1. 概要
アンデルソン・ロペスは、ブラジル出身のプロサッカー選手であり、そのキャリアを通じてブラジル、韓国、日本、中国の各国のリーグで活躍してきた。特に日本では、サンフレッチェ広島、北海道コンサドーレ札幌、横浜F・マリノスといったJリーグの主要クラブでプレーし、その得点能力でチームに貢献してきた。2022年には横浜F・マリノスでJ1リーグ優勝を経験し、2023年と2024年にはJ1リーグ得点王とJリーグベストイレブンに選出されるなど、リーグを代表するストライカーとして名を馳せている。
2. 生い立ちと背景
アンデルソン・ロペスは、ブラジルのペルナンブーコ州レシフェで生まれた。幼少期からサッカーに情熱を注ぎ、ブラジルの名門クラブのユースアカデミーでその才能を磨いた。
2.1. ユースキャリア
ロペスは2006年にスポルチ・レシフェのユースチームでキャリアをスタートさせた。2007年にはサン・ジョゼ-RSを経て、同年から2011年までSCインテルナシオナルのユースに所属した。その後、2011年から2013年まではアヴァイFCのユースでトレーニングを積み、プロサッカー選手としての基礎を築いた。
3. プロキャリア
アンデルソン・ロペスは、ブラジルでプロデビューを果たした後、韓国、日本、中国と複数の国のリーグでキャリアを重ね、それぞれの地で印象的な活躍を見せた。
3.1. ブラジル
2013年、アンデルソン・ロペスはアヴァイFCのトップチームに昇格し、同年11月29日に行われたボアEC戦でプロデビューを飾った。2014年にはCNマルシリオ・ジアスへ期限付き移籍し、16試合で6ゴールを挙げる活躍を見せた後、アヴァイに復帰した。同年5月14日にはコパ・ド・ブラジルのASA戦で2ゴールを記録し、アヴァイでの初得点を挙げた。2014年シーズンはリーグ戦33試合に出場して4ゴールを記録し、チームのセリエA昇格に貢献した。
2014年途中からはトンベンセFCに保有権が移ったが、引き続きアヴァイに期限付きで復帰した。2015年5月10日にはサントスFC戦でセリエAデビューを果たした。2016年にはアトレチコ・パラナエンセに期限付き移籍し、パラナ州選手権のタイトルを獲得した。
3.2. 韓国
2018年2月12日、アンデルソン・ロペスはKリーグ1のFCソウルに期限付き移籍した。リーグ戦30試合に出場し6ゴールを記録したが、同年11月には態度不良を理由に試合メンバーから外され、2018年シーズン終了後にクラブを退団した。
ロペスは後にこの韓国への移籍を「間違いだった」と語っており、「日本では、僕にストレスがかからないよう、プレーに専念するようにみんながいろいろしてくれる。韓国では何かをするにも助けてくれなかったし、歓迎してくれるような感じではなかった」と述べた。さらに、韓国リーグについては「基本的に力強さが求められる。そこでは走って、蹴って、走って、蹴って、それがすべてだった」と評し、日本のリーグは「戦術やテクニックが重要で、リーグ自体のクオリティも上だ」と語っている。
3.3. 日本

2016年7月10日、アンデルソン・ロペスはJ1リーグのサンフレッチェ広島へ期限付き移籍し、海外移籍した浅野拓磨の代役として加入した。2017年シーズンにはリーグ戦で10得点を挙げたものの、守備面での課題が指摘され、この年限りで退団した。
2019年1月1日、ロペスは北海道コンサドーレ札幌に完全移籍した。同年3月9日に行われたリーグ第3節の清水エスパルス戦で移籍後初ゴールを含むハットトリックを達成した。この試合でのゴールセレブレーション中、広告ボードの高さを見誤って転倒するという出来事があった。2019年には札幌ドームMVP賞を受賞している。2021年シーズン前半戦では2桁得点を挙げるなど攻撃陣を牽引した。
2022年2月3日、ロペスは横浜F・マリノスへ完全移籍で加入し、海外移籍した前田大然の後釜として期待された。同年2月19日に行われたリーグ開幕戦のセレッソ大阪戦で、途中出場ながら1ゴール1アシストを記録し、完璧なデビューを飾った。しかし、シーズン序盤から好調を維持していたものの、第14節のアビスパ福岡戦で相手DF宮大樹に唾を吐いたとして退場処分を受け、Jリーグから6試合の出場停止と罰金60.00 万 JPYの処分が科された。それでも、2022年シーズンはリーグ戦でチームトップタイの11得点を記録し、横浜F・マリノスのJ1リーグ優勝に大きく貢献した。
2023年シーズンも得点力を維持し、自己最多となるリーグ戦22得点を記録。これはマルキーニョスが2013年に記録した16ゴールを上回り、横浜F・マリノスのブラジル人選手によるシーズン最多得点記録を更新した。ロペスは大迫勇也と並び、2023年シーズンのJ1リーグ得点王に輝き、Jリーグベストイレブンにも選出された。
2024年シーズンも好調を維持し、11月9日のサガン鳥栖戦で逆転ゴールを奪い、1993年と1994年に20ゴール以上を記録したラモン・ディアス以来、クラブ史上30年ぶり2人目となる2年連続20ゴール超えを達成した。さらに、11月16日に開催されたジュビロ磐田戦では同点ゴールを挙げ、ダビド・ビスコンティが保持していた横浜F・マリノスの外国人選手通算最多得点記録(53ゴール)を更新した。この試合でハットトリックを達成し、シーズン23ゴール目を記録。自身の持つクラブのブラジル人選手シーズン最多得点記録をさらに更新した。最終的に24ゴールを挙げ、2年連続でJ1リーグ得点王とJリーグベストイレブンに輝いた。
3.4. 中国
