1. 経歴
石井大智がプロ野球選手となるまでの経緯を、その幼少期から独立リーグでの活躍に至るまで詳述する。
1.1. プロ入り前
石井は秋田市立旭川小学校3年生の時に「旭川スポーツ少年団」に入団し、野球を始めた。秋田市立秋田東中学校時代は軟式野球部に所属し、2年時まではエースを務めていたが、3年時には同学年の成田翔がエースとなったため、自身は内野手に転向した。
その後、石井は秋田工業高等専門学校に進学した。元々は中学で野球を辞めるつもりで、工業系の仕事に進むことを目指して高専を選んだという。専攻は環境都市工学だった。高専入学当初の石井は、当時の監督である白根弘也によると「遠投は80 m、球速は120 km/h出ていたかどうか」という選手であった。しかし、球速を向上させ、2年生の秋からエースとして活躍した。3年生の夏の秋田大会では、初戦の大曲農業高校太田分校戦で3安打完封勝利を収めたものの、2回戦で秋田修英高校に0-7で敗退した。高野連の大会出場資格を失った4年生および5年生時には体力づくりに専念し、練習試合を通じて実戦感覚を養った。
4年生の時に就職活動を行い、一旦は大手企業から内定を得ていた。しかし、5年生になる頃に監督の白根に対し、プロ野球選手を志望していることを打ち明けた。これは中学時代のチームメイトであった成田翔が千葉ロッテマリーンズに入団したことで、「同じ舞台で戦いたい」という思いが強まり、NPB入りを目指すようになったためだった。白根監督は石井の希望に応え、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスが実施した独自のトライアウトに石井を参加させ、高知の監督であった駒田徳広から内々定を得た。学業面では木造住宅の耐震性を研究テーマに選び、常に上位25%に入る好成績を収めた。指導教官である寺本尚史の研究室にまでダンベルを持ち込み、身体と学業の両面で研鑽を積んだという。
1.2. 独立リーグ時代
2017年11月に行われたアイランドリーグのドラフト会議で、高知ファイティングドッグスから4巡目で指名され、入団が決定した。当時の背番号は17。駒田監督は、当時の石井の球速が136 km/hから137 km/h程度であったため、独立リーグでは通用してもNPBに進めるとは正直思っていなかったと2021年に述懐している。
2018年には21試合に登板し、2勝4敗、防御率2.08を記録した。オフにはみやざきフェニックス・リーグの四国IL選抜チームに選出された。
2019年、開幕戦の徳島インディゴソックス戦に先発登板し、9回を15奪三振、岸潤一郎の二塁打1本のみに抑える被安打で完封勝利を挙げた。シーズン全体では18試合に登板し、チーム最多の108回1/3を投げて6勝5敗、防御率1.50の成績を残した。また、122奪三振を記録し、最多奪三振のタイトルを獲得した。この年、ストレートの最速は151 km/hを計測した。2年連続でみやざきフェニックス・リーグの四国IL選抜チームに選出された。このシーズン頃には直球の球速が150 km/h台にまで向上しており、駒田監督は「練習への取り組み方が他の選手とは違っていたね」と後に語っている。
2020年には17試合に登板し、6勝7敗、防御率1.69、129奪三振を記録した。9月には自己最速を2 km/h更新する153 km/hを計測している。10月23日には徳島との首位攻防戦に先発登板したが、7回3失点(自責点0)で敗戦投手となり、徳島にリーグ連覇を許した。このシーズン中にはNPB10球団から調査書が届くほど注目を集めた。
2020年のドラフト会議で阪神タイガースから8巡目指名を受け、契約金1500.00 万 JPY、年俸550.00 万 JPYで仮契約を結んだ。背番号は69。高等専門学校出身者がNPBドラフト会議で指名を受けるのは鬼屋敷正人以来2人目であり、高等専門学校の卒業者および国立高等専門学校出身者としては史上初の快挙となった。鬼屋敷は私立の近大高専出身で、3年次にドラフト指名を受けていた。
2. プロ野球選手として
阪神タイガースに入団してからの石井大智の日本プロ野球選手としてのキャリアを年次ごとに詳細に記述する。
2.1. 阪神タイガース時代
2021年2月、春季キャンプで一軍メンバー入りを果たし、そのまま開幕一軍入りを勝ち取った。公式戦初登板は3月26日の対東京ヤクルトスワローズ戦(神宮)の7回で、1点リードの場面で3番手として救援登板したが、塩見泰隆に同点となる三塁打を打たれた。その後、5試合に登板したのち、4月19日に登録を抹消され二軍降格となった。その後も2度、一軍昇格と二軍降格を繰り返し、8月26日の登録抹消後は一軍復帰はならなかった。初年度の成績は18試合に登板し、0勝1敗、防御率6.23だった。
