1. 選手としての経歴
アンデションは、主にスウェーデンのアマチュアクラブで選手として活動した。
1.1. 生涯と背景
ヤン・オロフ・アンデションは1962年9月29日にスウェーデンのハルムスタッドで生まれた。彼のロールモデルの一人には、同じハルムスタッドのションドルム出身の元スウェーデンハンドボール代表監督であるベンクト・ヨハンソンがいる。ヨハンソンはアンデションが小学生だった頃の体育教師でもあった。
1.2. 選手時代の所属クラブ
アンデションの選手としてのキャリアは1979年から1993年までの14年間にわたり、主にスウェーデンのクラブでプレーした。彼はアレッツIKでキャリアの大半を過ごし、同クラブの歴代最多得点者でもある。アレッツIKでの最後の試合では5得点を記録した。また、短期間ではあるがISハルミアやラホルムFKでもプレーした。
期間 | クラブ | ポジション |
---|---|---|
1979-1986 | アレッツIK | FW |
1987 | ISハルミア | FW |
1988-1992 | アレッツIK | FW |
1993 | ラホルムFK | FW |
2. 指導者としての経歴
アンデションは選手引退後、サッカー指導者の道に進み、スウェーデン国内のクラブやスウェーデン代表を率いて数々の成果を上げた。
2.1. 初期キャリア
アンデションは選手兼監督としてアレッツIK(1988年-1989年)やラホルムFK(1993年-1998年)で指導者としてのキャリアをスタートさせた。また、ハルムスタッズBKでは1990年から1992年、そして2000年から2003年にかけてアシスタントコーチを務めた経験を持つ。
2.2. クラブ指導者時代
アンデションは複数のスウェーデンのクラブで監督を務め、特にIFKノルシェーピンでの成功は彼のキャリアの転機となった。
2.2.1. ハルムスタッズBK
2004年から2009年までハルムスタッズBKの監督を務めた。在任中、チームはUEFAカップでポルトガルの強豪スポルティングCPを破るという快挙を成し遂げた。スポルティングCPは前年にUEFAカップ決勝に進出していたチームであった。
2.2.2. エルグリーテIS
2009年12月にアルスヴェンスカンから降格したばかりのエルグリーテISの監督に就任したが、クラブは深刻な財政難に苦しみ、最終的にスーペルエッタンのライセンスも剥奪される事態となった。アンデションはわずか1シーズンでクラブを去ることになった。
2.2.3. IFKノルシェーピン
2011年、アンデションはスーペルエッタンからアルスヴェンスカンに昇格したばかりのIFKノルシェーピンの監督に就任した。そして2015年には、最終節で当時の王者マルメFFをアウェイで破り、クラブに26年ぶりとなるリーグ優勝をもたらした。
2.3. スウェーデン代表監督時代
2016年、アンデションはスウェーデン代表監督に就任し、チームを国際舞台での成功に導いた。

2.3.1. 就任と初期
UEFA EURO 2016でのスウェーデン代表のグループステージ最下位という不振を受け、約7年間指揮を執ったエリック・ハムレンの後任として、2016年6月23日にサッカースウェーデン代表の監督に就任した。彼は、ズラタン・イブラヒモビッチが代表を引退した後、長身でフィジカルに優れた選手を中心に選出し、スター選手に依存しない組織力と守備力が堅固なチームを構築した。
2.3.2. 2018 FIFAワールドカップ
アンデション監督の下、スウェーデンは12年ぶりとなるFIFAワールドカップ出場権を獲得した。2018 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選では、サッカーオランダ代表やサッカーイタリア代表といった強豪を退けて本大会出場を決めた。特にプレーオフでは、イタリア代表との第1戦を1-0で勝利し、第2戦を0-0の引き分けに抑え、合計スコア1-0で本大会出場権を獲得した。
2018 FIFAワールドカップ本大会では、サッカー韓国代表、サッカーメキシコ代表、そして前回王者であるサッカードイツ代表と同組のFIFAワールドカップグループFに入った。
- 初戦の韓国代表戦では、アンドレアス・グランクヴィストのペナルティーキックによる決勝点で1-0と勝利したが、韓国側からは「極度の攻撃不足」や「時間稼ぎ」といった戦術が指摘された。
