1. 概要
エカテリーナ・アレクサンドロヴナ・ボブロワ(Екатерина Александровна Боброваエカテリーナ・アレクサンドロヴナ・ボブロワロシア語、Ekaterina Alexandrovna Bobrovaエカテリーナ・アレクサンドロヴナ・ボブロワ英語、1990年3月28日 - )は、ロシアモスクワ出身の元フィギュアスケート選手(アイスダンス)。パートナーはドミトリー・ソロビエフ。
彼女は2014年ソチオリンピックの団体戦金メダリストであり、2018年平昌オリンピックの団体戦銀メダリストである。また、2013年世界選手権銅メダリスト、2013年欧州選手権優勝者、2007年世界ジュニア選手権優勝者でもある。さらに、ロシア選手権では2011年から2014年、2016年から2018年にかけて7度の優勝を誇る。彼女たちは4つのグランプリシリーズ大会でも金メダルを獲得している。
2. 人物
エカテリーナ・アレクサンドロヴナ・ボブロワは1990年3月28日にソビエト連邦ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国モスクワで生まれた。身長は1.66 m、体重は49 kg。
2016年7月16日には、ペアスケーターのアンドレイ・デプタトとモスクワで結婚した。2019年4月13日には、第1子となる息子のアレクサンドルを出産している。
3. 経歴
エカテリーナ・ボブロワのフィギュアスケートキャリアは、ジュニア時代からシニアでの主要大会での成功、そして引退に至るまで、数々の重要な節目を経験してきた。
3.1. 初期
ボブロワは4歳でスケートを始め、2000年にドミトリー・ソロビエフとカップルを結成した。当初からエレーナ・クスタロワとスヴェトラーナ・アレクセーエワが彼らのコーチを務めた。
3.2. ジュニア時代とシニアデビュー (2005年-2009年)
2005-2006シーズンにジュニアグランプリシリーズに参戦し、JGPカナダとJGPポーランドで2つの銀メダルを獲得。ジュニアグランプリファイナルでは7位となった。
2006-2007シーズンには、JGPフランスとJGPハンガリーで連続優勝を飾り、ジュニアグランプリファイナルでは銅メダルを獲得した。そして、このシーズンのハイライトとして、初めて出場した世界ジュニア選手権で金メダルを獲得する快挙を成し遂げた。
2007-2008シーズンよりシニアに移行し、グランプリシリーズに初参戦。初戦のスケートカナダで5位、続くロステレコム杯では4位となり、メダル獲得はならなかった。ロシア選手権では初の表彰台となる3位に入賞し、初めて出場した世界選手権では13位となった。
2008-2009シーズンは世界選手権への出場は叶わなかったものの、ロシア選手権では4位、冬季ユニバーシアードでは5位と健闘した。
2009-2010シーズン、ロシア選手権で銀メダルを獲得し、初の欧州選手権出場権を得て9位となった。このシーズンにはバンクーバーオリンピックにも出場し15位、2度目の世界選手権では8位に順位を上げた。
3.3. 上位進出と国内タイトル獲得 (2009年-2012年)
2010-2011シーズンは、中国杯でシニアのグランプリシリーズ初のメダル(銀メダル)を獲得。続くロステレコム杯ではグランプリシリーズ初優勝を飾った。これらの結果により、自身初のグランプリファイナルに出場し4位となった。ロシア選手権では初めて優勝を果たし、欧州選手権では銀メダルを獲得。世界選手権では前年よりも順位を上げ、6位に入った。
2011-2012シーズンも好調を維持し、中国杯で金メダルを獲得。続くロステレコム杯で銅メダルを獲得し、2年連続でグランプリファイナルに進出したが、昨年より順位を下げ6位に終わった。ロシア選手権では2連覇を達成。3度目の欧州選手権ではショートダンスで首位に立ったものの、フリーダンスで順位を落とし、2年連続の銀メダルとなった。世界選手権ではショートダンスで転倒があり9位と出遅れたが、フリーダンスではミスなく演技を終え、総合7位で終えた。
2012年4月25日、コーチをアレクサンドル・ズーリンとオレグ・ヴォルコフに変更した。彼らは新しい技術とスタイルを習得していると語った。
3.4. 欧州選手権・世界選手権での成功 (2012年-2013年)


2012-2013シーズンは、フィンランディア杯での優勝で幕を開けた。グランプリシリーズではスケートアメリカと中国杯で2戦連続で銀メダルを獲得。ソチで開催されたグランプリファイナルでは、ソロビエフがフリーダンス終盤で転倒し5位となった。ロシア選手権では3度目の国内タイトルを獲得した。
欧州選手権では、チームメイトのエレーナ・イリニフ / ニキータ・カツァラポフを僅差で抑え、4度目の出場で初の金メダルを獲得した。さらに、世界選手権ではキャリア初の表彰台となる銅メダルを獲得した。これにより、ロシアのアイスダンスとして4年ぶりのメダリストとなった。
しかし、世界国別対抗戦のロシアチームに選出されたものの、4月1日にソロビエフが鼠蹊部を負傷し、10日間の安静が必要と診断されたため、大会を棄権した。この期間中、ボブロワはヴォルコフのアシスタントとして若いアイスダンサーの指導にあたった。
