1. 概要
ラモン・マリア・カルデレ・デル・レイ(Ramón María Calderé del Reyスペイン語、1959年1月16日生まれ)は、スペインの元プロサッカー選手であり、現在はサッカー指導者として活躍しています。彼は現役時代にミッドフィールダーとして、主にFCバルセロナで4シーズンにわたって157試合に出場し、中心的な選手の一人としてチームに貢献しました。また、レアル・バリャドリードやレアル・ベティスでもラ・リーガ(スペイン1部)でプレー経験があります。
サッカースペイン代表としては、1980年代後半に国際舞台で活躍し、特に1986 FIFAワールドカップとUEFA欧州選手権1988に出場しました。1986年のワールドカップ期間中には、旅行者下痢により抗生物質を服用したことでドーピング検査で陽性反応が出ましたが、医療スタッフの適切な説明により制裁を免れ、その後の試合で2得点を挙げる活躍を見せました。
選手引退後は、主にスペインの下部リーグで指導者としての長いキャリアを築き、多くのチームを率いてきました。本記事では、彼の選手としてのキャリアの発展、国家代表としての活躍、そして指導者としての功績を詳細に記述します。特に、彼のキャリアにおける困難な局面(ドーピング騒動や逮捕)に対しては、その背景と解決過程を客観的に描写し、正当な手続きと医療的視点からの公正な判断が下されたことを強調します。
2. 選手としての経歴
ラモン・マリア・カルデレは、1959年1月16日にカタルーニャ州タラゴナ県ビラ=ルドーナで生まれました。地元の強豪FCバルセロナの下部組織で育ち、数シーズンをFCバルセロナB(リザーブチーム)で過ごし、着実にプロへの道を歩みました。
2.1. クラブ
カルデレは、FCバルセロナの下部組織で育成され、プロキャリアをスタートさせました。
彼はレアル・バリャドリードへ期限付き移籍し、1980-81シーズンにラ・リーガデビューを果たしました。しかし、この時期は目立った活躍をすることはできませんでした。
その後、25歳でFCバルセロナのトップチームに昇格し、1984-85シーズンにはレギュラーではなかったものの、クラブのリーグ優勝に貢献しました。このシーズンは彼にとって初の主要タイトル獲得となりました。カルデレは1988年までバルセロナに在籍し、4シーズンで157試合に出場しました。
1988年夏、彼は自身の意に反して同じトップリーグのレアル・ベティスへ移籍しました。しかし、ベティスでの最初のシーズンでチームはセグンダ・ディビシオン(2部)へ降格してしまいました。1990年には下部リーグのUEサン・アンドレウへ移籍し、1993年に34歳で現役を引退しました。
2.2. 代表
カルデレはサッカースペイン代表として18試合に出場し、7得点を挙げました。彼は1986 FIFAワールドカップとUEFA欧州選手権1988のメンバーに選出されました。
彼の代表デビューは、1985年4月30日にウェールズのレクサムで行われた1986 FIFAワールドカップ予選のウェールズ戦(0-3で敗北)でした。1986年のワールドカップ本大会では、アルジェリア代表とのグループステージの試合で2得点を挙げ、3-0の勝利に貢献しました。
また、カルデレはオーバーエイジ枠でスペインU-21代表としてもプレーし、1986年のU-21欧州選手権で優勝に貢献しました。彼は怪我のために決勝には出場できませんでしたが、チームの勝利に重要な役割を果たしました。
2.2.1. 1986 FIFAワールドカップとドーピング騒動
1986年にメキシコで開催されたFIFAワールドカップ期間中、カルデレは旅行者下痢に苦しみ、スペイン代表チームの医師から抗生物質が処方されました。北アイルランド代表戦での勝利後、彼はドーピング検査を受けることになり、その結果は陽性でした。
しかし、カルデレには制裁が科されませんでした。チームの医療スタッフは、彼に投与された薬は深刻な脱水症状を防ぐために病状と闘う目的で投与されたものであり、治療上の必要性があったと主張し、それが認められたためです。この困難な状況を乗り越えた後、彼は続くアルジェリア戦で2得点を挙げ、その能力と精神的な強さを示しました。
3. 指導者としての経歴
選手引退後、ラモン・カルデレはサッカー指導者としてのキャリアをスタートさせました。彼は主にスペインの下部リーグのクラブを指揮し、チームを率いる経験を積みました。
彼の指導者キャリアは、CEプレミア(2度)、UEコルネジャ、CFガバ、UEカステイダフェルス、CFバダロナ、ADセウタ、CFレウス・デポルティウ、CDテルエル、CFパレンシア、ブルゴスCF、CDカステリョン、UEオロト、CFサマンティーノなどで監督を務めました。
