1. 生涯・人物
ボー・タカハシは、その背景、性格、語学力、そして野球への情熱において多面的な人物である。
1.1. 出生と家族背景
タカハシは1997年1月23日、ブラジルのサンパウロ州プレジデンチ・プルデンチで生まれた。彼の祖父母は日本からの移民であり、自身は日本にルーツを持つ日系ブラジル人3世である。
1.2. 人物像と語学力
タカハシは人懐っこい性格で知られており、埼玉西武ライオンズに入団後はチームのムードメーカー的存在となっている。彼は英語、ポルトガル語(ブラジルポルトガル語)、スペイン語を流暢に話すマルチリンガルであり、日本語も理解することができる。西武でのインタビューではスペイン語で答えることもあった。
少年時代からの憧れの野球選手は「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔である。2023年には憧れの松坂とキャッチボールをする機会を得て、「信じられない。夢がかなった」と感激を語った。
2. 経歴
ボー・タカハシのプロ野球キャリアは、アメリカ、韓国、そして日本という複数の国のリーグをまたにかけて築かれてきた。
2.1. アリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下時代
タカハシはアングロ・プルテンチーノ高校在学中の2013年12月23日、16歳の若さでアリゾナ・ダイヤモンドバックスとアマチュア・フリーエージェント契約を結んだ。
2014年5月16日、傘下のルーキー級アリゾナリーグ・ダイヤモンドバックスと契約し、プロデビューを果たした。この年は10試合(4先発)に登板し、3勝4敗、防御率4.39を記録した。
2015年はパイオニアリーグのルーキー級ミズーラ・オスプレイでプレーし、15試合に先発登板して8勝1敗、防御率4.66という成績を残した。
2016年はA-級ヒルズボロ・ホップス、A級ケーンカウンティ・クーガーズ、A+級バイセイリア・ローハイドの3球団でプレーし、合計19試合(17先発)に登板して6勝4敗、防御率2.81を記録した。オフには第4回WBCのブラジル代表に選出されたが、チームは予選で敗退し本大会進出はならなかった。
2017年はA級ケーンカウンティとA+級バイセイリアでプレーし、24試合に先発登板して7勝12敗、防御率5.14という成績だった。しかし、この年カリフォルニアリーグのミッドシーズンオールスターに選出されている。
2018年はA+級バイセイリアとAA級ジャクソン・ジェネラルズでプレーした。バイセイリアでは47回2/3イニングで53奪三振、ジャクソンでは73イニングで77奪三振と、キャリアで初めて投球回数を上回る奪三振数を記録。この年は2球団合計で23試合に先発登板し、6勝6敗、防御率4.03を記録した。オフにはアリゾナ・フォールリーグのソルトリバー・ラフターズに所属した。同年11月20日にはルール・ファイブ・ドラフトでの流出を防ぐため、40人枠入りを果たした。
2019年はAA級ジャクソンでプレーし、23試合の先発登板で9勝7敗、防御率3.72を記録した。同年8月18日には初めてMLBに昇格したが、登板機会のないまま8月20日にAA級ジャクソンへ降格し、「ファントム・ボールプレイヤー」となった。
2020年はCOVID-19パンデミックの影響でマイナーリーグの全試合が中止となり、メジャーでの登板もなかった。同年10月27日に40人枠から外れ、AAA級リノ・エーシズへマイナー降格となり、11月2日にFAとなった。
2.2. シンシナティ・レッズ傘下時代

2020年12月18日、シンシナティ・レッズとマイナー契約を結び、2021年のスプリングトレーニングに招待選手として参加することになった。
開幕後はAAA級ルイビル・バッツに所属し、18試合(17先発)に登板して3勝7敗、防御率4.45、89イニングで89奪三振という成績を残した。しかし、同年8月25日にレッズをリリースされた。
2.3. 起亜タイガース時代
2021年8月26日、KBOリーグの起亜タイガースと契約したことが発表された。アーロン・ブルックスの代替選手としての加入であり、総額16.00 万 USD(移籍金10.00 万 USD、年俸6.00 万 USD)の単年契約であった。タカハシはKBOリーグ史上初のブラジル国籍選手となった。
同年9月4日に韓国に入国し、2週間の自主隔離期間を経た後、20日の休養日にライブピッチングを行い、最高球速150 km/hを計測した。当時のマット・ウィリアムズ監督は彼の球速と制球力に満足の意を示した。
9月25日のSSGランダース戦でKBO初登板を果たし、4回を無失点に抑える好投を見せた。続く10月1日のキウム・ヒーローズ戦では6回を無失点に抑え、KBO初勝利を挙げた。しかしその後は調子を落とし、移籍後は6試合の先発登板で1勝2敗、防御率4.18という成績でシーズンを終えた。オフには起亜の保留選手リストに名を連ねたが、再契約は成立せず退団した。