3.5. ソチオリンピックと負傷 (2013年-2014年)
2013-2014シーズン、グランプリシリーズでは中国杯で銀メダル、ロステレコム杯で金メダルを獲得。グランプリファイナルではショートダンスで3位につけたものの、フリーダンスでソロビエフがボブロワの靴につまずいて転倒し4位となり、メダルを逃した。ロシア選手権では4連覇を達成した。
2014年2月、ソチオリンピックに出場。団体戦のショートダンスに出場し3位の成績を収め、ロシアチームの金メダル獲得に貢献した。ボブロワは、この金メダル獲得によって授与された車を売却し、その収益を児童慈善団体に寄付することを決定した。個人戦のアイスダンスでは5位入賞となった。
その1ヶ月後、日本のさいたまで開催された世界選手権に出場予定だったが、3月28日のショートダンス前の公式練習中にソロビエフが鼠蹊部を負傷したため、大会を棄権した。ソロビエフは4月第2週に慎重に練習を再開した。
3.6. 休養と復帰 (2014年-2015年)
2014-2015シーズン、ソロビエフの膝の半月板手術の影響により、グランプリシリーズのスケートアメリカとエリック・ボンパール杯の出場を辞退。ソロビエフが完全に回復するため、シーズン全体を休養することに決定した。
3.7. 競技復帰とメルドニウム問題 (2015年-2016年)
2015-2016シーズンに競技に復帰し、スケートカナダで銅メダル、NHK杯で銀メダルを獲得。これらの結果により、バルセロナで開催されたグランプリファイナルに進出し5位となった。12月にはエカテリンブルクで開催されたロシア選手権で5度目の優勝を果たした。
1月27日から30日にかけて開催された欧州選手権では、自己最高となる合計176.50点を記録し銅メダルを獲得した。
しかし、2016年3月7日、ボブロワは自身がメルドニウムのドーピング検査で陽性反応を示したことを発表した。彼女はこの検査結果に「衝撃」を表明し、メルドニウムが2016年1月1日から禁止薬物リストに追加されたことを認識しており、禁止物質を含む製品を避けるよう注意していたと述べた。
その後、4月13日、WADAは、メルドニウムが体内に留まる期間に関する不確実性や研究不足のため、2016年3月1日以前に採取された検体で1マイクログラム未満のメルドニウムが検出されたアスリートに対して恩赦を与えると発表した。これを受け、ISUはボブロワの出場停止処分を解除し、「現段階では結果管理プロセスを停止し、いかなる結果も失格としない」と述べた。
3.8. 最後の競技シーズン (2016年-2018年)

2016-2017シーズンは、オンドレイ・ネペラメモリアルでの金メダル獲得でスタート。グランプリシリーズでは、スケートアメリカで銅メダル、ロステレコム杯で金メダルを獲得し、グランプリファイナルに進出したが、ショートダンスで5位、フリーダンスで4位となり、総合4位だった。
12月にはロシア選手権で金メダルを獲得し、優勝回数を6回に伸ばした。その1ヶ月後、欧州選手権ではショートダンスで1位となったが、フリーダンスで3位となり、総合で銅メダルを獲得した。その後、世界選手権では5位、世界国別対抗戦ではロシアチームの銀メダル獲得に貢献した。
2017-2018シーズンは、引退が視野に入る中で、オリンピックシーズンは彼らにとって特別なものだった。このシーズンもオンドレイ・ネペラメモリアルで金メダルを獲得し、同大会2連覇を達成した。グランプリシリーズでは、ロステレコム杯で銀メダル、中国杯で銅メダルを獲得した。
12月にはゴールデン・スピン・オブ・ザグレブで金メダルを獲得し、続けてロシア選手権で3年連続、通算7度目の金メダルを獲得した。その1ヶ月後、欧州選手権ではショートダンスで4位だったものの、フリーダンスで2位となり、総合で銀メダルを獲得。この大会で自己最高となる合計187.13点を記録した。
2018年2月、平昌オリンピックに出場。個人戦のアイスダンスではショートダンス6位、フリーダンス4位で、総合5位となった。その1週間前には、同オリンピックの団体戦で銀メダルを獲得していた。平昌オリンピックの後、世界選手権への出場は辞退した。
3.9. 引退
2019年7月8日、ボブロワは自身のInstagramで競技キャリアを終えることを表明した。2019年12月26日に行われたインタビューでも、競技からの引退を正式に確認している。
4. プログラム
(ドミトリー・ソロビエフとのカップル)
シーズン | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | エキシビション |
---|---|---|---|
2017-2018 | ルンバ: Latin Lover | オブリビオン | 映画『ラ・ラ・ランド』サウンドトラックより |
2016-2017 | ブルース: Mercy on Me | 前奏曲第20番 | 青いカナリア |
2015-2016 | ワルツ: 仮面舞踏会 | 映画『アンナ・カレーニナ』サウンドトラックより | 青いカナリア |
