1. 概要
ステファニア・カッシーニは、イタリア出身の多才な芸術家であり、女優として数々の著名な作品に出演する傍ら、映画監督や脚本家としても活躍している。特に、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『1900年』(1976年)ではロバート・デ・ニーロやジェラール・ドパルデューと共演し、ダリオ・アルジェント監督のホラー映画『サスペリア』(1977年)では主要な役柄を演じるなど、国際的な注目を集めた。監督としては1983年の『Lontano da doveロンターノ・ダ・ドーヴェイタリア語』でデビューし、この作品でデヴィッド・ディ・ドナテッロ賞に2部門ノミネートされた。近年は特にドキュメンタリー映画の監督として知られている。
2. 生涯
ステファニア・カッシーニは、女優、映画監督、脚本家として多岐にわたるキャリアを築き、イタリア映画界に貢献してきた。
2.1. 出生と幼少期
ステファニア・カッシーニは、1948年9月4日にイタリアのロンバルディア州ソンドリオ県で生まれた。
2.2. 教育
彼女は当初、建築学を学び、その後ミラノの演劇学校で演技の訓練を受けた。この多様な学術的背景が、後の彼女の芸術活動に多角的な視点をもたらしたと考えられる。
2.3. 初期キャリア
カッシーニの女優としてのキャリアは、1969年にミラノのテアトロ・サン・バビラでの舞台出演から始まった。翌1970年には、ピエトロ・ジェルミ監督の映画『Le Castagne sono Buoneル・カスタニェ・ソノ・ブオーネイタリア語』(英題: 『A Pocketful of Chestnuts』)で映画デビューを果たした。この初期の活動が、彼女のその後の輝かしいキャリアの基礎を築いた。
3. 主な活動と業績
ステファニア・カッシーニは、女優として数多くの映画に出演し、また監督や脚本家としても重要な作品を手がけてきた。
3.1. 女優としての活動
カッシーニは、1970年代から多くの著名な映画に出演し、その演技力で評価を確立した。

- 『1900年』**: 1976年には、ベルナルド・ベルトルッチ監督の大作『1900年』(原題: Novecentoノヴェチェントイタリア語)に出演し、ネーヴェ役を演じた。この作品では、ロバート・デ・ニーロやジェラール・ドパルデューといった国際的なスター俳優たちと共演し、その存在感を示した。
- 『サスペリア』**: 1977年には、ダリオ・アルジェント監督の代表作であるホラー映画『サスペリア』で、主人公の通うバレエ学校で知り合う女生徒サラ役を演じ、世界中の観客に強い印象を与えた。
- その他の主要な出演作**:
- 1974年の『処女の生血』(原題: Blood for Draculaブラッド・フォー・ドラキュラ英語)ではルビニア役を演じた。
- 同年には『Squadra volanteスクアドラ・ヴォランテイタリア語』(英題: 『Emergency Squad』)でマルタ役を演じている。
- 1975年の『傷だらけの帝王』(原題: L'ambiziosoランビツィオーゾイタリア語、英題: 『The Climber』)ではルチアナ役を務めた。
- 1977年にはアンディ・ウォーホル製作の映画『Andy Warhol's Badアンディ・ウォーホルズ・バッド英語』(原題: Badバッド英語)に出演し、P・G役を演じた。
- 1978年の『Ciao maschioチャオ・マスキオイタリア語』(英題: 『Bye Bye Monkey』)ではフェミニストの女優役を演じ、旧ビデオ題『バイバイ・モンキー/摩天楼ラプソディ』としても知られている。
- 1979年の『エーゲ海に捧ぐ』(原題: Dedicato al mare Egeoデディカート・アル・マーレ・エジェーオイタリア語)ではグロリア役を務めた。
- 1987年には『建築家の腹』(原題: The Belly of an Architectザ・ベリー・オブ・アン・アーキテクト英語)でフラヴィア・スペックラー役を演じた。
- 2019年の映画『わたしはダフネ』(原題: Dafneダフネイタリア語)ではマリア役で出演した。
- 2022年の『L'Orafoロラフォイタリア語』(英題: 『The Goldsmith』)ではジョヴァンナ役を演じた。
