1. 幼少期と背景
トーレスの幼少期は、故郷ベネズエラの社会情勢に影響を受けながら、野球への情熱を育んだ時期であった。彼は幼い頃から様々なポジションを経験し、プロの道を志すようになる。
1.1. 出生、家族、および初期の野球活動
トーレスは1996年12月13日にベネズエラのカラカスで、エウセビオ・トーレスとイベリセ・カストロ夫妻の間に生まれ、同地で育った。彼の父親は「グレイバー」という名前のユニークさに惹かれ、彼にその名前を付けた。トーレスは中流家庭で育ったが、当時のベネズエラは食料不足、犯罪の横行、広範な暴力などにより、政府に対する市民の反乱が頻繁に発生し、家庭生活にも不安がつきまとっていた。
トーレスは4歳で野球を始め、当初は中堅手、捕手、投手など様々なポジションを経験したが、最終的に遊撃手に落ち着いた。テレビで野球の試合を観戦することで野球への情熱を深め、お気に入りの選手であるオマー・ビスケルを崇拝していた。高校時代には短期間バスケットボールもプレーしたが、父親の指示により野球に集中するためバスケットボールを辞めた。
1.2. アカデミーでのトレーニング
トーレスの才能は野球アカデミーの注目を集め、プロになるための支援を申し出た。14歳の時、トーレスはMLBのスカウトと接触を持つアカデミーに入学するため、マラカイへ移り住んだ。
2. プロとしてのキャリア
トーレスのプロキャリアは、シカゴ・カブスでのマイナーリーグ時代に始まり、その後ニューヨーク・ヤンキースでのメジャーリーグデビューと成功、そしてデトロイト・タイガースへの移籍へと続いた。各球団での彼の成長と活躍は、彼の野球人生の重要な節目となっている。
2.1. シカゴ・カブス
2.1.1. マイナーリーグでのキャリア
トーレスは2013年にシカゴ・カブスと国際フリーエージェントとして契約し、契約金として170.00 万 USDを受け取った。2014年にルーキーリーグのアリゾナリーグ・カブスでプロデビューを果たし、その後ローA(ショートシーズン)のノースウェストリーグ・ボイシ・ホークスに昇格した。この年、両チーム合計で50試合に出場し、打率.297、出塁率.386、長打率.440、2本塁打を記録した。韓国語版では、この年に打率.273、29打点を記録し、シーズン終盤にはローAに昇格したと記述されている。
2015年シーズンはシングルAのミッドウェストリーグ・サウスベンド・カブスで開幕を迎え、9月にはハイAのカロライナリーグ・マートルビーチ・ペリカンズに昇格した。両チーム合計で126試合に出場し、487打席で打率.287、出塁率.346、長打率.376、3本塁打、64打点を記録した。韓国語版では、この年に打率.293、62打点を記録したとされている。2016年シーズンもマートルビーチで開幕を迎えた。2016年シーズン開幕前には、MLB公式サイトの全体有望株ランキングで28位に選ばれるなど、その活躍と潜在能力が認められた。

2.2. ニューヨーク・ヤンキース
2.2.1. トレードとマイナーリーグでの育成
2016年7月25日、カブスはトーレス、アダム・ウォーレン、ビリー・マッキニー、ラシャッド・クロフォードをアロルディス・チャップマンとのトレードでニューヨーク・ヤンキースに放出した。ヤンキース移籍後は、ハイAのフロリダ・ステートリーグ・タンパ・ヤンキースでプレーを開始した。2016年シーズンは両ハイAチーム合計で打率.270、出塁率.354、長打率.421、11本塁打、66打点を記録した。シーズン終了後、ヤンキースは彼をアリゾナ・フォールリーグ(AFL)のスコッツデール・スコーピオンズに派遣した。AFLでは76打席で打率.403、出塁率.513、OPS1.158を記録し、AFL最優秀選手に選ばれた。19歳にしてAFL史上最年少のMVP受賞者となった。2016年シーズン後には「ベースボール・アメリカ」誌からヤンキースのトッププロスペクトにランク付けされた。