2022年も開幕一軍入りし、引き続き救援投手としてマウンドに上がった。この年は防御率0.75と前年より大幅に改善されたが、シーズン中に新型コロナウイルス陽性判定を受けたこともあり、登板数は前年と同じ18試合に留まった。
2023年も開幕一軍入りすると、5月11日のヤクルト戦でプロ入り初勝利を挙げ、NPB初の高専卒の勝利投手となった。しかし、この登板で腰を痛め、当初予定されていたヒーローインタビューには登壇できなかった。登板13試合で1勝5ホールド、防御率0.60と好成績を挙げていたが、翌12日、腰痛を理由に出場選手登録を抹消された。スポーツ紙では、故障内容について「腰部の疲労骨折の可能性が高い」と報じられた。その後復帰し、最終的にキャリアハイとなる1勝1敗19ホールド、防御率1.35の成績を残した。クライマックスシリーズや日本シリーズにも登板し、特にクライマックスシリーズでは高専卒選手として史上初の出場を果たし、連続初球打ちで相手打者を抑えるなど活躍した。日本シリーズでも1回無失点に抑える投球を見せた。オフの12月5日に2750.00 万 JPY増となる推定年俸4000.00 万 JPYで契約を更改した。
2024年も4年連続の開幕一軍入りとなった。3月30日の開幕2戦目、対読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)で7回から登板したが、1回2安打2失点(自責1)を喫した。この試合により、オープン戦から3試合連続での失点を喫する内容の悪さで、翌日からベンチメンバーを外れ、4月3日に登録抹消となった。5月4日に再昇格されると、6月21日の対横浜DeNAベイスターズ戦(阪神甲子園球場)で、両者無得点で迎えた9回表に4番手で救援登板し、1回無失点に抑えた。同回裏にサヨナラ勝ちしたため、シーズン初勝利を挙げた。再昇格後は後半戦に19試合連続無失点を記録するなど安定した投球を見せ、9月・10月は14試合に登板して12回2/3を無失点、月間防御率0.00の成績で球団選定の月間最優秀選手に選出された。最終的に56試合の登板で4勝1敗1セーブ30ホールド、防御率1.48の成績を残した。12月6日に4200.00 万 JPY増の推定年俸8200.00 万 JPYで契約を更改した。
3. 選手としての特徴
石井大智はオーバースローから最速155 km/hのストレートとシンカー、スライダー、カットボール、カーブを投げる。シンカーは潮崎哲也を参考にして習得した。
4. 人物
石井は2022年11月に、同年シーズン開幕前に結婚していたことを明らかにした。妻は神奈川県出身の一般女性で、高知ファイティングドッグス時代にスタジアムアナウンスを担当していたという。石井より7歳年上である。NPBドラフト指名直後から約1年2か月の交際期間を経ての結婚だった。2022年の初登板となったヤクルト戦でホセ・オスナに本塁打を打たれ失点した試合後、帰宅した石井に対し、妻は「後悔のないように楽しくやって」と声をかけ、彼を元気づけたというエピソードがある。
2024年9月には、第一子となる長男が誕生したことを明かした。契約更改の際、「おむつとミルク代の足しに」とコメントし、家族への思いを語った。
5. 詳細情報
石井大智の公式戦における記録と統計、主な達成記録を整理する。
5.1. 年度別成績
日本プロ野球(NPB)および独立リーグにおける年次ごとの投手成績と守備成績を以下に示す。
5.1.1. NPB
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 奪 三 振 | 与 四 球 | 与 死 球 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 阪神 | 18 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 75 | 17.1 | 17 | 3 | 16 | 6 | 0 | 1 | 0 | 12 | 12 | 6.23 | 1.33 |
2022 | 18 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 94 | 24.0 | 11 | 2 | 24 | 9 | 2 | 2 | 0 | 4 | 2 | 0.75 | 0.83 | |
