1. 概要
アルベルト・コンティ(Albert Contiアルバート・コンティ英語、1887年1月29日 - 1967年1月18日)は、オーストリア=アメリカ人の俳優である。貴族であるカボガ家の一員として生まれ、第一次世界大戦でオーストリア軍の将校を務めた後、1919年にアメリカ合衆国へ移住した。アメリカでは当初肉体労働に従事したが、映画監督エーリッヒ・フォン・シュトロハイムによって俳優としての才能を見出され、サイレント映画からトーキー映画に至るまで数多くの作品に出演し、特徴的な役柄で中程度の名声を得た。晩年はMGMのワードローブ部門で働き、1962年に引退した。彼のキャリアは、ヨーロッパの貴族階級からアメリカの映画界へと渡り、多岐にわたる役柄を演じたことで知られている。
2. 幼少期と背景
アルベルト・コンティは、第一次世界大戦前のオーストリア=ハンガリー帝国領において、貴族の家系に生まれた。幼少期には法学と自然科学を学び、第一次世界大戦では将校として従軍した経験を持つ。
2.1. 生誕と家系
アルベルト・コンティは、本名をアルベルト・マロイカ・ブラジウス・フランツ・マリア、リッター・コンティ・フォン・チェダサマーレ(Albert Maroica Blasius Franz Maria, Ritter Conti von Cedassamareアルベルト・マロイカ・ブラジウス・フランツ・マリア、リッター・コンティ・フォン・チェダサマーレ英語)といい、1887年1月29日に当時のオーストリア=ハンガリー帝国領であったゴリツィアで生まれた。彼の父親はアルベルト・リッター・コンティ・フォン・チェダサマーレ、母親はカボガ家の一員であるマリー・ベルンハーディネ・アンナ・カボガ伯爵夫人であった。カボガ家は、ラグサ(現在のドゥブロヴニク)に由来する古くからの貴族の家系であった。
2.2. 教育と第一次世界大戦
コンティは、オーストリアのグラーツにある高等学校および法科大学で法律を専門的に学び、さらに自然科学も学んだ。彼はパトリシア・クロスと結婚した。第一次世界大戦が勃発すると、彼はオーストリア軍に入隊し、将校として従軍した。戦争終結後、両陣営から多くのヨーロッパ人が困窮した状況に陥る中、彼もまたオーストリア軍を除隊した。
3. アメリカ合衆国への移住
第一次世界大戦後、アルベルト・コンティは、戦後の混乱と貧困から脱するため、アメリカ合衆国へ渡る決意をした。
1919年、コンティはフィラデルフィア港を経由してアメリカ合衆国へ移住した。貴族の出身という彼の高貴な背景にもかかわらず、新しい国での生活を立てるために、彼は一連の肉体労働の職に就くことを余儀なくされた。その中には、カリフォルニア州の油田での労働も含まれていた。
4. 俳優としてのキャリア
カリフォルニアの油田で働いていた際、アルベルト・コンティの人生は転機を迎える。彼は映画監督によってその才能を見出され、サイレント映画時代からトーキー映画時代にかけて、数多くの作品に出演した。
4.1. 発見と初期の役割
油田での労働中、映画監督エーリッヒ・フォン・シュトロハイムが、自身の新作映画『メリー・ゴー・ラウンド』(1923年)の技術顧問を務めるオーストリア軍将校を募集する公開募集を行った。この募集に応じたことで、コンティの俳優としてのキャリアが始まった。彼は『メリー・ゴー・ラウンド』でルディ / フォン・ライヒツィン男爵(Rudi / Baron von Leightsinn)役を演じ、俳優としてデビューを果たした。
4.2. サイレント映画とトーキー映画のキャリア
コンティは、他の多くのオーストリア=ハンガリー帝国出身の移住者よりも優れた演技力を持つ俳優として評価され、サイレント映画とトーキー映画の両方で品位のあるキャラクター役を確保することができた。彼の出演作品は多岐にわたり、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の『モロッコ』(1930年)のようなドラマ作品から、初期のローレル&ハーディによるドタバタ喜劇『Slipping Wives』(1927年)のようなコメディ作品まで幅広いジャンルに及んだ。

彼は特に、1928年のサイレント映画『ドライ・マティーニ』では放蕩者の芸術家コンウェイ・クロスを演じ、その存在感を示した。コンティは様々な役柄をこなし、多くの作品で脇役ながらも重要な役割を担った。彼の最後の映画出演は1942年であった。
4.3. 俳優業引退後のキャリアと晩年
俳優としての活動は1942年で終了したが、アルベルト・コンティは映画業界に留まり続けた。彼はMGMのワードローブ部門の従業員として勤務し、1962年に引退するまでそこで働いた。
5. 主な出演作品
アルベルト・コンティが出演した主な映画作品は以下の通りである。
