1. 概要
ジャスティン・トーマスは、アメリカ合衆国出身のプロ野球選手であり、そのキャリアを通じてMLB、NPB、KBO、CPBLの4つの異なるプロリーグでプレーした稀有な経験を持つ。主に左腕投手として活躍し、高校時代からその才能を発揮。大学では所属リーグの最優秀投手に選出されるなど、アマチュア時代から輝かしい成績を収めた。プロ入り後は、シアトル・マリナーズでMLBデビューを果たし、その後もピッツバーグ・パイレーツ、ボストン・レッドソックス、ニューヨーク・ヤンキースなど複数のMLB球団を渡り歩いた。海外では、北海道日本ハムファイターズ、起亜タイガース、統一セブンイレブンライオンズに所属し、それぞれのリーグで自身の投球スタイルを確立しようと努めた。
2. アマチュア時代
トーマスは高校、大学とアマチュア野球で優れた成績を収め、プロの道を切り開いた。
2.1. 高校時代
トーマスはオハイオ州オレゴンにあるクレイ高校とカーディナル・ストリッチ高校に通った。彼は野球で4年間レターマン(複数年度の代表選手)として活躍し、学校の歴代本塁打記録を樹立するとともに、シーズン本塁打記録にも並んだ。全米大学体育協会(USSSA)ワールドシリーズでは、ファーストチームオールトーナメントチームに選出され、グレート・レイクス・リーグ(GLL)のファーストチームにも2度選ばれた。また、投手としてファーストチームオールディストリクトおよび名誉ある表彰選手に選ばれ、クレイ高校をリーグ優勝に導いた。彼はチームの最優秀選手(MVP)に選ばれ、ジェームズ・F・O'ブライアン最優秀男子学生アスリート賞を受賞している。野球だけでなく、ゴルフでレターマンとして、バスケットボールで3年間レターマンとして活躍するなど、多様なスポーツで才能を発揮した。
2.2. 大学時代
高校卒業後、トーマスは2002年から2005年までヤングスタウン州立大学に進学した。左腕の先発投手として活躍し、2004年にはホライゾン・リーグのタイトル獲得に貢献。チームを決勝に導き、史上初のカレッジ・ワールドシリーズ出場を果たした。2005年には、7勝5敗、防御率3.42、4完投という成績で、ファーストチームオールリーグとホライゾン・リーグ最優秀投手に選ばれた。ヤングスタウン州立大学を去る時点で、彼は250奪三振で歴代2位にランクインしており、7勝以上を2シーズン連続で記録した唯一の投手である。
2.2.1. 大学での栄誉・表彰
- 2003年: セカンドチーム・オールホライゾン・リーグ(5勝5敗、防御率4.87、80奪三振)
- 2004年: ファーストチーム・オールホライゾン・リーグ(7勝3敗、防御率5.11、4完投、82奪三振)
- 2005年: ファーストチーム・オールホライゾン・リーグ(7勝5敗、防御率3.42、4完投、83奪三振)
- 2005年: ホライゾン・リーグ最優秀投手
- ホライゾン・リーグ週間最優秀投手(3度)
3. プロ経歴
トーマスは北米のメジャーリーグからアジアのプロリーグまで、様々な環境でプロ野球選手としてのキャリアを築いた。
3.1. メジャーリーグベースボール (MLB) 時代
MLBでは、シアトル・マリナーズでデビューを果たした後、複数の球団を渡り歩き、その才能を示した。
3.1.1. シアトル・マリナーズ
トーマスは2005年のMLBドラフトにおいて、シアトル・マリナーズから4巡目(全体113位)で指名された。同年6月7日に指名を受け、6月12日に契約を結んだ。マリナーズと契約後、その年の6月にはルーキー級のエベレット・アクアソックスでプロデビューを果たした。
2006年には、マリナーズ傘下のマイナーリーグ選手の中で最多となる14勝を挙げ、奪三振数でも162個で2位、防御率3.73で6位という成績を収めた。8月にはカリフォルニアリーグの「週間最優秀投手」に選出され、MiLB.comの「Class-A Advanced Playoff Performer of the Year」にも輝いた。
2007年、トーマスはAA級のウェスト・テン・ダイヤモンドジャックスに昇格したが、シーズン当初は左肘の張りで故障者リスト入りした。故障者リストから復帰後、彼は制球難に苦しみ、4勝9敗、防御率5.51、キャリアハイとなる61四球を記録した。
2008年には、AA級ウェスト・テンでの防御率を4.32に改善し、奪三振と四球の比率を2007年の100奪三振/61四球から106奪三振/56四球へと向上させた。再び左手の裂傷で故障者リスト入りしたが、ブルペンから復帰した。シーズン中盤にはAAA級のタコマ・レイニアーズに昇格し、キャリア最低となる防御率3.71を記録した。
同年9月1日、シアトル・マリナーズはAAA級タコマからトーマスの契約を購入し、メジャーリーグ昇格を発表した。同日、テキサス・レンジャーズ戦でメジャーデビューを果たし、1イニングを無失点、無安打、無四球に抑え、マーロン・バードから三振を奪ってイニングを終了させた。トーマスは9月の残りの期間をマリナーズで投げ、0勝1敗、防御率6.75の成績を残した。
2009年、トーマスはシアトル・マリナーズと1年契約で再契約し、40人枠に入った。
3.1.2. ピッツバーグ・パイレーツ
2009年10月29日、トーマスはウェーバー公示を経てピッツバーグ・パイレーツに移籍した。11月にはDFA(事実上の戦力外)となったが、ウェーバーをクリアし、AAA級に降格した。
2010年6月24日、DFAとなったダナ・エブランドに代わってAAA級からメジャー昇格を果たした。同年9月11日には、シンシナティ・レッズのジョーイ・ボットにサヨナラ本塁打を許した。同年11月4日にFAとなったが、11月8日にパイレーツと再契約した。2011年11月2日にFAとなった。
3.1.3. ボストン・レッドソックス
2011年11月22日、トーマスはボストン・レッドソックスとマイナー契約を結んだ。2012年4月4日、レッドソックスはトーマスの契約を選び、翌日のデトロイト・タイガースとのレギュラーシーズン開幕戦に向けて彼をメジャーリーグのロースターに追加した。しかし、4月27日にはトミー・ジョン手術から回復したリッチ・ヒルのスペースを空けるため、オプション行使によりマイナーに降格した。
3.1.4. ニューヨーク・ヤンキース
2012年5月12日、トーマスはウェーバー公示を経てニューヨーク・ヤンキースに移籍した。同年9月1日には、メジャーリーグのロースター拡大に伴い、AAA級からメジャーに昇格した。しかし、9月25日にDFAとなり、10月17日にFAとなった。
3.1.5. オークランド・アスレチックス傘下時代
