1. 概要
コーリー・サンドヘイゲン(Cory James Sandhagen英語、1992年4月20日 - )は、アメリカ合衆国の男性総合格闘家。コロラド州オーロラ出身。ハイ・アルティテュード・マーシャルアーツ/エレベーション・ファイト・チーム所属。現在、UFCのバンタム級に参戦しており、2024年8月6日時点でUFC世界バンタム級ランキング4位に位置している。
幼少期からテコンドー、ボクシング、キックボクシングなど様々な格闘技の訓練を積み、キックボクシングではWKA世界王座を獲得した。2015年にプロ総合格闘家としてデビューし、Legacy Fighting Alliance (LFA)での活躍を経て、2018年にUFCに参戦。UFCでは、フランク・エドガー戦での右飛び膝蹴りによるKO勝利など、印象的な試合で知られ、複数のパフォーマンスボーナスやファイト・オブ・ザ・ナイトを受賞している。
2. 生い立ちと背景
コーリー・サンドヘイゲンは、アメリカ合衆国コロラド州オーロラで生まれ育った。
2.1. 幼少期と教育
幼少期からバスケットボールに熱中し、スモーキーヒル高校(Smoky Hill High School)ではバスケットボール部に所属していた。その後、コロラド大学ボルダー校(University of Colorado Boulder)に進学し、心理学の学位を取得して卒業している。
2.2. 初期格闘技トレーニング
サンドヘイゲンは幼い頃から格闘技の訓練を開始し、まずテコンドーから始めた。しかし、テコンドーの指導者がパンチを許さなかったため、ボクシングに転向した。その後、キックボクシングに活動の場を移し、複数のWKAタイトルを獲得、特にWKA世界王座にも輝いた。幼少期から総合格闘技のファンであった彼は、キックボクシングでの成功を収めた後に総合格闘技へ転向した。また、彼はブラジリアン柔術の茶帯である。
3. 総合格闘技キャリア
コーリー・サンドヘイゲンは2015年にプロ総合格闘家としてのキャリアを開始し、UFC参戦以前はLegacy Fighting Alliance (LFA)などで主要な活動を行った。
3.1. 初期キャリア
サンドヘイゲンは2017年2月24日、LFA 5でジャマル・エマーズを相手にLFAデビューを果たしたが、この試合はユナニマス判定で敗れた。しかし、同年10月13日のLFA 24ではルイス・アントニオ・ロボ・ガヴィンホに1ラウンドTKO勝利を収め、続く2018年1月19日のLFA 31ではホセ・アグアヨに1ラウンドTKO勝利を収めた。これらの勝利は、UFC入りの足がかりとなった。また、LFA以前には、2016年9月9日のRFA 43でクレイ・ウィマーにユナニマス判定勝ち、2016年7月16日のSparta Combat League 50でジョシュ・ヒューバーにユナニマス判定勝ちを収め、SCLフェザー級王座を獲得している。さらに、2016年5月15日のParamount MMA 2016ではダルトン・ゴダードに1ラウンド三角絞めで一本勝ち、2016年1月15日のRFA 34ではアンドリュー・テネソンにユナニマス判定勝ちを収め、フェザー級デビューを飾った。プロ総合格闘技デビューは2015年5月30日、FTW: Prize Fighting Championship 9でブルース・セスマンに1ラウンド裸絞で一本勝ちを収めたバンタム級での試合であった。
3.2. アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ (UFC)
サンドヘイゲンは2018年にUFCに参戦し、バンタム級戦線でその実力を示した。
3.2.1. 2018年
2018年1月27日、UFC on Fox: Jacaré vs. Brunson 2でUFCデビュー戦を行い、オースティン・アーネットと対戦。左ボディブローでダウンを奪い、パウンドで2ラウンドTKO勝利を収めた。
同年8月25日、UFC Fight Night: Gaethje vs. Vickでユーリ・アルカンタラと対戦。厳しい腕ひしぎ十字固めのピンチを凌ぎ、2ラウンドパウンドによるTKO勝ちを収めた。この激戦はファイト・オブ・ザ・ナイトに選出された。
3.2.2. 2019年
2019年初頭、UFC Fight Night: Cejudo vs. Dillashawでトーマス・アルメイダとの対戦が予定されていたが、後にジョン・リネカーとの対戦に変更された。しかし、リネカーが肋骨の負傷により欠場したため、急遽プロモーション初参戦のマリオ・バティスタと対戦することになった。1月19日の試合では、1ラウンドに腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを収めた。この一本勝ちは、UFC.comの「2019年ベストサブミッション」で6位にランクインした。
その後、ジョン・リネカーとの対戦は2019年4月27日のUFC Fight Night: Jacaré vs. Hermanssonで改めて組まれた。サンドヘイゲンは接戦の末、2-1のスプリット・デシジョンで勝利を収めた。
