1. 概要
ニジェール出身のプロサッカー選手であるアリ・モハメド・アル・ファズ(Ali Mohamed Al Fazフランス語、1995年10月7日生まれ)は、ミッドフィールダーとして活躍し、現在はイスラエル・プレミアリーグのマッカビ・ハイファに所属するとともに、ニジェール国家代表チームの一員でもあります。彼のキャリアは、初期のアマチュア活動からフランスのボルドーユースチームでの訓練、そしてイスラエルのプロリーグでの複数のクラブを経て、数々のリーグタイトルやカップ戦での優勝という輝かしい成果を収めています。しかし、特にベイタル・エルサレム在籍時には、彼の名前に起因する人種差別的な発言や宗教的迫害に直面し、クラブの一部ファンによる名前変更要求や公開練習中の罵倒といった社会的な問題に巻き込まれました。それでも彼は敬虔なキリスト教徒としての信仰を貫き、困難を乗り越えてプロとして成功を収め続けています。この記事では、彼の生涯とキャリアの歩みを詳細に辿り、特に彼が直面した社会的問題がスポーツ界にもたらす影響と、それに対する対応に焦点を当てて記述します。
2. 初期とキャリアの始まり
アリ・モハメド・アル・ファズのキャリアは、故郷ニジェールでの若年期から始まり、その後イスラエルのプロリーグへと進みました。
2.1. 出生とユースキャリア
1995年10月7日に生まれたアリ・モハメド・アル・ファズは、故郷のニジェールでサッカーのキャリアをスタートさせました。彼はAS FANで選手生活を始め、17歳という若さでシニアチームでのデビューを果たしました。2013年には、フランスの著名なクラブであるボルドーのユース部門に入団し、リザーブチームで断続的に練習を積みました。
2.2. 初期プロクラブ活動
2015年の夏、モハメドはイスラエルのクラブであるベイタル・テルアビブ・ラムラと契約を結びました。同年9月7日、彼はブネイ・ロッド戦でクラブデビューを果たしましたが、試合は1-4で敗れました。翌2016年2月19日には、ブネイ・ロッド戦で自身のクラブ初ゴールを記録し、チームは3-2で勝利しました。
同年7月6日、モハメドはマッカビ・ネタニヤと契約しました。2017年3月17日には、ハポエル・カタモン・エルサレム戦でマッカビ・ネタニヤでの初ゴールを決め、チームは4-0で快勝しました。このシーズン、彼は1ゴール5アシストという成績を残しました。2018年1月22日、モハメドはマッカビ・ネタニヤとの契約を2019-20シーズン終了まで延長し、その契約には250.00 万 USDという放出条項が設定されました。
3. 主要クラブキャリア
アリ・モハメド・アル・ファズのプロクラブでの活動は、大きな成功と同時に、社会的な論争に巻き込まれることもありました。
3.1. ベイタル・エルサレムと関連する論争
2019年6月10日、モハメドはベイタル・エルサレムと3年契約を結び、その移籍金は170.00 万 EURでした。しかし、この移籍はクラブの歴史的な背景と一部ファンの行動により、大きな論争を巻き起こしました。ベイタル・エルサレムは、伝統的にユダヤ教徒以外の選手を避けてきたことで知られており、モハメドの入団はクラブにとって異例の出来事でした。
クラブの過激なサポーター集団「ラ・ファミリア」の一派は、彼の名前「アリ・モハメド」がイスラム教徒を想起させるとして、その名前の変更を要求する嘆願書を提出しました。これは、モハメド自身が敬虔なキリスト教徒であるにもかかわらず行われたもので、個人の信仰や出自に対する人種差別的かつ宗教的迫害的な行動でした。
同年11月には、モハメドが公開練習中に一部のファンから直接的な人種差別的罵倒を受けるという痛ましい事態が発生しました。このような行為は、スポーツにおける人権と社会正義の原則に対する重大な侵害であり、選手の人格を無視するものです。これに対し、クラブオーナーのモシェ・ホゲグは、モハメドを強く支持する姿勢を表明しました。ホゲグは、「ラ・ファミリア」および選手に対して人種差別的罵倒を行ったファンに対して法的措置を講じることを公約し、クラブとしてあらゆる差別に立ち向かう断固たる姿勢を示しました。ホゲグのこのような対応は、スポーツ界における差別根絶に向けた重要な一歩として評価されました。
3.2. マッカビ・ハイファと現在の活動
ベイタル・エルサレムでの期間を経て、アリ・モハメド・アル・ファズはマッカビ・ハイファに移籍し、現在も同クラブでミッドフィールダーとしてプレーを続けています。マッカビ・ハイファでは、彼の能力が存分に発揮され、チームの主要な成功に大きく貢献しています。彼は現在もクラブの中心選手の一人として活躍し、数々の重要なタイトル獲得に貢献しています。
4. 代表キャリア
アリ・モハメド・アル・ファズは、ニジェール国家代表チームの一員としても国際舞台で活躍しています。2013年9月6日、彼は2014 FIFAワールドカップ予選のアフリカ地域予選の一環として行われたブルキナファソとのホームゲームで、ニジェール代表としてデビューを果たしました。この試合は0-1で敗れましたが、モハメドにとって国際的なキャリアの始まりとなりました。
5. 私生活
アリ・モハメド・アル・ファズの名前は、故人となった父親の信仰に由来するイスラム教的な響きを持っていますが、彼は自身が敬虔なキリスト教徒であると公言しています。これは母親の信仰に基づいています。この宗教的背景は、特にベイタル・エルサレム在籍時の人種差別的論争において注目されました。2022年8月には、アリ・モハメドはイスラエルの1年間の居住資格を取得しました。
6. 栄誉
アリ・モハメド・アル・ファズがプロキャリアにおいて所属チームで獲得した主な栄誉は以下の通りです。
- マッカビ・ネタニヤ
- リガ・レウミット: 2016-17
- ベイタル・エルサレム
- トトカップ: 2019-20
- マッカビ・ハイファ
- イスラエル・プレミアリーグ: 2021-22、2022-23
- イスラエル・トトカップ(リガット・ハアル): 2021-22
- イスラエル・スーパーカップ: 2021、2023