また、スペインの下部リーグでの活動以外にも、ベルギーのトップリーグであるベルギー・ファースト・ディビジョンAのシント=トロイデンVVで、同胞のティンティン・マルケス監督の下でアシスタントコーチを短期間務めました。
2008年6月には、レウス・デポルティウの監督時代に、サンゴネーラ・アトレティコCFとの試合中に治安警察(スペインにおける準軍事組織)の隊員への暴行容疑で逮捕されるという出来事がありました。この事件は法的な争点を含んでいましたが、彼のキャリアを通じて、常にその責任を全うしようとする姿勢が見られました。
3.1. 監督成績
ラモン・カルデレが監督として指揮した各チームの統計記録は以下の通りです。
チーム | 国 | 就任 | 退任 | 記録 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試合数 | 勝利 | 引き分け | 敗北 | 得点 | 失点 | 得失点差 | 勝率 % | ||||
CEプレミア | ESPスペイン語 | 1997年7月1日 | 1998年6月30日 | 38 | 13 | 8 | 17 | 50 | 50 | 0 | 34.21 |
UEコルネジャ | ESPスペイン語 | 1998年7月1日 | 2000年6月30日 | 82 | 45 | 21 | 16 | 151 | 76 | +75 | 54.88 |
CFガバ | ESPスペイン語 | 2000年7月1日 | 2001年6月30日 | 44 | 23 | 13 | 8 | 83 | 45 | +38 | 52.27 |
UEカステイダフェルス | ESPスペイン語 | 2002年1月1日 | 2002年6月30日 | 20 | 7 | 9 | 4 | 33 | 27 | +6 | 35.00 |
CFバダロナ | ESPスペイン語 | 2002年7月1日 | 2005年6月30日 | 141 | 69 | 40 | 32 | 209 | 130 | +79 | 48.94 |
ADセウタ | ESPスペイン語 | 2005年7月1日 | 2006年3月13日 | 30 | 5 | 18 | 7 | 22 | 23 | -1 | 16.67 |
CEプレミア | ESPスペイン語 | 2006年7月1日 | 2007年6月30日 | 38 | 11 | 10 | 17 | 40 | 58 | -18 | 28.95 |
CFレウス・デポルティウ | ESPスペイン語 | 2007年7月1日 | 2009年6月30日 | 91 | 47 | 25 | 19 | 155 | 86 | +69 | 51.65 |
CDテルエル | ESPスペイン語 | 2009年7月1日 | 2011年5月28日 | 80 | 43 | 20 | 17 | 128 | 64 | +64 | 53.75 |
CFパレンシア | ESPスペイン語 | 2011年7月1日 | 2012年6月23日 | 43 | 13 | 11 | 19 | 36 | 52 | -16 | 30.23 |
ブルゴスCF | ESPスペイン語 | 2012年6月23日 | 2014年6月13日 | 85 | 47 | 15 | 23 | 135 | 72 | +63 | 55.29 |
CDカステリョン | ESPスペイン語 | 2014年10月30日 | 2015年10月19日 | 55 | 24 | 15 | 16 | 75 | 51 | +24 | 43.64 |
UEオロト | ESPスペイン語 | 2016年6月1日 | 2017年6月3日 | 40 | 25 | 9 | 6 | 75 | 39 | +36 | 62.50 |
CFサマンティーノ | ESPスペイン語 | 2017年10月16日 | 2018年2月9日 | 15 | 6 | 4 | 5 | 21 | 15 | +6 | 40.00 |
CFバダロナ | ESPスペイン語 | 2018年7月9日 | 2019年1月22日 | 22 | 5 | 7 | 10 | 19 | 25 | -6 | 22.73 |
合計 | 824 | 383 | 225 | 216 | 1232 | 813 | +419 | 46.48 |
4. タイトル
4.1. 選手
- FCバルセロナ
- ラ・リーガ: 1984-85
- コパ・デル・レイ: 1987-88
- コパ・デ・ラ・リーガ: 1985-86
- UEサン・アンドレウ
- セグンダ・ディビシオンB: 1991-92
4.2. 指導者
- CFガバ
- テルセーラ・ディビシオン: 2000-01
- CDテルエル
- テルセーラ・ディビシオン: 2009-10
- CDカステリョン
- テルセーラ・ディビシオン: 2014-15
- UEサンタ・コロマ
- プリメーラ・ディビシオ: 2023-24
- コパ・コンスティトゥシオ: 2024