同年8月17日、UFC 241でバンタム級ランキング3位のハファエル・アスンソンと対戦し、ユナニマス判定で勝利。この勝利により、サンドヘイゲンはバンタム級トップ戦線に浮上した。
3.2.3. 2020年
2020年1月25日のUFC Fight Night 166でフランク・エドガーとのバンタム級戦が組まれていたが、エドガーがジョン・"コリアンゾンビ"・チャンソンとの対戦のためにカードを外れたため、サンドヘイゲンも出場をキャンセルされた。
同年6月6日、UFC 250でバンタム級ランキング2位のアルジャメイン・スターリングと対戦。UFCのデイナ・ホワイト社長がタイトルエリミネーター(次期挑戦者決定戦)と明言したこの試合で、サンドヘイゲンは1ラウンドにリアネイキドチョークで一本負けを喫し、UFCでの初黒星となった。
同年10月11日、UFC Fight Night: Moraes vs. Sandhagenのメインイベントでバンタム級ランキング1位のマルロン・モラエスと対戦。右スピニングバックキックとパンチの連打で2ラウンドTKO勝利を収め、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した。
3.2.4. 2021年
2021年2月6日、UFC Fight Night 184でバンタム級ランキング4位の元UFC世界ライト級王者フランク・エドガーと対戦。開始わずか28秒、見事な右飛び膝蹴りでKO勝利を収め、2試合連続となるパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した。この勝利は、UFC史上2番目に速い飛び膝蹴りによるフィニッシュ記録であり、MMAjunkie.com、Cageside Press、Combat Pressの各メディアから「2021年2月のノックアウト」および「2021年ノックアウト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。UFC.comでも「2021年ベストノックアウト」で3位にランクインした。
同年5月8日、UFC on ESPN 24で元UFC世界バンタム級王者T.J.ディラショーとの対戦が予定されていたが、ディラショーの負傷により延期された。その後、7月24日のUFC on ESPN: Sandhagen vs. Dillashawで再設定されたこの試合では、接戦の末、1-2のスプリット・デシジョンで敗れた。しかし、海外のMMAメディア23社のうち17社がサンドヘイゲンの勝利を支持する採点をするなど、物議を醸す判定となった。この試合はMMAjunkie.comの「2021年7月のファイト・オブ・ザ・マンス」に選ばれ、UFC.comでも「2021年ベストファイト」で9位にランクインした。
同年10月30日、UFC 267でUFC世界バンタム級暫定王座決定戦に出場し、バンタム級ランキング1位のピョートル・ヤンと対戦。負傷欠場したアルジャメイン・スターリングの代役としての出場だった。サンドヘイゲンはヤンとのハイレベルな打撃戦を繰り広げたものの、0-3のユナニマス判定で敗れ、王座獲得には至らなかった。しかし、この試合はファイト・オブ・ザ・ナイトを受賞し、UFC Honorsの「2021年プレジデンツ・チョイス・ファイト・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされ、UFC.comの「2021年ベストファイト」で4位にランクインするなど、高い評価を得た。
3.2.5. 2022年
2022年9月17日、UFC Fight Night 210でバンタム級ランキング10位のソン・ヤドンと対戦。2ラウンドに放った肘打ちでヤドンの左眉を深くカットさせ、4ラウンド終了時にドクターストップがかかりTKO勝利を収めた。
3.2.6. 2023年
2023年2月18日、UFC Fight Night 219でバンタム級ランキング3位のマルロン・ヴェラとの対戦が予定されていたが、3月25日のUFC on ESPN 43にリスケジュールされた。サンドヘイゲンはヴェラに対し、3度のテイクダウンを奪いグラウンドで優位に試合を進め、スタンドでも手数で上回って2-1のスプリット・デシジョンで勝利した。この判定は一部で議論を呼んだが、海外のMMAメディア24社全てがサンドヘイゲンの勝利を支持しており、サンドヘイゲンの優勢が明確な試合内容であった。
同年8月5日、UFC on ESPN 50で当初はウマル・ヌルマゴメドフと対戦予定であったが、ヌルマゴメドフが肩の負傷で欠場したため、ロブ・フォントと140ポンド契約のキャッチウェイト戦で対戦することになった。サンドヘイゲンはフォントから7度のテイクダウンを奪い、グラウンドで終始優位に試合を進めてユナニマス判定で勝利した。試合後、サンドヘイゲンは1ラウンド中に右腕の上腕三頭筋を断裂していたことを明かし、8月23日に手術を受けた。
3.2.7. 2024年
2024年8月3日、約1年ぶりの復帰戦としてUFC on ABC: Sandhagen vs. Nurmagomedovのメインイベントでバンタム級ランキング10位のウマル・ヌルマゴメドフと対戦。バンタム級タイトルエリミネーターとして注目されたが、0-3のユナニマス判定で敗れた。