2023年のステファニア・カッシーニ
また、彼女はフランク・ヴェーデキントの戯曲『ルル』をジョン・リントン・ロバーソンがコミック化した作品において、そのビジュアルインスピレーションとなったことでも知られている。
3.2. 監督・脚本家としての活動
ステファニア・カッシーニは、女優業と並行して、映画監督および脚本家としても精力的に活動している。1983年に監督デビュー作『Lontano da doveロンターノ・ダ・ドーヴェイタリア語』を発表して以来、テレビ作品を含め12本の作品を監督し、さらに9本の作品で脚本を手がけている。特に近年は、ドキュメンタリー映画の監督として高い評価を得ている。
4. フィルモグラフィー
ステファニア・カッシーニの主な出演作、監督作、脚本作は以下の通りである。
製作年 | 邦題 | |
---|---|---|
1970 | Le Castagne sono Buoneイタリア語 | |
1974 | 処女の生血 | |
1974 | ダーティ・チェイサー/凶悪犯死の大逃走500キロ | |
1974 | The Cousinザ・カズン英語 | リサ・スクデリ |
1975 | 傷だらけの帝王 | |
1975 | The Big Deliriumザ・ビッグ・デリリアム英語 | ソニア |
1976 | Luna di miele in treルーナ・ディ・ミエーレ・イン・トレイタリア語 | グラツィエッラ・ルラーギ |
1976 | 1900年 | |
1976 | Prosenetiプロセネティイタリア語 | (役名不明) |
1977 | アンディ・ウォーホルのBAD | |
1977 | サスペリア | |
1977 | Maschio latino cercasiマスキオ・ラティーノ・チェルカージイタリア語 | アンナ |
1978 | The Bloodstained Shadowザ・ブラッドステインド・シャドウ英語 | サンドラ・セラーニ |
1978 | How to Lose a Wife and Find a Loverハウ・トゥ・ルーズ・ア・ワイフ・アンド・ファインド・ア・ラヴァー英語 | マリサ |
1978 | バイバイ・モンキー/コーネリアスの夢 | |
1979 | エーゲ海に捧ぐ | |
1983 | Lontano da doveロンターノ・ダ・ドーヴェイタリア語 | (監督デビュー作) |
1985 | アルジェント・ザ・ナイトメア/鮮血のイリュージョン | |
1987 | 建築家の腹 | |
1988 | Donnaドンナイタリア語 | アンナマリア(テレビシリーズ) |
1992 | Damned the Day I Met Youダムド・ザ・デイ・アイ・メット・ユー英語 | クラリ |
2016 | Cinque mondiチンクエ・モンディイタリア語 | (役名不明) |
2019 | わたしはダフネ | |
2022 | The Goldsmithザ・ゴールドスミス英語 | ジョヴァンナ |
5. 評価と受賞
ステファニア・カッシーニは、その業績が批評家からも高く評価されている。1983年に監督した映画『Lontano da doveロンターノ・ダ・ドーヴェイタリア語』では、デヴィッド・ディ・ドナテッロ賞に2部門でノミネートされた。これは、彼女の監督としての才能が認められた重要な証である。
6. 影響
ステファニア・カッシーニは、女優としての国際的な活動、そして監督・脚本家としての多角的な貢献を通じて、イタリア映画界に大きな影響を与えてきた。特に、彼女が現代のドキュメンタリー映画監督として活躍していることは、芸術分野における彼女の継続的な探求心と適応性を示している。また、彼女がコミック版『ルル』のビジュアルインスピレーションとなったことは、映画以外の芸術分野にもその影響が及んでいることを物語っている。その多才なキャリアは、多くの後進の芸術家にとってインスピレーションとなっている。
7. 関連人物・項目
- ベルナルド・ベルトルッチ
- ダリオ・アルジェント
- ロバート・デ・ニーロ
- ジェラール・ドパルデュー
- ピエトロ・ジェルミ
- 1900年 (映画)
- サスペリア
- 建築家の腹
- デヴィッド・ディ・ドナテッロ賞