1. 概要
エル・リンダマン(林悠河、Yuga Hayashi英語、1995年2月12日 - )は、日本のプロレスラーである。東京都中野区出身。本名および旧リングネームは林悠河。B型。現在はGLEATに所属しており、同団体の初代G-REX王座を戴冠した。彼のキャリアは、DRAGON GATEでのデビューから始まり、ユニット活動、そして#STRONGHEARTSの一員として他団体での活躍を経て、GLEATでの主力選手としての地位を確立するまで多岐にわたる。
2. 生涯と背景
エル・リンダマンこと林悠河は、1995年に東京都中野区で生まれた。プロレスラーとしてデビューする以前の彼の個人的な情報や学生時代のエピソードは、その後のキャリアを形作る上で重要な要素となっている。
2.1. 幼少期と教育
彼は足立学園中学校・高等学校を卒業しており、プロレスラーの望月成晃は高校の先輩にあたる。また、彼の学生時代には、保育園からの親友に大怪我をさせてしまったという逸話があるが、現在でもその親友とは良好な関係を保ち、試合を観戦に訪れることもあるという。
3. プロレスリングキャリア
エル・リンダマンのプロレスキャリアは、DRAGON GATEでの初期活動から始まり、他の主要プロモーションでの活躍を経て、現在のGLEATでの主要な地位に至るまで、いくつかの明確な時期に分けられる。
3.1. DRAGON GATE (2014年 - 2018年)
DRAGON GATEでのキャリアは、彼のプロレスラーとしての基礎を築いた時期である。デビュー初期の負傷、リングネームの変更、そして複数のユニットでの活動を通じて、彼は自身のレスリングスタイルとキャラクターを確立していった。
3.1.1. 初期活動とリングネーム変更
林悠河は2014年4月4日、DRAGON GATE NEXでのT-Hawk戦でデビューを果たした。しかし、わずか9日後の4月13日、三重大会の第0試合で行われたEita戦で顎を骨折し、長期欠場を余儀なくされた。同年8月5日、後楽園ホール大会で復帰戦を行い、本戦デビューを果たした。
12月16日には後楽園ホールでの初のメインイベントに立ち、土井ダーツで選出された一人としてCIMA、パンチ富永、新井健一郎、ヨースケ♡サンタマリアとタッグを組み、対戦相手のジミー・神田にジャーマン・スープレックス・ホールドを決め、デビュー8ヶ月で初勝利を飾った。この活躍により、『週刊プロレス』で募集されたプロレスグランプリの新人賞を受賞。全672票中、2位の全日本プロレスの野村直矢に300票以上の大差をつけた。
2015年1月10日、オープン・ザ・ブレイブゲート王座決定トーナメントに出場し、パンチ富永をロコモーション式ジャーマン・スープレックス・ホールドでわずか46秒で勝利した。同年1月16日にはミレニアルズに加入。そして1月18日よりリングネームを「エル・リンダマン」と改名した。このリングネームは、THE BLUE HEARTSの楽曲「リンダリンダ」に由来している。当初はCIMAやGammaと共に「大阪06」への加入を希望していたが、CIMAがMad Blankeyに加入したため、ミレニアルズへの加入を選択。これに伴い、コスチュームをミレニアルズのカラーリングに合わせ、髪もピンクに染めた。改名後初の試合では、琴香とタッグを組み、ジミー・神田とジミー・ススムに敗れた。同年8月6日、ミレニアルズは解散した。
3.1.2. ユニット活動とキャラクター変化
2015年10月8日、エル・リンダマンはCIMAの新ユニット「オーバー・ジェネレーション」に、Eita、Gamma、パンチ富永、石田凱士、山村武寛と共に加入し、再びコスチュームを変更した。同年11月にはEita、パンチ富永と組んでオープン・ザ・トライアングルゲート王座トーナメントに出場したが、VerserK(YAMATO、鷹木信悟、土井成樹)に1回戦で敗退した。