2017年シーズン開幕前には「ベースボール・アメリカ」誌から野球界全体で5番目の有望株に、MLB.comからはショートストップ部門で最高の有望株に位置付けられた。ヤンキースでのスプリングトレーニングでは29打席で打率.448、2本塁打を記録し、2017年シーズンはダブルAのイースタンリーグ・トレントン・サンダーで開幕を迎えた。4月には回旋筋腱板の炎症のため7日間の故障者リスト入りした。ヤンキースは5月にトーレスをAAA級のインターナショナルリーグ・スクラントン/ウィルクスバリ・レイルライダースに昇格させた。6月、ヤンキースが安全性を理由に選手に足からのスライディングを推奨しているにもかかわらず、トーレスはヘッドスライディングを行い、非投球側の左肘の尺骨側副靱帯を断裂した。6月19日、この怪我はトミー・ジョン手術を必要とすることが判明し、トーレスは2017年シーズンの残りを欠場することになった。2017年シーズンは両チーム合計で打率.287、出塁率.383、長打率.480、7本塁打、34打点を記録した。シーズン終了後、ヤンキースは彼を40人ロースターに加えた。
2018年シーズン開幕前、トーレスはMLB.comから野球界全体で5番目の有望株、そして最高のショートストップ有望株と評価された。スプリングトレーニングではミゲル・アンドゥハーらと開幕ロースター入りを争ったが、3月13日にスクラントン/ウィルクスバリにオプションで送られた。4月22日、彼は試合の6回で交代を命じられ、当初は以前のプレーでの怠慢に対する罰だと思ったが、ボビー・ミッチェル監督のオフィスに呼ばれ、メジャーリーグ昇格を告げられた。韓国語版では、トリプルAで14試合に出場し、打率.347を記録した後、4月22日にメジャーリーグに昇格したと記述されている。
2.2.2. メジャーリーグデビューと2018年シーズン

トーレスは2018年4月22日、トロント・ブルージェイズ戦で二塁手としてメジャーリーグデビューを果たしたが、4打数無安打に終わった。翌日、ミネソタ・ツインズ戦でメジャーリーグ初安打を記録した。韓国語版では、この初安打の相手はマイアミ・マーリンズ戦であったと記述されている。5月4日、ジョシュ・トムリン(クリーブランド・インディアンス)からキャリア初の本塁打を放った。これは21歳での本塁打であり、ジョン・エリスが1969年に記録して以来、ヤンキースの選手としては最年少での本塁打となった。その2日後、インディアンス戦でダン・オテロからキャリア初のサヨナラ本塁打を放ち、ヤンキースを7対4の勝利に導いた。これはヤンキース史上最年少でのサヨナラ本塁打であった。5月21日、テキサス・レンジャーズ戦で2本塁打を放ち、キャリア初のマルチ本塁打を記録した。5月25日にはロサンゼルス・エンゼルス戦で4試合連続本塁打を記録し、21歳163日での達成はアメリカンリーグ史上最年少記録となった。
5月27日までの週には、打率.368、出塁率.429、長打率1.158、5本塁打、9打点を記録し、アメリカンリーグ週間MVPに選ばれた。5月29日にはヒューストン・アストロズ戦で延長戦の末、サヨナラ安打を放ち勝利に貢献した。さらに、5月のアメリカンリーグ月間最優秀新人にも選ばれ、打率.317、出塁率.374、長打率.659、13得点、26安打、9本塁打、24打点を記録した。
7月4日、右股関節の肉離れのため10日間の故障者リスト入りした。218打席で打率.294、15本塁打、42打点、OPS.905を記録し、自身初の2018年オールスターゲームに選出されたが、試合には出場しなかった。
9月2日までの週にも再びアメリカンリーグ週間MVPに選ばれた。9月29日、トーレスは2018年シーズンにおけるヤンキースの265本目の本塁打を放ち、1997年のシアトル・マリナーズが保持していたシーズン最多本塁打記録を更新した。さらに、これは9番打者として放った20本目の本塁打であり、ヤンキースは史上初めて全打順から20本塁打以上を記録したチームとなった。トーレスはアメリカンリーグ新人王投票で、受賞者の大谷翔平、ミゲル・アンドゥハーに次ぐ3位に終わった。
2.2.3. 2019年シーズン