- 『メリー・ゴー・ラウンド』(1923年) - ルディ / フォン・ライヒツィン男爵
- 『メリー・ウィドウ』(1925年) - ダニーロの副官(クレジットなし)
- 『イーグル』(1925年) - クシュカ
- 『Watch Your Wife』(1926年) - アルフォンス・マルサック
- 『Old Loves and New』(1926年) - チャルマーズ博士
- 『金髪の聖女』(1926年) - アンドレアス
- 『椿姫』(1926年) - アンリ
- 『Slipping Wives』(1927年、短編) - オナラブル・ウィンチェスター・スクワーツ
- 『モックリー』(1927年) - ノヴォクルスク軍司令官(クレジットなし)
- 『Love Me and the World Is Mine』(1927年) - ビリー
- 『中国鸚鵡』(1927年) - マーティン・ソーン
- 『デビル・ダンサー』(1927年) - アーノルド・ガスリー
- 『Honeymoon Hate』(1927年) - (クレジットなし)
- 『南海の恋』(1927年) - マックス・ウェーバー
- 『コンドームの軍団』(1928年) - フォン・ホーエンドルフ
- 『偉大なアレックス』(1928年) - エド
- 『テンペスト』(1928年) - 端役(クレジットなし)
- 『華麗なる浮気』(1928年) - デストランジュ伯爵
- 『Stocks and Blondes』(1928年) - パワーズ
- 『パリの石膏』(1928年) - アブー・ベン・アベド
- 『ウェディング・マーチ』(1928年) - 帝国衛兵(クレジットなし)
- 『ドライ・マティーニ』(1928年) - コンウェイ・クロス
- 『活動屋』(1928年) - プロデューサー
- 『キャプテン・ラッシュ』(1929年) - アレックス・コンダックス
- 『舗道の女』(1929年) - フィノー男爵
- 『Making the Grade』(1929年) - 端役(クレジットなし)
- 『サタデイズ・チルドレン』(1929年) - メングル
- 『高貴なるフラッパー』(1929年) - カプラのアレクサンダー王
- 『ジャズ・ヘブン』(1929年) - ウォルター・クラック
- 『メロディ・マン』(1930年) - フリードリヒ王子
- 『Such Men Are Dangerous』(1930年) - ポール・シュトローム
- 『ワン・ロマンティック・ナイト』(1930年) - ルッツェン伯爵
- 『Our Blushing Brides』(1930年) - パントワーズ氏
- 『モンテ・カルロ』(1930年) - 司会者
- 『マダム・サタン』(1930年) - 帝国将校
- 『モロッコ』(1930年) - クイノヴィエール大佐(クレジットなし)
- 『ああ、男のため』(1930年) - ペック
- 『Sea Legs』(1930年) - 船長
- 『ギャングバスター』(1931年) - カルロ(クレジットなし)
- 『Liebe auf Befehl』(1931年) - ゲサンシャフトセクレター
- 『見知らぬキス』(1931年) - ド・バザン
- 『Always Goodbye』(1931年) - パーティーのゴシップ(クレジットなし)
- 『ただのジゴロ』(1931年) - フランス人の夫
- 『慣習法』(1931年) - ストレンジウェイズ・パーティーの客(クレジットなし)
- 『モダンエイジ』(1931年) - アンドレ・ド・グレーニョン
- 『ハートブレイク』(1931年) - 連絡将校
- 『モンテ・カルロの女』(1932年) - 上流階級の男(クレジットなし)
- 『ギリシャ人は彼らに一言あった』(1932年) - 船上のフランス人(クレジットなし)
- 『フリークス』(1932年) - 地主(クレジットなし)
- 『過去を持つ女』(1932年) - ルネ
- 『傷んだ店』(1932年) - アンドレ
- 『ケアレス・レディ』(1932年) - フランスのホテル受付係(クレジットなし)
- 『Doomed Battalion』(1932年) - ケスラー大尉
- 『国務弁護士』(1932年) - マリオ
- 『あなたの望むままに』(1932年) - 大尉
- 『赤毛の女』(1932年) - パリのフランス人(クレジットなし)
- 『ナイトクラブ・レディ』(1932年) - ヴィンセント・ローランド
- 『男は馬鹿だ』(1932年) - スピネリ
- 『Second Fiddle』(1932年)
- 『ブランシュ夫人の秘密』(1933年) - フランスのホテル受付係(クレジットなし)
- 『トパーズ』(1933年) - アンリ・ド・フェールヴィル
