1. 生い立ちと背景
1.1. 幼少期と育成
イバ・ラーヤブは1985年5月21日にモロッコでモロッコ人の両親のもとに生まれた。生後1ヶ月でノルウェーに移住し、オスロで育った。
幼少期にはヴォレレンガ・フォトバルやモスFKのユースチームでプレーした。その後、友人がプレーしていたことをきっかけにスケイド・フォトバルに加入。スケイドでは、後にモハメド・アブデラウエ、ムスタファ・アブデラウエ、ビルガー・マドセン、ドード・レイといった選手たちとチームメイトとしてプレーした。
2. クラブ経歴
イバ・ラーヤブのサッカー選手としてのクラブ経歴は、ノルウェーのユースおよび下位リーグでの活動から始まり、ドイツでの短期間の活動を経て、ノルウェーリーグでのプロとしての飛躍、そして中国や日本でのキャリアへと展開していった。
2.1. ノルウェーでのユース・初期キャリア
スケイドでは当初、出場機会が限られていたが、2004年シーズン後半には9試合に出場し2得点を記録した。2005年シーズン開幕前には、チームメイトだったモハメド・アブデラウエと共にローゼンボリBKがラ・マンガで行っていたプレシーズンツアーに参加した。
その後、イバは短期間ドレバク=フログンILへ期限付き移籍し、シーズン終了後にはスケイドを退団。ノルウェー3部リーグに降格したばかりのセルムスンドIFと1年契約を結んだ。
2.2. ドイツでの短期間の活動
セルムスンドIFで公式戦に出場する前に、イバはボルシア・メンヒェングラートバッハに移籍した。当時、ヨルン・アンデルセンがアシスタントコーチを務めており、イバはアンデルセンとノルウェー語でコミュニケーションを取ることができた。しかし、1年後に監督とヘッドコーチが交代し、新たなコーチ陣はドイツ語のみでイバと会話するようになった。イバがドイツ語を習得しようとしなかったため、意思疎通に支障をきたし、最終的にイバは契約解除を申し出てノルウェーに帰国した。この期間、イバはボルシア・メンヒェングラートバッハIIでわずか1試合に出場したのみで、トップチームでの出場機会はなかった。
2.3. ノルウェーでのプロとしての飛躍
2007年にスケイドに復帰した後、2008年シーズン開幕前にノトデンFKと契約を結んだ。ノトデンではヤン・ハルヴォル・ハルヴォルセン監督の下でレギュラーとしてプレーしたが、2009年シーズン途中にアルネ・サンストーが新監督に就任するとベンチが定位置となり、シーズン終了後にクラブを退団した。
2010年シーズン開幕前には、スペイン2部リーグのエルチェCFのトライアルに参加し契約をオファーされたが、これを拒否してミェンダーレンIFへの移籍を選択した。ミェンダーレンのヴェガード・ハンセン監督は、イバについてその当時の芳しくない評判から「危険な補強」であるとしながらも、24歳にして「計り知れない潜在能力」を持っているため、獲得を無視できなかったと述べている。
2011年にはストレンメンIFでプレーし、アデコリーガエンで24試合に出場して7得点を挙げた。翌2012年シーズン開幕前にはヴォレレンガ・フォトバルと契約。ヴォレレンガへの移籍後、スケイド時代のチームメイトでありヴォレレンガの元選手でもあったモハメド・アブデラウエは、ノルウェーのテレビ局TV 2とのインタビューで、ヴォレレンガのサポーターは新たな補強に期待すべきだと述べ、イバを2012年エリテセリエンにおける「最高の新人選手の一人」と評した。イバは2012年1月11日に行われた2部リーグのネソデンIFとの親善試合でヴォレレンガのトップチームデビューを果たした。しかし、エリテセリエンで6試合に出場した後、2012年8月にスターベクIFへシーズン終了までの期限付き移籍となった。
2013年シーズン開幕前、イバはFKボデ/グリムトに3年契約で移籍し、ノトデンFK時代の恩師であるヤン・ハルヴォル・ハルヴォルセン監督と再会した。ボデ/グリムトでは2シーズンにわたり成功を収めた。
2.4. 河北華夏幸福
2015年2月25日、イバは中国サッカー・甲級リーグの河北華夏幸福足球倶楽部に移籍した。
2.5. Jリーグでのキャリア
2.5.1. 横浜FC
2016年3月、日本のJ2リーグに所属する横浜FCに完全移籍で加入。1年目からエースとして活躍し、2016シーズンは4月9日のJ2第7節ギラヴァンツ北九州戦で2ゴールを挙げるなど、チームトップでありリーグ3位タイとなる18ゴールをマークした。
2017シーズンも引き続き主力を担い、4月29日のロアッソ熊本戦ではハットトリックを達成するなどの活躍でJリーグ月間MVP(2017年4月)を獲得。最終的に25ゴールまで得点数を伸ばし、J2リーグ得点王に輝いた。
2018年もチームトップの17ゴールを決め、8月11日の熊本戦でハットトリックを記録した。2019年にはシーズン終盤に先発出場機会が減ったものの、7月31日のレノファ山口FC戦でJ2でのキャリアで通算3回目のハットトリックを達成するなど、18ゴールを挙げ、チームのJ1昇格に大きく貢献した。
2020年シーズンは出場機会が激減し、自身初のJ1でのプレーはリーグ戦1試合、ルヴァンカップ2試合の計3試合の公式戦出場にとどまった。イバは横浜FCの歴代通算最多得点者であり、リーグ戦で78得点、公式戦総通算で80得点を記録している。

2.5.2. 大宮アルディージャ
2020年8月26日、大宮アルディージャに完全移籍で加入した。しかし、大宮ではチームに馴染めず、先発10試合、途中出場3試合の合計13試合に出場したが、わずか1ゴールに留まった。翌2021年の序盤は出場機会がなかったものの、中盤以降は徐々に出場数を増やし、最終的に22試合出場3ゴールという成績でシーズンを終えた。シーズン終了後、契約満了が発表された。