2018年シーズン後、トーレスはヤンキースと1年契約を結んだ。2019年4月4日、ボルチモア・オリオールズ戦で4安打、3長打(二塁打1、本塁打2)を記録し、4打点を挙げた。これは1936年のジョー・ディマジオ以来、ヤンキースの選手としては4番目に若い年齢での達成となった。6月19日、タンパベイ・レイズ戦でオリバー・ドレイクからキャリア39本目となる自身初の満塁本塁打を放った。8月2日にはボストン・レッドソックス戦でエドゥアルド・ロドリゲスからキャリア2本目の満塁本塁打を放った。8月12日、オリオールズ戦で13本目の本塁打を放ち、ディビジョン制導入後における対オリオールズ戦の最多本塁打記録を樹立した。8月22日、30本目の本塁打を放ち、22歳以下の年齢でシーズン30本塁打以上を記録したヤンキースの選手としては、1937年に46本塁打を放ったジョー・ディマジオに次ぐ2人目となった。
7月9日、自身2度目となるアメリカンリーグオールスターに選出された。オールスターゲームでは2打席1安打を記録した。シーズン38本塁打は、23歳未満の内野手としてはアレックス・ロドリゲスに次ぐ史上2人目の記録であり、ディマジオとミッキー・マントルに次ぐヤンキース史上3人目の23歳未満で2シーズン連続20本塁打以上を記録した選手となった。トーレスは2019年レギュラーシーズンを打率.278で終え、2019年のアメリカンリーグディビジョンシリーズでは打率.417を記録した。韓国語版では、2019年シーズンは144試合に出場し、打率.278、38本塁打、90打点を記録したと記述されている。また、ポストシーズンでは9試合に出場し、打率.324、3本塁打を記録したが、チームはアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズでヒューストン・アストロズに2勝4敗で敗れ、シーズンを終えた。
2019年10月13日、トーレスはMLB史上最年少の二塁手として、また全体ではミッキー・マントル、トニー・キューベックに次ぐ3番目の若さで1試合4打点以上を記録し、さらに1試合5打点以上では史上最年少となった。2019年シーズンは38本塁打、長打率.535で終えた。MVP投票では17位に終わり、チームメイトのDJ・ルメイユは4位であった。
2.2.4. 2020年シーズン
パンデミックによって短縮された2020年シーズンでは、42試合に出場し、打率.243、出塁率.356、長打率.368、3本塁打、16打点を記録した。守備では、ショートストップとしてアメリカンリーグ最多の9失策を記録した。全体的に期待外れのパフォーマンスであった。
2.2.5. 2021-2022年シーズン
2021年シーズンもヤンキースの正遊撃手としてシーズンをスタートしたが、127試合に出場し、459打席で打率.259、出塁率.331、長打率.366、9本塁打、51打点を記録するなど、デビューからの2年間と比べて不振に陥った。守備面でも遊撃手として出場した試合で18失策、DRSで-10を記録するなど低調なパフォーマンスだったため、9月からはジオ・ウルシェラに遊撃手の座を譲り、二塁手にコンバートされた。
2022年シーズン前、ヤンキースはアイザイア・カイナー=ファレファを遊撃手として獲得し、トーレスは二塁手に固定された。この年は140試合に出場し、526打席で打率.257、出塁率.310、長打率.451、24本塁打、76打点を記録した。
2.2.6. 2023年シーズン
2023年シーズンは、ヤンキースがトーレスのトレードを試みているという噂の中で始まった。ヤンキースは年俸調停の期限までにトーレスと契約を結べなかった。トーレスは1020.00 万 USDを要求し、球団は970.00 万 USDを提示したが、1月29日に両者は995.00 万 USDの1年契約で合意した。4月3日、フィラデルフィア・フィリーズ戦で右中間へのソロ本塁打を放ち、キャリア通算100本塁打を達成した。これはヤンキース史上7番目に若い年齢での達成となった。2023年シーズンは打率.273、25本塁打、68打点、13盗塁を記録した。シルバースラッガー賞の最終候補にも選出された。
2.2.7. 2024年シーズン
2024年シーズン、トーレスはヤンキースの貢献者となり、チームが2009年以来となるワールドシリーズ進出を果たすのに貢献した。ワールドシリーズ第1戦では、ファンがボールに干渉したため、自動的に二塁打となった。ヤンキースがロサンゼルス・ドジャースにワールドシリーズで敗れた後、トーレスはフリーエージェントとなった。
