1. プロ入り前
プロ入り前、長岡秀樹は千葉県船橋市で野球を始め、高校時代には千葉県大会で準優勝を経験し、プロのスカウトからも注目を集めるようになった。
1.1. 幼少期から学生時代
長岡秀樹は、船橋市立古和釜小学校1年生の時に学童野球チーム「習志野台ワンパクズ」に入り野球を始めた。野球を始めたきっかけは、中学校の教諭で野球部の監督だった父の影響だったという。船橋市立大穴中学校では軟式野球部に所属した。
八千代松陰高等学校では「1番・遊撃手」としてプレーした。甲子園の出場は果たせなかったものの、3年夏の千葉大会では、4回戦の専大松戸戦で横山陸人から本塁打を放つなど活躍を見せた。チームは決勝で習志野に敗れたが、準優勝を果たした。高校の1学年上には清宮虎多朗がおり、清宮の視察に来ていたスカウトや、専大松戸戦で横山を視察していたスカウトの目に留まり、プロ球団から注目されるようになった。
1.2. プロ指名
2019年10月17日に開催されたプロ野球ドラフト会議において、東京ヤクルトスワローズから5位指名を受けた。同年11月13日には、契約金250.00 万 JPY、年俸500.00 万 JPY(金額は推定)で仮契約を結び、入団が決定した。入団時の背番号は58。担当スカウトは丸山泰嗣だった。
2. プロ経歴
長岡秀樹はプロ入り後、着実に経験を積み、特に2022年シーズンに大きく飛躍し、守備と打撃の両面でチームに貢献する主力選手へと成長を遂げた。
2.1. 2020年 - 2021年:デビューと初期の活動
2020年は、イースタン・リーグで71試合に出場し、規定打席に到達。打率.219、2本塁打、26打点の成績を残した。二軍では同期の武岡龍世と二遊間を組むことが多かった。シーズン終盤に一軍に初昇格し、10月30日の読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)で、「8番・二塁手」として先発出場。この試合で今村信貴から左前にプロ初安打を記録した。この年は一軍で6試合に出場し、記録した安打はこの1本のみで、打率.083だった。
2021年は、3月31日に一軍登録されたが、4月5日には登録抹消された。この年は一軍で5試合に出場し無安打に終わったが、二軍では前年を上回る82試合に出場し、打率.261、7本塁打を記録するなど、二軍で経験を積む一年となった。
2.2. 2022年:飛躍のシーズン
2022年は、オープン戦でチーム2位となる5打点を記録し、開幕一軍入りを勝ち取った。大阪ドームで行われた阪神タイガースとの開幕戦では「6番・遊撃手」で先発出場。7点ビハインドの6回表に反撃の口火を切る適時打でプロ初打点を記録し、4安打を放つ活躍でチームの逆転勝利に貢献した。その後しばらく打率は2割台近辺を推移していたが、守備の安定性や、元々の遊撃レギュラー候補であった西浦直亨や元山飛優が二軍でも不振だったことを背景に、先発出場を継続。5月6日の巨人戦(東京ドーム)では高梨雄平からプロ初本塁打を放った。以降、正捕手の中村悠平が一軍に復帰し上位打線が固まったことで8番打者として固定されるようになると、打撃も次第に上向き、5月には3割以上の打率を記録した。新型コロナウイルス感染症の影響で一時離脱したものの、正遊撃手としての地位を確立。9本塁打と二桁には届かなかったものの、自身初の規定打席にも到達するなど、飛躍の年となった。
守備面では、球団史上最年少でゴールデングラブ賞を受賞し、ヤクルトの遊撃手としては2003年の宮本慎也以来19年ぶりの受賞となった。ファン感謝祭が開催された11月27日には、背番号が7に変更されることが発表された。12月7日、推定年俸3300.00 万 JPY(2700.00 万 JPY増)で契約を更改した。
2.3. 2023年:安定した活躍
2023年も開幕から遊撃手としてレギュラーを務めた。5月5日の横浜DeNAベイスターズ戦(神宮球場)では、1点を追う9回裏二死の場面で山﨑康晃から自身初のサヨナラ本塁打を放った。このシーズンは135試合に出場し、守備率は.986とリーグトップの成績を残したが、打率.227(規定打席達成者27人中では最下位)、3本塁打と打撃成績は落とした。
シーズン終了後、みやざきフェニックス・リーグでは三塁に挑戦していたが、10月25日の試合で守備中に左翼手の澤井廉と衝突し緊急搬送されるアクシデントに見舞われた。この影響で11月に行われた秋季キャンプには参加しなかった。12月12日、推定年俸4100.00 万 JPY(800.00 万 JPY増)で契約を更改した。
2.4. 2024年:最多安打のタイトル獲得
2024年は、野手陣に故障者が続出する中で開幕から遊撃のレギュラーとして出場し、ファン投票で3年連続のオールスターゲームに選出されるなどチームを牽引した。7月28日の広島東洋カープ戦で栗林良吏から逆転サヨナラ二塁打を放ち、8月には打率.384、38安打を記録。9月29日の巨人戦では平内龍太からサヨナラ適時打を放つなど、攻守にわたって存在感を示した。このシーズンはチーム野手で村上宗隆と共に全試合に遊撃手として先発出場し、打率.288、163安打とキャリアハイの成績を残した。近本光司や秋山翔吾らとの安打数争いを制し、自身初の最多安打のタイトルを獲得した。このタイトル獲得は、ヤクルトの選手としては2015年の川端慎吾以来9年ぶりの快挙であった。12月20日、推定年俸9200.00 万 JPY(5100.00 万 JPY増)で契約を更改した。
3. 選手としての特徴

長岡秀樹は、走攻守に定評がある内野手である。打撃では思い切りが良く、広角に打ち分けるセンスと勝負強さが際立つ。高校時代には通算19本塁打、50m走のタイム6秒1を記録している。
遊撃手としては、捕球から送球までに無駄な動きが少なく、バウンドを合わせやすいようにあらかじめ守備位置を深くしている。
4. 人物
長岡秀樹の愛称は「岡ちゃん」である。