- 『Love Is Dangerous』(1933年) - R.J.オームズビー
- 『野蛮人』(1933年) - レストラン支配人(クレジットなし)
- 『愛しの君』(1933年) - 船長(クレジットなし)
- 『アイ・ラブ・ザット・マン』(1933年) - ピエトロ - ヘッドウェイター(クレジットなし)
- 『上海マッドネス』(1933年) - リゴー
- 『トーチ・シンガー』(1933年) - カルロッティ
- 『私の唇は裏切る』(1933年) - 自動車セールスマン(クレジットなし)
- 『Gigolettes of Paris』(1933年)
- 『愛しの君』(1934年) - フランツ・フォン・ハウスマン男爵
- 『ナナ』(1934年) - ユーゴ - 大公の補佐官(クレジットなし)
- 『1934年のファッション』(1934年) - サヴァラン(クレジットなし)
- 『ギャンブリング・レディ』(1934年) - フランスのルーレット見物人(クレジットなし)
- 『激流』(1934年) - 倒れたトミーを助ける男(クレジットなし)
- 『黒猫』(1934年) - 中尉
- 『Elmer and Elsie』(1934年) - バルロッティ
- 『Love Time』(1934年) - ニコラス
- 『神々の製粉所』(1934年) - フィリッポ・ディ・フラスキアーニ伯爵
- 『夜は若者』(1935年) - ミュラー(クレジットなし)
- 『交響曲の生活』(1935年) - マンチーニ
- 『疑惑の影』(1935年) - ルーイ - ヘッドウェイター(クレジットなし)
- 『Goin' to Town』(1935年) - ヘッド・スチュワード(クレジットなし)
- 『十字軍』(1935年) - レオポルド - オーストリア公爵
- 『Here's to Romance』(1935年) - ルフェーブル
- 『ページ・ミス・グローリー』(1935年) - 乗馬服仕立て屋(クレジットなし)
- 『ダイアモンド・ジム』(1935年) - 宝石商
- 『テーブルを挟んで』(1935年) - 隠れ酒場のメートル・ドテル(クレジットなし)
- 『大学生』(1936年) - ヘッドウェイター
- 『エイムズ夫人に対する訴訟』(1936年) - アルマン - ヘッドウェイター(クレジットなし)
- 『Fatal Lady』(1936年) - ヘッドウェイター(クレジットなし)
- 『ハリウッド大通り』(1936年) - ビル・サンフォード - トロカデロ支配人
- 『スリー・スマート・ガールズ』(1936年) - 伯爵の友人(クレジットなし)
- 『100万人に一人』(1936年) - ホテル支配人
- 『盗まれた休日』(1937年) - 写真家(クレジットなし)
- 『彼女の夫は嘘をつく』(1937年) - アントワーヌ(クレジットなし)
- 『カフェ・メトロポール』(1937年) - 刑務所の憲兵(クレジットなし)
- 『デンジャラスリー・ユアーズ』(1937年) - モネ
- 『征服』(1937年) - ワレンシュタイン伯爵(クレジットなし)
- 『恋をしよう』(1937年) - レピノ(クレジットなし)
- 『オールウェイズ・グッバイ』(1938年) - モディスト・ブノワ
- 『ゲートウェイ』(1938年) - 伯爵
- 『スエズ運河』(1938年) - フェブリエ氏
- 『暗闇の街のチャーリー・チャン』(1939年) - 旅行代理店支配人(クレジットなし)
- 『全ては夜に起こる』(1939年) - メートル・ドテル(クレジットなし)
- 『カウボーイとブロンド』(1941年) - 重役(クレジットなし)
- 『マイ・ギャル・サル』(1942年) - アンリ
- 『ヒューマン・コメディ』(1943年) - 客(クレジットなし)
- 『セントルイスの誇り』(1952年) - フランク・クロセッティ(クレジットなし)(最終出演作)
6. 死去
アルベルト・コンティは、1967年1月18日にアメリカ合衆国のカリフォルニア州ハリウッドで死去した。享年79歳。彼の死因は脳卒中であった。
7. 評価と後世への影響
アルベルト・コンティは、オーストリア=ハンガリー帝国からの移住者の中でも比較的演技力に秀でた俳優として認識されており、サイレント映画とトーキー映画の両方で「品位のあるキャラクター役」を演じ続けた。彼は、自身の経歴を活かした将校や貴族、ホテル関係者などの役柄で観客に存在感を示し、数多くのハリウッド映画に貢献した。彼が映画界に残した影響は、多様な背景を持つ俳優がアメリカ映画産業で活躍する道のりを拓いた一例として、後世に語り継がれている。
8. 外部リンク
- [https://www.imdb.com/name/nm0176302/ Albert Conti - IMDb]