- 第2戦のドイツ代表戦では、オラ・トイヴォネンの先制ゴールでリードを奪ったものの、後半に追いつかれ、試合終了間際にはトニ・クロースのフリーキックで逆転され1-2で敗れた。
- 第3戦のメキシコ代表戦では、積極的な攻撃を見せて3-0で大勝。2勝1敗の成績でグループFを首位で通過し、決勝トーナメントに進出した。
決勝トーナメント1回戦ではサッカースイス代表をエミル・フォルスベリの決勝ゴールで1-0と破り、1994年大会以来24年ぶりとなるベスト8進出を果たした。しかし、準々決勝ではサッカーイングランド代表に0-2で敗れ、ベスト4進出はならなかった。
2.3.3. UEFAネーションズリーグ
2018-19 UEFAネーションズリーグでは、リーグBのグループでサッカーロシア代表とサッカートルコ代表を抑えて首位に立ち、リーグAへの昇格を果たした。
2.3.4. UEFA EURO 2020
アンデション監督率いるスウェーデンは、UEFA EURO 2020予選でサッカースペイン代表に次ぐ2位で通過し、6大会連続となるUEFA欧州選手権本大会出場を決めた。本大会ではグループEに入り、スペインと0-0で引き分け、サッカースロバキア代表に1-0で勝利、サッカーポーランド代表にはヴィクトル・クラエソンの90分での決勝ゴールにより3-2で勝利し、無敗でグループ首位通過を果たした。しかし、決勝トーナメント1回戦ではサッカーウクライナ代表に対し、延長戦の120分に決勝ゴールを許し敗退した。
2.3.5. 2022 FIFAワールドカップおよびUEFA EURO 2024 予選
2021年以降、アンデション監督率いるスウェーデン代表は成績が低迷した。2022 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選のプレーオフではポーランドにアウェイで0-2と敗れ、本大会出場を逃した。
2022-23 UEFAネーションズリーグでは、ホームでのサッカースロベニア代表戦で1-1の引き分けに終わり、リーグBから2024-25 UEFAネーションズリーグのリーグCへの降格を経験した。
UEFA EURO 2024予選では、サッカーベルギー代表とサッカーオーストリア代表に対する連敗が響き、予選敗退が決定。スウェーデン代表が主要国際大会の予選で敗退するのは1996年以来のことであった。
2.3.6. 監督退任
UEFA EURO 2024予選敗退を受け、アンデションはスウェーデン代表監督を退任することを発表した。彼は2023年11月19日に行われた最後の試合を終え、正式に監督職を退いた。
3. 指導哲学とスタイル
アンデション監督は、スター選手に依存せず、組織力と守備力を重視した堅実なチーム作りを特徴とする。特にズラタン・イブラヒモビッチの代表引退後は、長身でフィジカルに優れた選手を積極的に起用し、チーム全体の連携と規律を重んじる戦術を採用した。これにより、個々の能力に頼るのではなく、チームとしての一体感と堅固な守備ブロックで相手を封じ込めるスタイルを確立し、国際舞台で成果を上げた。
4. 受賞歴
アンデション監督は、クラブとスウェーデン代表での指導を通じて、数々のタイトルと個人賞を獲得している。
4.1. クラブでのタイトル
- アルスヴェンスカン: 2015(IFKノルシェーピン)
4.2. 個人賞
- アルスヴェンスカン年間最優秀監督: 2015
- スウェーデン・スポーツ・アワード年間最優秀監督: 2019
また、サッカー雑誌『フォーフォートゥー』による世界の最優秀監督ランキングでは、2016年7月には47位に、2018年11月には17位に選出されるなど、国際的にも高い評価を受けた。
5. 指導者としての統計
チーム | 就任 | 退任 | 成績 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試合数 | 勝利 | 引き分け | 敗戦 | 得点 | 失点 | 得失点差 | 勝率 | |||
スウェーデン | 2016年6月23日 | 2023年11月19日 | 94 | 48 | 15 | 31 | 151 | 97 | +54 | 51.06% |
6. 人物
アンデションは、前述の通り、元ハンドボール指導者のベンクト・ヨハンソンを自身のロールモデルとして尊敬している。ヨハンソンは彼の幼少期の体育教師であり、同じハルムスタッドのションドルム出身である。