2.4. 埼玉西武ライオンズ時代
2021年12月16日、NPBの埼玉西武ライオンズへの入団が発表された。推定年俸は2000.00 万 JPYの単年契約で、背番号は42。登録名はボー・タカハシとなり、背ネームの表記はBOとされた。彼自身は「日本に来て、みんなにもっと親近感をもってもらいたくて、ボーっていう名前を選びました。ニックネームですね」と語っている。
2022年はCOVID-19パンデミックの影響で来日が3月13日と遅れ、イースタン・リーグで2試合の登板を経て、4月1日に一軍の出場選手登録をされた。翌4月2日の千葉ロッテマリーンズ戦でNPB初登板を果たし、1イニングを無失点に抑えた。その後は点差が開いた場面での登板が中心であったが、4月8日の福岡ソフトバンクホークス戦で失点を喫して以降、交流戦終了まで11試合に登板し13イニング連続無失点を記録した。6月18日のオリックス・バファローズ戦でも1イニングを無失点に抑えたが、続く同22日のロッテ戦では1回1失点で13試合ぶりの失点となった。中14日で登板した7月7日のオリックス戦では2回3失点(自責点0)と2試合連続の失点となり、翌8日に出場選手登録を抹消された。しかし、公文克彦の発熱を受けて特例2022によってわずか1日で再登録となり、7月23日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦でNPB初ホールドを記録した。8月にも特例2022により1日だけ出場選手登録を抹消されたが、復帰後は2試合に登板し、いずれも無失点に抑えた。しかし、離脱者が続々と復帰したチーム事情もあり、9月8日に出場選手登録を抹消された。その後の一軍昇格は果たせなかったものの、この年はシーズンの多くを一軍で過ごし、27試合の登板で0勝0敗2ホールド、防御率2.56という成績を残した。12月1日には西武との契約更新が発表され、推定年俸は3500.00 万 JPYとなった。
2023年は5月3日に出場選手登録。同5日のオリックス戦でシーズン初登板となり、2回1/3を無失点に抑えた。その後は8月25日に出場選手登録を抹消され、9月13日に再登録されたが、同25日に再び登録抹消となりシーズンを終えた。7月には3登板連続で2イニングを投げるなど、この年は回跨ぎの登板が多く、28試合の登板で0勝1敗、36イニングを投げて防御率3.00を記録した。11月11日には西武との契約更新が発表され、渡辺久信GMはボーの先発転向を明言した。推定年俸は引き続き3500.00 万 JPYであった。
2024年は春先から好投を続け、開幕先発ローテーション入りを果たした。4月4日のオリックス戦でNPB初先発登板を果たしたが、3回表に捕逸が絡んで1点を失い、0対1で迎えた6回表には一死二塁の場面で降板。後を受けた水上由伸が適時打を許し、ボーは5回1/3を3安打2四球2奪三振2失点(自責点1)という内容で敗戦投手となった。週5試合が続く変則日程のため、翌4月5日に出場選手登録を抹消されたが、二軍での調整登板を1試合経て、4月25日のオリックス戦に先発登板。5回2/3を3安打2四死球3奪三振1失点という内容でNPB初勝利を挙げた。再び登板機会がないことから翌日に登録抹消となったが、5月7日のロッテ戦に先発登板して以降は先発ローテーションの一角を担った。6月上旬にも登板間隔が空くことによる登録抹消が一度あったが、交流戦終了時点では7試合に先発登板し、計38イニングで援護点はわずかに4点しかなかった。さらには、記録に残らない外野守備のミスが絡む不運な失点もあり、1勝5敗、防御率3.55という成績であった。リーグ戦再開後は週5試合が続く変則日程に加え、新型コロナウイルス感染で離脱していた武内夏暉が復帰するチーム事情もあり、6月23日のオリックス戦では3点ビハインドの5回裏からシーズン初のリリーフ登板。味方の失策もあり、2回1失点(自責点0)であった。その後は2試合に先発登板したが白星は挙げられず、7月15日のオリックス戦ではシーズン2度目のリリーフ登板。接戦時の継投に苦しむチーム事情があり、ボーは1点リードの8回表を任され、1奪三振を含む3者凡退に抑えてシーズン初ホールドを挙げた。その後はシーズン終了まで一軍のブルペンを支え、この年は33試合(9先発)の登板で2勝9敗7ホールド、防御率3.22を記録した。
3. 代表経歴
ボー・タカハシは、国際舞台においてもブラジル代表として活躍している。
2016年には2017 ワールド・ベースボール・クラシック予選にブラジル代表として出場。その後、2021 ワールド・ベースボール・クラシック予選にも再びブラジル代表の一員として出場した。
