1. 生い立ちと背景
アンドレアス・カツーラスは1946年にミズーリ州セントルイスで、労働者階級のギリシャ系アメリカ人の家庭に生まれた。
1.1. 幼少期と教育
セントルイスでの幼少期を過ごした後、高等教育において、インディアナ大学ブルーミントン校で演劇学の修士号を取得し、俳優としての基礎を築いた。
1.2. 初期キャリアと演劇活動
彼の俳優としてのキャリアは多岐にわたり、南米のバリオ(低所得者居住区)からニューヨークのリンカーン・センターに至るまで、様々な舞台で活動した。1971年から1986年にかけては、著名な演出家であるピーター・ブルックが主宰する国際演劇カンパニーに所属し、即興演劇や既成の演劇作品で世界中を巡るツアーに参加した。この時期の重要な活動の一つとして、1981年から1982年にはCBSの昼間ドラマシリーズ『ガイディング・ライト』にルシアン・ゴフ役で出演し、テレビでのキャリアも開始した。
2. 映画キャリア
アンドレアス・カツーラスは、その長いキャリアを通じて数多くの映画に出演し、特に悪役や個性的な脇役として強い印象を残した。
2.1. 代表的な映画作品
彼の映画キャリアで特に広く知られているのは、1993年の大ヒット映画『逃亡者』で演じた、主人公を執拗に追い詰める片腕の悪役フレデリック・サイクスである。この役は、彼にとっての代表的なキャラクターの一つとなった。その他、1989年の『パトリック・スウェイジ/復讐は我が胸に』ではジョニー・"パパ・ジョン"・イザベラ役、1996年のアクション映画『エグゼクティブ・デシジョン』ではアブ・エル・セイド・ジャファ役を演じた。コメディ映画『ホット・ショット2』(1993年)にもラフシャード役で出演しているが、これはノンクレジットであった。
カツーラスの出演映画は、幅広いジャンルに及んだ。初期の作品としては、1979年のフランス映画『セリ・ノワール』や『ミロのヴィーナス大混乱!』、ラグタイム(1981年)などが挙げられる。また、シシリアン(1987年)、誰かに見られてる(1987年)、サンセット(1988年)、コミュニオン 遭遇(1989年)、ベルボーイ狂騒曲/ベニスで死にそ~(1992年)、マフィア!(1998年)など、多くの作品でその演技力を発揮した。
公開年 | 邦題 原題 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1974 | O-key, file | 不明 | |
1979 | セリ・ノワール Série noire | アンドレアス・タカデス | |
ミロのヴィーナス大混乱! Milo Milo | ニコロス | ||
1981 | ラグタイム Ragtime | 警察官3 | |
1984 | Nothing Lasts Forever | 月面ショッピング監視員 | |
1985 | Agent on Ice | レイ・ドンネリ | |
1987 | 誰かに見られてる Someone to Watch Over Me | ジョーイ・ヴェンザ | |
シシリアン The Sicilian | パッサテンポ | ||
1988 | サンセット Sunset | アーサー | |
1989 | パトリック・スウェイジ/復讐は我が胸に Next of Kin | ジョニー・"パパ・ジョン"・イザベラ | |
コミュニオン 遭遇 Communion | アレックス | ||
1991 | True Identity | アンソニー | |
Write to Kill | シャンブリス | ||
1992 | ベルボーイ狂騒曲/ベニスで死にそ~ Blame It on the Bellboy | スカルパ | |
1993 | ホット・ショット2 Hot Shots! Part Deux | ラフシャード | ノンクレジット |
逃亡者 The Fugitive | フレデリック・サイクス | ||
ペインテッド・デザート Painted Desert | フランコ・ヴィターリ | ||
ニューヨークUコップ New York Cop | フェラーラ | ||
1996 | エグゼクティブ・デシジョン Executive Decision | アブ・エル・セイド・ジャファ | |
1998 | マフィア! Mafia! | ナルドゥッチ | |
2000 | A Piece of Eden | ジュゼッペ・トレディチ |
3. テレビドラマキャリア
