1. 概要
笠原桃奈(かさはら ももな)は、2003年10月22日生まれの日本の歌手、アイドル、女優である。神奈川県出身。血液型はA型。身長は163 cm。かつてハロー!プロジェクトのアイドルグループ「アンジュルム」のメンバーとして活躍し、2021年に海外での歌とダンスの勉強を志し、グループを卒業した。その後、2023年にオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』に参加し、最終投票で1位を獲得。ガールズグループ「ME:I英語」のメンバーとして再デビューを果たし、同グループのリーダーおよびデビュー曲のセンターを務めている。ME:I英語での活動名はMOMONA英語である。彼女は、与えられた役割を果たすだけでなく、自身の個性や信念を表現する強い意思を持ち、特に「赤リップ事件」のようなエピソードを通じて、個人の表現の自由や多様性を尊重する姿勢を示してきた。
2. 初期生い立ちと背景
笠原桃奈は2003年10月22日に神奈川県で生まれた。三姉妹の長女である。
2.1. 幼少期と教育
3歳から9年間、本格的にバレエを経験し、ダンスの基礎を培った。幼少期には小学6年生で飼育委員長を務めるなど、動物好きな一面も持っていた。
2.2. 芸能活動初期とオーディション
笠原は幼少の頃から芸能界に興味を持ち、複数のオーディションに挑戦した。2013年には「モーニング娘。12期メンバー『未来少女』オーディション」に応募したが、応募時点で10歳に満たなかったため選考対象から外れた。翌2014年には「モーニング娘。'14 <黄金(ゴールデン)>オーディション」に再び挑戦したが、落選した。しかしその後、同年に行われた「ハロプロ研修生」のオーディションに小学5年生で合格し、念願の芸能活動をスタートさせた。
3. ハロー!プロジェクト活動
笠原桃奈のハロー!プロジェクトにおける活動は、ハロプロ研修生としての基礎固めから始まり、アンジュルムでの飛躍、そして海外留学を目指した卒業へと続く、挑戦と成長の軌跡であった。
3.1. ハロプロ研修生時代
2015年4月1日、笠原はハロプロ研修生に正式に加入した。同年5月4日には中野サンプラザで行われた「ハロプロ研修生発表会2015 ~春の公開実力診断テスト~」で初パフォーマンスを披露した。研修生時代は本人曰く「劣等生」と感じていたが、中学1年生になった2016年5月5日の「ハロプロ研修生発表会2016 ~春の公開実力診断テスト~」では、モーニング娘。の「愛しく苦しいこの夜に」を披露し、審査員と会場投票によって選ばれるベストパフォーマンス賞を受賞した。この受賞は彼女にとって大きな転機となり、一度は辞めるつもりだった研修生としての活動を続ける決意を固めた。
3.2. アンジュルム時代
2016年7月16日、ハロー!プロジェクト夏のコンサートツアー初日公演で、笠原はアンジュルムへの5期メンバーとしての加入がサプライズ発表された。当時12歳での加入は、ハロー!プロジェクト内で最年少であった。発表直後からグループのパフォーマンスに参加し、同年10月19日発売のアンジュルム22ndシングル『上手く言えない/愛のため今日まで進化してきた人間 愛のためすべて退化してきた人間/忘れてあげる』で、グループの音楽作品に初めて参加した。
アンジュルム時代には、彼女の表現への強いこだわりが際立つエピソードとして「赤リップ事件」が知られている。2018年、当時14歳だった笠原が赤いリップを塗ってパフォーマンスしたところ、一部のファンから「メイクが濃い」「子供らしくない」といった指摘を受けた。しかし、当時のリーダーであった和田彩花は、ライブのMCで「アイドルには良いとされる型があるわけではなく、そこに嵌まることが正しいことでもない」「桃奈にはまた赤いリップをつけてほしい」と発言し、笠原の個性と表現の自由を擁護した。この出来事は、アンジュルムが多様な個性を尊重し、メンバー全員でそれを支えるグループであるという姿勢を明確に示した象徴的なエピソードとなった。また、他のメンバーも髪を緑に染めたり、赤リップを塗ったりするなど、当時最年少だった笠原を全員でフォローした。
3.3. ハロー!プロジェクト卒業
2021年6月21日、笠原は年内をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業することを発表した。卒業後は一度芸能界を離れ、海外で歌とダンスの勉強に専念する意向を表明した。同年11月15日には日本武道館で卒業公演「アンジュルムコンサート2021『桃源郷~笠原桃奈 卒業スペシャル~』」が開催され、彼女はアンジュルムとハロー!プロジェクトを正式に卒業し、所属事務所アップフロントプロモーションとの専属契約も終了した。この卒業公演と同日には、女優の蒼井優と菊池亜希子がダブル編集長を務めたラストフォトブック『Dear sister』が発売された。蒼井と菊池は笠原の卒業を知り、自ら企画書を送ってこのフォトブックの制作を実現させた。
4. PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLSとME:I活動
