1. 幼少期とユースキャリア
ボヤン・ヨキッチは1986年5月17日にユーゴスラビアのクラーニで生まれました。彼のサッカーキャリアは地元クラーニのユースクラブで始まり、1994年から2002年までクラーニのユースチームで、その後2002年から2003年まではトリグラフ・クラーニのユースチームで育成を受けました。この時期に彼は、プロサッカー選手となるための基礎を築き上げました。
2. クラブキャリア
ヨキッチのプロクラブキャリアは、スロベニア国内での初期の成功から始まり、フランスのリーグ・アン、イタリアのセリエA、スペインのラ・リーガ、イングランドのEFLチャンピオンシップ、そしてロシアのロシア・プレミアリーグへと、ヨーロッパの主要リーグを渡り歩く広範なものとなりました。
2.1. プロ初期 (2003年-2007年)
ヨキッチは2003年に地元のクラブであるトリグラフ・クラーニでシニアデビューを果たしました。トリグラフ・クラーニでは2003年から2005年までの間にリーグ戦56試合、国内カップ戦1試合に出場しました。
2005年にはゴリツァに移籍し、2年間の在籍中にレギュラーとして活躍しました。彼はクラブが2005-06シーズンのスロベニア・プルヴァリーガで優勝した際の主要メンバーの一人でした。ゴリツァではリーグ戦65試合に出場し1得点、国内カップ戦7試合、UEFAチャンピオンズリーグ予選に4試合出場しました。
2.2. 欧州クラブキャリア (2007年-2022年)
2007年7月5日、ヨキッチはキャリアで初めて国外へ挑戦し、フランスのリーグ・アンに所属するソショーと4年契約を結びました。彼は同年8月11日に行われたル・マン戦でリーグ・アンデビューを果たしました。ソショーでの3年間で、彼はリーグ戦42試合、国内カップ戦4試合、UEFAカップ1試合、その他のカップ戦(トロフェ・デ・シャンピオンとリーグカップ)3試合に出場しました。

2010年1月30日、ヨキッチはセリエAのキエーヴォにシーズン終了までの期限付きで移籍しました。キエーヴォでレギュラーとして定着した後、同年5月22日に完全移籍しました。キエーヴォでは2013年までプレーし、リーグ戦64試合、国内カップ戦5試合に出場しました。
2013年7月5日には、キエーヴォとの契約満了に伴い、スペインのラ・リーガに昇格したビジャレアルと4年契約を結んで移籍しました。ビジャレアルでのデビューは同年9月29日のレアル・ベティス戦でした。ビジャレアルではリーグ戦24試合、国内カップ戦5試合、UEFAヨーロッパリーグ4試合に出場しました。
2016年1月8日、ヨキッチは2015-16シーズン終了までの期限付きでEFLチャンピオンシップのノッティンガム・フォレストへ移籍しました。デビューは同年1月9日のFAカップ3回戦、クイーンズ・パーク・レンジャーズ戦でした。ノッティンガム・フォレストではリーグ戦20試合、国内カップ戦1試合に出場しました。
2017年1月21日、ヨキッチはロシア・プレミアリーグに所属するウファと1年半の契約を結びました。2018年8月2日には、UEFAヨーロッパリーグ予選のドムジャレ戦で、アウェーゲームで試合終盤に同点ゴール(1-1)を決め、アウェーゴールルールによりウファの勝ち上がりに貢献しました。これはクラブにとって初のヨーロッパ大会でのゴールでもありました。ウファでは2022年までプレーし、リーグ戦122試合に出場し3得点、国内カップ戦5試合、UEFAヨーロッパリーグ6試合で1得点、降格プレーオフで4試合に出場しました。
3. 代表キャリア
ボヤン・ヨキッチはユース年代からスロベニア代表に選出されており、2004年にはU-18代表で1試合、2005年にはU-20代表で1試合、2005年から2006年にはU-21代表で8試合に出場しました。
スロベニアA代表では2006年2月28日、キプロス代表戦でデビューを果たし、1-0の勝利に貢献しました。その後も代表に定着し、2010年3月3日に行われたカタール代表との親善試合で代表初ゴールを記録しました。この試合はスロベニアが4-1で勝利しました。
2010年6月1日、ヨキッチは2010 FIFAワールドカップのスロベニア代表23名のメンバーに選出されました。彼はグループステージの全3試合に出場しましたが、チームはグループステージで敗退しました。
2019年11月16日、ヨキッチはラトビア代表戦でスロベニア代表としての100試合出場を達成しました。彼は2006年から2019年にかけてスロベニア代表として合計100試合に出場し、1得点を記録しました。
4. キャリア統計
4.1. クラブ
クラブ | シーズン | リーグ | 国内カップ | 大陸大会 | その他 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
トリグラフ・クラーニ | 2003-04 | スロベニア・セカンドリーグ | 28 | 0 | 0 | 0 | - | - | 28 | 0 | ||
2004-05 | 28 | 0 | 1 | 0 | - | - | 29 | 0 | ||||
合計 | 56 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 57 | 0 | ||
ゴリツァ | 2005-06 | スロベニア・プルヴァリーガ | 31 | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 | - | 35 | 1 | |
2006-07 | 34 | 0 | 3 | 0 | 4 | 0 | - | 41 | 0 | |||
