1. 概要

ライアン・スコット・ルイス(Ryan Scott Lewisライアン・スコット・ルイス英語、1988年3月25日生まれ)は、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルを拠点に活動する音楽プロデューサー、ミュージシャン、DJ、ラッパー、ソングライターである。また、ビデオグラファー、写真家、グラフィックデザイナー、ミュージックビデオのディレクターとしても活動している。
彼は主にラッパーのマックルモアとのデュオ、「マックルモア&ライアン・ルイス」のメンバーとして知られており、デュオの楽曲のプロデュース、レコーディング、エンジニアリング、ミキシングをすべて手掛けるほか、「Same Love」、「Thrift Shop」、「Can't Hold Us」など数多くのヒット曲のミュージックビデオを監督した。彼のソロデビューEP『Instrumentals』を制作したほか、マックルモアとのデュオとして『The VS. EP』(2009年)、『The Heist』(2012年)、『This Unruly Mess I've Made』(2016年)といったアルバムをリリースした。特に『The Heist』は全米ビルボード200で初登場2位を記録し、「Thrift Shop」はビルボードホット100で6週連続1位を獲得する大ヒットとなった。社会的なメッセージを持つ楽曲「Same Love」を通じて、同性婚の平等を支持する立場を明確にし、大きな社会的影響を与えた。
2. 生い立ちと背景
ライアン・ルイスは、ジュリーとスコット・ルイス夫妻の息子として生まれた。
2.1. 幼少期と教育
ルイスはワシントン州スポーケンで1988年3月25日に生まれた。彼にはそれぞれ4歳と2歳年上の姉テレサとローラがいる。幼少期には、幼なじみのライアン・サンソンと共にロックバンドでギターを演奏し、15歳頃からは音楽制作への関心を深めていった。彼はスポーケンにあるジョエル・E・フェリス高校(Joel E. Ferris High Schoolジョエル・E・フェリス・ハイスクール英語)に通い、その後シアトルのルーズベルト高校(Roosevelt High Schoolルーズベルト・ハイスクール英語)を卒業した。最終的に、ワシントン大学で比較思想史を専攻し、卒業した。
3. キャリアの始まり
ルイスは音楽活動を開始する以前から、プロの写真家およびビデオグラファーとして活動していた。
3.1. ソロ活動と初期のコラボレーション
2008年、ルイスは自身のデビューEPである『Instrumentals』をリリースした。このEPには4曲のオルタナティヴ・ヒップホップ楽曲が収録されている。同年、彼はロードアイランド州を拠点とするMCのシンメトリー(Symmetryシンメトリー英語)とコラボレーションし、セルフタイトルLP『Symmetry and Ryan Lewis』を発表した。
4. マックルモア&ライアン・ルイスとのコラボレーション
ライアン・ルイスのキャリアにおいて最も重要な時期は、ラッパーのマックルモアとのデュオ活動である。二人は数々のヒット曲を世に送り出し、商業的、批評的に大きな成功を収めた。

4.1. 結成と初期のリリース
ルイスがマックルモアと初めて出会ったのは2006年、マイスペースを通じてであった。しかし、二人が正式に「マックルモア&ライアン・ルイス」としてコラボレーションをスタートさせたのは2009年で、同年にはEP『The VS. EP』をリリースした。2010年10月にはEP『VS. Redux』を制作し、同年12月には彼らのデビューシングルとなる「My Oh My」を発表した。この曲は、シアトル・マリナーズの伝説的なアナウンサー、デイブ・ニーハウスに捧げられたものである。2011年1月21日には「Wings」がリリースされ、同年8月16日にはレイ・ダルトンをフィーチャーした「Can't Hold Us」が続いた。
4.2. The Heist
2012年10月、デュオ初のスタジオアルバム『The Heist』がリリースされた。このアルバムには、以前にリリースされたシングル「My Oh My」、「Wings」、「Can't Hold Us」のほか、「Make the Money」や、スクールボーイ・Qをフィーチャーした「White Walls」、アブ・ソウルをフィーチャーした「Jimmy Iovine」などが収録された。「Can't Hold Us」は、2012年6月には英国とアイルランドでミラービールの広告サウンドトラックとして使用された。『The Heist』は、アメリカのビルボード200で初登場2位を記録する商業的成功を収めた。
プロモーション活動の一環として、ルイスはマックルモアと共に2012年10月30日にエレンの部屋に出演し、シングル「Same Love」を披露した。その後、2013年1月18日にも再度番組に出演し、「Thrift Shop」をパフォーマンスした。この曲は2012年12月11日にレイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロンでも披露されていた。「Thrift Shop」はその後、ビルボードホット100で6週連続で首位を獲得し、デュオにとってアメリカでの初のナンバーワンヒットとなった。アルバムのプロモーションのため、2012年8月には「The Heist ワールドツアー」が開始された。
4.3. This Unruly Mess I've Made