高校時代に理想の選手として今宮健太を挙げており、「(今宮さんは)プロ野球選手として体は小さいけど成績を残されて、自分も大きくないんですけど、あれだけできると自分に夢を与えてくれた目標の選手です」と語っている。プロ入り後は自主トレーニングを共にしている中村晃に憧れ、レギュラーとして初めて結果を出した2022年オフには中村と同じ背番号7に変更した。
高校1年時に母親が白血病と診断され、長岡自身がドナーとして骨髄を移植した経験を持つ。ドナーが受ける白血球を増加させる注射は激しい腰痛を伴うため、当時はグラウンドに立てない日々が1週間以上続いたという。長岡は「母親がもしかしたらいなくなってしまうっていう恐怖感はありましたけど、僕の恐怖感はなかったです」と語り、ドナーになることを即決したという。
5. 詳細情報
長岡秀樹のプロ野球選手としての詳細な成績、受賞歴、タイトル、そして個人記録を以下に示す。
5.1. 年度別打撃成績
年度 | 球団 | 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 2塁打 | 3塁打 | 本塁打 | 塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁刺 | 犠打 | 犠飛 | 四球 | 故意四球 | 死球 | 三振 | 併殺打 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020年 | ヤクルト | 6 | 13 | 12 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | .083 | .083 | .083 | .167 |
2021年 | 5 | 10 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | .000 | .100 | .000 | .100 | |
2022年 | 139 | 548 | 511 | 44 | 123 | 22 | 0 | 9 | 172 | 48 | 2 | 3 | 10 | 3 | 20 | 1 | 4 | 72 | 10 | .241 | .273 | .337 | .610 | |
2023年 | 135 | 488 | 445 | 43 | 101 | 19 | 1 | 3 | 131 | 35 | 4 | 2 | 7 | 2 | 29 | 5 | 5 | 57 | 11 | .227 | .281 | .294 | .575 | |
2024年 | 143 | 611 | 566 | 63 | 163 | 25 | 1 | 6 | 208 | 58 | 4 | 1 | 10 | 3 | 29 | 2 | 3 | 70 | 6 | .288 | .324 | .367 | .692 | |
通算:5年 | 428 | 1670 | 1543 | 150 | 388 | 66 | 2 | 18 | 512 | 141 | 10 | 6 | 28 | 8 | 79 | 8 | 12 | 206 | 28 | .251 | .292 | .332 | .624 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
5.2. 年度別守備成績
年度 | 球団 | 二塁 | 遊撃 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | ||
2020 | ヤクルト | 4 | 3 | 8 | 2 | 0 | .846 | - | |||||
2021 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1.000 | 2 | 4 | 2 | 0 | 1 | 1.000 | |
2022 | - | 139 | 227 | 419 | 13 | 105 | .980 | ||||||
2023 | - | 132 | 207 | 368 | 8 | 81 | .986 | ||||||
2024 | - | 143 | 216 | 415 | 9 | 93 | .986 | ||||||
通算 | 5 | 3 | 9 | 2 | 0 | .857 | 416 | 654 | 1204 | 30 | 280 | .984 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
- 太字年はゴールデングラブ賞受賞年
5.3. タイトル
- 最多安打:1回(2024年)
5.4. 表彰
- ベストナイン:1回(遊撃手部門:2024年)
- ゴールデングラブ賞:1回(遊撃手部門:2022年)
- スカパー! ドラマティック・サヨナラ賞年間大賞:1回(2024年)
- 月間サヨナラ賞:2回(2023年5月、2024年7月)
5.5. 記録
長岡秀樹のプロ野球選手としての主な記録を以下に示す。
5.5.1. 初記録
- 初出場・初先発出場:2020年10月23日、対中日ドラゴンズ21回戦(明治神宮野球場)、「7番・二塁手」で先発出場
- 初打席:同上、2回裏にYariel Rodríguezヤリエル・ロドリゲススペイン語から左飛
- 初安打:2020年10月30日、対読売ジャイアンツ20回戦(東京ドーム)、5回表に今村信貴から左前安打
- 初打点:2022年3月25日、対阪神タイガース1回戦(京セラドーム大阪)、6回表に藤浪晋太郎から右中間適時二塁打
- 初本塁打:2022年5月6日、対読売ジャイアンツ7回戦(東京ドーム)、9回表に高梨雄平から右越2ラン
- 初盗塁:2022年6月17日、対広島東洋カープ7回戦(明治神宮野球場)、8回裏に二盗(投手:塹江敦哉、捕手:中村奨成)
5.5.2. その他の記録
- オールスターゲーム出場:3回(2022年、2023年、2024年)
5.6. 背番号
- 58(2020年 - 2022年)
- 7(2023年 - )