1. 来歴と背景
ジョー・パイファーは、幼少期からプロデビュー以前の人生において、格闘技との出会いが彼の人生に大きな影響を与えた。このセクションでは、彼の幼少期の重要な出来事や、格闘技トレーニングの始まりについて詳述する。
1.1. 幼少期と教育
パイファーは、ニュージャージー州パインズグローブ・タウンシップで育った。幼少期は両親から虐待を受けるなど荒んだ家庭環境にあり、その影響でうつ病を発症し、同時に攻撃的な性格となり学校では喧嘩に明け暮れた。また、自殺願望や薬物乱用にも苦しんでいた。
彼は4歳から格闘技のトレーニングを始め、ボクシング、柔道、ブラジリアン柔術を経験した。アーサー・P・シャリック高校に進学し、10年生(日本の高校1年生に相当)の時にレスリング部に所属。幼少期に学んだ柔術と柔道の技術をレスリングに応用した。16歳の時、父親からの虐待から逃れるために家出をし、しばらくの間公園で生活した。その後、ごみ屋敷に住む白人男性に引き取られ、そこで生活するようになった。
2. 総合格闘技キャリア
プロの総合格闘家としてのパイファーのキャリアは、数々の主要な試合と実績によって築かれてきた。このセクションでは、彼の初期キャリアからUFC参戦、そして現在の活躍に至るまでを時系列で追う。
2.1. 初期キャリア
パイファーは2018年5月、自身の故郷であるペンシルベニア州フィラデルフィアでプロ総合格闘家としてのデビューを果たした。デビュー戦を勝利で飾り、その後7戦を戦い、7勝1敗という戦績を残した。この間、AOWCFミドル級王座とROCミドル級王座を獲得し、地域団体でのタイトルを手にした。プロ総合格闘技キャリアの8戦目にして、パイファーは初めてデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズに参戦することになった。
2.2. ダナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ
パイファーは2020年8月11日、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ28でダスティン・シュトルツフスと対戦した。この試合でテイクダウンを奪われた際に右肘を脱臼し、1RTKO負けを喫した。
その後、2022年7月26日に行われたデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ47でオスマン・ディアスと対戦。この試合ではカウンターの左フックでダウンを奪い、その後のパウンドにより2RTKO勝ちを収めた。この勝利により、パイファーは念願のUFCとの契約を獲得した。
2.3. UFC
2022年9月17日、UFC初参戦としてUFC Fight Night: Sandhagen vs. Songでアレン・アメドフスキと対戦した。彼は右ストレートでダウンを奪い、追撃のパウンドにより1RTKO勝ちを収めた。この勝利は、彼にとって初の「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」を受賞するきっかけとなった。
2023年4月8日にはUFC 287でジェラルド・マーシャートと対戦し、再び1RTKO(パンチによる)で勝利した。
2023年10月7日にはUFC Fight Night: Dawson vs. Greenでアブドゥル・ラザク・アルハッサンと対戦。この試合では肩固めによってアルハッサンを失神させ、2R一本勝ちを収めた。この試合により、彼は2度目の「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」を受賞した。
2024年2月10日、UFC Fight Night: Hermansson vs. Pyferでミドル級ランキング11位のジャック・ハーマンソンと対戦。この試合では5ラウンドにわたる激闘の末、0-3の判定負けを喫した。
2024年6月29日、UFC 303でマルク=アンドレ・バリオーと対戦。彼は右フックでバリオーをダウンさせ、追撃の右アッパーで1RKO勝ちを収めた。この試合は、パイファーにとって3度目の「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」受賞となった。
パイファーは2025年3月29日に開催されるUFC on ESPN 64でケルヴィン・ガステラムとの対戦が予定されている。
3. プログラップリングキャリア
総合格闘技のキャリアと並行して、ジョー・パイファーはプログラップリングの舞台にも参戦し、その技術力を示している。
2023年5月27日、パイファーはFury Pro Grappling 7のメインイベントでジェラルド・マーシャートと対戦した。この試合では、全員一致の判定で勝利を収めた。
2024年12月28日、パイファーはFury Pro Grappling 12でニック・ウィリーと対戦。この試合はオーバータイムまでもつれ込み、ゴールデンスコア方式で勝利を収めた。
4. 獲得タイトルと表彰
ジョー・パイファーは、総合格闘技およびプログラップリングキャリアを通じて、数々のタイトルと個人表彰を獲得している。
4.1. 総合格闘技
- UFC
- パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(3回):アレン・アメドフスキ戦、アブドゥル・ラザク・アルハッサン戦、マルク=アンドレ・バリオー戦
- UFCオナーズ・アワード2022:ファンズチョイス・デビュー・オブ・ザ・イヤー(アレン・アメドフスキ戦)ノミネート
- Art of War Cage Fighting
