 - )※打席用
6.3. 代表歴
- 第40回日米大学野球選手権大会日本代表
- 第29回夏季ユニバーシアード野球競技日本代表