1. 概要

岩下敬輔(いわした けいすけ)は、鹿児島県日置市(旧伊集院町)出身の元プロサッカー選手。現役時代のポジションは主にディフェンダー(センターバック)であったが、ボランチやサイドバックもこなすユーティリティ性も持ち合わせていた。利き足は右足で、身長は181 cm、体重は77 kgであった。
鹿児島実業高等学校在学中の2005年に全国高等学校サッカー選手権大会で優勝を経験した後、清水エスパルスでプロキャリアをスタート。清水ではデビュー戦でボランチとして起用されるなど、その足元の技術と高さを評価された。その後、ガンバ大阪へ移籍し、2014年にはリーグ優勝を含む国内三冠達成に大きく貢献した。キャリアの後半ではアビスパ福岡、サガン鳥栖で活躍し、2020年に現役を引退した。日本代表には2009年に初選出されたが、出場機会はなかった。
2. 来歴
岩下敬輔は、幼少期からサッカーを始め、ユース年代でその才能を育み、プロサッカー選手として輝かしいキャリアを築いた。
2.1. ユース経歴
岩下敬輔は石谷サッカースポーツ少年団でサッカーを始め、1999年から2001年まで鹿児島市立桜島中学校(当時の名称は桜島町立櫻島中学校)に在籍した。中学年代では攻撃的なポジションでプレーし、鹿児島県選抜にも選出されるなど、その才能を発揮した。
2002年から2004年にかけては、サッカーの強豪校である鹿児島実業高等学校に進学。高校時代には、全国高等学校サッカー選手権大会で2002年と2004年に優勝を経験した。また、2003年には全国高校サッカー選手権大会でベスト4に進出。2004年には全国高校総体でベスト16、国体(鹿児島県選抜)にも出場した。同年には高円宮杯全日本ユースサッカー選手権(U-18)大会でもベスト4に進出するなど、ユース年代で数々の実績を残した。
2.2. 清水エスパルス時代
鹿児島実業高等学校を卒業後、2005年に清水エスパルスへ入団し、プロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせた。当時の清水の監督であった長谷川健太は、岩下の足元の技術と高さを高く評価していた。
プロデビュー戦は2005年5月1日のJ1リーグ第9節大宮アルディージャ戦で、この試合では本職のセンターバックではなくボランチとして先発出場した。その後も、本職のセンターバックだけでなく、サイドバックなど複数のポジションを任されるなど、そのユーティリティ性を示した。
入団3年目となる2007年、J1リーグ第22節のアルビレックス新潟戦に先発出場し、後半17分にコーナーキックからのヘディングシュートでプロ初ゴールを記録した。しかし、その後はなかなかレギュラーの座を掴むことができず、出場機会が安定しなかった。2009年には、チームを退団した高木和道に代わってセンターバックのレギュラーポジションを確保し、チームの守備の中心選手として定着した。
2.3. ガンバ大阪時代
2012年、清水エスパルスで開幕からレギュラーとして起用されたものの、安定感を欠くプレーが目立ち、次第に出場機会が減少した。同年8月、ガンバ大阪へ期限付き移籍した。ガンバ大阪加入当初は、負傷離脱中であった加地亮の穴を埋めるため右サイドバックとして起用された。加地復帰後は本来のセンターバックとしてプレーしたが、チームは低迷を抜け出せず、この年にJ2リーグへの降格を経験した。
2013年、複数のJ1リーグクラブからオファーがあったものの、岩下はガンバ大阪への完全移籍を選択した。シーズン序盤はセンターバックとして先発出場を続けたが、J2リーグ第26節の東京ヴェルディ戦で右足関節捻挫の怪我を負い戦線離脱。その後も練習には何度か復帰を試みたが、怪我の再発を繰り返し、公式戦復帰は最終節のザスパクサツ群馬戦まで長引き、このシーズンのリーグ戦出場は半数以下の17試合に留まった。
2014年には開幕から定位置を奪回し、シーズンを通してレギュラーとして活躍した。リーグ戦では出場停止となった2試合を除く32試合に出場し、リーグ2位タイの少ない失点数に抑えたディフェンス陣を牽引した。清水時代からの恩師である長谷川健太監督の下、ガンバ大阪のJ1リーグ優勝、天皇杯優勝、ナビスコカップ優勝という国内三冠達成に大きく貢献した。
2015年シーズンも前半戦は主力としてプレーしたが、慢性的な右膝の痛みに悩まされ、本来のパフォーマンスを発揮することができなかった。シーズン終盤には、長谷川監督の意向で怪我の治療に専念するためメンバーから外された。同年12月に右膝のクリーニング手術を受けたものの、コンディションは完全に回復しなかった。
2.4. アビスパ福岡およびサガン鳥栖時代
2017年からはアビスパ福岡に所属。2シーズンにわたってJ2リーグで55試合に出場し4得点を記録するなど、チームの中心選手として活躍した。
2019年3月、主力ディフェンダー3人が流出し、J1リーグ開幕からルヴァンカップを含めて公式戦3連敗・8失点と守備崩壊に陥っていたサガン鳥栖へ期限付き移籍した。岩下は鳥栖の守備立て直しに貢献することを誓った。2020年にはサガン鳥栖へ完全移籍を果たした。
3. 日本代表経歴
2009年10月、当時の日本代表監督であった岡田武史によって、チームメイトの山本海人とともに日本代表に初選出された。しかし、代表での公式戦出場機会はなかった。
4. 現役引退
2020年11月30日、プロサッカー選手としての現役引退を正式に発表した。
5. 出場大会
岩下敬輔は、そのキャリアを通じて数々のユースおよび国内の主要大会に出場している。
- 2001年 高円宮杯全日本ユースサッカー選手権(U-15)大会
- 2002年 全国高等学校サッカー選手権大会
