1. 概要
小深田 大翔(こぶかた ひろと日本語、1995年9月28日)は、兵庫県佐用郡佐用町出身のプロ野球選手である。右投左打の内野手であり、東北楽天ゴールデンイーグルスに所属している。2023年シーズンには36盗塁を記録し、福岡ソフトバンクホークスの周東佑京と共にパ・リーグの盗塁王のタイトルを獲得した。また、2024年にはゴールデングラブ賞とベストナイン(ともに二塁手部門)を受賞している。
2. 幼少期とアマチュア経歴
小深田大翔の野球キャリアは幼少期に始まり、学生時代を通じてその才能を育んだ。社会人野球での活躍を経て、プロ野球の世界へと進んだ。
2.1. 幼少期と教育
小深田は1995年9月28日に兵庫県佐用郡佐用町で生まれた。小学校1年生の時からソフトボールを始め、野球に親しんだ。中学生時代にはヤングリーグの「佐用スターズ」に所属し、遊撃手としてプレーしていた。
2.2. 高校・大学時代
神戸国際大学附属高等学校に進学したが、3年夏の県大会で2回戦敗退を喫し、甲子園への出場経験はなかった。高校の同級生にはプロ野球選手となる蔵本治孝がいた。高校卒業後、近畿大学に進学。大学では1年春から試合に出場し、関西学生リーグでは通算107安打を記録した。2年春、4年春、4年秋にはベストナインに3度選出されるなど、大学球界で優れた成績を残した。しかし、小深田自身はプロで通用するレベルではないと考えていたため、プロ志望届は提出しなかった。
2.3. 社会人野球時代とプロ入り
大学卒業後、大阪ガスに入社した。社会人野球1年目の第89回都市対抗野球大会では、遊撃手のレギュラーとして全5試合に出場し、チームの初優勝に大きく貢献した。この活躍が評価され、若獅子賞を受賞した。
2019年10月17日に行われたプロ野球ドラフト会議において、東北楽天ゴールデンイーグルスから1位指名を受けた。同年11月10日には契約金1.00 億 JPY、推定年俸1500.00 万 JPYで仮契約を結んだ。この際、背番号は「0」に決定した。大阪ガス時代には、後に阪神タイガースで活躍する近本光司と寮で同部屋だった経験がある。また、近畿大学時代には、テレビ番組「プロ野球No.1決定戦!バトルスタジアム」にデモンストレーション役として出演したことがある。
3. プロ経歴
東北楽天ゴールデンイーグルスに入団後、小深田大翔はルーキーイヤーから多くの出場機会を得て、チームの主力選手として成長を続けている。
3.1. 東北楽天ゴールデンイーグルス時代
小深田は2020年のプロ入りから一貫して東北楽天ゴールデンイーグルスに所属し、内野の主要なポジションを担っている。
3.1.1. 2020年シーズン
小深田は2020年に開幕一軍入りを果たした。この年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でプロ野球の開幕が遅れ、6月19日となった開幕戦の対オリックス・バファローズ戦(京セラドーム大阪)で、9回裏に鈴木大地の守備固めとして遊撃手でプロ初出場を飾った。翌日の同カードで初打席に立つも二塁ゴロに終わったが、6回表には山田修義と若月健矢のバッテリーからプロ初盗塁を記録した。開幕直後は代走や守備固めでの出場が多かったが、6月30日の対千葉ロッテマリーンズ戦(楽天生命パーク宮城)では途中出場ながら東條大樹からプロ初安打を放ち、7月4日の同カードでは「1番・二塁手」としてプロ初の先発出場を果たした。7月15日の対埼玉西武ライオンズ戦(楽天生命パーク宮城)では、7回二死満塁のチャンスで浜屋将太から走者一掃となる適時二塁打を放ち、プロ初打点を記録した。
その後は茂木栄五郎との兼ね合いで二塁と遊撃を兼任しながら先発出場を続けたが、茂木のコンディション不良により遊撃を守れない試合が増えたことで、小深田が遊撃手として先発出場する機会が多くなった。最終的には「1番・遊撃手」として定着し、9月27日の対西武戦(メットライフドーム)では松本航からプロ初本塁打を放った。このシーズンは最終戦まで離脱することなく112試合に出場し、ルーキーイヤーながら規定打席に到達。打率.288とリーグ6位の好成績を残した。ベストナインの遊撃手部門では、1位の源田壮亮に次ぐ103票を獲得し、新人王の投票でも平良海馬に次ぐ125票を得た。オフにはスピードアップ賞を初受賞し、推定年俸3300.00 万 JPY(1800.00 万 JPY増)で契約を更改した。
3.1.2. 2021年シーズン
2021年は開幕戦の対北海道日本ハムファイターズ戦(楽天生命パーク宮城)に「2番・遊撃手」で先発出場した。その後は前年と同様に「1番・遊撃手」として試合に出場し続けたが、交流戦前までは打率.214と打撃が低調であった。しかし、交流戦に入ると調子を上げ、7月5日には監督推薦によりオールスターゲームへの初出場が決定した。
しかし、7月以降は再び打撃が低調となり、前年と比較して失策が増加した。9月に入ると山﨑剛が浅村栄斗の欠場により出場機会を得て評価を高め、浅村がスタメンに復帰すると山﨑が「1番・遊撃手」に抜擢され、小深田はベンチスタートとなる試合が増えていった。10月は先発出場がなく、代走や代打での出場が主だったが、シーズン最終戦の対ロッテ戦(楽天生命パーク宮城)では8回に代打として佐々木千隼から決勝適時打を放ち、チームの勝利に貢献した。最終的にレギュラーシーズンでは新人から2年連続で規定打席に到達したものの、121試合の出場で打率.248、3本塁打、21打点にとどまった。シーズン終了後にはフェニックスリーグに参加し、ポストシーズンを見据えて中堅手としての実戦経験を積んだが、チームはクライマックスシリーズファーストステージで敗退し、小深田自身も代打出場1試合のみに終わった。オフには推定年俸3700.00 万 JPY(400.00 万 JPY増)で契約を更改した。