ハロー!プロジェクト卒業後、海外での研鑽を経て、笠原桃奈は新たな挑戦の舞台としてオーディション番組を選び、ME:I英語としての再デビューを果たした。
4.1. PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS参加
2023年9月3日、笠原はサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』に101練習生の一人として出演することが発表された。番組開始前からその参加は大きな注目を集め、「笠原桃奈」「かっさー」といったワードがX(旧Twitter)のトレンドに入るなど、高い関心を集めた。
番組内で実施された国民投票では、第1回で1位、第2回で3位、第3回で再び1位を獲得するなど、常に上位をキープし、その実力と存在感を示した。
各評価ステージでの彼女のパフォーマンスは以下の通りである。
- 練習生評価:** 101人中8位。
- クラス分け評価:** 最高位のAクラスに配属され、再評価後もAクラスを維持した。
- グループバトル:** グループのセンターとサブボーカルを担当し、対戦相手に勝利したことでベネフィットを獲得。このベネフィットは、現場投票で1位のグループ全員、またはグループ内で1位である一人に与えられるボーナス票である。個人では96人中5位を記録した。
- ポジションバトル:** RAP&VOCALポジションを選択し、グループリーダーを務めた。ラップの歌詞は自ら作詞し、その表現力が評価された。グループ内で1位となりベネフィットを獲得し、RAP&VOCAL選択者全体でも7人中2位の成績を収めた。このステージで彼女が歌った「過去との決別」をテーマにした楽曲は、多くの反響を呼んだ。
- コンセプトバトル:** グループのサブボーカルを担当。彼女が所属するグループが全体で1位となりベネフィットを獲得した。グループ内では7人中3位、全体では35人中3位の成績であった。
- デビュー評価:** グループのメインボーカルとリーダーを担当した。
このように、笠原は番組を通してセンター、リーダー、メインボーカル、サブボーカル、ラップと、あらゆるポジションを経験し、参加した全てのバトルでベネフィットを獲得するという異例の成績を残した。2023年12月16日にTBSテレビ系列で生放送された最終回で、得票数1,116,716票を獲得し、見事1位でデビュー権を獲得した。
4.2. ME:Iでのデビューと主な活動
『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』での圧倒的な結果を受けて、笠原桃奈は2023年12月16日にガールズグループ「ME:I英語」のメンバーとしてデビューが決定した。ME:I英語における活動名はMOMONA英語である。
2024年2月26日には、ME:I英語のリーダーに就任したことが発表された。同年4月17日に発売されたME:I英語の1stシングル『MIRAI』のリード曲「Click」では、デビュー曲のセンターポジションを務め、その存在感を改めて示した。ME:I英語での彼女のメンバーカラーはブラック、ME:EYE's英語ネーム(メンバーごとの公式キャラクターで、ME:EYE's英語キャラクターネーム募集によって決定された)は「MO:NA」(モナ)である。番組中で付けられたキャッチフレーズは「天下無敵のチャレンジャー」であった。
5. 人物像
笠原桃奈は、多角的な才能と魅力的な人柄を兼ね備えた人物である。
5.1. 性格と特技
彼女の性格は「挑戦的」「仲間思い」「懐が深い」「竹を割ったような性格」と評され、しばしば少年漫画の主人公に例えられることがある。自身の心の動きに常に真摯に向き合う誠実さ、他者への謙虚さや敬意、そして時に見せる照れが、彼女の魅力として挙げられる。女優の蒼井優は、笠原のフォトブック編集長を務めた際に、「言葉の選び方と感じ方が、本当に素晴らしい」「特別な女の子なのに、見ていると自分の昔を思い出すような感覚になる」「笠原さんを作る全ての要素を抱きしめたくなる力がある方」と高く評価している。また、女優の菊池亜希子も「自分の心の動きにいつも真面目すぎるぐらい誠実に向き合っている。そういう部分が、大人になった私が見ても尊敬できるし、信じられる」と述べている。
特技は、バレエ歴9年で培われたダンス、アクロバット、そして卓越した文章力である。アンジュルムの卒業公演で読んだ手紙をはじめ、ブログなどで綴る文章はファンの間で度々話題となり、その表現力の高さには定評がある。
5.2. 趣味と嗜好
笠原の趣味は多岐にわたり、フィルムカメラ、読書、音楽鑑賞、映画鑑賞、サイクリングなどを挙げている。
音楽の好みも幅広く、特にジャズやクラシック音楽を好む。好きなアーティストにはKeith Jarrett英語や椎名林檎を挙げ、K-POPも聴き、特にRed Velvet英語のファンである。自身の人生のテーマソングとして椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」を、マイベストソングとしてBTS英語の「EPILOGUE : Young Forever」を挙げている。