4. 選手としての特徴
投手としてのボー・タカハシは、強気な投球スタイルと多彩な球種を特徴とする。
4.1. 投球スタイルと球種
左打者の内角にも果敢に攻め込む強気なピッチングが持ち味である。
球種は最速153 km/hを計測したストレートを中心に、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ツーシームを操る。
5. 詳細情報
ボー・タカハシのプロ経歴における詳細な統計情報と記録を以下に示す。
5.1. 年度別成績
5.1.1. 投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | KIA | 6 | 6 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | .333 | 142 | 32.1 | 36 | 3 | 9 | 0 | 4 | 42 | 3 | 0 | 17 | 15 | 4.18 | 1.39 |
2022 | 西武 | 27 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | ---- | 133 | 31.2 | 19 | 2 | 15 | 0 | 7 | 26 | 1 | 0 | 14 | 9 | 2.56 | 1.07 |
2023 | 西武 | 28 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 151 | 36.0 | 20 | 1 | 19 | 0 | 7 | 27 | 2 | 0 | 12 | 12 | 3.00 | 1.08 |
2024 | 西武 | 33 | 9 | 0 | 0 | 0 | 2 | 9 | 0 | 7 | .182 | 315 | 72.2 | 70 | 4 | 27 | 2 | 6 | 48 | 2 | 0 | 31 | 26 | 3.22 | 1.33 |
KBO:1年 | 6 | 6 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | .333 | 142 | 32.1 | 36 | 3 | 9 | 0 | 4 | 42 | 3 | 0 | 17 | 15 | 4.18 | 1.39 | |
NPB:3年 | 88 | 9 | 0 | 0 | 0 | 2 | 10 | 0 | 9 | .167 | 599 | 140.1 | 109 | 7 | 61 | 1 | 20 | 101 | 5 | 0 | 57 | 47 | 3.01 | 1.21 |
- 2024年度シーズン終了時
5.1.2. 守備成績
年 度 | 球 団 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | KIA | 6 | 2 | 2 | 0 | 1 | 1.000 |
2022 | 西武 | 27 | 0 | 7 | 1 | 1 | .875 |
2023 | 西武 | 28 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
2024 | 西武 | 33 | 2 | 7 | 2 | 1 | .818 |
KBO | 6 | 2 | 2 | 0 | 1 | 1.000 | |
NPB | 88 | 3 | 16 | 3 | 2 | .864 |
- 2024年度シーズン終了時
5.2. 記録
5.2.1. NPB
; 初記録
- 初登板:2022年4月2日、対千葉ロッテマリーンズ2回戦(ZOZOマリンスタジアム)、8回裏に5番手で救援登板・完了、1回無失点
- 初奪三振:2022年4月5日、対東北楽天ゴールデンイーグルス1回戦(楽天生命パーク宮城)、6回裏に西川遥輝から見逃し三振
- 初ホールド:2022年7月23日、対東北楽天ゴールデンイーグルス16回戦(ベルーナドーム)、12回表に6番手で救援登板、2/3回無失点
- 初先発登板:2024年4月4日、対オリックス・バファローズ3回戦(ベルーナドーム)、5回1/3を投げて2失点(自責点1)で敗戦投手
- 初勝利・初先発勝利:2024年4月25日、対オリックス・バファローズ6回戦(京セラドーム大阪)、5回2/3を投げて1失点
5.3. 背番号
- 36(2021年途中 - 同年終了)
- 42(2022年 - )
5.4. 登場曲
- 「Baianá」Bakermat(2022年、2023年途中 - )
- 「Beat Festa em Ipanema - Funk」Sr. Nescau(2022年途中)
- 「兄弟船」鳥羽一郎(2022年途中 - 同年終了)
- 「Hey Brother」Avicii(2023年 - 同年途中)