3.2.8. 2025年
2025年5月3日、UFC Fight Night 258のメインイベントで元UFC世界フライ級王者デイブソン・フィゲイレードと対戦する予定である。
4. 私生活とその他の活動
コーリー・サンドヘイゲンは、プロ総合格闘家としての活動と並行して、虐待やネグレクトを受けた子供たちを支援するトラウマセンターでパートタイムとして勤務していた。また、自身が所属するコロラド州オーロラのハイ・アルティテュード・マーシャルアーツでは、総合格闘技のコーチとしても指導にあたっている。
私生活では、2023年9月に妻のエリカと結婚した。
5. 主な実績と受賞歴
コーリー・サンドヘイゲンは、総合格闘技キャリアを通じて以下のタイトルと栄誉を獲得している。
- UFC
- ファイト・オブ・ザ・ナイト(2回):ユーリ・アルカンタラ戦、ピョートル・ヤン戦
- パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(2回):マルロン・モラエス戦、フランク・エドガー戦
- UFC史上2番目に速い飛び膝蹴りによるフィニッシュ(0分28秒):フランク・エドガー戦
- UFC Honors Award「2021年プレジデンツ・チョイス・ファイト・オブ・ザ・イヤー」ノミネート:ピョートル・ヤン戦
- UFC.com「2019年ベストサブミッション」6位:マリオ・バティスタ戦
- UFC.com「2021年ベストファイト」4位:ピョートル・ヤン戦
- UFC.com「2021年ベストノックアウト」3位:フランク・エドガー戦
- UFC.com「2021年ベストファイト」9位:T.J.ディラショー戦
- Sparta Combat League
- SCLフェザー級王座(1回)
- MMAjunkie.com
- 2021年2月「ノックアウト・オブ・ザ・マンス」:フランク・エドガー戦
- 2021年7月「ファイト・オブ・ザ・マンス」:T.J.ディラショー戦
- Cageside Press
- 2021年「ノックアウト・オブ・ザ・イヤー」:フランク・エドガー戦
- Combat Press
- 2021年「ノックアウト・オブ・ザ・イヤー」:フランク・エドガー戦
6. 総合格闘技戦績
コーリー・サンドヘイゲンのプロ総合格闘技戦績は以下の通りである。
- 総試合数: 22試合
- 17勝 (7 KO、3 一本、7 判定)
- 5敗 (1 一本、4 判定)
勝敗 | 戦績 | 対戦相手 | 試合結果 | 大会 | 開催年月日 | ラウンド | 時間 | 開催地 | 備考 |
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予定 | 17-5 | デイブソン・フィゲイレード | UFC Fight Night 258 | 2025年5月3日 | 5 | ||||
黒星 | 17-5 | ウマル・ヌルマゴメドフ | 5分5R終了 判定0-3 | UFC on ABC: Sandhagen vs. Nurmagomedov | 2024年8月3日 | 5 | 5:00 | アラブ首長国連邦 アブダビ | UFCバンタム級タイトルエリミネーター |
勝利 | 17-4 | ロブ・フォント | 5分5R終了 判定3-0 | UFC on ESPN: Sandhagen vs. Font | 2023年8月5日 | 5 | 5:00 | アメリカ合衆国 テネシー州 ナッシュビル | キャッチウェイト (140 lb) |
勝利 | 16-4 | マルロン・ヴェラ | 5分5R終了 判定2-1 | UFC on ESPN: Vera vs. Sandhagen | 2023年3月25日 | 5 | 5:00 | アメリカ合衆国 テキサス州 サンアントニオ | |
勝利 | 15-4 | ソン・ヤドン | 4R 5:00 TKO(ドクターストップ) | UFC Fight Night: Sandhagen vs. Song | 2022年9月17日 | 4 | 5:00 | アメリカ合衆国 ネバダ州 ラスベガス | |
黒星 | 14-4 | ピョートル・ヤン | 5分5R終了 判定0-3 | UFC 267 | 2021年10月30日 | 5 | 5:00 | アラブ首長国連邦 アブダビ | UFC世界バンタム級暫定王座決定戦。ファイト・オブ・ザ・ナイト。 |
黒星 | 14-3 | T.J.ディラショー | 5分5R終了 判定1-2 | UFC on ESPN: Sandhagen vs. Dillashaw | 2021年7月24日 | 5 | 5:00 | アメリカ合衆国 ネバダ州 ラスベガス | |
勝利 | 14-2 | フランク・エドガー | 1R 0:28 KO(右飛び膝蹴り) | UFC Fight Night: Overeem vs. Volkov | 2021年2月6日 | 1 | 0:28 | アメリカ合衆国 ネバダ州 ラスベガス | パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト。 |
