1. 生涯とプロ入りの経緯
タラヌ・カタリンの囲碁の道は、幼少期に始まり、アマチュア時代に急速に才能を開花させた後、日本の院生を経てプロ入りを果たした。
1.1. 幼少期と囲碁との出会い
タラヌ・カタリンは1973年3月31日にルーマニアで生まれた。1989年、16歳の時にクリスティアン・コベリから囲碁の手ほどきを受けた。彼の初めての囲碁大会は、自身の段位が6級であったにもかかわらず、10級から4級の範囲のプレイヤーが参加する大会で、この大会で彼は出場した全8局に勝利し、その才能の片鱗を見せた。
1.2. アマチュア時代と頭角を現すまで
囲碁を始めてからわずか1年でアマチュア1段に昇段し、さらにその1年後にはアマチュア4段にまで到達した。この頃から、ルーマニア国内で開催される小規模な大会で優勝を重ねるようになり、その実力を着実に向上させていった。
1.3. 日本でのプロ入段
1995年、タラヌは西条雅孝八段に招かれ、日本に渡った。彼はすぐに日本棋院中部総本部の院生となり、プロ棋士を目指す日々を送った。2年間の院生生活を経て、1997年の日本棋院中部総本部入段手合で1位の成績を収め、見事プロ入りを果たした。これにより、彼は1978年のマンフレート・ヴィンマー(オーストリア出身)に次いで、史上2人目の非アジア圏出身のプロ棋士となった。
2. プロ棋士としての活動
プロ棋士としてのキャリアを通じて、タラヌ・カタリンは順調に昇段を重ね、数々の国際棋戦に出場し、ヨーロッパにおける重要なタイトルを獲得した。
2.1. 昇段歴
タラヌはプロ入り後、わずか4年で五段に到達するという速さで昇段を遂げた。
- 1997年:入段、同年二段に昇段。
- 1998年:三段に昇段。
- 1999年:四段に昇段。
- 2001年:五段に昇段。
2.2. 主要国際棋戦出場歴
彼はプロ入り後、様々な国際棋戦にヨーロッパ代表として出場し、強豪棋士たちと対局した。
棋戦名 | 出場年 | 対局相手 |
---|---|---|
富士通杯 | 1998年 | 李昌鎬 |
1999年 | 李聖宰 | |
2003年 | ジョン・リー | |
2005年 | 古力 | |
春蘭杯 | 1998年 | 依田紀基 |
2006年 | 李世乭 | |
応昌期杯 | 2000年 | 大竹英雄 |
2008年 | 朴文尭 | |
2012年 | 謝赫 | |
LG杯 | 2001年 | 李世乭 |
2002年 | 尹畯相 |
2.3. 主要な実績とタイトル
国際棋戦での活躍に加え、タラヌはヨーロッパの囲碁界で権威あるタイトルを獲得している。
- 2008年:ヨーロッパ碁コングレスで優勝を果たした。
- 2008年:ワールドマインドスポーツゲームズの男子団体戦にヨーロッパチームの一員として出場。
- 2011年:スポーツアコードワールドマインドゲームズの団体戦およびペア戦にもヨーロッパチームとして出場した。
3. 囲碁界への貢献
タラヌ・カタリンは、そのプロ棋士としての活動に加え、ルーマニア囲碁連盟の会長を務めるなど、ヨーロッパにおける囲碁の発展と普及に多大な貢献をしてきた。
3.1. ルーマニア囲碁連盟会長としての活動
2009年から2011年まで、タラヌはルーマニア囲碁連盟の会長を務めた。この在任期間中、彼はルーマニア国内における囲碁の普及活動や、若手棋士の育成、国内外の交流促進に尽力した。
3.2. ヨーロッパ囲碁の発展への寄与
非アジア圏出身のプロ棋士というその稀有な存在は、ヨーロッパの囲碁愛好家や若手プレイヤーにとって大きな希望と目標となった。彼は先駆者として、ヨーロッパにおける囲碁の認知度向上と競技レベルの底上げに貢献し、多くの人々に囲碁の魅力を伝えた。彼の存在は、ヨーロッパの囲碁界がアジア中心の囲碁界に比肩しうる可能性を示すものとして、大きな影響を与えている。
4. 評価と影響
タラヌ・カタリンは、そのユニークな経歴と実績により、囲碁界において歴史的な意義を持つ人物として評価されている。
4.1. 歴史的意義
タラヌは、日本棋院でプロ試験を突破した史上2人目の非アジア圏出身プロ棋士であり、これは囲碁が単なるアジアのゲームではなく、世界中で通用する知的な競技であることを示した点で歴史的な意義を持つ。彼の成功は、ヨーロッパの囲碁プレイヤーに「プロになれる」という具体的な希望を与え、囲碁の国際化を加速させる上で重要な役割を果たした。
4.2. 囲碁界および社会からの評価
タラヌ・カタリンは、その実力と、母国ルーマニアやヨーロッパ全体での囲碁普及への貢献が、囲碁界から高く評価されている。彼の活動は、囲碁をよりグローバルなスポーツへと発展させるための重要な一歩と見なされており、将来的にはさらに多くの非アジア圏出身のプロ棋士が誕生する道を開いたとされている。
5. 外部リンク
- [http://gobase.org/studying/schools/catalin/ Țăranu's Go school]
- [https://www.nihonkiin.or.jp/player/htm/ki000347.html 日本棋院「T.カタリン」]