1. 幼少期とユースキャリア
1.1. 幼少期
アレサンドロ・バストーニは1999年4月13日にイタリアのロンバルディア州にあるカザルマッジョーレで誕生しました。彼は少年時代をクレモーナ県の人口わずか3000人の町、ピアーデナで過ごしました。バストーニの父親であるニコラもまた、クレモネーゼでサイドバックとしてプレーした元サッカー選手であり、彼がコーチを務めていた地元のリヴァローロ・マントヴァーノのユースチームでキャリアをスタートさせました。
幼少期のバストーニは非常に大人しい性格で、チームに溶け込むのが難しいと感じていました。そのため、彼は学校の友人たちと共に、教会の施設でサッカーを始めました。彼はバスケットボールも好きで、バスケットボールを通じて多くの友人と出会い、その中には後にパラカネストロ・ブレシアでプレーするアメデオ・デラ・ヴァッレ(イタリア代表選手)もいました。7歳の時、彼はセリエAのクラブであるアタランタのユースチームに加入しました。
1.2. ユースキャリア
バストーニはベルガモにあるアタランタのユースチームで、様々な年代別カテゴリーを順調に昇格していきました。U-17チームでは約30試合に出場し、その後プリマヴェーラチームへと進みました。プリマヴェーラでは、彼は守備の中心選手としてレギュラーの座を確立しました。
2. クラブキャリア
アレサンドロ・バストーニのプロクラブキャリアは、アタランタでのデビューから始まり、インテル・ミラノでの主力選手としての地位確立、そしてパルマでの経験を通じて大きく発展しました。
2.1. アタランタ
バストーニは2016年10月30日にジェノア戦で初めてトップチームのベンチ入りを果たしました。その1ヶ月後の2016年11月30日、コッパ・イタリア4回戦のペスカーラ戦でフル出場し、3-0の勝利に貢献してトップチームデビューを飾りました。
セリエAでは、ジェノア戦以降の6試合でベンチ入りするも出場機会はありませんでしたが、2017年1月22日のサンプドリア戦でセリエAデビューを果たしました。この試合で彼は90分間フル出場し、チームは1-0で勝利を収めました。このサンプドリア戦では、彼と同じ1999年生まれのフィリッポ・メレゴーニも同時に先発出場し、ヨーロッパ5大リーグにおいて1999年生まれの選手が2人同時に先発出場したのは、このシーズン初めての出来事でした。
2.2. インテル・ミラノ
2017年8月31日、インテル・ミラノはバストーニの獲得を3100.00 万 EURで発表しました。同日、彼は2シーズンにわたるレンタルの形でアタランタに残留することになりました。しかし、インテルは2018年7月14日に、当初のレンタル期間を短縮してバストーニを呼び戻し、契約を2023年まで延長しました。
2019-20シーズン開幕前にインテルに復帰したバストーニは、同年9月28日のサンプドリア戦で先発出場し、インテルでの公式戦デビューを果たしました。ミラン・シュクリニアル、ディエゴ・ゴディン、ステファン・デ・フライといった実力者が揃う守備陣の中で、アントニオ・コンテ監督の信頼を掴み、3バックにおける4番手選手として出場機会を重ねました。シーズン終盤にはディエゴ・ゴディンのポジションを奪い、レギュラーに定着しました。このシーズン、彼はリーグ戦25試合に出場し、3ゴール1アシストを記録しました。
2020-21シーズンには、開幕から3バックの左サイドでデ・フライ、シュクリニアルと共に守備陣を形成し、リーグ戦33試合出場3アシストでインテルのセリエA優勝に大きく貢献しました。この活躍により、彼はセリエA年間ベストイレブンに選出されました。
2020年10月7日には、イタリアU-21代表チームに合流中にCOVID-19の陽性反応を示しましたが、無症状でした。
2021-22シーズンは、リーグ戦31試合に出場し1ゴール3アシストを記録しました。また、チームはコッパ・イタリアとスーペルコッパ・イタリアーナで優勝しました。
2023年7月5日、バストーニはインテルと2028年6月末までの新契約を締結しました。
2022-23シーズンには、リーグ戦29試合に出場し2アシストを記録しました。また、UEFAチャンピオンズリーグでも3アシストを記録し、チームの準優勝に貢献しました。この活躍が評価され、彼はUEFAチャンピオンズリーグ年間ベストイレブンに選出されました。このシーズンも、チームはコッパ・イタリアとスーペルコッパ・イタリアーナで優勝を果たしました。
2023-24シーズンは、リーグ戦28試合に出場し1ゴール3アシストを記録しました。強豪との試合が続く中で、第24節のASローマ戦で重要なゴールを決めるなど、自身2度目のセリエA優勝に貢献しました。そのシーズン、彼はセリエA最優秀DFにも選出されました。チームはスーペルコッパ・イタリアーナも制覇しましたが、2024年のスーペルコッパ・イタリアーナでは準優勝となりました。
2.3. パルマへのレンタル移籍
2018年8月7日、バストーニはパルマに2019年6月30日までのレンタル移籍で加入しました。彼は2018年10月7日に行われたジェノアとのリーグ戦でデビューを果たし、チームは3-1で勝利しました。
3. 代表キャリア