アンドレアス・カツーラスは、テレビシリーズにおいても数多くの印象的な役柄を演じ、その存在感を示した。
3.1. 代表的なテレビシリーズと役柄
彼のテレビキャリアで最も代表的な役は、SFテレビシリーズ『バビロン5』でシリーズを通して演じたナーン星人のG'Kar大使である。彼はパイロット版と109話(日本語版の資料によっては110話)に登場し、頭から特殊メイクの仮面をすっぽり被り、赤いトカゲ目風のコンタクトレンズを装用するという徹底した役作りを行った。創作・製作総指揮のJ・マイケル・ストラジンスキーによると、カツーラスは特殊メイクを付けたまま休憩時間も過ごすほど、その役に没入していたという。この役は、彼に広範な認知度とカルト的な人気をもたらした。
また、カツーラスはSFシリーズ『新スタートレック』にも複数回出演し、ロミュラン人のトマラック司令官役を4エピソードで演じた。その他、『マックス・ヘッドルーム』(1987年-1988年、3エピソード)ではバートレット氏役、『イコライザー』(1988年)ではウォーレン・ブリッグス役、『エイリアン・ネイション』(1989年)ではコウラック役、『ジェシカおばさんの事件簿』(1991年)ではジェリー・パッパス役、『ミレニアム』(1999年)ではモーゼス・グレビッチ役、『スタートレック:エンタープライズ』(2003年)ではヴィシアン人のドレニック艦長役、『NYPDブルー』(2003年)ではロン・スザデック役など、多岐にわたる作品に出演した。さらに、『超人ハルク 最後の闘い』(1990年)や『ワールド・トレードセンター爆破事件の真相』(1997年)など、複数のテレビ映画にも出演している。
放映年 | 邦題 原題 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1979 | Mesure pour mesure | クラウディオ | テレビ映画 |
1981 | Another World | ドックサイト警備員 | エピソード「4381」 |
1982 | American Playhouse | マルコス | エピソード「Kings of America」 |
ABC Afterschool Special | ザッカリー・プシャラポラス | エピソード「A Very Delicate Matter」 | |
ガイディング・ライト Guiding Light | ルシアン・ゴフ | 1エピソード | |
A Midsummer Night's Dream | スナウト | テレビ映画 | |
1987 | L'heure Simenon | ル・ユーゴ | エピソード「Un nouveau dans la ville」 |
1987-1988 | マックス・ヘッドルーム Max Headroom | バートレット | 3エピソードに出演 |
1988 | イコライザー The Equalizer | ウォーレン・ブリッグス | エピソード「Video Games」 |
ヒューストン・ナイツ Houston Knights | 不明 | エピソード「Cajun Spice」 | |
Crime Story | 政府機関エージェント | エピソード「Pauli Taglia's Dream」 | |
スカイ・チェイサー Steal the Sky | ゲマイエル大佐 | テレビ映画 | |
1989 | Father Dowling Mysteries | 地方検事補ダグラス | |
エイリアン・ネイション Alien Nation | コウラック | エピソード「The Game」 | |
The Neon Empire | ヴィトー | テレビ映画 | |
1989-1994 | 新スタートレック Star Trek: The Next Generation | トマラック司令官 | 4エピソードに出演 |
1990 | Jake and the Fatman | エヴェレット・アシュフォード | エピソード「You Turned the Tables on Me」 |
Mancuso, F.B.I. | ファヒド・アハミ王子 | エピソード「Ahami Awry Kidnapped」 | |
超人ハルク/最後の闘い The Death of the Incredible Hulk | カシャ | テレビ映画 | |
Capital News | 不明 | エピソード「Blues for Mr. White」 | |