合計 | 65 | 1 | 7 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 76 | 1 | ||
ソショー | 2007-08 | リーグ・アン | 17 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 21 | 0 |
2008-09 | 19 | 0 | 1 | 0 | - | 1 | 0 | 21 | 0 | |||
2009-10 | 6 | 0 | 1 | 0 | - | 1 | 0 | 8 | 0 | |||
合計 | 42 | 0 | 4 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 50 | 0 | ||
キエーヴォ | 2009-10 | セリエA | 9 | 0 | - | - | - | 9 | 0 | |||
2010-11 | 15 | 0 | 3 | 0 | - | - | 18 | 0 | ||||
2011-12 | 20 | 0 | 1 | 0 | - | - | 21 | 0 | ||||
2012-13 | 20 | 0 | 1 | 0 | - | - | 21 | 0 | ||||
合計 | 64 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 69 | 0 | ||
ビジャレアル | 2013-14 | ラ・リーガ | 15 | 0 | 4 | 0 | - | - | 19 | 0 | ||
2014-15 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 7 | 0 | |||
2015-16 | 2 | 0 | 1 | 0 | 4 | 0 | - | 7 | 0 | |||
合計 | 24 | 0 | 5 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 33 | 0 | ||
ノッティンガム・フォレスト | 2015-16 | EFLチャンピオンシップ | 20 | 0 | 1 | 0 | - | - | 21 | 0 | ||
ウファ | 2016-17 | ロシア・プレミアリーグ | 11 | 0 | 1 | 0 | - | - | 12 | 0 | ||
2017-18 | 26 | 2 | 0 | 0 | - | - | 26 | 2 | ||||
2018-19 | 20 | 0 | 0 | 0 | 6 | 1 | 2 | 0 | 28 | 1 | ||
2019-20 | 15 | 0 | 0 | 0 | - | - | 15 | 0 | ||||
2020-21 | 24 | 1 | 3 | 0 | - | - | 27 | 1 | ||||
2021-22 | 26 | 0 | 1 | 0 | - | 2 | 0 | 29 | 0 | |||
合計 | 122 | 3 | 5 | 0 | 6 | 1 | 4 | 0 | 137 | 4 | ||
キャリア通算 | 393 | 4 | 28 | 0 | 15 | 1 | 7 | 0 | 443 | 5 |
4.2. 代表
No. | 日付 | 会場 | 対戦相手 | 得点 | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2010年3月3日 | リュドスキ・ヴルト、マリボル、スロベニア | カタール | 4-1 | 4-1 | 親善試合 |
年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|
2006 | 7 | 0 |
2007 | 10 | 0 |
2008 | 5 | 0 |
2009 | 10 | 0 |
2010 | 11 | 1 |
2011 | 9 | 0 |
2012 | 7 | 0 |
2013 | 6 | 0 |
2014 | 3 | 0 |
2015 | 7 | 0 |
2016 | 7 | 0 |
2017 | 5 | 0 |
2018 | 7 | 0 |
2019 | 6 | 0 |
通算 | 100 | 1 |
5. 栄誉
ボヤン・ヨキッチはプロキャリアにおいて以下のタイトルを獲得しました。
- ゴリツァ
- プルヴァリーガ: 2005-06シーズン
6. 引退
ボヤン・ヨキッチは2021-22シーズンを最後に、プロサッカー選手としてのキャリアから引退しました。彼の引退は、長年にわたる輝かしいキャリアの終わりを告げるものでした。
7. 影響と遺産
ボヤン・ヨキッチは、スロベニアサッカー界に多大な影響を与えました。彼のキャリアは、一貫した努力と国を代表する献身の象徴でした。特に、100試合を超えるスロベニア代表での出場は、彼の類まれな粘り強さと、チームに対する深いコミットメントを示しています。彼は、2010年のFIFAワールドカップでの活躍を通じて、スロベニアという小国が世界の舞台で戦えることを証明し、国民に大きな誇りをもたらしました。
長きにわたりトップレベルでプレーし続けたヨキッチの存在は、後進の選手たちにとって大きな目標となり、スロベニアサッカーの発展に貢献しました。彼の引退は一つの時代の終わりを意味しますが、彼が築き上げた実績と、母国への深い愛情は、スロベニアのサッカー史に永遠に刻まれるでしょう。ヨキッチは、単なる選手としてだけでなく、国の誇りを背負って戦った真のスポーツマンとして記憶されています。