1. 概要
アルベルト・エントレリオス・ロドリゲス(Alberto Entrerríos Rodríguezスペイン語、1976年11月7日 - )は、スペイン・ヒホン出身の元ハンドボール選手、指導者である。現役時代のポジションはレフトバック。長年にわたりスペイン代表の中心選手として活躍し、引退後は指導者としてチームを率いている。
彼は選手として、EHFチャンピオンズリーグ優勝3回、リーガASOBAL優勝5回といった輝かしいクラブ実績を残した。また、スペイン代表として2度の世界男子ハンドボール選手権優勝(2005年、2013年)と、オリンピックでの銅メダル獲得に貢献した。引退後も指導者として手腕を発揮し、2021年にはEHFチャンピオンズリーグの最優秀監督に選出されるなど、スペインおよび国際ハンドボール界に多大な貢献をしている人物である。彼の弟であるラウル・エントレリオスもまた、スペイン代表のハンドボール選手として活躍した。
2. 幼少期と選手としてのキャリア開始
このセクションでは、アルベルト・エントレリオスの出生背景と家族との関係、そして彼がハンドボール選手としての初期のキャリアをどのように開始し発展させたかについて述べる。
2.1. 出生と家族関係
アルベルト・エントレリオスは1976年11月7日にスペインのヒホンで生まれた。彼の家族はハンドボールと深い関わりを持っており、特に弟のラウル・エントレリオスもまた、スペインのハンドボール選手として国際的に成功を収めている。兄弟はともにスペイン代表でプレーし、それぞれのキャリアを通じてハンドボール界に大きな足跡を残した。
2.2. ユース時代と初期のプロキャリア
エントレリオスがハンドボールを始めた正確な時期やユースクラブに関する詳細な情報は限られているが、彼はプロとしてのキャリアを1997年に地元のクラブであるナランコでスタートさせた。ナランコで1シーズンプレーした後、1998年にはCBアデマル・レオンに移籍し、2001年まで在籍した。これらの初期のプロクラブでの経験が、彼の後の輝かしいキャリアの基礎を築いた。
3. プロ選手キャリア
このセクションでは、アルベルト・エントレリオスのクラブと代表チームにおける選手としての主要なキャリアについて詳述する。
3.1. クラブキャリア
エントレリオスは、1997年から2016年にかけて、スペインとフランスの複数の主要クラブでプレーした。彼のキャリアで最も影響力があったのは、BMシウダード・レアルとHBCナントでの期間である。
- ナランコ(1997年 - 1998年)
プロ選手としてのキャリアの第一歩を踏み出したクラブ。
- CBアデマル・レオン(1998年 - 2001年)
ここで3シーズンを過ごし、選手としての基礎を固めた。
- FCバルセロナ(2001年 - 2002年)
スペインのトップクラブの一つで1シーズンプレーした。
- BMシウダード・レアル(2002年 - 2012年)
彼のキャリアで最も長く、そして成功した時期は、このクラブで過ごした10シーズンである。BMシウダード・レアルでは、クラブの中心選手として数々のタイトルを獲得し、チームの黄金期を支えた。特にEHFチャンピオンズリーグでは3度の優勝(2006年、2008年、2009年)に貢献した。また、国内リーグであるリーガASOBALでは5度の優勝(2004年、2007年、2008年、2009年、2010年)を経験した。2011年から2012年のシーズンには、クラブはBMアトレティコ・マドリードとして活動していた。
- HBCナント(2012年 - 2016年)
キャリアの終盤にはフランスのHBCナントに移籍し、2016年に現役を引退するまでプレーを続けた。この期間もチームに貢献し、彼の経験とリーダーシップは若い選手たちにとって貴重なものとなった。
3.2. 代表チームキャリア
アルベルト・エントレリオスは、1997年から2013年までスペイン男子ハンドボール国家代表チームの一員として広範なキャリアを築いた。彼は合計240試合に出場し、726得点を記録した。これは彼が長年にわたり代表チームの重要な得点源であり、リーダーシップを発揮していたことを示している。
彼は数多くの主要な国際大会でスペイン代表を牽引した。
- 夏季オリンピック