2015年1月、ライアン・ルイスは自身のTwitterを通じて、デュオの3枚目のスタジオアルバムが同年後半にリリースされる予定であることを発表した。2015年8月5日、マックルモアはエド・シーランをフィーチャーした「Growing Up (Sloane's Song)」を無料ダウンロード形式でリリースした。
2015年8月27日には、エリック・ナリー、クール・モー・ディー、メリー・メル、グランドマスター・キャズをフィーチャーしたシングル「Downtown」がリリースされた。この曲は同年8月30日に行われた2015 MTV Video Music Awardsでパフォーマンスされた。「Downtown」は、2016年2月26日にリリースされた彼らのニューアルバム『This Unruly Mess I've Made』に収録されている。2016年1月22日、デュオは「This Unruly Mess I've Made」からのセカンドシングルとして「White Privilege II」をリリースした。
4.4. 主要シングルとその影響
ライアン・ルイスがプロデュースしたマックルモア&ライアン・ルイスの楽曲は、商業的な成功だけでなく、社会的な影響力も持っていた。
- 「Same Love」: 2012年7月18日にリリースされたこの曲は、同性婚を支持するメッセージを明確に打ち出し、LGBTQ+コミュニティの権利を擁護する立場を示した。この楽曲は、結婚の平等を求める運動において重要なアンセムとなり、大きな社会的議論を巻き起こした。2014年1月26日、第56回グラミー賞授賞式でマックルモアが「Same Love」をパフォーマンスした際には、クィーン・ラティファが通路に並んだ33組のカップル(ルイスの姉ローラとその夫を含む)の結婚式を執り行ったことで、大きな注目を集めた。
- 「Thrift Shop」: この曲は、2013年1月に200万ダウンロードを記録し、ビルボードホット100で6週連続1位となるデュオにとって初の全米ナンバーワンヒットとなった。そのユニークなコンセプトとキャッチーなサウンドで世界的にヒットした。
- 「Can't Hold Us」: レイ・ダルトンをフィーチャーしたこの曲もまた、チャートを賑わせるヒットとなり、そのエネルギッシュなミュージックビデオと共にデュオの代表曲の一つとなった。
4.5. ミュージックビデオのディレクション
ルイスは、マックルモア&ライアン・ルイスの数多くのミュージックビデオの監督を務めた。彼が手掛けたミュージックビデオは合計12本に上り、その中には「Same Love」、「Thrift Shop」、「And We Danced」、「Otherside (Remix)」、「Can't Hold Us」、「Irish Celebration」、「My Oh My」、「Victory Lap」、「Downtown」、「Brad Pitt's Cousin」、そして「White Walls」など、デュオの主要なヒット曲が多数含まれる。また、プロモーション用のグラフィックデザインも担当した。
4.6. ツアーとパフォーマンス
マックルモア&ライアン・ルイスは、デュオとして活動する中で、積極的なツアーやテレビ出演を行った。2012年8月に始まった「The Heist ワールドツアー」は、アルバム『The Heist』のプロモーションのために行われた。また、彼らはエレンの部屋やレイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロンといった人気テレビ番組でパフォーマンスを披露したほか、第56回グラミー賞授賞式や2015 MTV Video Music Awardsといった主要な音楽イベントにも出演し、そのライブパフォーマンスで観客を魅了した。
4.7. デュオ活動の休止
2017年6月15日、マックルモアは自身の公式Instagramを通じて、マックルモア&ライアン・ルイスとしてのデュオ活動を休止することを発表した。この発表により、二人はそれぞれのソロプロジェクトに注力することになった。
5. その他の活動とソロプロジェクト
マックルモア&ライアン・ルイスとしての活動休止後も、ライアン・ルイスは音楽業界での活動を継続し、他のアーティストの楽曲制作に携わるほか、自身の音楽活動も行っている。
5.1. 他のアーティストのためのプロデュースとソングライティング
2017年7月には、ケシャのシングル「Praying」を共同で執筆し、プロデュースした。また、2019年8月19日にリリースされたホーボー・ジョンソンの楽曲「Subaru Crosstrek XV」でも、共同でソングライティングとプロデュースを手掛けた。
6. ディスコグラフィー
ライアン・ルイスの主な音楽リリースは以下の通りである。
6.1. スタジオアルバム
タイトル | アルバム詳細 | ||||
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『Symmetry and Ryan Lewis』 (Symmetryとの共同作品) |
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タイトル | アルバム詳細 |
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『Instrumentals』 |
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