1. 幼少期と学歴
鄭正鈐は1969年5月31日に新竹市で生まれた。国立新竹高級中学を卒業後、国立政治大学でジャーナリズムと外交を学んだ。同大学の東アジア研究所で修士号を取得し、その後中華大学で博士課程を修了した。学業を終えた後、中華大学と玄奘大学で助教授として教鞭をとった経験を持つ。
2. 政治家としての経歴
鄭正鈐は長年にわたり新竹市議会議員を務めた後、国政へと進出した。彼の政治キャリアは、所属政党の変更や複数の選挙における論争に特徴づけられる。
2.1. 新竹市議会議員としての活動
鄭正鈐は2002年から2020年まで新竹市議会議員を務めた。彼は最初の市議会議員選挙で中国国民党の候補者として当選した。しかし、2005年の地方選挙では無所属候補として立候補。その後、2009年の選挙サイクルで中国国民党に復帰し、2014年および2018年の選挙でも中国国民党の公認候補として議席を維持した。
2.2. 立法委員選挙への出馬と関連する論争
鄭正鈐は新竹市議会議員としての活動と並行して、複数回にわたり立法委員選挙に挑戦し、その過程でいくつかの論争に巻き込まれた。
2.2.1. 2004年および2016年立法委員選挙
2004年の立法委員選挙では、無所属候補として新竹市選挙区から出馬したが、当選には至らなかった。
2016年の立法委員選挙では、中国国民党の公認候補として出馬した。党内予備選挙で呂学樟(呂學樟中国語)を破り、公認を得た。この選挙では、時代力量の邱顕智候補や、民主進歩党の現職である柯建銘候補と競り合った。
2015年12月、中国国民党新竹市支部が開催した懇親会において、民主進歩党は鄭正鈐が選挙運動用のベストを着用して参加したことから、票買収の疑いを抱いた。これを受け、新竹地方検察庁がこの懇親会に対する捜査を開始した。さらに、民主進歩党は票買収疑惑に関連して、中国国民党主席の朱立倫に対し台北地方検察庁に訴訟を提起した。この票買収疑惑は、朱立倫と蔡英文の間で行われた2回目のテレビ討論会でも主要な議題の一つとして取り上げられた。これは、台湾における選挙の公正性に対する市民社会の懸念を浮き彫りにする出来事であった。
また、2016年の選挙運動中、鄭正鈐の支持者が配布した選挙ビラが新竹警察によって押収される事態が発生した。鄭正鈐はこの押収に抗議したが、新竹地方検察庁は、これらのビラが柯建銘に関する歪曲された情報や扇動的な疑惑を含んでいたため、さらなる調査が必要であるとの見解を示した。これは、政治キャンペーンにおける情報の正確性と倫理に関する重要な問題提起となった。
2.2.2. 2020年立法委員当選と議会活動
2020年の選挙運動中、鄭正鈐は、自身の対立候補である鄭宏輝(鄭宏輝中国語)が中国で事業を設立する際に「台湾、中国」という用語を使用しながらも、「台湾を守る」と公約して選挙運動を行っていることに対し、民主進歩党の二重基準であると批判した。この主張は、政治的立場の一貫性に関する議論を提起した。
同年、鄭正鈐は第10期立法委員に当選し、立法院の教育文化委員会委員を務めることになった。しかし、2020年7月には、時代力量主席の徐永明が、黄国昌が鄭正鈐の博士論文の一部に盗作の疑いがあると指摘したことを受け、彼に教育文化委員会委員の職を辞任するよう求めた。この盗作疑惑は、公職者の学術的誠実性と倫理に対する社会の厳しい目を向けさせる出来事となった。