2023 | 44 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 19 | .500 | 165 | 40.0 | 43 | 2 | 29 | 8 | 1 | 0 | 0 | 8 | 6 | 1.35 | 1.28 | |
2024 | 56 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 | 1 | 30 | .800 | 189 | 48.2 | 34 | 0 | 58 | 14 | 0 | 5 | 0 | 12 | 8 | 1.48 | 0.99 | |
通算:4年 | 136 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 4 | 1 | 49 | .556 | 523 | 130.0 | 105 | 7 | 127 | 37 | 3 | 8 | 0 | 36 | 28 | 1.94 | 1.09 |
- 2024年度シーズン終了時
年 度 | 球 団 | 投手 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2021 | 阪神 | 18 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
2022 | 18 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 | |
2023 | 44 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1.000 | |
2024 | 56 | 0 | 4 | 1 | 0 | .800 | |
通算 | 136 | 1 | 11 | 1 | 0 | .923 |
- 2024年度シーズン終了時
5.1.2. 独立リーグ
年 度 | 球 団 | 防 御 率 | 登 板 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 投 球 回 | 打 者 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 奪 三 振 | 与 四 球 | 与 死 球 | 失 点 | 自 責 点 | 暴 投 | ボ 丨 ク |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 高知 | 2.08 | 21 | 2 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 56.1 | 226 | 43 | 1 | 62 | 13 | 2 | 20 | 13 | 7 | 0 |
2019 | 1.50 | 18 | 6 | 5 | 0 | 5 | 2 | 1 | 108.1 | 419 | 62 | 2 | 122 | 35 | 3 | 24 | 18 | 15 | 0 | |
2020 | 1.69 | 17 | 6 | 7 | 0 | 3 | 0 | 2 | 101 | 396 | 82 | 2 | 129 | 11 | 2 | 26 | 19 | 3 | 0 | |
IL:3年 | 1.69 | 56 | 14 | 16 | 0 | 8 | 2 | 3 | 265.2 | 1041 | 187 | 5 | 313 | 59 | 7 | 70 | 50 | 25 | 0 |
- 各年度の太字はリーグ最高
5.2. 初記録
5.2.1. NPB
; 投手記録
- 初登板:2021年3月26日、対東京ヤクルトスワローズ1回戦(明治神宮野球場)、7回裏に3番手で救援登板、2/3回1失点
- 初奪三振:同上、7回裏に山田哲人から空振り三振
- 初ホールド:2023年4月1日、対横浜DeNAベイスターズ2回戦(京セラドーム大阪)、10回表に6番手で救援登板、1回無失点
- 初勝利:2023年5月11日、対東京ヤクルトスワローズ9回戦(阪神甲子園球場)、8回表に2番手で救援登板、1回無失点
- 初セーブ:2024年10月3日、対横浜DeNAベイスターズ25回戦(横浜スタジアム)9回裏に5番手で救援登板・完了、1回無失点
; 打撃記録
- 初打席:2022年8月4日、対読売ジャイアンツ18回戦(東京ドーム)、3回表に山﨑伊織から一ゴロ
5.3. 背番号
- 17(2018年 - 2020年)
- 69(2021年 - )
5.4. 登場曲
- 「明日はきっといい日になる」高橋優(2021年)
- 「絶頂は今」高橋優(2022年)
- 「HIGH FIVE」高橋優(2023年 - )