2.6. ノルウェー復帰後のキャリア
2022年8月25日、3.ディビジョン所属のFKリンと契約を結び、ノルウェーリーグに復帰した。2023年11月11日には、フラム・ラルヴィク戦で途中出場から20分間で3得点を挙げ、自身初のハットトリックを達成し、チームの10-1での大勝に貢献した。
3. フットサル経歴
イバはノルウェーで最も偉大なフットサルスターの一人として知られている。
2011年1月13日に行われたマルタ代表戦でノルウェーフットサル代表デビューを果たし、この試合でハットトリックを達成し、7-2での勝利に貢献した。その翌日にもマルタ戦で再びハットトリックを記録。さらに1月20日に開催された2012 UEFAフットサル選手権予選のイスラエル戦でもハットトリックを達成し、代表デビューからの3試合で合計9得点を挙げる鮮烈なデビューを飾った。
2012 FIFAフットサルワールドカップ予選のスペイン戦を控えた2011年12月15日、ノルウェー代表監督のEsten O. Sætherエステン・O・セーテルノルウェー語はイバを「国際的なトップレベルのフットサル選手」と呼び、スペインに対する勝利の可能性はイバのパフォーマンスにかかっており、彼が最高のプレーをする必要があると述べた。その3日後、12月18日に行われたベルギー代表戦でゴールを挙げ、3-3の引き分けに貢献し、ノルウェーを2012 FIFAフットサルワールドカップ予選のプレーオフラウンドに導いた。
4. プレースタイル
イバ・ラーヤブは、優れた体格と気性、そして高い1対1の能力を持ち、強力な突破力を特徴とする選手である。身長は190 cm、体重は88 kgである。
5. キャリア成績
クラブ | シーズン | リーグ | 国内カップ | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
スケイド・フォトバル | 2003 | アデコリーガエン | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
2004 | アデコリーガエン | 9 | 2 | 0 | 0 | 9 | 2 | |
2005 | アデコリーガエン | 8 | 0 | 0 | 0 | 8 | 0 | |
合計 | 18 | 2 | 0 | 0 | 18 | 2 | ||
スケイド | 2007 | アデコリーガエン | 16 | 1 | 1 | 0 | 17 | 1 |
ノトデンFK | 2008 | アデコリーガエン | 24 | 8 | 0 | 0 | 24 | 8 |
2009 | アデコリーガエン | 19 | 2 | 1 | 0 | 20 | 2 | |
合計 | 43 | 10 | 1 | 0 | 44 | 10 | ||
ミェンダーレンIF | 2010 | アデコリーガエン | 27 | 9 | 3 | 1 | 30 | 10 |
ストレンメンIF | 2011 | アデコリーガエン | 24 | 7 | 2 | 1 | 26 | 8 |
ヴォレレンガ・フォトバル | 2012 | エリテセリエン | 6 | 0 | 2 | 1 | 8 | 1 |
スターベクIF (loan) | 2012 | エリテセリエン | 5 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 |
FKボデ/グリムト | 2013 | アデコリーガエン | 26 | 17 | 3 | 2 | 29 | 19 |
2014 | エリテセリエン | 30 | 13 | 3 | 0 | 33 | 13 | |
合計 | 56 | 30 | 6 | 2 | 62 | 32 | ||
河北華夏幸福足球倶楽部 | 2015 | 中国サッカー・甲級リーグ | 30 | 8 | 1 | 0 | 31 | 8 |
横浜FC | 2016 | J2リーグ | 40 | 18 | 1 | 1 | 41 | 19 |
2017 | J2リーグ | 41 | 25 | 0 | 0 | 41 | 25 | |
2018 | J2リーグ | 40 | 17 | 0 | 0 | 40 | 17 | |
2019 | J2リーグ | 36 | 18 | 0 | 0 | 36 | 18 | |
2020 | J1リーグ | 1 | 0 | 2 | 0 | 3 | 0 | |
合計 | 158 | 78 | 3 | 1 | 161 | 79 | ||
大宮アルディージャ | 2020 | J2リーグ | 13 | 1 | 0 | 0 | 13 | 1 |
2021 | J2リーグ | 22 | 3 | 0 | 0 | 22 | 3 | |
合計 | 35 | 4 | 0 | 0 | 35 | 4 | ||
FKリン | 2022 | 3.ディビジョン | 9 | 5 | 0 | 0 | 9 | 5 |
2023 | 2.ディビジョン | 16 | 9 | 2 | 0 | 18 | 9 | |
2024 | アデコリーガエン | 10 | 1 | 2 | 0 | 12 | 1 | |
合計 | 35 | 15 | 4 | 0 | 39 | 15 | ||
通算 | 434 | 158 | 21 | 6 | 463 | 164 |
6. 個人タイトルと功績
- J2リーグ得点王:1回(2017年)
- Jリーグ月間MVP:1回(2017年4月)
- 横浜FC歴代通算最多得点者(リーグ通算78得点、総通算80得点)
7. 外部リンク
- [https://data.j-league.or.jp/SFIX04/?player_id=19366 Jリーグ公式サイト]