1. 概要
ババテュンデ・ウカシュ・アエグブシ(Babatunde Łukasz Aiyegbusiポーランド語、Babátúndé Łukasz Aiyégbùsìヨルバ語)は、身長206 cm、体重158 kgのポーランド出身のプロレスラーであり、元アメリカンフットボール選手である。バスケットボール選手としてのキャリアを経てアメリカンフットボールに転向し、ポーランドやドイツのクラブチームで活躍した後、NFLのミネソタ・バイキングスに短期間所属した。その後、プロレスラーとしての道を選び、WWEにおいて「ババテュンデ」「ダバ・カト」「コマンダー・アジーズ」といった複数のリングネームで活動した。WWE退団後は「ババサンダー」としてインディペンデント・サーキットで活動している。彼はまた、映画やビデオゲームなど他のメディアにも出演している。
2. 幼少期と生い立ち
2.1. 出生と背景
ババテュンデ・ウカシュ・アエグブシは、1988年5月26日にポーランド南西部の旧ヴロツワフ県(現在のドルヌィ・シロンスク県)オレシニツァで生まれた。彼の母親はポーランド人、父親はナイジェリアからの移民である。
3. スポーツキャリア
プロレスラーに転向する以前、アエグブシはバスケットボール選手およびアメリカンフットボール選手として活動していた。
3.1. バスケットボール
学生時代にはバスケットボール選手として活動し、ポーランドのプロバスケットボールリーグであるPLK(Polska Liga Koszykówki)に所属するシロンスク・ヴロツワフに入団した。
2005年にはポーランド・ジュニア・チャンピオンズで優勝に貢献した。2006年には2部リーグに所属するチームの優勝にも貢献したが、ファウルの多さが問題となり自身のプレースタイルに疑問を抱いたため、バスケットボール選手としてのキャリアを終えた。
3.2. アメリカンフットボール
アエグブシはバスケットボール選手として活動していた時期にアメリカンフットボールを体験したことが転機となり、本格的にこのスポーツに取り組み始めた。
3.2.1. クラブチーム時代
2007年、アエグブシはポーランドアメリカンフットボールリーグ(PAFL)に所属するクルー・ヴロツワフに入団し、オフェンシブラインマンとして同年にはリーグ優勝を経験した。2011年には2度目のリーグ優勝を達成。2012年にはヴロツワフ・ジャイアンツに移籍し、4月にヨーロッパのクラブチーム選手権大会であるEFAFカップに出場したが、グループステージでデンマークのスーラーロッド・ブラックディガーズおよびチェコのブラックホークス・デ・プラハに敗れ、決勝トーナメント進出は果たせなかった。同年9月1日には、EFLとアメリカのNCAAが主催する2012ユーロ・アメリカン・チャレンジにEFL代表の一員として選出されたが、試合は7対34で敗れた。
2013年には自身3度目となるリーグ優勝を飾り、同年にはアメリカンフットボールポーランド代表にも選出された。2014年にはドイツのGFLに所属するドレスデン・モナークスに移籍し、同年12月にはワルシャワ・イーグルスに移籍した。
3.2.2. NFL時代
2015年3月、アエグブシはテキサス工科大学アメリカンフットボール部のアシスタントコーチであるケビン・カーティスの仲介でアメリカ合衆国に渡り、テキサス大学サンアントニオ校で開催されたプロ・タイミング・デーに参加した。NFLのミネソタ・バイキングスが彼に興味を示し、スカウトされて契約を交わし入団。これにより、彼はNFLにおいて歴代5人目のポーランド出身選手となった。
同年8月のプレシーズンでは3試合に出場したが、レギュラーシーズンでの出場機会がないまま9月5日に解雇された。インタビューでは「私の紫の夢はここで終わる」と語った。
4. プロレスラーとしてのキャリア
NFLからの解雇後、アエグブシはプロレスラーへの転向に興味を示した。この情報に触れたアメリカのメジャープロレス団体であるWWEの選手育成部門副社長キャニオン・シーマンが彼をスカウトし、トライアウトに参加させた。
4.1. ワールド・レスリング・エンターテインメント (WWE)
2016年4月7日、アエグブシはWWEと契約を交わし、入団した。同年4月12日には、育成施設であるWWEパフォーマンスセンターでトレーニングを開始した。
4.1.1. デビューと初期の活動
2016年7月8日、アエグブシはNXTライブイベントに登場し、リングでプロモーションを行っていたブロンソン・マシューズと口論になり、ボディスラムでリングから追い出した。同年9月30日には、NXTライブイベントでのバトルロイヤルでプロレスラーとしてデビューを果たした。この時点では本名を使用していた。
2017年1月14日、NXTライブイベントでクリス・アトキンズと対戦し、プロレスラーとして初の勝利を収めた。同年11月には、アフリカの民族衣装であるダシキを着用するようになった。