Hunter | ニコライ・ヤノシュ / アルノ・クドリエスク | 2エピソード | |
Murder Times Seven | マルコ・ヴォラティル | テレビ映画 | |
1991 | ジェシカおばさんの事件簿 Murder, She Wrote | ジェリー・パッパス | エピソード「A Killing in Vegas」 |
Seduction: Three Tales from the Inner Sanctum | フランク | テレビ映画 | |
1993 | バビロン5/CGスペース・アドベンチャー Babylon 5: The Gathering | G'Kar大使 | テレビパイロット版 |
1994 | 診断:殺人 Diagnosis: Murder | DEAエージェント | エピソード「The Plague」 |
1994-1998 | バビロン5 Babylon 5 | G'Kar大使 | 109エピソードに出演 |
1997 | The Real Adventures of Jonny Quest | ロボットスパイ | 声の出演、アニメシリーズ |
ワールド・トレードセンター爆破事件の真相 Path to Paradise | オマル・アブデル=ラフマン師 | テレビ映画 | |
1998 | バビロン5 誕生 Babylon 5: In the Beginning | G'Kar大使 | テレビ映画 |
1999 | ミレニアム Millennium | モーゼス・グレビッチ | エピソード「Forcing the End」 |
2002 | バビロン5 次なる非常事態 Babylon 5: The Legend of the Rangers | G'Kar大使 | テレビ映画 |
2003 | スタートレック:エンタープライズ Star Trek: Enterprise | ドレニック艦長 | エピソード「Cogenitor」 |
NYPDブルー NYPD Blue | ロン・スザデック | エピソード「Shear Stupidity」 |
4. 声優・ビデオゲームキャリア
カツーラスは俳優業の他にも、声優としてアニメシリーズやビデオゲームに出演し、その声質を活かした演技も披露した。2003年のビデオゲーム『Primal』ではスクリーの声を、2006年の『24: The Game』ではラドフォード総督の声を担当した。また、同年リリースの『Tom Clancy's Splinter Cell: Double Agent』でも声優を務めている。
5. 私生活
カツーラスは、妻のギラ・ニッサン・カツーラスと、前回の結婚で授かった2人の子供、マイケルとキャサリンに恵まれた。彼は生涯にわたる喫煙者であったことが知られている。
6. 死没
アンドレアス・カツーラスは、長年の喫煙による肺癌のため、2006年2月13日に59歳で死去した。
7. 功績と評価
カツーラスは、その多岐にわたる演技キャリアと、特にSFジャンルにおける象徴的な役柄で高く評価されている。彼の演技は、キャラクターに深みと説得力をもたらし、多くの視聴者に影響を与えた。
7.1. 主要な役柄とその影響
彼のキャリアを決定づけたのは、SFテレビシリーズ『バビロン5』におけるナーン星人のG'Kar大使役である。G'Karは単なるエイリアンのキャラクターに留まらず、哲学的な思考を持つ外交官であり、抑圧された民衆の解放のために闘う英雄として描かれ、視聴者に強い共感を呼んだ。カツーラスは、分厚い特殊メイクの下でも、表情豊かな演技と力強いセリフ回しでこのキャラクターに深みを与え、シリーズの成功に大きく貢献した。この役を通じて、彼はSFファンの間でカルト的な人気を確立し、数々の賞を受賞するなど、批評的な成功も収めた。また、映画『逃亡者』のフレデリック・サイクスや、『新スタートレック』のトマラック司令官役も、彼のSFジャンルにおける貢献を示す重要な役柄である。
7.2. 受賞歴と栄誉
アンドレアス・カツーラスは、その卓越した演技に対し、いくつかの賞を受賞している。1997年にはイギリスのSFX賞を受賞し、また1995年には『バビロン5』での演技によりユニヴァース・リーダーズ・チョイス賞のテレビシリーズ部門で最優秀助演男優賞に輝いた。
7.3. 批判と論争
アンドレアス・カツーラスの公私にわたる活動に関して、提供された情報源には、特筆すべき批判や論争についての記述はない。