2016年には「King Of Gate」トーナメントに出場したが、1ポイントでブロック最下位に終わった。同年、ヨースケ♡サンタマリアとタッグを結成し、リンダマンがサンタマリアを「好きで、戦って守りたい」と発言したことから、両者の間にケイフェイ上のロマンスアングルが展開された。このタッグは「ザ・マリリンズ」と名付けられた。サンタマリアとの関係を深める中で、リンダマンはオーバー・ジェネレーションを脱退し、サンタマリアが所属するYAMATO率いるTRIBE VANGUARDへの加入を希望した。しかし、YAMATOは2016年の「Summer Adventure Tag League」でのサンタマリアとの活躍次第だと条件をつけた。結果的に両者は同リーグで最下位の2ポイントに終わり、YAMATOはリンダマンのTRIBE VANGUARD加入を拒否。この出来事を機にサンタマリアがリンダマンを平手打ちし、「ザ・マリリンズ」は解散した。
その後まもなく、エル・リンダマンは新たなキャラクターを確立し、試合の前後で対戦相手やパートナーを攻撃するなど、ヒールターン(悪役転身)の兆候を見せ始めた。彼はEitaが保持するオープン・ザ・ブレイブゲート王座への挑戦を表明。これにパンチ富永も参戦を表明したため、9月29日に挑戦者決定戦が行われ、リンダマンがこれに勝利した。試合後、彼はパンチ富永を攻撃し、正式にヒールターンを完了させ、VerserKからの加入要請を受諾した。リンダマンは見た目も大きく変え、髪を赤く染め、リングコスチュームをVerserKのカラーリングに合わせ、首には大きなロープを巻くようになった。顔面にはVerserKカラーのメイクを施し、ブルロープを凶器として使用することもあった。10月12日、VerserKのメンバーとしてEitaのオープン・ザ・ブレイブゲート王座に挑戦したが、奪取には至らなかった。
12月25日のFinal Gateでは、VerserKのサイバー・コング、問題龍と組み、空位となっていたオープン・ザ・トライアングルゲート王座を争う3WAYマッチに参戦したが、ジミーズ(ジミー・神田、ジミー・ススム、リョー・ツカモト)が王座を獲得した。2017年1月18日、リンダマンはVerserKのリーダーである鷹木信悟、T-Hawkと共に「One Night 6 Man Tag Tournament」で優勝した。同年7月1日、リンダマンは鷹木信悟、吉田隆司と組み、MaxiMuMからオープン・ザ・トライアングルゲート王座を奪取。これは彼にとってDRAGON GATEでの初のタイトル獲得となった。
3.2. Oriental Wrestling Entertainment (OWE) と #STRONGHEARTS (2018年 - 2021年)
2018年初頭、CIMAは21年間所属したDRAGON GATEからの退団を発表すると共に、主に中国を拠点とする新プロモーション「Oriental Wrestling Entertainment(OWE)」の設立を発表した。CIMAに続いて、エル・リンダマン、T-Hawk、山村武寛もDRAGON GATEを退団し、OWEに合流することになった。OWEの旗揚げイベントは同年5月7日に開催された。

6月22日には、OWEの代表としてWRESTLE-1にデビューした。OWE所属の選手たちは「#STRONGHEARTS」と命名し、後にデズモンド・エグザビエとザッカリー・ウェンツもこのグループに加わった。#STRONGHEARTSは同年9月にはDDTプロレスリングにも参戦し、ALL OUT(竹下幸之介、彰人、勝俣瞬馬、飯野雄貴)を破った。2019年5月25日には、All Elite Wrestlingの旗揚げ興行「Double or Nothing」にも参戦したが、SoCal Uncensoredに敗れた。
2021年3月12日、自身の自主興行「ACTION MAX!」新宿FACE大会において、CIMAを含む#STRONGHEARTSの4名がGLEATへの入団を発表し、翌日には記者会見が行われた。
