1. 初期生活とユース経歴
裵千奭は1990年4月27日に大韓民国の大邱広域市で生まれた。幼少期からサッカーに親しみ、その才能を育んだ。
1.1. ユースサッカーと大学
裵千奭は、浦項スティーラースのユースシステムである浦項製鉄初等学校、浦項製鉄中学校、浦項製鉄高校サッカー部を経て成長した。高校時代にはU-17代表の主力フォワードとして活躍した。
2009年のKリーグドラフトで浦項スティーラースに優先指名された後、崇実大学校に進学。大学在学中も、デンソーカップサッカーの日韓大学定期戦で韓国選抜に選ばれるなど、その才能を発揮した。2011年には2011年夏季ユニバーシアードの韓国代表としても出場している。
2. クラブ経歴
裵千奭は、日本と韓国の複数のクラブでプロサッカー選手としてプレーした。
2.1. ヴィッセル神戸
2011年7月、崇実大学校を中退し、日本のJリーグ1部のヴィッセル神戸とプロ契約を結んだ。同年8月20日のアルビレックス新潟戦(ホームズスタジアム神戸)でJリーグ初出場を果たし、プロデビューを飾った。2011年シーズンは3試合に出場したが、シーズン終盤に両脛の疲労骨折を負い、戦線離脱を余儀なくされた。この負傷により手術を受け、9ヶ月間におよぶリハビリ期間を過ごした。
2012年シーズンは前年の負傷の影響で出遅れた。同年6月にJリーグカップで同シーズン初出場を果たしたが、わずか6分で退場処分を受けた。これ以降、練習試合には出場したものの、怪我の影響もあり、事実上チームの構想外となった。結局、2012年の公式戦出場はこの1試合に留まり、シーズン終了後にヴィッセル神戸から戦力外通告を受けた。
2.2. 浦項スティーラース
2013年1月、ユース時代を過ごした親元の浦項スティーラースに正式に入団した。同年3月2日に行われたFCソウルとのシーズン開幕戦でKリーグクラシックデビューを果たし、途中出場した。3月30日の全南ドラゴンズ戦ではプロ初となるアシストを記録。4月13日の慶南FC戦では、後半18分に途中出場し、わずか6分後にリーグ戦での初ゴールを成功させた。
また、AFCチャンピオンズリーグ2013では、グループリーグ第2節のFCブニョドコル(アウェイ)戦で先発出場した。さらに第3節のサンフレッチェ広島(アウェイ)戦でも先発出場し、決勝ゴールを挙げてチームの勝利に貢献した。
2014年シーズンは、AFCチャンピオンズリーグ2014の初戦となるセレッソ大阪とのホームゲームで同点ゴールを記録し、好スタートを切った。しかし、このシーズンも前半を乗り切る前に両脛の疲労骨折で再び手術を受け、事実上シーズンを棒に振ることになった。
2.3. 釜山アイパーク
2014年12月18日、釜山アイパークへの移籍が発表された。2015年シーズンは、Kリーグクラシックで21試合に出場し1得点を記録した。
2.4. 全南ドラゴンズ
2016年に全南ドラゴンズへ移籍した。2016年から2017年にかけて、リーグ戦31試合に出場し3得点を挙げ、チームに貢献した。
2.5. 利川市民蹴球団
2018年シーズンを前に、利川市民蹴球団に入団し、選手キャリアの後半を過ごした。
3. 代表経歴
裵千奭は、幼少期から韓国の各年代別代表チームに選出され、国際舞台で活躍した。
- U-15韓国代表(2005年)
- U-16韓国代表(2006年)
- U-17韓国代表(2006年 - 2007年)
- U-20韓国代表(2009年)
- 全韓国大学サッカー選抜(2010年 - 2011年)
- U-22韓国代表(2011年):2011年6月にはU-22韓国代表に選出され、オマーンとの評価試合で2ゴールを記録した。
- ユニバーシアード韓国代表(2011年)
4. 獲得タイトルと栄誉
クラブタイトル
- 浦項スティーラース**
- Kリーグクラシック: 2013年
- 韓国FAカップ: 2013年
5. 人物・エピソード
裵千奭は、日本のお笑いタレント・小籔千豊に顔がそっくりなことで、ヴィッセル神戸加入当初から話題となった。チーム内での愛称も「コヤブ」や、小籔が吉本新喜劇の座長の一人であることに由来する「ザチョウ」が定着しており、本人も「似ているものは仕方ない」と語り、この愛称を受け入れている。
韓国にいた頃の愛称は、唇が厚いことからそのまま「唇」と呼ばれていた。
なお、中学時代から大学時代にかけての同期には、サッカー選手のキム・ソンジュがいる。
6. クラブ別成績
2015年12月6日時点での成績。
| クラブ成績 | リーグ | カップ | リーグカップ | 大陸大会 | 合計 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| クラブ | シーズン | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 |
| 日本 | リーグ | 天皇杯 | Jリーグカップ | アジア | 合計 | |||||||
| ヴィッセル神戸 | 2011 | J1リーグ | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 4 | 0 | |
| 2012 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | ||||
| 韓国 | リーグ | FAカップ | - | アジア | 合計 | |||||||
| 浦項スティーラース | 2013 | Kリーグクラシック | 20 | 4 | 0 | 0 | - | 5 | 1 | 25 | 5 | |
| 2014 | 4 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 7 | 1 | ||||
| 釜山アイパーク | 2015 | 21 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 21 | 1 | |||
| 通算(日本) | 3 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | ||
| 通算(韓国) | 45 | 5 | 0 | 0 | - | 8 | 2 | 53 | 7 | |||
| 総通算 | 48 | 5 | 1 | 0 | 1 | 0 | 8 | 2 | 58 | 7 | ||