2012年11月15日、トーマスはオークランド・アスレチックスとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングへの招待も含まれていた。しかし、2013年7月1日には契約のオプトアウト条項を行使し、FAとなった。
3.1.6. ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム傘下時代
2014年1月5日、トーマスはロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムとマイナー契約を結んだ。シーズン開幕時にはAAA級のソルトレイク・ビーズに配属された。同年7月25日にエンゼルスから放出された。
3.2. 日本プロ野球 (NPB) 時代
3.2.1. 北海道日本ハムファイターズ
2013年7月8日、トーマスはNPBの北海道日本ハムファイターズと契約合意したことが発表された。同年7月31日の対千葉ロッテマリーンズ戦(QVCマリンフィールド)で日本での初登板、初先発を果たすも、4回2/3を投げて6安打2四球4失点で降板し、敗戦投手となった。その後も勝ち星を挙げられないまま、同年10月30日に球団から退団が発表された。
3.3. KBOリーグ (KBO) 時代
3.3.1. 起亜タイガース
2014年7月25日、トーマスはエンゼルス退団後、KBOの起亜タイガースと契約した。これは不振で退団したデニス・ホールトンの代替外国人選手としての加入だった。同年10月3日の斗山ベアーズ戦では、6イニングを3安打1四球6奪三振無失点に抑え、韓国での初勝利を挙げた。起亜では46と2/3イニングを投げ、防御率4.44、51奪三振を記録した。同年12月27日(一部情報源では12月18日)に、球団が先発経験豊富な投手の獲得を望んだため、再契約には至らず退団となった。
3.4. 中華職業棒球大聯盟 (CPBL) 時代
3.4.1. 統一セブンイレブンライオンズ
2015年1月20日、トーマスはCPBLの統一セブンイレブンライオンズと契約し、2015年シーズンにプレーした。
4. 年度別成績・記録
4.1. 年度別投手成績
年 度 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2008 | SEA | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | .000 | 22 | 4.0 | 9 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 3 | 3 | 6.75 | 2.75 |
2010 | PIT | 12 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 62 | 13.0 | 21 | 3 | 5 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 9 | 9 | 6.23 | 2.00 |
2012 | BOS | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 25 | 4.2 | 10 | 0 | 2 | 0 | 1 | 4 | 1 | 0 | 4 | 4 | 7.71 | 2.57 |
NYY | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 12 | 3.0 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 3 | 9.00 | 1.00 | |
'12計 | 11 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 37 | 7.2 | 12 | 1 | 3 | 0 | 1 | 4 | 1 | 3 | 7 | 7 | 8.22 | 1.96 | |
2013 | 日本ハム | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | .000 | 53 | 10.1 | 13 | 0 | 9 | 0 | 1 | 6 | 1 | 0 | 14 | 10 | 8.71 | 2.13 |
2014 | 起亜 | 10 | 9 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | .500 | 210 | 46.2 | 55 | 3 | 19 | 1 | 1 | 51 | 0 | 0 | 26 | 23 | 4.44 | 1.59 |
2015 | 統一 | 22 | 22 | 1 | 0 | 0 | 5 | 8 | 0 | 0 | .385 | 592 | 134.0 | 144 | 7 | 55 | 0 | 4 | 92 | 4 | 0 | 69 | 57 | 3.83 | 1.49 |
MLB:3年 | 31 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | .000 | 121 | 24.2 | 42 | 4 | 10 | 1 | 1 | 11 | 2 | 3 | 19 | 19 | 6.93 | 2.11 | |
NPB:1年 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | .000 | 53 | 10.1 | 13 | 0 | 9 | 0 | 1 | 6 | 1 | 0 | 14 | 10 | 8.71 | 2.13 | |
KBO:1年 | 10 | 9 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | .500 | 210 | 46.2 | 55 | 3 | 19 | 1 | 1 | 51 | 0 | 0 | 26 | 23 | 4.44 | 1.59 | |
CPBL:1年 | 22 | 22 | 1 | 0 | 0 | 5 | 8 | 0 | 0 | .385 | 592 | 134.0 | 144 | 7 | 55 | 0 | 4 | 92 | 4 | 0 | 69 | 57 | 3.83 | 1.49 |
4.2. 記録
- NPB初登板・初先発:2013年7月31日、対千葉ロッテマリーンズ13回戦(QVCマリンフィールド)で先発、4回2/3を投げて4失点で敗戦投手。
4.3. 背番号
- 60 (2008年)
- 65 (2010年)
- 50 (2012年 - 同年途中)
- 78 (2012年途中 - 同年途中)
- 63 (2012年 - 同年終了)
- 67 (2013年)
- 58 (2014年)
- 33 (2015年)