- 2003年 全国高校サッカー選手権大会 ベスト4
- 2004年 全国高校サッカー選手権大会 優勝
- 2004年 全国高校総体 ベスト16
- 2004年 国体(鹿児島県選抜)
- 2004年 高円宮杯全日本ユースサッカー選手権(U-18)大会 ベスト4
6. 個人成績
岩下敬輔のプロキャリアにおけるクラブおよびリザーブチーム、国際クラブ大会での詳細な出場記録と得点記録は以下の通りである。クラブ成績の「その他」の項目には、Jリーグチャンピオンシップ、スーパーカップ、スルガ銀行チャンピオンシップへの出場記録が含まれる。
6.1. クラブ成績
クラブパフォーマンス | リーグ戦 | 天皇杯 | リーグカップ | 国際クラブ大会 | その他 | 合計 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | |
日本 | リーグ | 天皇杯 | リーグカップ | AFC | その他 | 合計 | |||||||||
2005 | 清水 | J1 | 6 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | - | - | 8 | 0 | |||
2006 | 5 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | - | - | 8 | 0 | |||||
2007 | 11 | 1 | 2 | 0 | 2 | 0 | - | - | 15 | 1 | |||||
2008 | 18 | 2 | 10 | 2 | 1 | 0 | - | - | 29 | 4 | |||||
2009 | 29 | 5 | 9 | 1 | 1 | 0 | - | - | 39 | 6 | |||||
2010 | 20 | 1 | 5 | 0 | 5 | 1 | - | - | 30 | 2 | |||||
2011 | 29 | 2 | 4 | 0 | 4 | 1 | - | - | 37 | 3 | |||||
2012 | 12 | 1 | 2 | 0 | - | - | 14 | 1 | |||||||
G大阪 | 13 | 12 | 0 | - | 6 | 1 | - | 18 | 1 | ||||||
2013 | 8 | J2 | 17 | 2 | - | 0 | 0 | - | 17 | 2 | |||||
2014 | J1 | 32 | 1 | 8 | 0 | 2 | 0 | - | 42 | 1 | |||||
2015 | 24 | 0 | 5 | 1 | 0 | 0 | 9 | 0 | 2 | 0 | 40 | 1 | |||
2016 | 10 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 13 | 1 | |||
2017 | 福岡 | 36 | J2 | 32 | 3 | - | 0 | 0 | - | 32 | 3 | ||||
2018 | 11 | 23 | 1 | - | 0 | 0 | - | 23 | 1 | ||||||
2019 | 0 | 0 | - | - | - | 0 | 0 | ||||||||
鳥栖 | 8 | J1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 1 | 0 | ||||
2020 | 2 | 0 | 1 | 0 | - | - | 3 | 0 | |||||||
総通算 (J1) | 207 | 14 | 50 | 4 | 23 | 3 | 10 | 0 | 2 | 0 | 292 | 21 | |||
総通算 (J2) | 72 | 6 | - | 0 | 0 | - | 72 | 6 | |||||||
キャリア総通算 | 279 | 20 | 50 | 4 | 23 | 3 | 10 | 0 | 2 | 0 | 364 | 27 |
- Jリーグ初出場 - 2005年5月1日 J1第9節 vs大宮アルディージャ(日本平スタジアム)
- Jリーグ初得点 - 2007年8月26日 J1第22節 vsアルビレックス新潟(東北電力ビッグスワンスタジアム)
6.2. リザーブチーム成績
クラブパフォーマンス | リーグ戦 | 合計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | |
日本 | リーグ | 合計 | |||||
2016 | G大23 | J3 | 6 | 0 | 6 | 0 | |
キャリア総通算 | 6 | 0 | 6 | 0 |
6.3. 国際クラブ大会成績
シーズン | クラブ | 大会 | 出場 | 得点 |
---|---|---|---|---|
2015 | G大阪 | AFCチャンピオンズリーグ | 9 | 0 |
2016 | 1 | 0 | ||
通算 | 10 | 0 |
その他の国際公式戦
- 2015年 スルガ銀行チャンピオンシップ 1試合0得点
7. 主要タイトルおよび受賞歴
岩下敬輔がプロキャリアにおいて獲得したクラブタイトル、および高校時代に達成した主要な受賞記録は以下の通りである。
7.1. クラブタイトル
; ガンバ大阪
- Jリーグ ディビジョン1:1回(2014年)
- Jリーグ ディビジョン2:1回(2013年)
- ナビスコカップ:1回(2014年)
- 天皇杯:2回(2014年、2015年)
- ゼロックススーパーカップ:1回(2015年)
7.2. 高校時代
; 鹿児島実業高校
- 全国高校サッカー選手権大会:2回(2002年、2004年)