2021年7月3日、アンデルソン・ロペスはJリーグシーズン途中に中国サッカー・スーパーリーグの武漢足球倶楽部へ完全移籍した。
4. キャリア統計
2024年12月6日時点
クラブ | シーズン | リーグ | 国内カップ | リーグカップ | 大陸選手権 | 州リーグ | その他 | 合計 | ||||||||
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ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
アヴァイ | 2013 | セリエB | 1 | 0 | 0 | 0 | - | - | 1 | 0 | - | 2 | 0 | |||
マルシリオ・ジアス | 2014 | カンピオナート・カタリネンセ | - | 0 | 0 | - | - | 16 | 6 | - | 16 | 6 | ||||
トンベンセ | 2014 | セリエD | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | 0 | 0 | - | 0 | 0 | |||
アヴァイ (期限付き移籍) | 2014 | セリエB | 33 | 4 | 3 | 2 | - | - | 0 | 0 | - | 36 | 6 | |||
2015 | セリエA | 19 | 5 | 4 | 2 | - | - | 10 | 6 | - | 33 | 13 | ||||
合計 | 53 | 9 | 7 | 4 | - | - | 27 | 12 | - | 87 | 19 | |||||
アトレチコ・パラナエンセ (期限付き移籍) | 2016 | セリエA | 4 | 0 | 2 | 1 | - | - | 10 | 1 | 3 | 0 | 19 | 2 | ||
サンフレッチェ広島 (期限付き移籍) | 2016 | J1リーグ | 7 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | - | - | - | 9 | 2 | |||
2017 | 32 | 10 | 2 | 0 | 5 | 0 | - | - | - | 39 | 10 | |||||
FCソウル (期限付き移籍) | 2018 | Kリーグ1 | 30 | 6 | 1 | 1 | - | - | - | - | 31 | 7 | ||||
北海道コンサドーレ札幌 | 2019 | J1リーグ | 25 | 9 | 1 | 0 | 6 | 6 | - | - | - | 32 | 15 | |||
2020 | 24 | 9 | - | 3 | 1 | - | - | - | 27 | 10 | ||||||
2021 | 14 | 12 | 0 | 0 | 2 | 2 | - | - | - | 16 | 14 | |||||
合計 | 136 | 48 | 8 | 2 | 16 | 9 | - | - | 3 | 0 | 173 | 39 | ||||
武漢FC | 2021 | CSL | 17 | 7 | 1 | 0 | - | - | - | - | 18 | 7 | ||||
横浜F・マリノス | 2022 | J1リーグ | 28 | 11 | 0 | 0 | 2 | 0 | 4 | 3 | - | - | 34 | 14 | ||
2023 | 34 | 22 | 0 | 0 | 5 | 2 | 3 | 2 | - | 1 | 0 | 43 | 26 | |||
2024 | 36 | 24 | 2 | 1 | 3 | 1 | 13 | 10 | - | 0 | 0 | 54 | 36 | |||
合計 | 115 | 64 | 3 | 1 | 10 | 3 | 20 | 15 | - | 1 | 0 | 149 | 76 | |||
キャリア通算 | 304 | 121 | 18 | 7 | 36 | 12 | 20 | 15 | 37 | 13 | 4 | 0 | 409 | 149 |
5. 受賞歴
アンデルソン・ロペスは、そのキャリアを通じて個人としてもチームとしても数々の栄誉に輝いている。
5.1. 個人受賞
- Jリーグ得点王: 2回(2023年、2024年)
- Jリーグベストイレブン: 2回(2023年、2024年)
- 札幌ドームMVP賞: 1回(2019年)
- Jリーグ優秀選手賞: 2回(2022年、2023年)
5.2. クラブ受賞
- パラナ州選手権: 1回(2016年、アトレチコ・パラナエンセ)
- J1リーグ: 1回(2022年、横浜F・マリノス)
- FUJIFILM SUPER CUP: 1回(2023年、横浜F・マリノス)
6. プレースタイルと特徴
アンデルソン・ロペスは、正確な左足のシュートと高いヘディング能力を兼ね備えている。また、ディフェンダーを背負ってボールをキープするプレーにも長けており、前線で起点となることができる。これらの特徴により、彼は得点源としてだけでなく、攻撃の組み立てにおいても重要な役割を果たす。
7. 主な出来事・論争
2022年5月18日に行われたJ1リーグ第14節のアビスパ福岡戦において、アンデルソン・ロペスは相手DFの宮大樹に唾を吐いたとして退場処分を受けた。この行為に対し、Jリーグは彼に6試合の出場停止と罰金60.00 万 JPYの懲戒処分を科した。この事件は、彼のキャリアにおける重要な出来事の一つとして記録されている。