3.1.3. 2022年シーズン
2022年は開幕戦の対ロッテ戦(楽天生命パーク宮城)に「9番・中堅手」として先発出場したが、遊撃手のポジションは前年から山﨑剛が確保していたため、当初はベンチスタートの試合が続いていた。しかし、4月21日の対日本ハム戦(楽天生命パーク宮城)で先発出場すると5打数2安打3打点を記録し、ヒーローインタビューを受ける活躍を見せた。その後は「2番・遊撃手」として遊撃のレギュラーポジションを奪い返した。オールスターゲームにも代替選手としてではあるが、2年連続の出場を果たした。
シーズンでは内野手だけではなく、外野手としても一定の試合に出場し、最終的に打率.267、2本塁打、29打点という成績を残した。盗塁ではキャリアハイとなる21盗塁を記録し、新人から3年連続で規定打席に到達した。オフには2020年以来2度目のスピードアップ賞を受賞し、推定年俸5000.00 万 JPY(1300.00 万 JPY増)で契約を更改した。
3.1.4. 2023年シーズン
2023年は開幕戦の対日本ハム戦(エスコンフィールドHOKKAIDO)に「2番・左翼手」として先発出場した。このシーズンでは二塁手として守備に就く機会が最も多かったが、前年に引き続き外野手、そして三塁手としても一定数の試合で守備に就いた。しかし、遊撃手としては途中変更の2試合のみで、先発出場として遊撃手の守備に就くことはなかった。打順は主に2番を任されていたが、シーズン終盤になると1番での出場機会が増加した。
6月8日の対阪神タイガース戦(楽天モバイルパーク宮城)では、チームがリードしていた展開から小郷裕哉の失策により逆転を許し、1点ビハインドの9回裏二死一・二塁の場面を迎えた。この状況で小深田は湯浅京己から逆転サヨナラとなる右翼席への3点本塁打を放ち、チームを劇的な勝利に導いた。この一打は、当時最下位に沈んでいたチームがクライマックスシリーズ進出を争うまでに状態を復調させる起爆剤となった。自らの失策によりビハインドの展開を作り出してしまったことに責任を感じていた小郷は、小深田のサヨナラ本塁打の後には大粒の涙を流した。その後、小郷自身も状態を上げ、レギュラーに定着しチームの復調に貢献している。この本塁打により、小深田は6月度の月間サヨナラ賞を自身初めて受賞した。
最終的に134試合に出場し、打率.258、5本塁打、37打点、36盗塁を記録した。本塁打、打点、盗塁でキャリアハイの成績を記録し、以前から目標に挙げていた盗塁王のタイトルを福岡ソフトバンクホークスの周東佑京と分け合う形で自身初めて獲得した。オフには推定年俸が8500.00 万 JPY(3500.00 万 JPY増)に更新された。また、この年を含め3年連続でオールスターゲームに出場した。
3.1.5. 2024年シーズン
2024年シーズンも、小深田はチームの主力として活躍した。この年、彼は二塁手としてリーグ最高の守備率を記録し、その堅実な守備が評価された。シーズン終了後、小深田はゴールデングラブ賞(二塁手部門)とベストナイン(二塁手部門)を初めて受賞した。
4. 選手としての特徴・人物
小深田大翔は、その卓越した走力と守備能力、そしてシュアな打撃で知られている。
4.1. プレースタイルと強み
小深田は、50メートル走5秒9、一塁到達タイム3秒78という抜群の走塁センスを誇る。この俊足は、彼のプレーにおいて大きな武器となっている。守備では、広い守備範囲と、内野手であればどこでも守れる器用さが持ち味であり、試合に応じて様々なポジションをこなすことができる。打撃については、内角を苦にせず引っ張ることができるシュアな打撃が評価されている。
4.2. 人物
愛称は「コブちゃん」。父親は理髪店を営んでおり、2023年シーズン終了後の契約更改では、父親にバリカンを、母親には時計をプレゼントする意向を示した。
5. 成績と受賞
小深田大翔のプロ野球キャリアにおける主なタイトルと受賞歴は以下の通りである。
5.1. タイトル
- 盗塁王:1回(2023年)
5.2. 受賞
- ベストナイン:1回(二塁手部門:2024年)
- ゴールデングラブ賞:1回(二塁手部門:2024年)
- 月間サヨナラ賞:1回(2023年6月)
- スピードアップ賞:2回(打者部門:2020年、2022年)
6. 記録
小深田大翔がプロ野球で達成した主要な個人記録をまとめる。
6.1. 初記録
- 初出場:2020年6月19日、対オリックス・バファローズ1回戦(京セラドーム大阪)、9回裏に鈴木大地に代わり遊撃手として出場
- 初打席:2020年6月20日、対オリックス・バファローズ2回戦(京セラドーム大阪)、8回表に神戸文也から二塁ゴロ
- 初盗塁:同上、6回表に二盗(投手:山田修義、捕手:若月健矢)
- 初安打:2020年6月30日、対千葉ロッテマリーンズ1回戦(楽天生命パーク宮城)、7回裏に東條大樹から中前安打
- 初先発出場:2020年7月4日、対千葉ロッテマリーンズ5回戦(楽天生命パーク宮義)、1番・二塁手として先発出場