- AOWCFミドル級王座(1回):2019年獲得
- Ring of Combat
- ROCミドル級王座(1回):2019年獲得
5. 戦績
5.1. 総合格闘技戦績
勝敗 | 戦績 | 対戦相手 | 試合結果 | 大会名 | 開催年月日 | ラウンド | 時間 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
○ | 13-3 | マルク=アンドレ・バリオー | KO(パンチ) | UFC 303 | 2024年6月29日 | 1 | 1:25 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト。 |
× | 12-3 | ジャック・ハーマンソン | 判定0-3 | UFC Fight Night: Hermansson vs. Pyfer | 2024年2月10日 | 5 | 5:00 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | |
○ | 12-2 | アブドゥル・ラザク・アルハッサン | テクニカルサブミッション(肩固め) | UFC Fight Night: Dawson vs. Green | 2023年10月7日 | 2 | 2:05 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト。 |
○ | 11-2 | ジェラルド・マーシャート | TKO(パンチ) | UFC 287 | 2023年4月8日 | 1 | 3:15 | アメリカ合衆国フロリダ州マイアミ | |
○ | 10-2 | アレン・アメドフスキ | TKO(パンチ) | UFC Fight Night: Sandhagen vs. Song | 2022年9月17日 | 1 | 3:55 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト。 |
○ | 9-2 | オスマン・ディアス | TKO(パンチ) | デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ47 | 2022年7月26日 | 2 | 1:39 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | |
○ | 8-2 | オースティン・トロットマン | KO(パンチ) | CFFC 104 | 2021年12月17日 | 2 | 2:55 | アメリカ合衆国ニュージャージー州アトランティックシティ | |
× | 7-2 | ダスティン・シュトルツフス | TKO(肘の負傷) | デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ28 | 2020年8月11日 | 1 | 4:21 | アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス | |
○ | 7-1 | チェイス・ギャンブル | TKO(パンチ) | Ring of Combat 71 | 2020年2月21日 | 2 | 1:04 | アメリカ合衆国ニュージャージー州アトランティックシティ | |
× | 6-1 | ジョノベン・パティ | サブミッション(ギロチンチョーク) | Ring of Combat 70 | 2019年11月23日 | 2 | 1:00 | アメリカ合衆国ニュージャージー州アトランティックシティ | ROCミドル級王座陥落。 |
○ | 6-0 | マット・フォスター | TKO(パンチ) | Ring of Combat 69 | 2019年9月13日 | 1 | 1:07 | アメリカ合衆国ニュージャージー州アトランティックシティ | 空位のROCミドル級王座を獲得。 |
○ | 5-0 | イライジャ・グボリー | KO(肘打ち、パンチ) | Ring of Combat 68 | 2019年5月31日 | 2 | 1:36 | アメリカ合衆国ニュージャージー州アトランティックシティ | |
○ | 4-0 | エリック・ロンコロニ | サブミッション(リアネイキドチョーク) | Art of War Cage Fighting 11 | 2019年2月16日 | 1 | 4:53 | アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア | 空位のAOWCFミドル級王座を獲得。 |
○ | 3-0 | ロレンゾ・ハント | テクニカルサブミッション(リアネイキドチョーク) | Art of War Cage Fighting 8 | 2018年10月5日 | 1 | 3:47 | アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア | |
○ | 2-0 | デレク・ウィルソン | 判定3-0 | CES MMA 52 | 2018年8月17日 | 3 | 5:00 | アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア | キャッチウェイト(190ポンド)戦。 |
○ | 1-0 | スティーブン・コヴィントン | TKO(パンチ) | Art of War Cage Fighting 7 | 2018年5月18日 | 1 | 2:40 | アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア | ミドル級デビュー。 |