3.3. GLEAT (2021年 - 現在)
2021年3月12日、エル・リンダマンは#STRONGHEARTSのメンバーとして、正式にGLEATに入団した。
しかし、2021年9月7日には、田村ハヤトのGLEATへの移籍トラブルにより、プロレスリングZERO1がGLEATとの絶縁を発表。これに伴い、当時リンダマンが保持していたZERO1 インターナショナルジュニアヘビー級王座とNWA世界ジュニアヘビー級王座は剥奪されることとなった。
2022年2月22日、後楽園ホール大会において、GLEATが新設した初のシングルタイトルであるG-REX王座の初代王者決定トーナメントの準決勝・決勝戦が行われた。リンダマンは決勝戦で田村ハヤトと対戦し、これを破って初代G-REX王者となった。以降、GLEATの主要な顔として活躍を続けている。また、GLEATではG-RUSH王座の初代王者にも輝いている。
3.4. 新日本プロレス (NJPW) での活動
2022年1月5日、新日本プロレスの東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 16」に、サプライズ参戦したCIMAのセコンドとして登場。当時IWGPジュニアヘビー級王座を保持していたエル・デスペラードは、希望する対戦相手としてエル・リンダマンの名前を挙げた。
同年3月1日、新日本プロレスの日本武道館大会「旗揚げ記念日」において、CIMA、T-Hawkと共にゲスト参戦し、鈴木軍のエル・デスペラード、金丸義信、DOUKIと6人タッグマッチで対戦し勝利を収めた。試合後のバックステージでは、デスペラードから改めてシングルマッチの希望が表明された。
5月15日から開幕した「BEST OF THE SUPER Jr.29」では、デスペラードと同じBブロックにエントリーされた。最終的な成績は4勝5敗で、合計8ポイントとなり、決勝進出はならなかった。しかし、5月24日の後楽園ホール大会でデスペラードから勝利を挙げるなど、シリーズを通じて強いインパクトを残した。また、シリーズ中の5月18日には、入江茂弘とのG-REX王座防衛戦を行い、2度目の防衛に成功した。トーナメント最終日には、リンダマン、ウィーラー・ユウタ、エース・オースティン、アレックス・ゼインがロビー・イーグルス、YOH、ティタン、クラーク・コナーズとタッグマッチで対戦し勝利した。
2023年3月1日に開催された「ジュニア夢の祭典 ~ALL STAR Jr. FESTIVAL 2023~」では第5試合のタッグマッチに出場した。
3.5. その他のプロモーションでの活動
エル・リンダマンはDRAGON GATEとGLEAT以外にも、様々なプロモーションで活躍し、タイトルを獲得している。
2020年7月5日、プロレスリングZERO1主催の「天下一Jr.」に初出場。決勝戦まで駒を進めるも、北村彰基に敗れ準優勝となった。同年9月4日、北村彰基が保持していたZERO1 インターナショナルジュニアヘビー級王座とNWA世界ジュニアヘビー級王座に挑戦し勝利。自身初となるシングル王座を獲得した。しかし、前述のGLEATへの移籍トラブルにより、2021年9月7日にこれらの王座は剥奪された。
ZERO1王座剥奪と同日の2021年9月7日、全日本プロレスの後楽園ホール大会にて、T-Hawkとのタッグでゼウスとイザナギが保持するアジアタッグ王座に挑戦し勝利。第111代王者となり、自身初となるメジャータイトルを獲得した。2023年7月2日には、全日本プロレス後楽園ホール大会で青柳亮生を下し、世界ジュニアヘビー級王座を奪取した。
DDTプロレスリングでは、遠藤哲哉、T-Hawkと共にKO-D6人タッグ王座の第40代王者となっている。
4. プロレスリングの技術とスタイル
エル・リンダマンは、そのコンパクトな体格からは想像できないほどの力強い投げ技と、ダイナミックな空中技を組み合わせた独特のレスリングスタイルを持つ。