- 初打点:2020年7月15日、対埼玉西武ライオンズ2回戦(楽天生命パーク宮城)、7回裏に浜屋将太から左中間3点適時二塁打
- 初本塁打:2020年9月27日、対埼玉西武ライオンズ17回戦(メットライフドーム)、7回表に松本航から右越ソロ
6.2. その他の記録
- オールスターゲーム出場:3回(2021年、2022年、2023年)
7. 年度別成績
小深田大翔のプロ経歴における年度ごとの打撃成績と守備成績を以下に示す。
7.1. 打撃成績
年 度 | 球 団 | 試 合 | 打 席 | 打 数 | 得 点 | 安 打 | 2 塁 打 | 3 塁 打 | 本 塁 打 | 塁 打 | 打 点 | 盗 塁 | 盗 塁 刺 | 犠 打 | 犠 飛 | 四 球 | 故 意 四 球 | 死 球 | 三 振 | 併 殺 打 | 打 率 | 出 塁 率 | 長 打 率 | O P S |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020 | 楽天 | 112 | 437 | 378 | 61 | 109 | 16 | 5 | 3 | 144 | 31 | 17 | 9 | 11 | 2 | 42 | 0 | 4 | 59 | 5 | .288 | .364 | .381 | .745 |
2021 | 121 | 455 | 391 | 60 | 97 | 10 | 3 | 3 | 122 | 21 | 5 | 5 | 16 | 1 | 44 | 0 | 3 | 65 | 1 | .248 | .328 | .312 | .640 | |
2022 | 118 | 479 | 424 | 54 | 113 | 16 | 5 | 2 | 145 | 29 | 21 | 7 | 12 | 3 | 37 | 0 | 3 | 65 | 6 | .267 | .328 | .342 | .670 | |
2023 | 134 | 549 | 477 | 67 | 123 | 8 | 6 | 5 | 158 | 37 | 36 | 6 | 20 | 1 | 48 | 0 | 3 | 83 | 8 | .258 | .329 | .331 | .660 | |
2024 | 134 | 522 | 450 | 50 | 103 | 9 | 4 | 3 | 129 | 23 | 29 | 10 | 25 | 3 | 42 | 0 | 2 | 84 | 5 | .229 | .296 | .287 | .582 | |
通算:5年 | 619 | 2442 | 2120 | 292 | 545 | 59 | 23 | 16 | 698 | 141 | 108 | 37 | 84 | 10 | 213 | 0 | 15 | 356 | 25 | .257 | .328 | .329 | .657 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
7.2. 守備成績
年 度 | 球 団 | 二塁手 | 三塁手 | 遊撃手 | 外野手 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2020 | 楽天 | 21 | 44 | 40 | 1 | 7 | .988 | - | 98 | 113 | 206 | 7 | 34 | .979 | - | ||||||||||
2021 | 2 | 2 | 3 | 0 | 0 | 1.000 | - | 109 | 134 | 229 | 12 | 38 | .968 | - | |||||||||||
2022 | 19 | 24 | 24 | 0 | 1 | 1.000 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 95 | 133 | 216 | 10 | 36 | .972 | 10 | 11 | 1 | 0 | 0 | 1.000 | |
2023 | 77 | 126 | 198 | 6 | 35 | .982 | 46 | 23 | 49 | 7 | 2 | .911 | 2 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1.000 | 30 | 46 | 2 | 2 | 0 | .960 | |
2024 | 131 | 308 | 397 | 5 | 87 | .993 | - | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1.000 | - | |||||||||||
通算 | 250 | 504 | 662 | 12 | 130 | .990 | 47 | 23 | 49 | 7 | 2 | .911 | 306 | 383 | 654 | 29 | 109 | .973 | 40 | 57 | 3 | 2 | 0 | .968 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
- 太字年はゴールデングラブ賞受賞年
8. 背番号
- 0(2020年 - )
9. 登場曲
- 「Hero」安室奈美恵(2020年)
- 「I can fly」RAY(2021年 - )