2018年4月27日、WWEのサウジアラビア大会であるグレイテスト・ロイヤルランブルに、「ババテュンデ」というリングネームで50人グレイテスト・ロイヤルランブルマッチに37番手として出場した。ボビー・ルードにショルダー・ブロックを決めてアピールするも、41番手で入場したブラウン・ストローマンに投げ出されて脱落した。
2019年には、WWE傘下のプロモーションであるEvolveで複数試合に出場し、Evolve王座に挑戦した。
4.1.2. ダバ・カト時代 (2020年)
2020年8月3日、アエグブシは「ダバ・カト」というリングネームでテレビ番組に復帰し、ロウ・アンダーグラウンドのセグメントでRawデビューを果たした。ロウ・アンダーグラウンドでは連勝を重ね、数々のローカルレスラーを撃破したが、9月21日のRawでストローマンに敗れた。同年10月の2020 WWEドラフトでは、ダバ・カトはRawブランドにドラフトされたが、その後は一度も登場することはなかった。
4.1.3. コマンダー・アジーズ時代 (2021年-2023年)
2021年4月11日のレッスルマニア37ナイト2にて、アポロ・クルーズがビッグEからWWEインターコンチネンタル王座を獲得するのを助ける形で復帰した。翌週のスマックダウンで、クルーズによって「コマンダー・アジーズ」として再紹介され、以前のダバ・カトとしての活動には触れられなかった。これにより、彼はスマックダウンブランドに所属が移った。
2021年の2021 WWEドラフトでは、クルーズとアジーズは共にRawブランドにドラフトされた。2022年6月には、クルーズとアジーズはNXTに送られ、NXTベンジェンス・デイで再会した。
4.1.4. NXT復帰とWWEからのリリース
2023年には再びNXTで「ダバ・カト」として活動したが、同年9月21日にWWEとの契約が解除され、リリースされた。
4.2. インディペンデント・サーキット (2024年以降)
WWEからリリースされた後、アエグブシはインディペンデント団体で活動を開始した。2024年2月4日には、Prime Time Wrestlingでデビューし、新たなリングネーム「ババサンダー」を明らかにした。
5. リングスタイルとペルソナ
ババテュンデ・ウカシュ・アエグブシは、その巨体を活かしたパワフルな試合スタイルが特徴である。
5.1. フィニッシュ・ホールドと主要技
アエグブシがプロレスの試合で用いた主なフィニッシュ・ホールドと主要技は以下の通りである。
- フィニッシュ・ホールド
- ナイジェリアン・ネイル:ウマガの「サモアン・スパイク」と同型の技で、大きく右手を振り上げてから相手の喉元に親指を突き刺す。
- チョークスラム
- ダブルハンド・チョークスラム
- カト・スラム(ランニング・パワースラム)
- ニーリング・スパインバスター
- ランニング・ジャンピング・スプラッシュ
- スクープ・サイド・スラム
- シットアウト・ツーハンド・チョークスラム
- スウィンギング・レッグフック・ベリー・トゥ・バック・スープレックス
- 主要技
- ボディスラム
- カナディアン・バックブリーカー
- ココナッツ・クラッシュ
- フット・チョーク
- ジャンピング・ドロップキック
- ジャンピング・エルボー・ドロップ
- モンゴリアン・チョップ
- 各種スープレックス
- ディレイド・ダブルアンダーフック・スープレックス
- スピニング・バック・スープレックス
- バーティカル・スープレックス
- オーバーヘッド・チョップ
- リバウンド・エルボー・スマッシュ(ペンデュラム・エルボー・スマッシュ)
- ビッグブーツ
- ショルダー・ブロック
- ショルダー・クロー
- スネーク・アイズ
- スティンガー・スプラッシュ
- サンダラス・チョップ
- ナックル・パンチ
5.2. リングネームと入場曲
アエグブシはプロレス活動中に複数のリングネームを使用しており、それぞれ異なる入場テーマ曲を使用していた。
- リングネーム
- ババテュンデ
- ダバ・カト
- コマンダー・アジーズ
- ババサンダー
- 入場曲
- 「Africa by Any Means」(2020年-2021年)
- 「To the Top (Nigerian Royalty Remix)」(2021年-2023年、アポロ・クルーズとの共演時)
- 「Africa By Any Means」(NXT復帰後、2023年)
- 「The Lion's Den」(NXT復帰後、2023年)
6. その他のメディア活動
アエグブシはスポーツやプロレス以外の分野でも、いくつかのメディアに出演している。
2020年には、映画『ザ・メイン・イベント』で悪役サムソンを演じた。
また、ビデオゲーム『WWE 2K22』の「The Whole Dam Pack」DLCでコマンダー・アジーズとして初登場し、『WWE 2K23』にも同じキャラクターで登場している。
7. 私生活
アエグブシは結婚しており、妻はルイザ・アエグブシである。彼には息子がいる。