彼の主要なフィニッシャーは「ロコモーション式タイガー・スープレックス・ホールド」であり、ジャーマン・スープレックスを2発放った後で繋ぐのが特徴である。また、基本的な「ジャーマン・スープレックス・ホールド」も得意技の一つである。
柔道の経験を活かした「各種柔道技」を試合中に多用する。特に印象的なのは「熊殺し」と呼ばれる技で、背負い投げの態勢からシットダウン式で相手を前方に落とす変形技である。この技の名前は、試合の実況中に判明した。さらに、トップロープから場外へ放つ「トペ・コンヒーロ」も得意としており、時にはロープに触れることなく放つ「ノータッチ式」を披露することもある。
5. 獲得タイトルと実績
エル・リンダマンは、そのキャリアを通じて数々のタイトルと実績を獲得してきた。
- 全日本プロレス
- 世界ジュニアヘビー級王座:第66代
- アジアタッグ王座:第111代(パートナー:T-Hawk)
- DDTプロレスリング
- KO-D6人タッグ王座:第40代(パートナー:遠藤哲哉 & T-Hawk)
- DRAGON GATE
- オープン・ザ・トライアングルゲート王座:第60代(パートナー:鷹木信悟 & 吉田隆司)
- New Year's Unit 6-Man Tag 1 Day Tournament (2017) - (パートナー:鷹木信悟 & T-Hawk)
- GLEAT
- G-REX王座:初代
- G-RUSH王座:初代
- G-REX Title First Champion Decision Tournament (2022)
- G-Rush Tournament (2025)
- プロレスリングZERO1
- NWA世界&インターナショナルジュニアヘビー級王座:第125代&第25代
- 個人受賞
- 週刊プロレス プロレスグランプリ 新人賞 (2014年)
- プロレス大賞 技能賞 (2022年)
- Pro Wrestling Illustrated誌 「PWI 500」2023年版シングルレスラー部門:119位
6. エピソードと評価
エル・リンダマンはリング内外で多くの話題を提供しており、その個性的なキャラクターやマイクパフォーマンスはプロレス界で高く評価されている一方で、時に物議を醸すこともある。
6.1. 主要な逸話
彼はDRAGON GATEで2014年に唯一デビューした選手である。また、CIMAとのツインゲートを巡る抗争以降、試合後に相手に靴を舐めることを強要するようになるという行動が目立つようになった。しかし、大抵の場合、何らかの邪魔が入ったり、相手に足を噛まれたりして、その目的を達成できないことが多い。
6.2. マイクパフォーマンスとキャラクター評価
エル・リンダマンは、CIMAが認めるほどの優れたマイクパフォーマンスの持ち主として知られている。特に、2015年1月16日の後楽園ホール大会のセミファイナル終了後、ミレニアルズへの加入を表明した林とMad BlankeyのCIMAがマイクで対決した際には、林がCIMAをも言い負かすほどの舌戦を繰り広げ、CIMAから「デビュー半年にしてこのマイク」と称賛された。
一方で、彼のヒールとしてのキャラクターは、しばしば物議を醸す。特に、全日本プロレスの世界ジュニアヘビー級王座を奪取した際に、チャンピオンベルトを座布団代わりに使ってコメントするなど、全日本プロレスに対して侮辱的な態度を見せたことは大きな反響を呼んだ。この行動に対し、普段は怒りを表に出さないことで知られるライジングHAYATOでさえ、「そもそもリンダマンのことは普通に嫌いなんだよね。たぶん人間として合わない」と感情を露わにするほどであった。
7. 入場曲
エル・リンダマンが現在使用している入場曲は以下の通りである。
- Double RL Ansemic
- 作曲:黒宮雅斗(ラチエンブラザーズ)
- 編曲:涼真(From MAKEOWNLIFE & 夜韻-Yoin-)