2014-2015 | パソドブレ: カルメンの入場とハバネラ | ||
2013-2014 | クイックステップ: Diamonds Are a Girl's Best Friend | ハーモニカの男 | Talullah |
2012-2013 | ポルカ: 映画『О бедном гусаре замолвите словоオー・ベードノム・グサレ・ザモールヴィテ・スローヴォロシア語』より | ハーモニカの男 | Feeling Good |
2011-2012 | サンバ Vocalizado | ヴァルプルギスの夜 | Dicitencello Vuie |
2010-2011 | Where I Want to Be | Melody of the White Night | |
オリジナルダンス (OD) | |||
2009-2010 | ヤーブロチコ | アルビノーニのアダージョ | カリンカ |
2008-2009 | マック・ザ・ナイフ | 映画『ロミオとジュリエット』サウンドトラックより | |
2007-2008 | カリンカ | Suite in D Dur | |
2006-2007 | La Passion (タンゴ) | Artsakh | |
2005-2006 | ルンバ | カルミナ・ブラーナ |
5. 主要な戦績
5.1. 主な国際大会の記録
大会 | 金 | 銀 | 銅 |
---|---|---|---|
オリンピック (団体戦) | 1 | 1 | 0 |
世界選手権 | 0 | 0 | 1 |
欧州選手権 | 1 | 3 | 2 |
世界ジュニア選手権 | 1 | 0 | 0 |
ジュニアグランプリファイナル | 0 | 0 | 1 |
世界国別対抗戦 | 0 | 1 | 0 |
5.2. シーズンごとの詳細結果


(ドミトリー・ソロビエフとのカップル)
2017-2018シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
---|---|---|---|---|
2018年2月14日-25日 | 2018年平昌オリンピック | 6 75.47点 | 4 111.45点 | 5 186.92点 |
2018年2月9日-12日 | 2018年平昌オリンピック (団体戦) | 3 74.76点 | 3 110.43点 | 2 |
2018年1月15日-21日 | 2018年欧州選手権 | 4 74.43点 | 2 112.70点 | 2 187.13点 |
2017年12月21日-24日 | 2018年ロシア選手権 | 1 77.55点 | 1 115.53点 | 1 193.08点 |
2017年12月6日-9日 | 2017年ゴールデン・スピン・オブ・ザグレブ | 1 75.50点 | 1 111.16点 | 1 186.66点 |
2017年11月24日-26日 | 2017年上海トロフィー | - | 1 113.10点 | 1 113.10点 |
2017年11月3日-5日 | 2017年中国杯 | 3 72.34点 | 3 110.50点 | 3 182.84点 |
2017年10月20日-22日 | 2017年ロステレコム杯 | 2 76.33点 | 2 108.41点 | 2 184.74点 |
2017年9月21日-23日 | 2017年オンドレイ・ネペラトロフィー | 1 71.08点 | 1 110.84点 | 1 181.92点 |
2016-2017シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2017年4月20日-23日 | 2017年世界国別対抗戦 | 3 68.94点 | 3 104.55点 | 2 173.49点 |
2017年3月29日-4月2日 | 2017年世界選手権 | 8 73.54点 | 3 110.52点 | 5 184.06点 |
2017年1月25日-29日 | 2017年欧州選手権 | 1 76.18点 | 3 110.38点 | 3 186.56点 |
2016年12月22日-25日 | 2017年ロシア選手権 | 1 81.40点 | 1 115.86点 | 1 197.26点 |
2016年12月8日-11日 | 2016-17グランプリファイナル | 4 74.04点 | 5 107.91点 | 4 181.95点 |
2016年11月17日-20日 | 2016年ワルシャワ杯 | 1 72.98点 | 1 110.62点 | 1 183.60点 |
2016年11月4日-6日 | 2016年ロステレコム杯 | 2 74.92点 | 1 111.76点 | 1 186.68点 |
2016年10月21日-23日 | 2016年スケートアメリカ | 2 68.92点 | 3 105.85点 | 3 174.77点 |
2016年9月30日-10月2日 | 2016年オンドレイ・ネペラメモリアル | 2 71.04点 | 1 107.80点 | 1 178.84点 |