2.3. デトロイト・タイガース
2024年12月27日、トーレスはデトロイト・タイガースと1年契約、1500.00 万 USDで合意した。
3. 通算記録
グレイバー・トーレスのメジャーリーグにおける年度別打撃成績は以下の通り。マイナーリーグでの詳細な記録は、上記の各キャリアセクションを参照のこと。
年 度 | 所 属 | 試 合 | 打 席 | 打 数 | 得 点 | 安 打 | 二 塁 打 | 三 塁 打 | 本 塁 打 | 塁 打 | 打 点 | 盗 塁 | 盗 塁 死 | 犠 牲 バ ン ト | 犠 牲 フ ラ イ | 四 球 | 敬 遠 | 死 球 | 三 振 | 併 殺 打 | 打 率 | 出 塁 率 | 長 打 率 | O P S |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | NYY | 123 | 484 | 431 | 54 | 117 | 16 | 1 | 24 | 207 | 77 | 6 | 2 | 1 | 5 | 42 | 3 | 5 | 122 | 8 | .271 | .340 | .480 | .820 |
2019年 | 144 | 604 | 546 | 96 | 152 | 26 | 0 | 38 | 292 | 90 | 5 | 2 | 1 | 6 | 48 | 3 | 3 | 129 | 10 | .278 | .337 | .535 | .871 | |
2020年 | 42 | 160 | 136 | 17 | 33 | 8 | 0 | 3 | 50 | 16 | 1 | 0 | 0 | 0 | 22 | 0 | 2 | 28 | 5 | .243 | .356 | .368 | .724 | |
2021年 | 127 | 516 | 459 | 50 | 119 | 22 | 0 | 9 | 168 | 51 | 14 | 6 | 2 | 4 | 50 | 1 | 1 | 104 | 12 | .259 | .331 | .366 | .697 | |
2022年 | 140 | 572 | 526 | 73 | 135 | 28 | 1 | 24 | 237 | 76 | 10 | 5 | 1 | 3 | 39 | 2 | 3 | 129 | 12 | .257 | .310 | .451 | .761 | |
2023年 | 158 | 654 | 597 | 90 | 163 | 28 | 0 | 25 | 266 | 68 | 13 | 5 | 0 | 3 | 53 | 0 | 1 | 133 | 14 | .273 | .331 | .446 | .777 | |
通算 | 6シーズン | 784 | 2990 | 2695 | 380 | 719 | 128 | 2 | 123 | 1210 | 398 | 49 | 20 | 5 | 21 | 254 | 9 | 15 | 635 | 61 | .267 | .331 | .449 | .780 |
4. 受賞歴と栄誉
- アメリカンリーグ週間MVP: 2回(2018年5月27日までの週、2018年9月2日までの週)
- アメリカンリーグ月間最優秀新人: 1回(2018年5月)
- MLBオールスター: 2回(2018年、2019年)
- アリゾナ・フォールリーグ最優秀選手(MVP): 1回(2016年)
- アメリカンリーグ新人王投票3位(2018年)
- シルバースラッガー賞最終候補(2023年)
5. 私生活
トーレスは2014年に故郷のカラカスで長年のガールフレンドであるエリザベスと出会った。二人は2017年4月に結婚し、2022年3月20日には第一子となる息子が誕生した。
6. 関連項目
- シカゴ・カブス
- ニューヨーク・ヤンキース
- デトロイト・タイガース
- トミー・ジョン手術
- オマー・ビスケル
- 大谷翔平
- ミゲル・アンドゥハー
- アレックス・ロドリゲス
- ジョー・ディマジオ
- ミッキー・マントル