好きな食べ物は桃やチョコレート、おにぎりの具ではとろサバ、おかかチーズ、いくらを好む。好きな動物は鳥で、オカメインコを飼育しており、深海魚も好きである。
5.3. エピソードと価値観
笠原桃奈の人間性と内面的な価値観は、彼女の座右の銘や特定の出来事、家族関係からも垣間見える。
彼女の座右の銘は、森鴎外の箴言集『知恵袋』の一節「日の光を借りて照る大いなる月たらんよりは、自ら光を放つ小さな灯火たれ」である。これは、他者の影響を受けるよりも、自らの力で輝くことを尊ぶ彼女の独立した価値観を表している。
家族関係においては、彼女のおばが歌手の瑛人と結婚したため、彼とは親戚関係にある。
また、2019年4月には、自身が伸ばしていた髪を切り、がん治療や脱毛症などで悩む人々の医療用ウィッグを作る活動である「ヘアドネーション」に寄付したことを発表した。これは、社会貢献に対する彼女の意識の高さを示すエピソードである。
5.4. ハロー!プロジェクト関連
アンジュルム時代、彼女の公式ニックネームは「かっさー」であり、メンバーカラーはホットピンクであった。また、その明るく活発な性格から「アンジュルムの大型犬」とも呼ばれていた。
笠原はハロー!プロジェクトの先輩たちを深く尊敬していた。特に、元モーニング娘。の工藤遥と佐藤優樹を好きな先輩として挙げ、アンジュルムでの憧れの人物はリーダーの和田彩花であった。また、元モーニング娘。の亀井絵里のファンでもある。ハロプロ研修生の同期である金津美月とは特に仲が良く、金津からは「桃吉」という愛称で呼ばれていた。
アンジュルムのCDシングルでは『上手く言えない/愛のため今日まで進化してきた人間 愛のためすべて退化してきた人間/忘れてあげる』から『はっきりしようぜ/泳げないMermaid/愛されルート A or B?』まで参加した。デジタルシングル『SHAKA SHAKA #2 LOVE カラフルライフ編』が彼女の在籍最後の参加作品となった。
『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』でのME:I英語としてのデビューが決定した際、アンジュルムの現役メンバーだけでなく、多くのOGからも祝福の声が寄せられ、ハロー!プロジェクトとの強い絆が示された。
6. ディスコグラフィ
6.1. ソロ参加作品
笠原桃奈のソロとして発表された主な作品は以下の通りである。
6.1.1. デジタル配信
リリース日 | タイトル | 備考 |
---|---|---|
2021年11月16日 | 地球は今日も愛を育む | アンジュルム在籍最後の配信作品 |
6.1.2. PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS関連楽曲
リリース日 | 参加楽曲 | アルバム |
---|---|---|
2024年2月7日 | LEAP HIGH! ~明日へ、めいっぱい~ | PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS |
&ME | ||
想像以上 | ||
FLY UP SO HIGH |
7. 出演
笠原桃奈は、テレビドラマ、情報・バラエティ番組、ラジオ、舞台など、多岐にわたるメディアで活動している。
7.1. テレビ
- ほぼ日の怪談。「高笑いする女」(2020年8月30日、テレビ神奈川) - 主演・佐々木鈴 役
- PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS(2023年10月5日 - 12月16日、Lemino)
- 最終回はTBS系列で生放送された。
- 沼にハマってきいてみた 特別編 ~沼コレ開幕!ファッション沼~(2024年7月21日、NHK Eテレ)
- めざましテレビ(2025年3月3日・10日・17日・24日〈予定〉、フジテレビ) - マンスリーエンタメプレゼンター
7.2. ラジオ
- HELLO! DRIVE! -ハロドラ-(Radio NEO)
- 2016年10月 - 2017年9月:木曜日担当
- 2017年10月 - 2019年6月:金曜日担当
- アンジュルムステーション1422(ラジオ日本)
7.3. 舞台
- 演劇女子部「MODE」(2016年10月1日 - 10日、全労済ホール) - 岬かよ 役
- 演劇女子部「夢見るテレビジョン」(2017年10月5日 - 15日、全労済ホール) - 新田千代 役
- 演劇女子部 全労済ホール/スペース・ゼロ提携公演「アタックNo.1」(2018年11月29日 - 12月9日、全労済ホール) - 小幡すずめ 役
8. 書籍
8.1. 写真集
- Momona(2019年10月22日、オデッセー出版、撮影:宮脇進)
- Dear sister(2021年11月15日、オデッセー出版、撮影:高橋ヨーコ、編集長:蒼井優・菊池亜希子)
- 笠原のアンジュルム卒業を受けて、蒼井優と菊池亜希子が自らアップフロントプロモーションに企画書を送り、実現したフォトブックである。