アレサンドロ・バストーニは、イタリアの各年代別代表チームで経験を積み、その後にA代表へとステップアップし、主要な国際大会で活躍しています。
3.1. 各年代別代表チーム
バストーニはイタリアのU-15からU-19までの全ての年代別代表チームでプレーしました。U-16代表チームの一員としてノルウェーを相手に4-0で勝利した試合で、彼の国際試合での初ゴールを記録しました。
2016年8月には、パオロ・ニコラート監督によってU-18代表チームに初招集されました。U-18代表での2試合目となるオランダ戦(2-2の引き分け)では、キャプテンを務めました。2017年8月9日には、18歳でパオロ・ニコラート監督によってU-19代表チームに招集されました。
2018年10月11日には、U-21イタリア代表としてベルギーとの親善試合(0-1で敗戦)でデビューしました。彼はすぐにU-21代表のレギュラーとなり、自国開催のUEFA U-21欧州選手権2019に出場しました。また、2016年にはUEFA U-17欧州選手権2016に、2019年にはUEFA U-21欧州選手権2019に出場しましたが、いずれもグループステージで敗退しました。
3.2. A代表チーム
バストーニは2020年9月に行われたUEFAネーションズリーグのボスニア・ヘルツェゴビナ戦とオランダ戦に向けて、ロベルト・マンチーニ監督率いるイタリアA代表に初招集されました。しかし、筋肉の負傷により途中でチームを離脱することになりました。
同年11月11日、フィレンツェのアルテミオ・フランキで行われたエストニアとの親善試合で先発出場し、イタリアA代表デビューを飾りました。チームは4-0で勝利しました。
2021年6月、バストーニはUEFA EURO 2020のイタリア代表メンバーに選出されました。彼はこの大会で唯一の出場機会をグループ最終戦のウェールズ戦で得て、先発フル出場し、チームの1-0での勝利とグループ首位通過に貢献しました。そして、同年7月11日、ウェンブリー・スタジアムで行われた決勝戦でイングランドを延長戦後のPK戦(3-2)で破り、イタリア代表はUEFA欧州選手権の栄冠を手にしました。
2022年6月14日、UEFAネーションズリーグのドイツとのアウェイゲーム(2-5で敗戦)で、彼は自身のA代表初ゴールを記録しました。
2024年6月、ルチアーノ・スパレッティ監督によりUEFA EURO 2024のイタリア代表最終メンバーに選ばれました。同年6月15日に行われた大会初戦のアルバニア戦では、1点ビハインドの状況で前半10分に同点ゴールを決め、チームの2-1での逆転勝利に貢献しました。しかし、イタリアは続く決勝トーナメント1回戦でスイスに0-2で敗れ、大会を去ることになりました。
4. プレースタイル
アレサンドロ・バストーニは左利きのディフェンダーです。キャリア初期はサイドバックとしてプレーしていましたが、キャリアが進むにつれてセンターバックとしての起用が増え、この役割でその能力を開花させました。
彼は特にそのパス能力とボールコントロールで知られています。彼の身長(190 cm)とスペースを活かす能力は、空中戦での有効性をもたらし、セットプレーからのゴールへの脅威となります。また、正確なフィードや機を見たドリブルでのボールの持ち運びは、ビルドアップ時に大きな存在感を放ちます。メディアからは将来有望な若手選手と見なされ、2020年には「UEFA.comが注目する未来の50人」のリストにも選出されました。
2024年には、世界最高のセンターバック25人を選出した90min.comのリストにも名を連ねるなど、彼の課題への対応能力とプレッシャー下での冷静さが評価されています。
インテル・ミラノのシモーネ・インザーギ監督の下では、3-5-2フォーメーションの左センターバックとして定着し、フェデリコ・ディマルコとの左サイドでの連携は非常に強力なものであり、この関係性は代表チームでも見られます。守備的な役割にもかかわらず、バストーニはしばしば左サイドでオーバーラップを仕掛け、ディマルコや他の選手と連携し、相手ペナルティエリア内への質の高いクロスを供給することで、チームの多くのゴールをアシストしています。
イタリア代表チームには他にも左利きのセンターバック(フランチェスコ・アチェルビ、アレサンドロ・ブオンジョルノ、リッカルド・カラフィオーリなど)が多く存在するため、バストーニは3バックの中央や、4バックの右センターバックとしてプレーすることもあります。この役割でプレーする際、彼は正確なロングパスを後方から供給する能力から、しばしばレオナルド・ボヌッチと比較されます。
コンテ監督の下で急成長を遂げた彼は、トップチームデビュー後に指摘されていた1対1での脆さを克服しました。身体の線はやや細いものの、空中戦も得意としています。
5. 個人生活
アレサンドロ・バストーニの父親であるニコラもまたサッカー選手であり、クレモネーゼでサイドバックとしてプレーしていました。
2022年1月21日、長年のパートナーとの間に娘が誕生し、「アッズーラ」と名付けられました。