- 2008年北京オリンピック: 銅メダルを獲得。
- 世界男子ハンドボール選手権
- 2005年チュニジア大会: 金メダルを獲得し、スペインにとって歴史的な優勝に貢献した。
- 2011年スウェーデン大会: 銅メダルを獲得。
- 2013年スペイン大会: 自国開催の大会で再び金メダルを獲得し、有終の美を飾った。この大会では、彼の優れたパフォーマンスが評価され、オールスターチームに選出された。
- ヨーロッパ男子ハンドボール選手権
- 2000年クロアチア大会: 銅メダルを獲得。
- 2006年スイス大会: 銀メダルを獲得。
3.3. 選手としての主な実績と栄誉
アルベルト・エントレリオスは、その長年の選手キャリアにおいて、数多くのタイトルと個人栄誉を獲得した。
- EHFチャンピオンズリーグ優勝
- 2006年、2008年、2009年(すべてBMシウダード・レアルにて)
- リーガASOBAL(スペインリーグ)優勝
- 2004年、2007年、2008年、2009年、2010年(すべてBMシウダード・レアルにて)
- 世界男子ハンドボール選手権優勝
- 2005年、2013年(スペイン代表として)
- 夏季オリンピック銅メダル
- 2008年北京オリンピック(スペイン代表として)
- 世界男子ハンドボール選手権オールスターチーム選出
- 2013年
4. 監督キャリア
現役引退後、アルベルト・エントレリオスがハンドボールの監督としてどのような役割を担い、どのような功績を残してきたかについて述べる。
4.1. 監督としての役割と所属クラブ
彼の監督キャリアは、かつて選手として所属したHBCナントで始まった。
- HBCナント(2016年 - 2022年)
- 2016年から2019年まではアシスタントコーチを務め、チームの戦術や選手の育成に貢献した。
- 2019年にはヘッドコーチに昇格し、2022年までチームを率いた。
- リモージュHB(2022年 - 現在)
2022年からはフランスのリモージュ・ハンドボールの監督を務めている。
4.2. 監督としての功績
監督としてのキャリアもまた、選手時代に劣らず輝かしいものとなっている。
- EHFチャンピオンズリーグ最優秀監督
- 2021年: 彼の率いるチームの活躍が評価され、ヨーロッパ最高峰のクラブ大会であるEHFチャンピオンズリーグの最優秀監督に選出された。
5. 遺産と影響
アルベルト・エントレリオスが選手および監督としてハンドボール界に与えた影響と、彼が残した遺産について考察する。
5.1. ハンドボール界への貢献
彼の選手としての長いキャリアは、卓越した技術、戦術眼、そして不屈の精神の象徴であった。レフトバックとして、彼は常にチームの得点源であり、重要な局面で決定的な役割を果たすリーダーであった。BMシウダード・レアルでの黄金期や、スペイン代表としての2度の世界選手権優勝、オリンピックでのメダル獲得は、彼の偉大さを物語るものである。これらの実績は、後進の選手たちにとって大きな目標となり、スペインハンドボールの国際的な地位向上に貢献した。
また、現役引退後も、彼はその豊富な経験と知識を活かし、指導者としてハンドボール界に貢献し続けている。HBCナントやリモージュHBでの監督としての活動、そしてEHFチャンピオンズリーグ最優秀監督に選出されたことは、彼が選手としてだけでなく、指導者としても最高レベルにあることを証明している。彼の指導の下で、多くの若手選手が成長し、チームは新たな成功を収めている。
エントレリオスは、その模範的なキャリアとスポーツに対する真摯な姿勢を通じて、ハンドボールというスポーツ自体の魅力を高め、その普及にも貢献している。彼は、ハンドボールが単なる競技以上の、情熱と戦略が融合した芸術であることを示し、世界中のファンに感動を与え続けている。
6. 私生活
アルベルト・エントレリオスは、自身の私生活について公に多くの情報を開示していないが、彼の家族関係、特に弟のラウル・エントレリオスとの関係はよく知られている。ラウルもまた、兄と同様にスペイン代表として活躍した著名なハンドボール選手であり、二人は兄弟として、そしてチームメイトとして、ハンドボールの歴史にその名を刻んだ。彼らは互いに刺激し合い、高め合う存在であった。