1. 生涯
崔恵英の人生は、幼少期の夢から不慮の事故、そして教育と社会貢献への道へと大きく変化した。
1.1. 幼少期と事故
崔恵英は慶尚南道巨済市出身で、幼少期にはバレリーナを夢見て舞踊学を専攻し、新羅大学校舞踊学科で学士号を取得するほど本格的に活動していた。しかし、2003年に不慮の交通事故に遭い、脊髄損傷による四肢麻痺を負い、車椅子での生活を余儀なくされた。この事故は彼女の人生を大きく変え、その後は障害者への社会認識を改善することに尽力する教育者となることを決意した。
1.2. 学歴
事故後、崔恵英は社会福祉学の道に進んだ。新羅大学校舞踊学科を卒業後、2010年にはソウル女子大学校大学院で社会福祉学修士号を取得。さらに2017年にはナザレ大学校大学院でリハビリテーション博士号を取得した。この博士号の取得により、彼女は脊髄損傷を負った女性としては韓国で初めて博士号を取得した人物となった。
1.3. 私生活
崔恵英は2011年に障害者ラグビー選手のチョン・ナッキョン(정낙현チョン・ナッキョン韓国語、韓字:鄭落賢)と結婚した。チョン・ナッキョンもまた、飛び込み事故により四肢麻痺を負った元水泳選手であり、その後ラグビー選手に転向し、2014年アジアパラ競技大会では銀メダルを獲得している。
2. 政治家以前の活動
崔恵英は政界入りする以前から、障害者権利の向上と社会福祉教育に大きく貢献してきた。
2.1. 障害認識改善活動
崔恵英は、社会における障害者に対する理解を深めるための様々な活動を展開した。2009年には韓国障害認識改善教育センターを設立し、センター長を務めた。その後、2018年には同センターの社会的協同組合理事長に就任し、障害認識改善教育の普及と社会的な理解促進に尽力した。彼女は保健福祉部の障害認識改善広報モデルとしても活動し、障害者の権利と人権が尊重される社会の実現を目指した。
2.2. 教育者としての経歴
2014年から2020年にかけて、崔恵英は江東大学校社会福祉行政学科の教授として教鞭を執った。教育者として、彼女は次世代の社会福祉専門家を育成し、自身の経験と知識を学生たちに伝えた。
3. 政治経歴
崔恵英は、障害者の権利向上への強い意志を胸に政界入りし、国会議員として様々な活動を展開した。
3.1. 政界入り
2019年12月26日、崔恵英は当時の共に民主党代表であった李海瓚によって、「人材招聘1号」として政界に迎え入れられた。彼女が政治の世界に飛び込むことを決意した背景には、当時の主要野党が保育関連法案に反対する姿勢を示したことなどがあり、障害者権利の擁護に対する彼らの無関心さに疑問を抱いたことが挙げられる。彼女は、もし国会議員に選出されれば、障害を持つ女性たちの権利のために闘うことを表明し、「青年・女性・障害者」の代表としてその役割を担うことを期待された。
3.2. 国会議員としての活動
2020年の第21代総選挙で比例代表として当選し、2020年5月30日から2024年5月29日まで第21代国会議員を務めた。国会議員として、彼女は主に保健福祉委員会と女性家族委員会に所属し、障害者、女性、その他の社会的弱者のための政策立案に貢献した。
主な議政活動としては、集中治療室、分娩室、手術室などで働く看護師のストライキを禁止する医療法の改正案を発議し、医療界から反発を受けたことがある。また、2021年4月には大法院判事(千大燁)任命同意に関する人事聴聞特別委員会委員、2021年4月から2022年5月まで第21代国会前期国会運営委員会委員を務めた。2021年11月には言論・メディア制度改善特別委員会委員を務めた。2023年1月には、自身の居住地である京畿道安城市に地域事務所を開設し、地域住民との連携を強化した。後期国会では、予算決算特別委員会、人口危機特別委員会、年金改革特別委員会の委員も務め、幅広い分野で活動を行った。2023年12月から2024年3月までは、第22代国会議員選挙の京畿道安城市選挙区における共に民主党の予備候補を務めた。
3.3. 党職および主要役職
崔恵英は共に民主党内で複数の重要な党職と役職を歴任した。2020年2月から4月にかけては、第20代大統領選挙の李在明候補陣営で「大韓民国未来準備選挙対策委員会」の共同選挙対策委員長を務めた。
同年6月からは組織強化特別委員会委員、7月からは新型コロナウイルス感染症国難克服委員会委員を務め、党の主要な政策決定に関与した。さらに、2020年9月からは民主研究院副院長、2021年4月から2022年3月までは党の中央党選挙管理委員会委員および院内副代表を務めた。また、2023年5月から9月まで再び院内副代表の役職を歴任した。2021年5月からは共に民主党メディア革新特別委員会委員。2023年9月からは院内報道官も務め、党の公式見解を発表する役割を担った。また、2022年8月から2024年8月までは全国代議員大会副議長を務めている。
4. 論争と批判
崔恵英は、その公的な活動の中でいくつかの論争や批判に直面した。
4.1. 婚姻届遅延と不正受給疑惑
2020年2月24日、崔恵英が2011年に夫のチョン・ナッキョンと結婚していたにもかかわらず、婚姻届を2019年にようやく提出したことが報じられた。これにより、チョン・ナッキョンが婚姻届提出までの約8年間、基礎生活受給対象者として独身者向けの基礎生活費を不正に受給したのではないかという疑惑が提起された。また、崔恵英自身も「最重症独居障害者」として地方自治体から過剰な支援を受けていたのではないかという疑惑も浮上した。これに対し、崔恵英夫妻は不正に給付を受けたことはないと否定した。
4.2. その他の論争
過去には、2000年12月15日に無免許運転により罰金100万ウォン(約1000 USD)の有罪判決を受けていたことも報じられた。この経歴は、彼女が政界入りする際に一部で批判の対象となった。
5. 選挙結果
崔恵英が出馬した主要な選挙の結果は以下の通りである。
年 | 選挙区 | 所属政党 | 得票率 (%) | 備考 |
---|---|---|---|---|
2020年 | 比例代表 (11番) | 共に民主党 (共に市民党として出馬) | 33.35% | 当選 |