バストーニはアタランタ時代からインテルでも背番号「95」でプレーしています。彼はこの番号を選んだ理由について、「95番は1995年生まれの兄のために選んだんだ。初めてのユニフォームの背番号は、彼の生年月日にちなんだものにすると約束していた」と語っています。
彼には15歳の時に亡くなった、幼稚園からの親友がいました。そのことについて、バストーニは「娘の名前は『アッズーラ・ネーラ』(インテルのチームカラーである青と黒)にしようかとも考えていたが、『アッズーラ・アニェーゼ』に決めた。アニェーゼは、幼稚園の頃からの親友の名前なんだ。U-16イタリア代表のノルウェー遠征中に父から彼女が亡くなったことを知らされた。当時は15歳だったし、強い衝撃を受けた。今でもピッチに入る前に、彼女に捧げるジェスチャーをしたり、寝る前に彼女のことを考えている」と語っており、彼の深い人間性が垣間見えます。
6. 栄誉
アレサンドロ・バストーニは、クラブと代表チームで以下の栄誉を獲得しています。
インテル・ミラノ
- セリエA:
- 優勝: 2020-21, 2023-24
- コッパ・イタリア:
- 優勝: 2021-22, 2022-23
- スーペルコッパ・イタリアーナ:
- 優勝: 2021, 2022, 2023
- 準優勝: 2024
- UEFAチャンピオンズリーグ:
- 準優勝: 2022-23
- UEFAヨーロッパリーグ:
- 準優勝: 2019-20
イタリア代表
- UEFA欧州選手権:
- 優勝: 2020
- UEFAネーションズリーグ:
- 3位: 2020-21
個人
- セリエA年間ベストイレブン: 2020-21, 2022-23, 2023-24
- UEFAチャンピオンズリーグ年間ベストイレブン: 2022-23
- セリエA月間最優秀選手: 2024年3月
- セリエA最優秀DF: 2023-24
勲章
- イタリア共和国功労勲章カヴァリエーレ(5級士官): 2021年
7. キャリア統計
7.1. クラブ
2025年2月25日時点
クラブ | シーズン | リーグ戦 | コッパ・イタリア | 国際大会 | その他 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディヴィジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
アタランタ | 2016-17 | セリエA | 3 | 0 | 1 | 0 | - | - | 4 | 0 | ||
アタランタ (loan) | 2017-18 | セリエA | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 5 | 0 | |
合計 | 7 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | - | 9 | 0 | |||
パルマ (loan) | 2018-19 | セリエA | 24 | 1 | 0 | 0 | - | - | 24 | 1 | ||
インテル・ミラノ | 2019-20 | セリエA | 25 | 2 | 3 | 0 | 5 | 0 | - | 33 | 2 | |
2020-21 | 33 | 0 | 2 | 0 | 6 | 0 | - | 41 | 0 | |||
2021-22 | 31 | 1 | 4 | 0 | 8 | 0 | 1 | 0 | 44 | 1 | ||
2022-23 | 29 | 0 | 4 | 0 | 12 | 0 | 1 | 0 | 46 | 0 | ||
2023-24 | 28 | 1 | 1 | 0 | 7 | 0 | 1 | 0 | 37 | 1 | ||
2024-25 | 25 | 1 | 2 | 0 | 7 | 0 | 2 | 0 | 36 | 1 | ||
合計 | 171 | 5 | 16 | 0 | 45 | 0 | 5 | 0 | 237 | 5 | ||
キャリア通算 | 202 | 6 | 18 | 0 | 45 | 0 | 5 | 0 | 270 | 6 |
7.2. 代表
2024年11月17日時点
代表チーム | 年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|---|
イタリア | 2020 | 3 | 0 |
2021 | 6 | 0 | |
2022 | 8 | 1 | |
2023 | 4 | 0 | |
2024 | 12 | 1 | |
合計 | 33 | 2 |
イタリアの得点が先に表示されます。得点欄はバストーニの各ゴール後のスコアを示します。
No. | 日付 | 開催地 | キャップ | 対戦相手 | スコア | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2022年6月14日 | ボルシア・パルク、メンヒェングラートバッハ、ドイツ | 15 | ドイツ | 2-5 | 2-5 | UEFAネーションズリーグ2022-23 |
2 | 2024年6月15日 | ジグナル・イドゥナ・パルク、ドルトムント、ドイツ | 24 | アルバニア | 1-1 | 2-1 | UEFA EURO 2024 |