勝利 | 13-2 | マルロン・モラエス | 2R 1:03 TKO(右スピニングバックキック→パウンド) | UFC Fight Night: Moraes vs. Sandhagen | 2020年10月10日 | 2 | 1:03 | アラブ首長国連邦 アブダビ | パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト。 |
黒星 | 12-2 | アルジャメイン・スターリング | 1R 1:28 リアネイキドチョーク | UFC 250 | 2020年6月6日 | 1 | 1:28 | アメリカ合衆国 ネバダ州 ラスベガス | UFCバンタム級タイトルエリミネーター。 |
勝利 | 12-1 | ハファエル・アスンソン | 5分3R終了 判定3-0 | UFC 241 | 2019年8月17日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州 アナハイム | |
勝利 | 11-1 | ジョン・リネカー | 5分3R終了 判定2-1 | UFC Fight Night: Jacaré vs. Hermansson | 2019年4月27日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 フロリダ州 サンライズ | |
勝利 | 10-1 | マリオ・バティスタ | 1R 3:31 腕ひしぎ十字固め | UFC Fight Night: Cejudo vs. Dillashaw | 2019年1月19日 | 1 | 3:31 | アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ブルックリン | |
勝利 | 9-1 | ユーリ・アルカンタラ | 2R 1:01 TKO(パウンド) | UFC Fight Night: Gaethje vs. Vick | 2018年8月25日 | 2 | 1:01 | アメリカ合衆国 ネブラスカ州 リンカーン | バンタム級復帰戦。ファイト・オブ・ザ・ナイト。 |
勝利 | 8-1 | オースティン・アーネット | 2R 3:48 TKO(左ボディブロー→パウンド) | UFC on Fox: Jacaré vs. Brunson 2 | 2018年1月27日 | 2 | 3:48 | アメリカ合衆国 ノースカロライナ州 シャーロット | |
勝利 | 7-1 | ホセ・アグアヨ | 1R 1:07 TKO(膝蹴り→パンチ連打) | LFA 31 | 2018年1月19日 | 1 | 1:07 | アメリカ合衆国 アリゾナ州 フェニックス | |
勝利 | 6-1 | ルイス・アントニオ・ロボ・ガヴィンホ | 1R 3:00 TKO(パンチ) | LFA 24 | 2017年10月13日 | 1 | 3:00 | アメリカ合衆国 アリゾナ州 フェニックス | |
黒星 | 5-1 | ジャマル・エマーズ | 5分3R終了 判定0-3 | LFA 5 | 2017年2月24日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 コロラド州 ブルームフィールド | |
勝利 | 5-0 | クレイ・ウィマー | 5分3R終了 判定3-0 | Resurrection Fighting Alliance 43 | 2016年9月9日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 コロラド州 ブルームフィールド | |
勝利 | 4-0 | ジョシュ・ヒューバー | 5分3R終了 判定3-0 | Sparta Combat League 50 | 2016年7月16日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 コロラド州 キャッスルロック | SCLフェザー級王座獲得。 |
勝利 | 3-0 | ダルトン・ゴダード | 1R 3:38 三角絞め | Paramount MMA 2016 | 2016年5月15日 | 1 | 3:38 | アメリカ合衆国 コロラド州 デンバー | |
勝利 | 2-0 | アンドリュー・テネソン | 5分3R終了 判定3-0 | Resurrection Fighting Alliance 34 | 2016年1月15日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国 コロラド州 ブルームフィールド | フェザー級デビュー。 |
勝利 | 1-0 | ブルース・セスマン | 1R 1:16 リアネイキドチョーク | FTW: Prize Fighting Championship 9 | 2015年5月30日 | 1 | 1:16 | アメリカ合衆国 ノースダコタ州 ウィリストン | バンタム級デビュー。 |