2015-2016シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2016年1月26日-31日 | 2016年欧州選手権 | 3 68.71点 | 2 107.79点 | 3 176.50点 |
2015年12月24日-27日 | 2016年ロシア選手権 | 2 70.21点 | 1 106.77点 | 1 176.98点 |
2015年12月10日-13日 | 2015-16グランプリファイナル | 6 65.43点 | 5 101.30点 | 5 166.73点 |
2015年11月27日-29日 | 2015年NHK杯 | 3 66.19点 | 2 103.14点 | 2 169.33点 |
2015年10月30日-11月1日 | 2015年スケートカナダ | 3 64.38点 | 3 96.73点 | 3 161.11点 |
2013-2014シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2014年2月16日-17日 | 2014年ソチオリンピック | 5 69.97点 | 6 102.95点 | 5 172.92点 |
2014年2月6日-9日 | 2014年ソチオリンピック (団体戦) | 3 70.27点 | 1 | |
2013年12月24日-27日 | 2014年ロシア選手権 | 1 73.27点 | 1 106.63点 | 1 179.90点 |
2013年12月5日-8日 | 2013-14グランプリファイナル | 3 68.90点 | 4 97.82点 | 4 166.72点 |
2013年11月21日-23日 | 2013年ロステレコム杯 | 1 68.42点 | 2 99.90点 | 1 168.32点 |
2013年11月1日-2日 | 2013年中国杯 | 1 65.70点 | 2 97.72点 | 2 163.42点 |
2012-2013シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2013年3月13日-15日 | 2013年世界選手権 | 3 70.05点 | 4 99.14点 | 3 169.19点 |
2013年1月23日-27日 | 2013年欧州選手権 | 1 69.42点 | 2 99.83点 | 1 169.25点 |
2012年12月25日-28日 | 2013年ロシア選手権 | 1 68.05点 | 1 106.67点 | 1 174.72点 |
2012年12月6日-9日 | 2012-13グランプリファイナル | 4 66.23点 | 6 91.86点 | 5 158.09点 |
2012年11月2日-4日 | 2012年中国杯 | 3 64.32点 | 2 95.14点 | 2 159.46点 |
2012年10月19日-20日 | 2012年スケートアメリカ | 3 62.91点 | 2 97.04点 | 2 159.95点 |
2011-2012シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2012年3月26日-4月1日 | 2012年世界選手権 | 9 58.29点 | 7 92.46点 | 7 150.75点 |
2012年1月23日-29日 | 2012年欧州選手権 | 1 65.06点 | 2 95.17点 | 2 160.23点 |
2011年12月25日-29日 | 2012年ロシア選手権 | 1 70.23点 | 1 101.24点 | 1 171.47点 |
2011年12月8日-11日 | 2011-12グランプリファイナル | 6 64.05点 | 6 93.25点 | 6 157.30点 |
2011年11月25日-27日 | 2011年ロステレコム杯 | 3 61.69点 | 3 95.14点 | 3 156.83点 |
2011年11月4日-6日 | 2011年中国杯 | 1 65.73点 | 1 97.79点 | 1 163.52点 |
2010-2011シーズン | ||||
日付 | 大会 | ショートダンス (SD) | フリーダンス (FD) | 合計 |
2011年4月25日-5月1日 | 2011年世界選手権 | 5 65.88点 | 5 94.35点 | 6 160.23点 |
2011年1月24日-30日 | 2011年欧州選手権 | 2 65.46点 | 2 95.68点 | 2 161.14点 |
2010年12月26日-29日 | 2011年ロシア選手権 | 1 65.34点 | 1 99.59点 | 1 164.93点 |
2010年12月9日-12日 | 2010-11グランプリファイナル | 6 54.33点 | 4 82.42点 | 4 136.75点 |
2010年11月19日-22日 | 2010年ロステレコム杯 | 1 60.80点 | 1 93.53点 | 1 154.33点 |
2010年11月4日-7日 | 2010年中国杯 | 3 55.85点 | 2 89.54点 | 2 145.39点 |